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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

23 セルロア王国式典篇

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23-24 集結/再会

 3458年、2月20日。セルロア王国建国記念式典の2日前である。
 セルロア王国の都市、ダリには、各国の首脳・重鎮が続々と集まり始めていた。

 真っ先にやってきたのは、ショウロ皇国、ラインハルトとマテウス。
 熱気球で飛んできたのである。同行していたのは黒騎士(シュバルツリッター)
 彼等を出迎えたのは巨大な飛行船。
 威圧するかのように、熱気球よりも上空に浮かび、ラインハルトらを見下ろしていた。
 とはいえ、仁の技術を知っているラインハルトである。見かけは驚愕している風を装い、その実、心底平然としていた。
 だが、同行しているマテウス・ガイスト・フォン・リアルガー大尉は違った。
「ラ、ラインハルト、見たか!? あの巨大な飛行船を! それが4機だぞ!」
「ああ、多いな」
 ラインハルトとしても、この短期間に4機の飛行船を建造したことは評価できるかな、などと考えていたのである。
「それだけか?」
「ああ。ジンと付き合ってるとな」
「……そうか」

 次にやってきたのはエゲレア王国の一行。
 熱気球2機に分乗して、アンガス・ブルウ・パイロイド公爵とガラナ伯爵がやって来た。
 ブルウ公爵はエゲレア王の従兄であるため、国王名代としてやって来たのだ。ガラナ伯爵はそのお供である。
 警護のために、エゲレア王国オリジナルのゴーレムがそれぞれに1体ずつ付いていた。1体は金ぴか。ガラナ伯爵の趣味であろう。
「ううむ、これはすごいな。やはり侮れぬ国か、セルロア王国は」
 見かけ上は堂々と振る舞っているブルウ公爵であるが、内心は少し気圧されていた。
 一方、ガラナ伯爵はセルロア王の目論見通りに圧倒されてしまい、顔色も青ざめ、態度にもそれが現れる始末。
(うわわ、何だ何だ、この巨大な飛行船は! ……来るんじゃなかった!)
「伯爵、少しは落ち着け。国の威信にも関わる」
「は、はあ」
 公爵に窘められ、なんとか体裁だけは整えるガラナ伯爵であった。

 3番手はフランツ王国。
 ルフォール・ド・オランジュ公爵、通称『南公爵』が全権代表として、配下10名と共に馬車でやって来た。
 これを見ても、地図上にない街道が、フランツ王国とセルロア王国の間にあることは分かろうというもの。
 とはいえ、それを表立って指摘するものはいない。『船で馬車ごとアスール湖を渡った』と言われたら、反論できないからである。
「いやはや、まったくもって、素晴らしい技術ですなあ! 我が国の及ぶところではないですわい」
 馬車から降りるなり、オランジュ公は手放しで飛行船を褒め称えていた。

 4番目にやってきたのはクライン王国。
 熱気球2機に分乗してである。
 片方には、名代の第2王子アーサーと、その付き人兼家庭教師リオネス・アシュフォード。
 もう片方には護衛のジェシカ・ノートンと、技術顧問という肩書きのボールトン・オールスタットである。
「ふうむ……これをもしも戦争に使ったらどうなるか考えると、背筋が冷えますな」
「ああ、同感だ。あの大きさでは、私の火魔法でも墜とせないだろうしな」
「ははあ、ジェシカ殿がそう言われるとなると正しく脅威ですな」
 ジェシカとボールトンはセルロア王国の飛行船に脅威を感じているようだ。
「王子、どう思われます?」
「ふむ、技術力はそれなりに認めてもいいが、こうした威圧に使うその心根が卑しいな。国をまとめる器ではないと思うよ」
「はは、そうですね。ジン殿の真の実力……私も把握しきれませんが、それを思うと虚仮威しにしか見えなくなります」
 だが、アーサー王子とリオネスは、仁の『コンロン2』を知っており、顔や態度には出さなかったが、4機の巨大飛行船が見かけ倒しであることを見抜いていたようである。

