挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

23 セルロア王国式典篇

807/1475

23-43 即位要請/修理開始

「わがクライン王国としましては、セザール王太子に即位してもらい、後見として各国から代表を送り込むのがよいかと提案いたします」
 最初に発言したのはアーサー第2王子であった。
「うむ、我がエゲレア王国としましてもそれでよいと考えます。そして代表は各国、同人数が望ましいと存ずる」
 ブルウ公爵も賛成してくれた。
 そして、フィレンツィアーノ侯爵も同意見であると告げた。
「我がショウロ皇国もその意見には賛成です」
 ゲーレン・テオデリック侯爵が議長役の女皇帝に代わって発言した。
「……残ったのはジン君、いえ、『崑崙君』だけれど、別の意見があるかしら?」
「い、いえ、自分もその意見に賛成です。この後すぐ、王太子に進言するのがいいと思います」
 仁は意見を求められて少し慌てたが、考えはまとまっていたのですぐに返答できた。
 やはり、老君が言ったとおり、仁も各国代表と同等に扱われていた。

「そうしますと、満場一致で、セザール王太子殿下に即位してもらうよう進言する、ということに決まりました」
 書記として、ラインハルトとマテウス、それにフリッツがペンを走らせている。
 書記の人数が多いのは、同じものを7通……ショウロ皇国、エゲレア王国、クライン王国、フランツ王国、エリアス王国、崑崙君、そして肝心のセルロア王国に渡すためである。
 コピーがないため、若干手間だが仕方がない。
 書き上げたものは、各国代表が7枚全部に目を通し、サインをしていく。
 その様子を見ながら、仁は、こうした議事録の作製についてなんとかしないと今後大変だな、と考えていたのである。
「……間違いなし」
 7枚全てに目が通され、確認のサインがなされた。それを改めて各国代表に配り直し、
「それでは今から、セザール王太子殿下のところへ行こうと思います」
 と言って女皇帝は立ち上がった。
「各国代表の方、最低1名ずつ一緒に来て下さい」
 とはいえ、ここに残っていても仕方がないので、出席者は全員会議室をあとにした。
 護衛のゴーレムも加え、ぞろぞろと連れ立って迎賓館を出る。警護の兵士が何か言いかけたが、フリッツとマテウスが説明すると、敬礼をして引き下がっていったのであった。

「これは皆様方、お揃いでどうなさいましたか」
 ギョーム離宮は半壊してしまっていたので、王太子はその更に奥に建っている『シベール館』と呼ばれる中規模の館にいた。因みにシベールというのはリシャール王の先代である。セザール王太子にとっては祖父というわけだ。
「内政干渉になってしまうことは承知の上で申し上げますが、我々は、セルロア王国の混乱を収束させるため、ひいては自国の平穏のため、セザール・ヴァロア王太子殿下に即位していただき、セザール・ヴァロア・ド・セルロアとなっていただくことを進言しにまいったものです」
 一行の代表として口を開いたのはアーサー王子である。同じ王子という立場にある彼から告げる方が、女皇帝が言うよりもいいのではないか、と、ここまでの道中に決めたことであった。
「それは……」
「いえ、お父上があのようなことになって、衝撃を受けていらっしゃることも承知の上。ですが、貴殿も王族であるならば、その義務を果たさねばなりますまい」
 アーサー王子はなかなか弁が立つ。
「失礼を承知で申し上げる。現国王の容態は、こちらにおられるエルザ媛の見立てでは回復の見込みは薄いとのこと。そして国には、指導者がいないということは憂慮すべきことです」
「……」
「即位に必要な手続きを踏まねばならないと仰るなら、仮即位でもよろしい。殿下、国のため、国民のため、王になって下さい」
 珍しく熱弁を振るったアーサーの言に感じるところがあったか、セザール王太子は決心したようだ。
「わかりました。……この書面にあるように、皆さん、私に力を貸して下さいますか?」
「もちろんですとも」
 全員が大きく頷いた。
「ありがとうございます。それでは、私は今から、セザール・ヴァロア・ド・セルロアになるべく動きます」
「殿下。我々にできることなら何でも協力しますよ」
 アーサー王子の言葉に、王太子はゆっくりと頷いた。
「まずは王の象徴である『鍵璽(けんじ)』をこの手にし、閣僚の前で即位宣言をする必要があります。幸い、この騒動のため、首都に残っていた連中も全員こちらに集まってきていますので、このあとすぐに簡易式ではありますが、即位の礼を行いたいと思います」
「その鍵璽(けんじ)というのは?」
 初めて耳にするアイテムゆえ、思わず仁は尋ねてしまった。
「我が国は魔法工学を誇りにしています。そのため、王にのみ起動できる魔導具がいくつかあるのですが、その起動の文字通り『鍵』になるもののことですよ」
 形は一般にいう鍵ではなく、仁の知る印鑑に近いらしい。それを押し当てることで専用魔導具を起動することができるようだ。
 老子が言っていた、奇妙な建物に入る『鍵』というのもそれではないだろうか、と仁は考えた。
「だが、父王があのような状態になってしまい、勝手に手にするには少々抵抗があるが……」
 本来は閣僚や国民の前で、位と共に先王から授与されるそうだ。
「とはいえ、非常事態ですからね。我々が言うのも何ですが、あまりお気になさいませんよう」
 アーサー王子の方が9歳も年下なのだが、その落ち着いた雰囲気でセザールを宥める様はなかなか堂にっていた。

