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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

22 新たな展開篇

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22-23 仁の本心

 予約時間間違えて13時にしてしまってましたorz
 まずは古代(エンシェント)(ドラゴン)から得た『竜革(ドラゴンレザー)』の使用法の確認からである。
 これは切れ端で試すことにする。
「ふむ、単純に魔力素(マナ)を込めると、ぴんと伸びて硬くなるだけだよな」
 カプリコーン1の中で試した実験と同じである。このやり方では皮膚に応用はできない。
「これを皮膚に使うには、方向性か、魔力の種類か……」
古代(エンシェント)(ドラゴン)は普通に動いているんだから、できないはずはないよね」
 サキの意見はもっともである。仁たちは色々と試していく。
 その結果、魔力素(マナ)を込めると硬くなり、魔力波すなわち精神波を与えると柔軟性のある強靱な素材になることが確認された。
「うん、つまり、魔力や魔法との親和性がすごく高いわけだ」
 親和性が極端に高いため、反応するのは1度に1種類の魔力のみ。つまり、他者の魔法は受け付けないということだ。

 結論。『古代(エンシェント)(ドラゴン)の革は、その革に流れる魔力以外では不可侵である』。

 だからこそ、生きている古代(エンシェント)(ドラゴン)は無敵であり、脱いだ皮は弱くなる。
 が、脱いだ皮に、もう一度魔力を流せば強化できるわけだ。そして流した魔力以外には反応しない。
 これを礼子の皮膚に使えばそれこそ無敵だろう。

 だが仁はそれで終わらせるつもりはなかった。
「ジン兄、何をする気?」
「カプリコーン1の中で話していたあれを試して見るのさ」
 あれ、というのは、強度を決めるのは何か、という話のこと。
 骨格と筋肉も一新しようというのである。
「礼子の骨格はハイパーアダマンタイトだ。軽量化のために中空にし、内部は発泡構造になっている」
 鳥の骨も、大きな物は中空で、トラス構造に近いものになっているという。
「発泡部分をこの端材はざいで充填したらどうなるか?」
 この質問に答えたのはエルザ。
「……魔力による強化」
「そう。皮膚と同じようにして、更なる強化が図れるはず」
「確かに凄いね、それは……」
 サキにも理解できたようだ。
「そして筋肉。これにも、端材を使ってやれば……」
 古代(エンシェント)(ドラゴン)の革は、魔力に対する反応が良い。つまり、筋肉素材としても優秀なわけだ。
 従来の魔法筋肉(マジカルマッスル)に、この新素材も織り交ぜて再構成する仁であった。
 魔力反応炉(マギリアクター)も新しい皮膚と筋肉に合うよう再調整した。
 そして制御核(コントロールコア)細部の見直しも行う。
 体重が元のままになるように調整もしていき、およそ2時間で礼子は元の姿に戻る。あとは再起動するだけだ。
「ねえジン、1つ聞いてもいいかな?」
 礼子の最終チェックを行い終えた仁に、サキが尋ねた。
「うん? 何だい?」
「レーコちゃんをこの姿にしているのって何かわけがあるのかい? 強くするなら、大人の体型にすればいい気がしてね」
「ああ、そのことか」
 仁はチェックをしていた手を止め、サキとエルザに向き直った。
「礼子の容姿は先代が決めたものなんだ。どうしてこの姿にしたのかはわからない。でも、礼子は先代をお母さまと呼び、俺を父と呼んでくれている。俺は先代の意志を尊重したいんだ」
 そう言ってから更に、
「……何言ってんだ、ってのはわかってるよ。上手く言えないけど、そういうことなんだ。中身は俺の勝手でもう別物になってしまった。でも容姿だけは変えたくない。独善だというなら言われてもいい。おかしかったら笑ってくれ」
 と言って、今度は2人に背を向けて椅子に腰を下ろした。
「……」
 少しの静寂の後、エルザが静かに近寄り、仁の首の後ろからそっと腕を回した。
「……何もおかしくない。ジン兄の優しさ、それだけ」
「……うん、そうだね。ジン、おかしなことを聞いて悪かったよ」