「ふははは、皆驚いているようだな。愉快だ」
 飛行船の1機に乗り、下界を見下ろしながら、セルロア国王リシャールは楽しげな笑い声を漏らした。
「残るはエリアス王国と……『崑崙君』とやらか。それに、別枠で来るというショウロ皇国、それにクライン王国の奴等がいたな」
 いつも飲んでいるワインをあおるリシャール。
「ふん、やはりこれは美味いな」
 リシャールが愛飲しているのは、『酒精強化ワイン』に分類されるもの。
 発酵途中で蒸留酒などの高濃度アルコールを添加することで酵母を死滅させて発酵を止めたもので、当然アルコール度数も高い。
 リシャールお気に入りのそれは、およそ25度という強い酒となっていた。
 加えて、秘伝の添加物により、味と香りを一段と向上させたものである。
「これを飲むと頭も冴える。我が王国は安泰だ」

 が、その笑いが少し引き攣る時が来た。
 同日の午後3時、海からナウダリア川を遡り、アスール川経由でダリへやって来た小型船があったのだ。
 小型とはいえ、全長は8メートルほど。3つに別れた船体が甲板で繋がれており、見たことのない魔導機(マギマシン)が船尾に付いているようだ。
 その速度は見るからに速かった。
「うぬぬ、あの船は何だ?」
 リシャールは、同乗していた第一技術省長官、ラタントに下問した。
「はっ。見たところ、エリアス王国の船と思われます。駆動方式は……ここからは不明であります」

 それは、マルシアが苦心して開発した三胴船(トリマラン)。ボウォールに破壊されたそれに更なる改良を加え、スクリュー駆動の船外機を2機取り付けたものである。
 仁が改良強化したアローによる製作補助のおかげで、短期間に完成でき、それを見た南部地方領主フィレンツィアーノ侯爵は即採用。
 こうして、先駆けとなってセルロア王国にやって来ていたのである。
 後から出発したにもかかわらず、先行した船団を追い抜いて1日早い到着となった。
 乗っているのは代表のフィレンツィアーノ侯爵と、操縦士としてマルシア。補助要員としてのアロー、である。
 2機の船外機による最高速度は実に時速50キロに達し、ポトロックからナウダリア川河口までの400キロ余りの距離を9時間足らずで走破。川を遡っての200キロも6時間ちょっとでこなしていたのだ。

「……ふん、所詮はちっぽけな船だ。気にするほどのことでもないか」
 国王リシャールは鼻で笑うと、手にしたグラスの中のワインを一気に飲み干した。

 その日はそれ以降列席者の到着はなかった。リシャール国王は夕刻、ダリにある離宮に戻ったのである。

*   *   *

 翌日は更に賑やかなことになる。

 まず最初に、ショウロ皇国の女皇帝、ゲルハルト・ヒルデ・フォン・ルビース・ショウロが馬車で到着した。
 時刻は午前8時。
 朝一番の渡し船でアスール川を渡ってきたのである。
「これはこれは、陛下、ようこそのお越しを」
 さすがのセルロア王国といえど、大国ショウロ皇国のトップを迎えるに当たって、礼を失するわけにはいかないと判断したようで、第一外務省長官すなわち外務大臣のボジョリーが出迎えたのである。
 その背後にはラインハルトとマテウスがいた。
 2人を見た女皇帝は柔らかく微笑みながら頷き、ボジョリーに言葉を返す。
「このたびはお招きに与りまして、光栄ですわ」
 ラインハルトとマテウスも女皇帝に挨拶を行う。
「陛下、お待ちしておりました」
「ご無事のご到着、お喜び申し上げます」
「貴方たちもご苦労様。……第一外務省長官殿、間もなく、もう1つの別働隊も到着するはずです」
 その言葉と同時に歓声が沸き上がった。
「?」
 ボジョリー第一外務省長官が振り返ると、身の丈6メートルの巨大なゴーレムが5体、やって来るところであった。
「我が国の『ゴリアス』ですわ。もうご存知でしょうけれど」
 クライン王国へ乾燥剤を運ぶ際にもセルロア王国を通過させてもらっているので、知っているものは大勢いる。が、不幸にしてボジョリーは知らなかったのである。
「は、はあ、なかなかのものですな。さ、さすがはショウロ皇国であらせられる」

