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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

22 新たな展開篇

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22-06 コンロン2出動

「救援要請……じゃと?」
 船室から降りてきたリースヒェン王女が聞きとがめた。
「一体何があったというのじゃ?」
 伝令の騎士は一瞬ためらったものの、王女に聞かれてはいけない内容でもないため、その場で報告することにした。
「は、旧レナード王国、ソルドレイク遺跡で、巨大な蟻のような魔物が大発生、居合わせたセルロア王国辺境兵団共々、エゲレア王国第3騎士隊が襲われているとのことです」
「蟻の魔物? ……地下から出てきたのか……」
 仁としては、国同士の諍いに介入するつもりはない。だが、魔物の発生となれば話は別だ。
「ジン、頼んでも……よいのか? 第3騎士隊の隊長、ポウルはまんざら知らない仲ではない。エゲレア王国に行った時にはいつも護衛してくれている男なのじゃ」
 リースヒェン王女にも懇願されては尚更だ。
「わかりました。少なくとも、今回は」
 そうそういつもいいように使われたくはない、という思いを言外に込めて、仁は承知した。
「礼子、エルザ、行くぞ」
「はい、お父さま」
「ん」
 リースヒェン王女は付いて行きたそうな顔をしたが、さすがにそれは許されぬこと。
「ジン、頼んだ!」
 ちぎれるほどに手を振るリースに手を振り返し、仁は船室に乗り込んだ。
 そして一気に上昇する『コンロン2』。
 機首を南東に向け、加速。その速度は速く、すぐにリースヒェン王女の魔眼でも見えなくなった。

「老君、話は聞いていたな? 問題の場所はわかるか?」
 まず最初に仁がしたことは、老君への確認である。
『はい、御主人様(マイロード)魔力探知機(マギレーダー)で見ますと、旧レナード王国の一部に、魔力素(マナ)の突出している場所があり、ソルドレイク遺跡と一致します』
「わかった。そうすると……」
 ソルドレイク遺跡は、今仁がいるクライン王国の首都アルバンからは200キロ以上離れている。『コンロン2』の最高速度でも1時間以上かかる計算だ。
「……あれを使うか」
 あれとは700672号から貰った『転送装置』である。マーカーは蓬莱島。
「はい、お父さま。転送装置、起動します」

 文字通り、一瞬で仁たちは蓬莱島研究所前庭にいた。誤差10センチ程度、恐ろしい程の正確さだ。さすが700672号謹製である。
「老君、改めて転送機でソルドレイク遺跡へ送ってくれ。……あ、その前に荷物を増やしておこう」
『コンロン2』には、際だった武装が無い。
 仁は、蟻のような魔物、ということを聞き、光束(レーザー)ガン魔力砲(マギカノン)超高速振動剣バイブレーションソード、プラズマソードを積み込んだ。
「よし、頼む」
 仁、エルザ、礼子を乗せた『コンロン2』は再度転送された。
 次に出現したのはソルドレイク遺跡近くの空中である。
 礼子はすぐさま反応し、機首を遺跡へと向けた。
『コンロン2』は数分でソルドレイク遺跡に到着。
「お父さま、あそこです!」
 仁たちの眼下には阿鼻叫喚の惨状が広がっていた。

*   *   *

「ゴーレム! 防げ!」
 自慢の戦闘用ゴーレムに命令を下すトリスト・クラロート。だが、次の瞬間、その目は驚愕に見開かれた。
超巨大蟻(ギガアント)』の吐き出す酸性液を浴びたゴーレムが、白煙を上げて溶け始めたのである。
「な、何だと!?」
 地球に棲息する蟻の仲間には、『蟻酸(ぎさん)』と呼ばれる有機酸を分泌するものがある。また、人間の胃液には塩酸が含まれている。
 人間の腸内細菌には酢酸やコハク酸を生成するものもある。
 魔物に分類される超巨大蟻(ギガアント)が、強力な酸を分泌しても不思議ではない。現に、巨大百足(ギガントピーダー)も強力な腐食性の体液を有していた。
「ぎゃあ……」
「痛えよう……」
 セルロア王国第2辺境兵団50名のほとんどは『超巨大蟻(ギガアント)』の吐き出す蟻酸らしい液体にやられていた。液体を掛けられ、弱った者から喰われていく。
「くそっ、こんなことで、我が辺境兵団が!」
 団長のトリストがいくら悔しがっても現状は変わらない。
 戦闘用ゴーレムは、数体の超巨大蟻(ギガアント)を叩き潰したものの、その倍以上の超巨大蟻(ギガアント)から腐食液を吹き付けられ、溶かされて動かなくなっていった。
 残っているのはトリストを守っている2体のみ。そして50名いた兵団も、今やトリストを残すのみとなっていた。
 そして、運び出した500体のゴーレムの半数以上も、超巨大蟻(ギガアント)に溶かされてスクラップとなっていたのである。
 辛うじて、まだ命令(コマンド)を書き込まれていなかったらしいゴーレムが3体動き出し、超巨大蟻(ギガアント)に向かって行ったが、衆寡敵せず、あっという間に破壊されてしまったのであった。

