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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

25 飛躍への準備篇

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25-15 謝礼

「……と、いうわけです」
「なるほどな」
 仁は、セザール王の執務室で、老君と打ち合わせたとおりの内容でこれまでの経緯を説明し終えたところである。
「では、その遺跡は、崩壊した岩の下敷きになってしまったと」
「ええ、非常に残念ですが」
「……掘り出せないものかな?」
「費用と日数を気にしなければ、いつかは」
 どのくらいかかるか見当も付かない、と仁は補足した。
 場所としてはあの巨大エルラドライトを掘り出した穴をそれとなく示唆しておいた。
 実際、あの穴は岩屑で埋めてあるのでそれらしく見えるだろうし、事実1500メートル地下には600012号の施設があったのだから。
 というものの、おいそれと辿り着ける場所ではないことに変わりはない。
「そうか、そうだろうな」
 セザール王もがっかりした様子だ。
「しかし、ジン殿はよくぞそこまで行けたものだな」
「ええ、半分は偶然、ですね。幸運でした」
 頷く仁に向かって、第一内政省長官ランブローが口を開いた。
「あのエルラドライトも素晴らしいものです。間違いなく史上最大ですな」
 その場で申請されなかったことに関しては何も言われなかった。予想どおりである。
 それを受けてセザール王も口を開く。
「うむ。……ランブロー、対価はいかほどになる?」
「ちょっと値が付けられませんな……どういたしましょうか」
 先日来の物入りで、さすがのセルロア王国といえども、財政面は厳しくなっていたのである。
 そこへ仁が口を挟んだ。
「失礼ですが、あの、お金ではなく、資材でいただく事はできますか?」
「物によりますが……」
「ええと、銅でいただけたら、と思うのですが」
「ふむ」

 施設で礼子が相手にしたあかがね色のゴーレム7410。それを破壊した際、礼子の服に飛び散った破片が残っていたのである。
 それをざっと調べたところ、銅をベースにした合金であることが分かったのだ。
 そして、蓬莱島では、銅の産出は『比較的』少ない。
 エルザが調べたところでは、現在の貯蔵量がおよそ1000万トン。年間1万トンを1000年間採掘した結果である。他の金属資源(構造用)はもっと多い。鉄は1桁、軽銀は2桁違う。
 ゆえに、謝礼を銅でもらえないか、という話になったのである。
 因みに、セルロア王国とショウロ皇国は、ローレン大陸でも有数の銅の産出国である。
 2国合わせて、年間、おおよそ50万トン。これは地球ではメキシコの産出量に匹敵する。

 話は変わるが、金属資源の利用は、自然に産出するものを使い始めた、という説がある。
 砂金に代表される自然金はその最たるもの。他に自然に産出する金属として銅がある。
 地球においては、比較的広く分布し、まとまった量を産出する自然金属は銅が筆頭であり、過去、銅や銅合金の道具が多く作られたのはこのためである。
 因みに、自然金は産出量が少ないため、貨幣や装身具という用途を辿った。

 最近のアルス世界では、使える金属も増え、より強靱な鉄、より軽量な軽銀に、銅はその座を奪われ、産出量はあまり変わらないのに需要が減ってきていたのだ。

 閑話休題。
 仁の要望を聞いた第一内政省長官ランブローは、執務室の棚から資料を取り出し、ぱらぱらとめくった。
「うむ、銅の貯蔵量はおおよそ170万トンある。いくらでもいいが……10万トンほどでいかがだろうか」
「え」
 10万トンの銅というと、キロ2500トールとして、2500億トールとなる。
 金額もさることながら、10万トンの銅は、比重が8.6として、11628立方メートル。50メートルプール(50メートル×15メートル×1.5メートル)10杯分だ。
 どうやって運ぶのか、という問題も出てくるだろう。
 インゴットを転移門(ワープゲート)で運べば簡単だし、転送銃を使えばもっと簡単だが、さすがに使うわけにはいかない。

