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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

21 海運と遺跡篇

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21-39 フリッツの活躍

 注:かなり血を見ます
 岩狼ロックウルフの特徴は素早さと群れによる連係である。
 このような相手に、『ゴリアス』はあまり有効ではなかった。
「奴等は火を恐れる! 火属性魔法を使える者は?」
「は、はい、私が」
「私も使えます!」
「任せろ」
 女性騎士の1人とエゲレア王国調査隊隊長のベルナルド、そして同じくエゲレア王国調査隊の1人が手を上げた。
「よし、3人は同じ方向へ、同時に『火の玉(ファイアボール)』でも放ってくれ。そうだな、あの黒っぽい毛並みの奴を狙え」
「了解」
 ここは、こうした戦いを経験しているらしいフリッツに任せるのが賢明だと両隊長は判断したようだ。
「放て!」
 3つの火の玉が飛んでいく。着弾する寸前で、その岩狼ロックウルフは身を躱した。その瞬間に隙ができる。
「『風の刃(ウインドカッター)』!」
 その隙を狙って、フリッツが風属性の中級魔法を放った。3頭の岩狼ロックウルフに傷を負わせることができた。
「まだ浅い! もう一度だ!」
 同様の2段攻撃が行われ、更に3頭に傷を負わせることができた。これにより、群れは若干警戒の度を強める。
「落ち着け! 岩狼ロックウルフは1頭1頭は大した事はない。連携させないようにすれば勝てる!」
 フリッツが大声で鼓舞した。腰の引けていた隊員たちも気を取り直す。
 そう。岩狼ロックウルフは体長1メートルそこそこ、大型犬くらい。武器は牙。
 毛皮はそれほど丈夫ではなく、普通の剣で斬りつけることができる。
 危険なのは群れを作り、連係攻撃を仕掛けてくる点だ。
「おそらくさっきの黒い奴がリーダーだろう」
 その岩狼ロックウルフはフリッツの『風の刃(ウインドカッター)』により、背中を切られ、後ろに下がっていた。
「ばらばらに跳びかかって来たら、落ち着いて剣を振るえ。特に空中にあるうちは方向転換できん、狙い目だ!」
 恐怖に耐え、空中にあるうちに斬り付ければ勝てる、とフリッツは全員に聞こえるよう、大声で言った。
 誰にでもできることではないが、この場ではそうでも言って少しでも落ち着かせることが重要だと考えたのである。
「こうしていてもらちがあかない。奴等を牽制するぞ。いいか……『風の弾丸(ウインドバレット)』!」
 不可視の風の弾丸が岩狼ロックウルフを襲う。5頭が浮き足立ち、フリッツへと向かってきた。
「ふん!」
 だがその足並みはばらばら、フリッツは落ち着いて対処する。
 大きく踏み出して先頭の頭を真二つに唐竹割り。返す刃で、後ろに続いていた2頭の脚を斬り払った。
 前脚を失ってつんのめる2頭を避けるため、後続の2頭が僅かに速度を落とす。
 それを狙って横薙ぎ一閃。
 鼻面を切り裂かれた2頭はぎゃいん、というような悲鳴を上げて仰け反った。その無防備な喉笛を狙った2度目の横薙ぎ。
「おお……!」
 一瞬で5頭を無力化したフリッツの手並みを見た隊員たちから感嘆の声が漏れた。
 フリッツは即座に後退し、元の位置に戻る。
 3頭を屠り、2頭を無力化したフリッツだが、まだまだ油断はしていない。
「これからが気を付けなければいけない。まとまりが無くなった奴等は、逃げるか、ばらばらに襲ってくるか、二つに一つだ」
 その言葉通り、仲間を次々にやられた岩狼ロックウルフたちは、本能に任せ、襲いかかることにしたらしい。
「来るぞ! 背中は向けるな!」
 フリッツは一声叫ぶと、向かってきた岩狼ロックウルフを両断した。
「わかった!」
 グロリアも今、向かってきた岩狼ロックウルフを斬り伏せたところ。
 そして、乱戦となった。
 女性騎士2人とジェードを中に、円陣を組んでいたが、それに綻びができる。
「いやああ!」
 経験の少ない女性騎士が悲鳴を上げた。グロリアが振り返ると、岩狼ロックウルフの1頭にのし掛かられ、今しも喉に牙を突き立てられようとしていた。
「させん!」
 躊躇いもせずに、手の中のショートソードを投げ付けるグロリア。それは狙い過たず、女性騎士を襲おうとしていた岩狼ロックウルフの胴を貫いた。
「く……」
 しかし、グロリアの手には武器が無くなってしまう。
 そんな彼女を狙い、4頭の岩狼ロックウルフが跳びかかった。
「どあっ!」
 これまでか、と覚悟したグロリアを救ったのはフリッツだった。その巨躯を以て立ち塞がり、3頭までは斬って捨てたのだが、残る1頭が彼の左腕に喰らい付いたのである。
 だがフリッツは少しも怯まず、右手の剣で岩狼ロックウルフの首を切断した。
「フリッツ殿!」
「グロリア、無事か?」
「あ、ああ、すまない」
「礼は後だ。俺の剣を使え」
 フリッツが今振るっているのは馬上用のロングソード。ゆえに彼は腰のショートソードをグロリアに手渡した。
「かたじけない!」
 短い礼を言ったグロリアは、そのショートソードを抜き、向かってきた岩狼ロックウルフを斬り捨てた。そしてもう1頭。
 その間にフリッツは2頭を狩っていた。