*   *   *

「よし、礼子『起きろ』」
「はい、お父さま」
 目が開き、礼子が起き上がり……転んだ。
「あっ」
 床に手を突いた礼子は、硬いチャート製の床に穴を穿ってしまった。
「も、申し訳……」
 慌てて起き上がろうとするが、今度は仰向けに仰け反り、そのままひっくり返る。後頭部がぶつかった床にはまたしてもヒビが。
「礼子、落ち着け」
 仁が宥める。
「お、お父さま、力が……制御しきれません」
「やはりな……。今回使った素材はまったく未知の物だ。だから礼子、そっと、そっと起き上がれ。そうだな、0.1パーセントで、だ」
「は、はい」
 今の状態で仁をはじめとした人間に触れるのは非常に危険である。礼子もそれは理解した。
 仁に言われたとおり、出力を極限まで下げ、ゆっくりと起き上がる礼子。
「よし、大丈夫だな。……礼子、少しその身体に慣れるまで時間が必要かもしれない。今までの3倍くらいの性能が出ている可能性がある」
「3倍……ですか?」
 ここで、サキが黙っていられなくなった。
「ジ、ジン! 3倍? どこからその数字が出てくるんだい?」
 それはエルザも同じ思いだったようだ。
「ん。……数割くらいなら理解できる。でも3倍……文字通り桁違い。それはなぜ?」
「ああ、そうだな」
 仁は頷き、説明を始めた。礼子は取りあえず椅子に座らせておく。
「まず、エルザ。礼子から魔力を感じられるか?」
「え?」
 突然の仁の言葉に面食らったエルザだったが、すぐに言われたとおりに魔力を感知しようと感覚を研ぎ澄まし……。
「……全然、感じられない」
「だろう? 古代(エンシェント)(ドラゴン)の革は、魔力をほぼ完璧に封じ込めているんだ。それはつまり魔力素(マナ)の運用効率がいいということ」
 ここでいう魔力とは、魔導士が持つ精神力と同質のもの。礼子の制御核(コントロールコア)が発生している精神波と言い替えてもいい。
 波動であるがゆえに波長、波高、波形がある。そして礼子のそれは、製作者である仁のものと同質である、と仁は説明する。
 これらは、エルザたちに説明すると共に、礼子にも教えているのだ。
「その魔力を使って、筋肉を動かしたり、魔法を使ったりするわけだ。その魔力が外に漏れないと言うことは、100パーセントの効率で運用されているということになる」
 実際には目や口などの開口部があるし、この世の中に完璧という言葉はあっても事実はない、などと、仁らしい理屈も飛び出しては来たが、エルザもサキも仁の言いたいことは理解した。
「でも、それだけで3倍になるものなのかい?」
「ああ。古代(エンシェント)(ドラゴン)の革から作った筋肉というのはそれだけ優秀だった。全部を置き換えたら10倍くらいになったかもしれない」
「怖ろしいものだね」
 700672号はとんでもない素材を紹介してくれたものである。
「まあ本当の全力は、魔族領のような自由魔力素(エーテル)の濃い土地でないと、数十分しかできないだろうけどな」
「……それでも数十分かい……いったいジンは誰を相手にしようとしているんだかね」
 サキは呆れ顔だ。
「ああ。俺は、礼子には壊れて欲しくないし、常に最高の自動人形(オートマタ)であって欲しいからな。誰が相手であっても負けて欲しくないんだ」
「……よくわかった。ちょっと、レーコちゃんが、羨ましい」
 黙って聞いていたエルザも、少しだけ寂しそうに呟き、頷いたのである。
 そして当の礼子は、仁にそれほど思われていると知り、感激していた。

*   *   *

 それから半日掛け、礼子はようやく身体の制御を取り戻した。
 このあたりは、かつてアアルが初めて起動したときに少し似ている。アアルの場合は、粘土を捏ねたりさせて制御系の整合性を取ったのである。
「お父さま、もう大丈夫です」
 仁は礼子に『折り紙』をさせていた。
 そして今、礼子は見事に折り鶴を折り上げたところである。
 ジョン・ディニーが報告してきた和紙の製法を用いて蓬莱島で作った折り紙である。
「ジン兄、今度私にも教えて」
「うんうん、ボクにも教えて欲しいねえ!」
 エルザとサキにも折り紙は好評だった。
 とはいえ、仁としても、レパートリーはそれほど多くない。
 正方形の紙で作る折り鶴、奴さん、かぶと、帆掛け船、風船、それに箱。
 長方形の紙で作る紙鉄砲に飛行機。
「今度、ハンナにも教えてやろう……」
 と考える仁であった。

 その日の昼食、夕食は礼子が作った。これも制御系の慣らし、その一環であるとのことだ。
「うん、美味しいよ、礼子」
「レーコちゃん、上手」
「ほんとに美味しいね」
 仁のみならず、サキやエルザも絶賛する出来。もう礼子の動作は問題がなくなったようである。
「これでまた、思う存分、お父さまのお役に立てます」
 嬉しそうに微笑む礼子であった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20150323 修正
(旧)仁に言われたとおり、出力を極限まで下げ、ゆっくりと起き上がる礼子。
(新)今の状態で仁をはじめとした人間に触れるのは非常に危険である。礼子もそれは理解した。
 仁に言われたとおり、出力を極限まで下げ、ゆっくりと起き上がる礼子。

 力を制御できていない礼子に触れられたらえらいことになりそうですので。
+注意+
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