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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

03 港町ポトロック篇

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03-21 表彰式、そして

 5/6 早朝から 5/9 夜まで所用で外出、返信など出来なくなります。更新は予約で行います。
 レスは戻り次第順次行いますので。
 港町ポトロック、その外れにある港の更に外れに一艘の小船が辿り着いたが、見咎める者は誰もいなかった。皆、もうすぐ決まる今大会のヒロインを一目見ようとゴール地点へ行っていたのである。
「よし、礼子、今なら大丈夫だ」
 裸の礼子はそれを気にすることなく船に上がり、脱いでいた服を手早く身に着けた。
「お父さま、あとはこのゴーレムを大会役員のところへ持っていけばいいのですね」
「ああ、そうだ。頼む」
「はい」
 そして礼子は動けないゴーレムをそのまま担ぎ上げ、歩き出した。仁も一緒である。
「な、なんだなんだ?」
「なんだってんだ、ありゃあ……」
 住民の多くは競技の行方に注目しているとはいうものの、やはり目立つものは目立つ。
 仁は、もうじきこの町を去るつもりなので、最早開き直りかけてもいた。
 そして辿り着いたのはゴール地点。割れんばかりの歓声。
「……ゼッケン35、今、ゴオォォォォーーーール!!」
 一際大きなアナウンスに、今、マルシアがトップでゴールしたのだと気付かされた。
「やったな、マルシア」
 今年度の女王を一目見ようと押し合いへし合いする人垣の間から、仁は涙ぐんだマルシアの顔を見た気がした。
「おめでとうございます、お父さま。まあ、お父さまなら当然ですが」
 そう言いながらも、どこか嬉しそうな礼子。

「おお、ジンではないか! 優勝おめでとう! やられたよ! ところでレーコ嬢が担いでいるのは何だね?」
 そこへ、エルザを労いに貴賓席から降りてきたラインハルトと偶然出会う。仁はこれ幸いと、
「ああ、ラインハルト。実は、この2体のゴーレムなんだが、どうも競技の妨害を企んだ奴が送り込んだらしい」
「何だって! 制御核(コントロールコア)は無事なのかい?」
「もちろん。調べてみるにせよ、大会役員立ち会いがいい」
「それももっともだな! フェアであるべき競技を汚す輩は許せないぞ! おーい、役員!」
 招待客であり、他国貴族でもあるラインハルトの影響力は大きく、すぐに大会運営委員副長がやって来た。委員長は表彰式に忙しいそうだ。
「このゴーレムで不正を働いた奴がいる」
「何ですと!」
「証拠はこいつの制御核(コントロールコア)を調べればわかるだろう。見ていろよ、『読み出し(リード)』」
 ラインハルトが制御核(コントロールコア)に魔法をかける。読み取り(デコンパイル)ではなく、素人にもわかりやすい『読み出し(リード)』だ。
「これは……!」
 光の文字が並び出す。それを読み取ると、
「この部分、『ゼッケン1以外の船に妨害をしろ』、と読めるな」
「こっちのは『ゼッケン35を破壊して***』、***が読めないが、破壊しろとは! なんて事だ!」
 片方は若干傷付いていて、読み取りが完全ではなかったが、重要な事はわかったから十分である。
「つまり、このゴーレムを送り出したのは……!」
 副委員長の顔色が変わった。が、ラインハルトは落ち着き払って、
「いや、その先は言うな。熱烈すぎる応援者、という可能性もあるのだから」
「と、とにかく、これは大会運営委員会で審議致します!」
 そう言って、部下に命じて証拠のゴーレムを運ばせるのであった。
「まあ、こんなところか」
 肩の力を抜いた仁が呟くとラインハルトが勢い込んで、
「ジン、レーコ嬢に漕がせて出ていくのを見たぞ! ますます君を我が国に招待したくなった。どうだろう、僕が帰国する時、一緒に行かないか?」
 別に悪い話ではないので、それはいつ頃になるんだ、と仁は尋ねた。
「この競技が終わったからすぐ、というわけにはいかないんだ、残念ながら。他の地域も回る必要があってな、エリアス王国を経つのは何だかんだで10日後くらいになるだろうな」
 仁も、この国で得たインスピレーションを形にしたいと思っていたので、10日という猶予期間は都合がよい。
「それならいいかな。というか是非一緒に行ってみたい」
「おお、そうか! 我がランドル家、いや国を挙げて歓迎するよ! それじゃあ、どうしよう、10日後にここへ迎えを寄越そうか?」
 仁が行きたいと言ったので驚喜するラインハルト。
「そうしてくれれば助かる。え、と。荷物はどのくらい持っていっていいかな?」
「馬車1台までならかまわないよ」
 そんなにあるとは思えない。仁はそれなら問題ない、と感謝した。
 待ち合わせ場所を今いる場所、すなわち港中央広場に決め、仁はランドル家の紋章が入れられたハンカチを受け取った。
 これを見せれば、迎えの者が仁をそれと確認出来るわけである。
 その時、競技会場方面から一際高い歓声が上がった。
「おお、いつの間にか表彰式が始まっていたか」
 それで、ラインハルトと連れ立って仁は会場へ向かった。

