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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

25 飛躍への準備篇

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25-16 解析結果

 セルロア王国を辞した仁とエルザは『コンロン2』で空を駆けていた。
 時刻は午後3時。
 次に目指すはショウロ皇国、首都ロイザート。要は屋敷に帰るのである。
「なんだか随分留守にしていたような気がするな」
「……うん。1月の終わり頃以来のような、気がする」
「バロウとベーレに会うのも久しぶりか」
 今日は3月22日、一月半以上帰っていなかったのである。
 約500キロの距離を、時速200キロで飛べば2時間半。さらに時差があるので、ロイザートに着いた時は午後4時半だった。
 屋敷の屋根に設けた発着場へとゆっくりと降下する『コンロン2』。
 自分で気が付いたのか、それともバトラーDに教えられたのか、バロウが屋上で仁たちを出迎えた。
「ジン様、エルザ様、レーコ様、エドガー様、お帰りなさいませ!」
「ただいま。ご苦労だった。長い間空けて済まなかったな」
「いえ、それが役目ですから」
 ちょっと見ない間に大人びたバロウが頭を下げた。
 仁は、『コンロン2』の係留をリリーとローズに任せ、礼子とエルザ、エドガーと共に階下へ続く階段へと向かった。
「おかえりなさいませ」
 階下へと通じる階段の上ではベーレが待っており、仁たちを迎える。
「ただいま。留守番ご苦労さん」
「お風呂にしますか、それともお食事を先になさいますか?」
「そうだな、風呂に入りたいよ」
「はい、かしこまりました」

*   *   *

 入浴を済ませた仁とエルザは、久しぶりにショウロ皇国での食事を楽しんだ。
 何といっても白米のご飯と、鰹出汁の味噌汁がある。
 もちろん蓬莱島でも食べられるのだが、お米の味が微妙に違うのだ。
 同じ品種でも、栽培される環境が違うと味が変わってくるものらしい。
「うん、やっぱりこっちのお米はあっさりしているな」
 蓬莱島産のお米は、もちもちしているのだ。仁はどちらも好みである。
 強いて言うなら、あっさりしているお米は寿司や丼物向き、もちもちしているお米は弁当・おにぎり向きであろうか。
 もちろん炊きたてはそのままご飯として食べるのが仁の拘りである。
「あとは海苔ご飯や玉子かけご飯か……」
 潤沢に醤油が手に入るようになれば、と思う仁であった。

「さて、これからのことで少し話をしようか」
 食後、仁はエルザと向かい合ってほうじ茶を飲みながら、軽い調子で話し始めた。
「焦点は2つ。輸送船と自動車だ」
「輸送船、というのは銅を運ぶため、というのはわかる。自動車も楽しみ」
「ああ、エルザが言ってくれたんだっけ。ゴーレム馬車でもいいが、どうせなら自動車で行きたいよな」
 まだ細かい点は何も決めていないけど、と結ぶ仁。そんな彼に、エルザが質問した。
「宇宙船はどうなってるの?」
 これに答えたのは礼子だった。老君から時折報告を受けているのである。
 ここのところ仁はいろいろと忙しかったため、知らせるほどの成果が上がったら纏めて報告するつもりだったのだ。
「小型試作は成功したようです。今中型試作の試験中だということですね」
 小型、というのはミニゴーレムが乗る実験機のことだ。だいたい16分の1サイズである。
 中型はリトルゴーレム、4分の1サイズとなる。
 それぞれ、1分の1ならおよそ50メートル前後のサイズ……小型は3メートルで製作。中型は12メートルを予定していた。
「もう少し詳しく述べますと、小型試作船は成層圏を抜け、完全な真空の宇宙空間まで行き、3日間いろいろ試験をして問題なかったので、中型試作にとりかかったということです」
 中型試作が成功した時点で、何を置いても仁に報告する予定です、と礼子は結んだ。
「そうか、楽しみだな」
 まったく未知の世界に行くことになるから、慎重の上にも慎重にやりたい、と仁は思っている。
「じゃあ、こっちはまずは輸送船か。どうするかな……」
 仁としては、セルロア王国で銅を積み込み、ナウダリア川を通って海へ出て、名前は知らないがトスモ湖から流れ出ている川を遡ってコジュに着ければいいのではないか、と思ったのだが。
「あ、イナート川は橋が多いから大きな船は無理」
 と、エルザに言われてしまったのである。
「うーん……」
 蓬莱島に運ぶだけなら問題はないのだが。
「だったら、こっちで使いたい銅はこっちで調達したら?」
 エルザの言に仁はその手があったか、と今更ながらに気付く。買い入れる資金は十分である。
 ショウロ皇国もまた、銅の産地が多い国だからだ。
「でも、なぜ銅にこだわるの?」
 エルザからの質問が来て初めて、仁は1人で納得していることに気がついた。
「そういえば、エルザに話してなかったっけな」
「うん、何も聞いた覚えはない」
「そっか、ごめん。実は、600012号が使っていたゴーレム7410とかいう奴の破片、あれがたまたま手に入ったから調べてみたんだ」
「ん」
「そうしたら、鋼鉄より強いじゃないか。びっくりしてさ、老君に詳しく調べさせたんだよ」
 その結果が、銅とベリリウムの合金だったというのだ。
 ベリリウム2パーセントを含む銅合金だが、他にコバルトを若干含んでいた。
 それだけなら地球でいうベリリウム銅なのだが、ミスリル銀のように一部の中性子が魔力子に置き換わっていると、飛躍的に強度が増すようなのだ。
「そういう銅は蓬莱島で採れるしな」
 蓬莱島産の銅を20パーセント程加えたベリリウム銅は、通常の銅を加えた物よりも強度が増し、64軽銀に匹敵する強度を持ったのである。
「ベリリウムの方も中性子が魔力子に置き換わっていたらどうなるかは今実験中だが、もしかすると俺たちはオリハルコンを発見したのかもしれない」
「おりはるこん?」
 聞き覚えのない単語に、エルザが首を傾げた。
「ああ。元々、オリハルコンというのは、俺のいた地球の過去に存在したといわれる伝説の金属なんだが、青銅とか真鍮のような銅合金じゃなかったか、という説があってさ」