 対して、エゲレア王国第3騎士隊はまだ全員無事である。
 この差は主に騎馬にあった。辺境兵団の兵士は歩兵であり、馬に乗っているのは団長のトリストのみ。対してエゲレア王国側は全員が騎士である。
 超巨大蟻(ギガアント)の移動速度は馬とほとんど同じ程度だったため、辛くも逃げ続けることが出来ていたのだ。

「だが、このままではいつかやられる……」
 殿しんがりを進みながら、隊長のポウル・レイドは必死に考えていた。
 速度は同じくらいであるが、超巨大蟻(ギガアント)の方は疲れを見せる様子はない。一方、騎士隊の方は、今の速度を保てるのは15分が限度であろう。
「うむむ、せっかく500体もあったゴーレムが、あれではただの案山子に過ぎない……なんともったいないことか」
 馬で駆けつつ、振り返った魔法工作士(マギクラフトマン)互助会(ギルド)ブルーランド支部長のフィリップ・ティーフォは残念そうに呟いた。
 トリストがどんな命令(コマンド)を書き込んだのかわからないが、単に歩くことしかできないようなゴーレムでは、超巨大蟻(ギガアント)の敵ではない。
「あれが戦えたなら防げたものを……」
 その呟きはいかにも悔しそうであった。
 その時。フィリップの乗っていた馬が、何かにつまずいた。
「う、うわあああ!」
 投げ出されるフィリップ。
「マスター!」
 同乗していたドーナも放り出されたが、すぐに立ち上がって、マスターであるフィリップに駆け寄った。
「うう……」
 フィリップは右足首と右手首をくじいており、すぐには立ち上がれない。
「私が」
 ドーナはフィリップを背負って歩き出した。乗っていた馬はとうに走り去っている。
「フィリップ殿!」
 落馬したことで、殿しんがりのポウルにも追い抜かれ、フィリップとドーナが今や最後尾。
 その彼等に迫る黒い魔物。
 その距離、あと10メートル……。

*   *   *

「酷いな……」
「……」
 仁とエルザは眼下の惨状に絶句した。
 1000を超えるかと思われる数の超巨大蟻(ギガアント)が蠢いていた。
 50名ほどの兵士が倒れており、幾人かは超巨大蟻(ギガアント)に喰われている。
 500体あったゴーレムも、既に過半数が溶かされ、中には原形を留めないものも。
超巨大蟻(ギガアント)、か。強力な腐食液らしいな」
「ん。……おそらく、地中に巣を作るため、あの液で岩を溶かす?」
 エルザが推測を述べる。おそらくそれは正解だろう、と仁は思った。
『エルザさんの推測は当たっていると思います』
 老君もその説を支持する。
『かつてイナド鉱山から出てきた『巨大百足(ギガントピーダー)』も、強力な腐食性の体液をもっていました。共通するのは地中に棲む生物であること。巨大になればなるほど、巣を作るためには、岩を溶かす強力な酸を必要とするのではないでしょうか』
 と老君は根拠を説明した。
「それに違いないな。とすると……あの超巨大蟻(ギガアント)巨大百足(ギガントピーダー)の大きさの差を考えると、超巨大蟻(ギガアント)の方が弱いのだろうな」
 それはゴーレムの溶け方でもわかる。巨大百足(ギガントピーダー)の時は、アダマンタイトさえ僅かであるが溶かされたのだ。
 動きも、超巨大蟻(ギガアント)の方がのろい。
 とはいえ、ぐずぐずしていると、必死に逃げるエゲレア王国第3騎士隊に追いついてしまう可能性がある。
 また、何十匹かは別方向に散り始めている。巣でも作られたら厄介だ。
「礼子、頼めるか?」
「はい、お父さま、お任せください」
「あの腐食液の効果は未知数だ。物理障壁(ソリッドバリア)を張り、中から魔法もしくは光束(レーザー)ガンで攻撃するんだ」
「はい、わかりました」
 念のためにプラズマソードを持ち、礼子は『コンロン2』から飛び降りた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20150306 修正
(誤)老君もその説を指示する
(正)老君もその説を支持する

(旧)魔力探知機(マギレーダー)で見ますに、旧レナード王国の1部に
(新)魔力探知機(マギレーダー)で見ますと、旧レナード王国の一部に

 20160124 修正
(誤)『超巨大蟻(ギガアント)』の吐き出す酸性液にを浴びたゴーレムが
(正)『超巨大蟻(ギガアント)』の吐き出す酸性液を浴びたゴーレムが
+注意+
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