 表彰台には3人の美女・美少女が。
 一番高い1位の壇には紺色の水着を着たマルシアが。出るところは出、くびれるところはくびれた体型が強調され、男性客の大半の目を釘付けにしている。
 2位は黄色い水着のエルザ。こちらは16歳という年齢にもかかわらずやや慎ましやかな体型で、その趣味の者達に大受けであるが、一応子爵令嬢でもあるので、あまりおおっぴらに声援を投げかけられないでいた。
 そして3位は赤い水着のリーチェ。小柄ながらもグラマラスな体型で、マルシアと人気を二分する勢いであった。

*   *   *

 表彰式も終わり、控え室で仁と礼子はマルシアと話をしていた。水着はもう脱いで、普段着になっている。
「ジンには感謝だね、ほんとに優勝出来ちまったよ。おかげで、造船工(シップライト)としてやって行けそうだ」
 そう言って、副賞の賞金100万トールの入った袋をテーブルに置いた。
「それから、船体のデザイン賞として10万トール貰えたよ」
 双胴船としてシグナス(白鳥)が評価されたのが嬉しいようで、マルシアの頬は緩んでいる。
「そんで、ユニーク賞ももらった。これはジンの分だな」
 10万トールの入った袋を仁の前に置く。水車駆動が評価されたのだ。
「そんで優勝賞金は契約通り山分けだな」
「え、俺は……」
「ああ、わかってる。優勝できたのも大半はジンのおかげだよ。本来なら4分の3は渡したいんだけど」
「いや、違うって。俺は……」
 あれは冗談だった、と言いかけた仁だが、それは言わずに口を噤んだ。遠慮しすぎるのも考え物だし、過度の謙遜は優勝の価値を下げてしまいかねないということに思い当たったから。
「それじゃあ半分、喜んでいただくよ」
 そう言って、金貨の入った袋を開け、50枚きっちり数えて礼子に預けた。礼子はエプロンドレスの前ポケットにそれをしまう。
「これですっきりした。ジンは、これからどうするんだい?」
 ほっとした顔のマルシアが尋ねた。
「もともとこの国には観光で来たんだしな、もう少ししたら別の町を見に行くのもいいかなと思ってる。それにラインハルトにも誘われてるし」
「そう、か。残念だけど、契約はここまでだったし、ジンはこの国の国民じゃないものな。でも短い間だったけど、楽しかったよ」
 そう言って、マルシアは右手を差し出した。仁もそれを握りかえす。
「俺も、マルシアとチームが組めて楽しかった」
 そう言って微笑みあった後、仁とマルシアは控え室を後にした。

 そして、2人を雇いたいという者達にもみくちゃにされるのである。

*   *   *

「何ですって、それは本当ですか?」
「はい、賓客のラインハルト様立ち会いの下で確認しました」
「すぐに調査しなさい」
 ゴーレムによる妨害行為を企んだ者がいるという知らせに、女領主、ドミニク・ド・フィレンツィアーノは憤る。そして大至急の調査を命じた。

 その日のうちに、領主補佐が流通が混乱するのも顧みず魔石(マギストーン)を大量に買い込んだ事実が明るみに出、更に、大会役員の机からは魔法発動妨害の魔法陣が発見された。
 更に更に、材料を扱う商人に金を掴ませ、特定の客(マルシアとは言わなかったが)に質の悪い青銅を売らせたと報告が入った。
 加えて、港湾警備隊の隊員の1人が、決勝戦の船を保管しているドックに忍び込もうとして失敗、何者かに捕縛された事実。尋問の結果、ゼッケン35の船を狙っていたことが判明。
 その他にも、聞き込みで、優勝したマルシアをバレンティノが妾にしようとしつこく誘っていたことがわかる。
 決定的だったのは、礼子が捕獲したゴーレムのプログラム内容とそのゴーレムを作った魔法工作士(マギクラフトマン)が特定できたこと。当然それを雇った人物も芋づる式に判明。
 競技妨害については状況証拠が多かったが、ゴーレムのプログラム内容という一点だけでも、放っておけることではなかった。
 これらの証拠を以てバレンティノは拘束された。そのゴーレムを作ったヴァレリオ卿にも嫌疑がかけられ、母国のセルロア王国に宛てて抗議文が出されることとなった。

 だが、拘束されたにもかかわらず、バレンティノは不敵な笑いを浮かべていたのである。

 大会運営委員会発表。
「非常に残念なことではありますが、今大会におきまして、フェアであるべき競技を妨害しようとする動きがありました。
 それはゼッケン1番の『エリアスの栄光』を依怙贔屓えこひいきするものでした。
 ゼッケン1『エリアスの栄光』の3位という順位は取り消し、4位のゼッケン28、チーム『海鳥(シーバード)』を繰り上げで3位と致します。
 以後、このようなことが無きよう、関係者各位に切に望むものであります」
 ゴーレムボートレース、終了です。100万トール、約1000万円ですね。羽ゴーレムはユニーク賞狙いだったようですが仁にかっさらわれました。
 リーチェ自身は何もしてないので逮捕はまぬがれたようです。
 表彰式は詳しく書いても退屈なのでさらりと流しました。
 そして、あと1話か2話でこの章も終わります。

 お読みいただきありがとうございます。

 20131205 11時57分 誤記修正
(誤)注目していいるとはいうものの
(正)注目しているとはいうものの
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