「あのエルラドライトには値が付けられない。それに我が国の兵士8名を救ってくれた。加えて、先日来の謝礼。これでも足りないくらいだな」
「は、陛下」
 値が付けられない、と言ったが、エルラドライトの引き取り相場は1グラム5万トール。
 あの巨大なエルラドライトはおよそ200キロあったので、単純計算で100億トールとなるが、稀少価値や大きさを考慮するとその10倍でも足りないくらいだ、とランブローは説明した。
「ありがとうございます」
 仁とエルザは礼を言う。更にエルザはお願いを口にした。
「できますれば、目録と帳簿をお作りいただけますか。いっぺんには無理ですので、そう、数トンずついただいてまいりたく存じます」
「なるほど。引き渡した量と残りの量を管理できるようにするのだな」
「はい。そして、日付も」
 セザール王は頷いた。
「わかった。ランブロー、手配を頼む」
「は、陛下」
 こうして、謝礼についてはケリが付いたのである。

 昼食の時間までには30分ほどあったので、セザール王は、このまま懇談会とすることを仁に申し出た。
「はい、仰せのままに」
「そうか、助かる。……一番気になっていたのが、先日終息したクロゥ砦騒動とフランツ王国の政権交代なのだが、ジン殿は何かご存知か?」
「はい、新しい王となられたラファイエット家の前公爵夫人とは面識がありますが、その程度です。クロゥ砦につきましては伝聞以上のことは……」
「そうであろうな。だが、ラファイエット家の……ああ、カトリーヌ殿だな?」
「はい、以前、旅行でロロオン町を訪れた際に知り合う機会がありまして」
 セザール王は納得する様に頷いた。
「そうかもしれぬな。私も何度かお会いしているが、カトリーヌ殿は気さくな方だし、領民を大事になさっている。正直、ラファイエット家が王朝を建てたなら、平和になろうというものだ」
 王太子時代、可能な限り各国を巡っていたというセザール王はそう言って微笑んだ。
「各国が落ち着き、平和になってくれることが1番ですよ」
 仁も微笑み返す。
「まったくだな。戦争の手段として技術が進歩する、という者もいるが、ありがたくない進歩だよ」
「同意いたします」
 仁の願いも平和な世界だからだ。
「ああ、各国首脳が集まった会議は有意義だったな。いずれまた、ああいった会議ができたらと思うよ」
「はい、本当に」

 そんな話をしているうちに昼食時となった。
 仁とエルザはセザール王のお相伴にあずかる。
 先代とは違い、かなり質素な食事内容となっていた。とはいえ、具材はそれほど偏っておらず、肉も野菜もまんべんなく使われている。味もなかなか良く、美味い料理というものはお金を掛けるだけではないという、調理人たちの工夫が窺えるものであった。
 食事の後、エルザは先王リシャールを見舞った。
「これはエルザ様、お見舞いありがとうございます」
 侍女のメルフェがエルザを出迎えた。
 短い間ではあったが、エルザはリシャールの主治医として過ごしたので、このメルフェとはかなり打ち解けていた。
(……リシャール様の具合は、どう?)
(はい、最近は顔つきも穏やかにおなりです。お身体も大分動かせるようになられました)
 患者に聞こえないよう、廊下で簡単な容態を聞くと、エルザは病室に入った。
 そこはもう病室というよりも普通の居間に近いように日常生活用品が調えられていた。
「……おお、エルザ先生、おひさ、しぶり」
 半月に満たない短い間顔を見なかったわけだが、その間にリシャールの栄養状態はかなり改善していた。
 血色は良くなり、こけた頬にも少し肉がついてきたようだ。
 その反面、セザール王の王位継承争いの時に見せた苛烈さは最早欠片も見られなくなっているようだった。
「栄養状態は、いいですね。このまま、お世話して差し上げてください」
 一通りの診察を終えたエルザは、今度はリシャールにも聞こえるような声でメルフェに告げたのである。

(このままいけば、軟禁状態であっても、前王は穏やかな……彼にとっては幸せな? ……余生を送れるでしょう)
 何度も礼を述べるメルフェに手を振って、エルザは病室を辞したのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20150713 修正
(旧)エルラドライトの引き取り相場は1グラム2万トール
(新)エルラドライトの引き取り相場は1グラム5万トール
(誤)あの巨大なエルラドライトはおよそ1トンあったので、単純計算で200億トール
(正)あの巨大なエルラドライトはおよそ200キロあったので、単純計算で100億トール

(誤)収束
(正)終息

(旧)具材はそれほど偏っておらず、
(新)具材はそれほど偏っておらず、肉も野菜もまんべんなく使われている。
(旧)味もなかなか良く、調理人たちの工夫が窺えるものであった。
(新)味もなかなか良く、美味い料理というものはお金を掛けるだけではないという、調理人たちの工夫が窺えるものであった。
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