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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

23 セルロア王国式典篇

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23-05 新しい仲間/苛立ち

 蓬莱島はもう薄暗かったが、ポトロックはまだ夕方前である。
 海蝕洞窟に設置した転移門(ワープゲート)から出た仁と礼子。
「こうした転移門(ワープゲート)のセキュリティももっと上げないといけないだろうな」
 と仁が独り言のように呟けば、礼子も同意する。
「そうですね。中継基地『しんかい』もありますが、まずは入口でせき止めるのが筋でしょう」
「だな」
 等と会話しつつ、海沿いに歩いて行く。
 潮の香りを乗せた風が吹いているが、どことなく暖かく、春が近い事を感じさせてくれる。

 ゆっくりと歩いて20分。仁と礼子はマルシア工房の前に来ていた。
「さて、いるかな?」
 と、仁は思ったのだが、横にいた礼子に袖を引っ張られる。
「お父さま、あのお2人は、この先の船着き場で実験しているようです」
「ああ、そうなのか」
 隠密機動部隊(SP)、カトレアとロータスが付いているのだ。再編成で呼び戻す前だったのは幸いである。
「こちらですね」
 歩いて更に5分。ほぼプライベート化されたような船着き場。そこがマルシアたちの実験場であった。
「あ、いたいた」
 少し沖の方に、試験を繰り返すマルシアたちが。
「こっちに気が付いていないな……」
「アローも一緒ですのですぐ気が付きますよ。……ほら」
 礼子が言ったとおり、こちらに気が付いたらしく、猛スピードで岸へ戻ってくる試験船。
「おーい、ジン!」
 あと10メートルもないというのに速度を落とさないマルシア。このままでは船着き場に激突しそうだ。
「あ、あぶ……!」
 一緒に乗っていたロドリゴの顔は真っ青である。アローも懸命に船を止めようと何かやっているが……。
「礼子、止めろ!」
「はい、お父さま」
 礼子は『力場発生器フォースジェネレーター』を起動。
 出力を絞り、試験船に飛び乗る。そこで出力をアップさせれば、船着き場手前で試験船はぴたりと停止した。
「あ、危なかった……」
 ロドリゴが盛大に溜め息をついた。マルシアは青ざめている。
「ご、ごめん! レーコちゃん、助かったよ!」

 事故を未然に防いだ仁たちは、改めて挨拶を交わした。
「ジン、久しぶり。いいところに来てくれたよ!」
 マルシアのテンションは高い。ロドリゴも、口には出さないが、内心興奮しているようだ。
「積もる話はたくさんあるだろうが、とりあえず場所を移動しないか?」
「うん、いいけどさ。どこへ?」
「まあ、つい来てくれれば分かるよ」
 ということで、試験船をドックに格納した後、まず工房へ。その日の営業を終了させてから、マルシアとロドリゴ、そしてアローを伴って海蝕洞窟へと向かった。

「ジン、ここは?」
「俺が『崑崙君』になったのは知ってるよな?」
「うん」
 頷くマルシア。
「その原点へ、さ」
「ええっ! ジン、ほんとかい!?」
「ああ。遅くなったが、招待するよ」
「ジ、ジン殿! 私もですか?」
 ロドリゴも浮き立っているのが目に見えて分かる。
「そうですよ。……さあ、行こう」
 誰かに見られてもいけないと、話は早々に切り上げる。
 仁が先頭で、マルシアとロドリゴは礼子に手を引かせ、海蝕洞窟へ入る。アローは仁製作なので通過できる。と言うか、彼女は2度目の蓬莱島訪問になる。
 中に入った仁は、そのまま何も言わさずに転移門(ワープゲート)をくぐった。
 そして出たのは『しんかい』の中。ここでなら少しゆっくり話ができる。
「ここは中間地点なんだ」
「ジ、ジン殿、い、今のは!?」
転移門(ワープゲート)といいまして、俺が持つ移動手段ですよ」
転移門(ワープゲート)……! 古代遺物(アーティファクト)ですね! なるほど、やはりジン殿は凄い!」
 興奮するロドリゴ。対してマルシアは言葉が出てこないようだ。
「まあ、とりあえず先へ行きましょうか」
 ということで、『蓬莱島』行きの転移門(ワープゲート)をくぐる一行。
 出たのは研究所1階、転移門(ワープゲート)ホールであった。
 そして仁のいつものセリフ。
「ようこそ、蓬莱島へ」

*   *   *

 仁は2人を地下の司令室へ連れて行った。
 会議室としても使えるここには、エルザの他にはラインハルト、サキ、トア、ステアリーナ、ミーネが来ていた。
「マルシアさん、お久しぶり」
「ロドリゴさん、すっかり元気そうですね」
「エルザ、ラインハルト! 君たちも来ていたんだね」
「おお、ラインハルト殿も!」
 顔見知り同士の挨拶の後は、初対面の者が自己紹介した。
「サキと言います。錬金術師です」
「トアという。サキの父で同じく錬金術師だ」
「ステアリーナです。元セルロア王国の魔法工作士(マギクラフトマン)で、今はショウロ皇国に亡命しているんですの」
「ミーネと申します」
「……私の、実の母です」
 ミーネの自己紹介だけでは不十分と、エルザが補足を入れた。
「エルザも、複雑な家庭事情を持っていそうだね」
 マルシアが隣に座る父ロドリゴをちらと見てからしみじみと言った。
「まあ、な。そのあたりはおいおい話すけど、まずは俺の話を聞いて欲しい」
 そこへ、ペリド21がクゥヘを持ってやって来た。全員に行き渡ったところで、仁が再度口を開く。
「まあ、聞いてくれ。俺は実は、この世界の生まれじゃないんだ……」
「ええっ!?」
「……実は……」

 仁の話は、途中、質問を挟んだりしながら1時間弱続いた。

「……というわけさ」
「……」
 2人はすぐには信じないだろうと仁は思ったが、
「なるほどね。ジンが突出した技術と知識を持っている理由がやっと分かったよ」
「ジン殿が他とは違うと思っていましたがそういう理由だったんですね」
 と、2人ともあっさり話を信じてくれたのでやや拍子抜けする仁。
「そりゃあ、転移門(ワープゲート)や、このゴーレムメイドさん、それにこの研究所を見せられてはね。でも、何と言っても、これまでの規格外さを知っているからねえ」
 とはマルシアの談。
「ええ、まったくです。ジン殿が我々の先を行っているのは分かっていましたが、ここまでとは。競う気にもなれませんね」
 ロドリゴもあっさりと兜を脱いだのであった。

*   *   *

「何? 『崑崙君』とやらに連絡がつかないだと?」
 セルロア王国では、国王リシャールが苛立った声を上げていた。
「は、今のところどこの国にもいないようです」
「ふん、その国どもに伝えておけ。何が何でも『崑崙君』に話を通しておけ、とな。そして我がセルロア王国を舐めたらただではおかない、と」
「は、承知致しました」
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20150406 修正
(誤)と言うか、彼は2度目の蓬莱島訪問になる
(正)と言うか、彼女は2度目の蓬莱島訪問になる
+注意+
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