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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

25 飛躍への準備篇

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25-28 4月1日

 いつもお読みいただきありがとうございます。
 4月1日、「わたぬき」ですね。
「そうそう、すっかり忘れていたわ」
 試乗会後、もう一度執務室に戻った際、女皇帝は、仁にお金の入った袋をくれた。
「ミツホの通貨よ。向こうでは、こっちの硬貨も使えるけど、念のためにね」
「ありがとうございます」
「ちょっと確認してちょうだい」
 女皇帝の言葉に、仁は袋の中身を全部出してみた。
「銅貨が10en、穴あき白銅貨が50en、穴なし白銅貨が100en、銀貨が1000en、金貨が1万en」
「en……ですか」
 やはり『賢者(マグス)』は日本人なのだろうか、との思いを深めた仁である。
 計30万enが入っていた。
「お小遣い程度だけれど、国としてもそれほどミツホの通貨は持っていないのよ」
「いえ、ありがとうございます」
 今まで同じ通貨でやってきたショウロ皇国と小群国であるから、いきなり為替レート、つまり異なる通貨が交換される際の交換比率という考え方はなかっただろうし、外貨準備高に至っては想像すらしていなかっただろう。
 これについては、残念ながら仁にも有効な助言ができるとは思えなかった。
 因みに、10enがおよそ1トール、とのこと。
 その後、ミツホ国の情勢などを聞き、話題は自動車に戻る。

「これが説明書です」
 自動車の取扱説明書を手渡す仁。
「図面も付けてありますので参考にして下さい」
「うむ、いいのかね?」
 あれだけの魔導具、いや、魔導機(マギマシン)の設計図面までもらってしまい、宰相は戸惑っていた。
「ええ、いいんです。参考にして下さい」
 以前、ゴーレム馬を贈ったエゲレア王国では、同じものを作ろうとして挫折したということを第5列(クインタ)から聞いていた仁は、どうせいつかはコピーされるなら、気分よく図面を渡してしまえ、と思ったのである。
 作れるものなら作ってみろ、という自負も多少あったことは否めないが。
 そして、これにより、大手を振って仁はミツホへ自動車で行けることになる。
 傍目には釣り合わないが、仁に取っては大きな利があったのである。
 加えて、
「最後に、素材として銅を買いたいのですが、業者を紹介していただけないでしょうか」
 という要望を出す仁。
「おお、なるほど、青銅を多用しているようだからな。紹介などと言わず、後で屋敷に届けさせよう」
「ありがとうございます」
 これで終わり、のはずだったが、最後の最後に女皇帝からの『代金』が渡されることになった。
「ただいただいても心苦しいから、材料代と思ってちょうだい」
 と言いながら目録が手渡された。内容は、
 銅 1トン
 錫 50キロ
 石英(水晶含む)50キロ
 鉄 100キロ
 であった。
 銅と錫の量は、錫5パーセントの青銅を想定してのことであろう。
「いつでも取りにおいでなさいな」
 そう言って女皇帝は執務に戻ったのである。

*   *   *

「なんとか無事に終わったな」
「うん」
 仁たちは屋敷に戻り、寛いでいた。
「明日、サキとハンナに声を掛けようか」
「え? 2人だけ?」
 エルザがきょとん、という顔をしたが、仁にはその理由が分からなかった。
 そこへ礼子が助け船を出す。
「お父さま、明日の日付は?」
「ん? 4月1日だろ」
「そう。そしてジン兄の誕生日」
 そうまで言われれば仁も納得である。
「ああ、そうだったな……」
 昨年は、過去の超兵器、ギガースとやり合った日の夜、ヤダ村でラインハルトたちが誕生日を祝ってくれたのであった。
「今年は、盛大にやるから」
「い、いや、遠慮するよ」
「駄目」
「お父さま、そこで遠慮なさっては駄目です」
 礼子にまで言われてしまい、仁としては嫌と言えなくなってしまったのであった。
「大丈夫。ライ兄が発起人になっていろいろ準備してるらしいから」
「ラインハルトにはいろいろ世話になるなあ……」
 ラインハルトの誕生日は5月10日だそうで、昨年は誰も教えてくれなかったため、仁が祝ってやることができなかったのである。
 ラインハルト本人は、
「まあ、もう祝ってもらって喜ぶような歳じゃないし」
 と笑って言っていたが、そのくせ、仁の誕生日は祝おうとしている。
「そういうもの」
 と、エルザが笑って言った。
「はあ。……ありがたいとは思っているんだけどな」
「ジン兄、素直じゃない」
「いえ、お父さまは照れているだけです」
「……お前ら」
 反論しようと思う仁であったが、心当たりもあって、結局口をつぐんだのであった。

*   *   *

「誕生日おめでとう、ジン!」
「おめでとう!」
「おめでとうございます」
「おにーちゃん、おめでとう!」
 4月1日、蓬莱島の研究所食堂では、仁ファミリーが勢揃いして仁の誕生日を祝っていた。

 ラインハルトとベルチェは高級なワインを持ってきた。
 マルシアとロドリゴは新鮮な魚を大量に持ち込んだ。
 トアとサキ、ステアリーナ、ヴィヴィアンは新鮮な果物と野菜を。
 ミーネはそれらを使い、丁寧に料理した。
 ハンナは、礼子と一緒に蓬莱山山麓でエアベール(イチゴ)を摘んできた。
 そしてエルザはといえば、大きなケーキを作り上げていた。
 ちゃんとスポンジケーキの上に生クリームを掛け、エアベールを載せてある。
「スポンジケーキの焼き方はペリドリーダーに教わった。生クリームはレーコちゃんが遠心分離してくれた」
 ミルクを遠心分離するとクリーム層と脱脂乳に分かれる。そのクリーム層を殺菌消毒したりエイジングしたりして生クリームを作るのだが、かなり手間が掛かる。
 その遠心分離は礼子が手ずから行い、それを生クリームにするのはペリドたちが行ってくれた。
 彼女等も長いこと試行錯誤して、ようやく作れるようになったケーキなのであるが、エルザのために裏方に徹してくれたのである。

「みんな、ありがとう」
 仁は心からの礼を、集まってくれた全員に向かって言った。
 蓬莱島の空は青く澄み、海からは春の風が吹いていた。
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