 群れの3分の2を失った岩狼ロックウルフはさすがに敵わないと見たのだろう、ついに撤退していった。

「……」
「……助かった……」
 フリッツが倒した岩狼ロックウルフは13頭。グロリアは7頭。他の騎士たちも合わせて15頭を倒していた。
 まだ息のあった4頭にとどめを刺し、ようやく一同は一息ついた。
 だが。
「こいつらを始末しなければ、血の臭いでまた別の奴等が襲ってくるぞ」
 とのフリッツの言葉に一同、剣に付いた血を拭い、身体に浴びた血を洗い流していく。
 そしてフリッツは『ゴリアス』を使い、岩狼ロックウルフの死骸を、まだ埋め戻していなかった穴へと投げ込んでいった。
 岩狼ロックウルフの肉は臭くて食べることはできない。また、毛皮も利用価値が低い。今回は廃棄するしかなかった。

 何頭かの死骸は、ちょうど中心部、つまり容器の中身を廃棄した穴へと吸い込まれるように落ちる。
 それらはあっという間に溶け、跡形もなくなってしまうのであった。
「ほう、これはすごい」
 はたで見ていたジェード・ネフロイは興味深そうにその様子を眺めていた。
 39頭の死骸全部を始末したフリッツは、ようやく力を抜いた。そこへグロリアが駆け寄った。
「フリッツ殿、ショートソードをお返しする。おかげで助かった」
 フリッツは笑ってそれを受け取った。
「ああ、無事で何より」
 だがフリッツの左腕からは血が流れている。岩狼ロックウルフの牙にやられた怪我だ。
「フリッツ殿、手当を!」
「ああ、頼むとするか」
 他にも傷を負った隊員がいたので、治癒担当のティファニーが治療を施した。
「ありがとう」
 フリッツが微笑みかけると、ティファニーは頬を赤く染め、
「いえ……」
 と言ってそそくさと引っ込んだのである。

 ようやく落ち着いた一行は、若干の残飯や生ゴミなども穴へと廃棄した。土を掛けて埋め戻していく。
 『ゴリアス』がほとんどを行ったので1時間も掛からずに終了した。
「よし、これで後腐れ無く出発できるな」

 ここからは、エゲレア王国の調査隊は北へ。そしてクライン王国の調査隊は南へ向かうことになる。
「貴殿たちのおかげでこの先は楽だろう。感謝する」
 エゲレア王国調査隊隊長、ブルーノは敬礼を以て感謝の意を表した。
「何の、ショウロ皇国の『ゴリアス』のおかげである」
 答礼をしつつ、クライン王国の調査隊隊長、ベルナルドは答えた。
 フリッツとこれでお別れとなり、女性騎士たちは寂しそうな顔。

 だが、そんな彼等を青ざめさせるような出来事が起こる。

 埋め戻した穴の土がいきなり吹き上がったのだ。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20150223 修正
(旧)フリッツとこれで別れるとなり
(新)フリッツとこれでお別れとなり

(誤)だがフリッツは少しも怯まず、右手の剣て
(正)だがフリッツは少しも怯まず、右手の剣で

また、「連携」と「連係」が混在してましたので「連係」に統一しました。
+注意+
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