 赤みを帯びた金属、という説もあり、それに該当する金属といえば銅である。銅に錫を加えた青銅はかなり硬い金属となり、鉄が実用化されるまでは青銅器の時代だった。
 古代中国、殷の時代、『金』といえば銅のことを指したようだ。Goldは『黄金』、鉄は『悪金』と呼ばれたらしい。『悪』金なのは、非常に脆い鉄しか精錬できなかったためといわれる。

自由魔力素(エーテル)による強化が施されれば、それがオリハルコンじゃないか、と思ったんだ」
 その時、礼子が口を挟んだ。
「お父さま、その推測は正しいようです。今、老君から連絡が入りました」
「何? ……よし、直接聞こう。ちょっと行ってくる」
 何を置いても魔法工学に関することにはフットワークが軽い仁。彼は立ち上がって地下室へ向かった。
 屋敷の地下には蓬莱島へ行き来できる転移門(ワープゲート)がある。
 エルザを留守番に残した仁は、礼子を伴って蓬莱島へ移動した。
御主人様(マイロード)、わざわざのお越し、恐れ入ります』
「礼子から聞いた。何が分かったんだ?」
『はい、それでは順を追って説明させていただきます』
 2体の600012号から『知識送信(センドインフォ)』で送られた情報は、仁ダブルの制御核(コントロールコア)ではなく、隷属書き換え魔法吸収用の『魔法記録石(マギレコーダー)』に書き込まれた。
 同じ情報が2ヵ所からほぼ同時に発せられたため、一部は干渉し合ってデータとして意味をなさなくなってしまったのである。
 そのようなデータはほぼ50パーセント、半分に達していたという。
「それは残念すぎるな」
『はい。とはいえ、今の世界には必要にない情報もありました。人造人間(ホムンクルス)の作り方、とかですね』
「まあ、な」
 普通の手段では精神触媒が手に入らないので、人造人間(ホムンクルス)も作れないし、また、必要がない。
『ですが、残念なのは、彼等『始祖(オリジン)』がやって来た宇宙船らしき乗り物のデータがほぼ全滅していることですね』
「あー、それは確かに、な」
 今現在試作を作って実験中であるから、そうした参考になりそうなデータが使いものにならないのは確かに残念であった。
『ですが、素材について、一部解析できました。その中に、銅、ベリリウム、コバルトの合金がありまして、それを彼等はオリハルコンと呼んでいたそうです』
「おお、やっぱりあのゴーレムはオリハルコン製だったか」
『そのようですね。非磁性なので、鉄が使えないような場面ではいろいろと役立つようです』
「コンパスで方位を知りたい時なんかはいいかもな」
『そうですね。……ですので、御主人様(マイロード)が開発された魔素(マギ)ベリリウム銅をオリハルコンと呼ぶのに差し支えはないかと』
 こうして、仁の知るファンタジー金属、すなわちアダマンタイト、ミスリル、そしてオリハルコンが、このアルス世界では現実に存在することとなったのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160110 修正
(誤)ジン様、エルザ様、礼子様、エドガー様、お帰りなさいませ!
(正)ジン様、エルザ様、レーコ様、エドガー様、お帰りなさいませ!
+注意+
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