 そして彼にとって不幸なことに、続いて更に大きな歓声が上がった。
 人々を見ると、皆一様に上を見上げている。つられるようにボジョリーも上を見上げた。
「おお……!」
『丸に二つ引き』の紋章を持つ飛行船、『コンロン2』が降下してくるところであった。
「あれはジン・ニドー卿ね」
「『崑崙君』ですね」
 ゆっくりと降下してきた飛行船は、各国の熱気球が係留されている着陸床の端に、音もなく接地。
 すぐさま、銀色の軽鎧を着けたゴーレムが飛び出し、着陸床に設けられたフック……『ボラード』に固定した。
 安定したところで、船室後方から簡易タラップが降ろされ、『崑崙君』仁とエルザが姿を見せた。
 礼子とエドガーはもちろん、一行の護衛として、少女型の新SP、『リリー』『ローズ』が付いている。64軽銀製の軽鎧を身に着け、さながら女騎士であった。
「き、貴殿が『崑崙君』ですかな?」
 仁に初めて会うボジョリーは若干懐疑的な顔。
 仁とエルザが着ている背広も見たことがないため、尚更なのかもしれない。
「『崑崙君』、お久しぶりですわね」
 そこへ女皇帝からの助け船が入った。
「陛下、ご無沙汰しております」
 更にはラインハルトからも。
「ジン・ニドー卿、お久しぶり。エルザ媛もお元気そうで何より」
「お久しぶりです、ラインハルト・ランドル卿」
「ラインハルト様、ご無沙汰」
 こうして、『崑崙君』ジン・ニドー卿はセルロア王国にはっきりと認知されたのである。
 お知らせ:25日(土)早朝から夜にかけて実家に帰省しますので、その間レス等できなくなります。御了承ください。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20150426 修正
(誤)このたびはお招きに預かりまして、光栄ですわ
(正)このたびはお招きに与りまして、光栄ですわ

(旧)加えて、秘伝の添加物により味と香りを一段と向上させたものである。
(新)加えて、秘伝の添加物により、味と香りを一段と向上させたものである。

(旧)見かけ上は堂々と振る舞っているブルウ公爵であるが、内心は少し気圧されていた。
(うわわ、何だ何だ、この巨大な飛行船は! ……来るんじゃなかった!)
「伯爵、少しは落ち着け。国の威信にも関わる」
「は、はあ」
 ガラナ伯爵はセルロア王の目論見通りに圧倒されてしまい、顔色も青ざめ、態度にもそれが現れる始末であった。

(新) 見かけ上は堂々と振る舞っているブルウ公爵であるが、内心は少し気圧されていた。
 一方、ガラナ伯爵はセルロア王の目論見通りに圧倒されてしまい、顔色も青ざめ、態度にもそれが現れる始末。
(うわわ、何だ何だ、この巨大な飛行船は! ……来るんじゃなかった!)
「伯爵、少しは落ち着け。国の威信にも関わる」
「は、はあ」
 公爵に窘められ、なんとか体裁だけは整えるガラナ伯爵であった。
()内がブルウ公爵のセリフに見えてしまうので。

(旧)「ラインハルト卿、ご無沙汰」
(新)「お久しぶりです、ラインハルト・ランドル卿」
「ラインハルト様、ご無沙汰」

 20160331 修正
(誤)見かけは平然としている風を装い、その実、心底平然としていた。
(正)見かけは驚愕している風を装い、その実、心底平然としていた。
+注意+
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