「殿下!」
 折しもそこへ、閣僚がやって来た。第一内政省長官ランブロー、第一技術省長官ラタント、第一外務省長官ボジョリー、それに第一軍事省長官ラゲードの4名である。
 すっかり傷も癒えたようだ。
「おお、皆の者、いいところへ」
「殿下、陛下が急病と聞き、飛んでまいりました」
 ランブローが息を切らしながら言った。
「このような国家の一大事に、負傷して寝込んでいたとは情けない限りであります」
 第一軍事省長官ラゲードが無骨者らしい物言いをする。
 王太子は4人を見渡してから静かに口を開いた。
「うむ。その通りだ。そして、当分回復は見込めない。ゆえに、私は即位することに決めた」
「何ですと!!」
 寝耳に水、とばかりに驚き慌てるランブローら4名。
 が、その場に各国代表が集まっている意味を理解すると、恭しい態度でセザールの前にひざまづいた。
「……新国王陛下に忠誠を誓います」
「うむ。よろしく頼む」
「ははっ」
「それでは最初の命令を下す。最も簡単な式で良い、近日中に即位の礼を執り行うゆえ、準備をするように」
「承りました」
 深々と頭を下げ、4人は下がっていった。
「これで、明日か明後日には即位の礼が執り行われるでしょう。それまで、やることは山積みです。問題は、父から譲位の言葉を聞けないことくらいです。母も既に他界しておりますし」
 振り返ったセザール新国王は寂しそうに微笑んだ。
「約束通り、我々もできるだけのことをお手伝いしますわ」
 ショウロ皇国女皇帝は、新国王の肩を優しく叩きながら請け合ったのである。

*   *   *

 仁とラインハルトは、前日に仁が予想していたように、動かなくなったゴーレムの再起動を手掛けることになった。
 そして、セルロア王国からも魔法工作士(マギクラフトマン)が派遣されてきたのである。

「貴殿がラインハルト殿ですか。お会いできて光栄です」
「こちらこそ」
 ラインハルトは、セルロア王国の魔法工作士(マギクラフトマン)と握手を交わしていた。
 彼の名は『ヤルマー・バルツ・ガンマ』。
 彼こそは、『金剛戦士(アダマスウォリアー)』を作り上げた魔法工作士(マギクラフトマン)である。
 その順位がガンマ、すなわち3位なのは、ラインハルトの黒騎士(シュバルツリッター)に敗北を喫したことが原因で、この1月、3年に1度の選考会で降格されたからなのだが、そのようなことはおくびにも出さず、ヤルマーは笑ってラインハルトと握手をしていた。
 ヤルマー・バルツ・ガンマは27歳、ラインハルトより3歳年上。焦茶色の髪にグレイの目をしており、仁と同じくらい小柄であった。
 ラインハルトは、あの『金剛戦士(アダマスウォリアー)』を作った相手が、こんなにも若かったことに驚いていた。自分の事を棚に上げて。
 そして彼は仁をヤルマーに紹介する。
「こちらが『崑崙君』、魔法工学師マギクラフト・マイスター、ジン・ニドー卿です」
 それを聞いたヤルマーは子供のように歓喜を露わにした。
「あなたが! 聞き及んでおりますよ! 私なんぞが及びもつかないほどの魔法技術者でいらっしゃる。この機会にいろいろお教えを乞いたいものです」
 まったく裏を感じさせないその物言いに、仁もただ、
「恐縮です」
 と返答しただけであった。

「では、さっそく作業を始めましょう」
「製作者であるヤルマー殿が一緒なら心強いですよ」

 彼等の仕事は、先王リシャールを唯一の主人として設定されたゴーレム・自動人形(オートマタ)の主人を、新王セザールに変更すること。
 停止した魔導具に関してはまた別の者たちが担当する。
 本来ならエルザもこちらを手伝えるだけの技量を持っているのだが、治療部隊の方で必要とされているので、そちらに掛かりきりである。手伝っているのは礼子だけだ。

 また、アンと老子は、瓦礫の撤去や離宮の確認の手伝いをする風を装い、いろいろと情報収集する予定。
 リリーとローズは『コンロン2』の警護である。どさくさに紛れて盗もうとする者がいないとも限らないからだ。
 フリッツは『ゴリアス』を使い、壊れた離宮がこれ以上崩壊しないよう補強工事の手伝いである。
 その他、各国代表の大半は、新王即位に伴う混乱を防ぐべく、いろいろな相談を交わしていた。
 マルシアやジェシカ、シンシアのように手持ち無沙汰な者もいたのだが。
 そんな中、セザール王太子は、王の証となる鍵璽(けんじ)を探しているようだが、まだ見つかっていないということであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20150514 修正
(旧)わがクライン王国としましては・・・送り込むのがよいかと愚考します
(新)わがクライン王国としましては・・・送り込むのがよいかと提案いたします

(旧)その順位がガンマ、すなわち3位なのは、ラインハルトの黒騎士(シュバルツリッター)に敗北を喫したことが原因なのだが、
(新)その順位がガンマ、すなわち3位なのは、ラインハルトの黒騎士(シュバルツリッター)に敗北を喫したことが原因で、この1月、3年に1度の選考会で降格されたからなのだが、
 3455年1月選考会でベータに。3456年もベータ。3457年に統一党が解体され、ドナルド・カロー・アルファが抜け、繰り上げでアルファに(ステアリーナはベータに)。
 3458年1月の選考会でガンマに格下げ(アルファ・ベータは不明)。
 と、こういう次第です。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