挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

03 港町ポトロック篇

71/1408

03-10 凶魔海蛇

 一方、貸しドックに残った礼子とラインハルト。2人とも、海中から異様な魔力を感じ、警戒していた。
 そしてそいつは現れる。
「うわあ!」
「な、なんだ!?」
 驚く声が響く。
 港の海面から首を突き出したのは、巨大な海蛇であった。ものすごい速さでこちらへ向かってくる。
凶魔海蛇(デス・シーサーペント)……」
 誰かがそう呟いた。それは正に、『凶魔海蛇(デス・シーサーペント)』と呼ばれる巨大海蛇。その体長は優に10メートルを超えていた。
「ローレライ!」
はい(ヤー)創作者様(ミア・シェプフェル)
 ラインハルトのゴーレムが海中から現れた。
「あの凶魔海蛇(デス・シーサーペント)を倒すぞ!」
はい(ヤー)
 そんなラインハルトに向かって礼子は、
「お待ち下さい、ラインハルトさん」
「ん? どうした、レーコ君」
「あの魔物をご存じなのですか?」
「ああ。話に聞いただけだが。魔力を持った巨大な海蛇だ。当然、水属性の魔法はまず通らない」
 そしてラインハルトは右手に魔力を貯めていく。
「効果のあるのは……」
 その時、ローレライが凶魔海蛇(デス・シーサーペント)に体当たりした。それで凶魔海蛇(デス・シーサーペント)の速度が大分落ちる。
 だが、怒った凶魔海蛇(デス・シーサーペント)は、ローレライを噛み砕こうと大きな口を開けた。
「火魔法だ! ……炎の槍(フレイムランス)!」
 その開いた口目掛け、ラインハルトの魔法が発射された。その速度は速く、狙い過たず凶魔海蛇(デス・シーサーペント)の開いた口を直撃した。
 ギャアアア、と叫び、のたうち回る凶魔海蛇(デス・シーサーペント)。ローレライは既に退避している。
「本来ならもう1発お見舞いしたいんだが……あの暴れようじゃ無理かな?」
 港近くでのたうち回る凶魔海蛇(デス・シーサーペント)により、大波が打ち寄せている。小さなボートは木の葉のように揺すぶられ、転覆した物もあった。
 仁とマルシアのシグナス(白鳥)は双胴船のため、非常に安定が良く、単身操るアローの技量もあって、今のところ心配はいらない。
 それを確認した礼子は、
「ラインハルトさん、私が少しの間、あの凶魔海蛇(デス・シーサーペント)を止めます。その間にさっきの魔法を撃ち込んで下さい」
 と言うと、ラインハルトの返事も待たずに海へ飛び込んだ。
「何だ? あの娘っ子は?」
「無茶だ! いったい何を考えているんだ?」
 見ている者達からそんな声が上がった。
 ラインハルトは、古代遺物(アーティファクト)級の自動人形(オートマタ)である礼子の言葉を信じ、右手に魔力を貯めていった。
 水着ではないので少々泳ぎづらかったが、短時間で凶魔海蛇(デス・シーサーペント)の所まで泳ぎ着いた礼子は、まず試しにその胴体を殴りつけてみることにした。10パーセントの出力で。
 鉄の塊を殴りつけたような音がした。
 礼子を信じていたとは言え、さすがのラインハルトも己の目を疑う。礼子が振るったアッパーの一撃が凶魔海蛇(デス・シーサーペント)を数メートル吹き飛ばしたのである。
 胴体の太いところで直径50センチはある凶魔海蛇(デス・シーサーペント)。それが半ば海面から飛び上がらんばかりに浮き上がった。その反動で礼子は海中に沈む。
「さすがに硬いですね」
 海中に沈んだ礼子は、そのまま沈むに任せ、1度海底に足を付ける。そうして今度は海底を思い切り蹴り、その勢いを以て凶魔海蛇(デス・シーサーペント)目掛けて突っ込んでいった。
 暴れていた凶魔海蛇(デス・シーサーペント)も、礼子の一撃目でやや動きが鈍くなっていた。そこへ、更に強烈な二撃目が叩き込まれる。今度は20パーセントの出力でだ。
 真下からの打撃により、今度こそ凶魔海蛇(デス・シーサーペント)は宙に飛ばされた。経験したことのない衝撃を受け、半ば失神状態。その開いたままの口目掛け、
炎の槍(フレイムランス)!」
 ラインハルトの魔法が炸裂した。1度目よりも溜の多かったそれは、凶魔海蛇(デス・シーサーペント)の頭を吹き飛ばし、海面は血で真っ赤に染まる。そして頭のない凶魔海蛇(デス・シーサーペント)の体はそのまま波間に漂っていた。
 礼子は反動で再度海中に潜り、その様子を眺めていた。そして血の流れていない所まで、海中を泳ぎ、岸辺近くで海面へと上がった。
「礼子!」
 ちょうどそこに、警備隊隊長に連れられた仁がやって来たところ。
「お父さま」
 ずぶ濡れの礼子だが、身体を一振りすると水気は綺麗に飛び散ってしまう。特殊レア素材は伊達ではない。
 一方、警備隊隊長は凶魔海蛇(デス・シーサーペント)と、それを殴りつけた礼子を見て呆然としていた。そして手の中に忍ばせていた何かを慌ててポケットにしまう。
「ジン、それにレーコ嬢」
 そこへラインハルトがやってきて仁の肩を叩き、
「おお、ジン! 君のレーコ嬢はすごいな! まさかあの凶魔海蛇(デス・シーサーペント)を吹き飛ばすほどとは思わなかったよ! これは、今度の競技が終わったら、我が皇国に招待しなくちゃな!」
 と相変わらずの調子でまくしたてたものだから、それを聞いた警備隊隊長の背中に冷や汗が流れた。
(まさか……こいつが……ショウロ皇国に招待されるほどの大物だなんて……言われたとおりにしなくて良かった。どうせ船は無事だったんだし、もう結果は変わらないからな)
 仁はそんな隊長の心中に気づく筈もなく、アローを呼んだ。既に港の中は波が収まってきており、双胴船シグナス(白鳥)はすぐに桟橋へ横付けされる。
「オヨビデスカ」
「うん、アロー、ちょっと聞くが、火事の前、怪しい奴を見なかったか?」
「ハイ、ソウイエバ、カジノマエ、ダレカガ、アカイイシヲ、ナゲコンデイキマシタ」
「赤い石?」
「火属性の魔結晶(マギクリスタル)かもな。それなら、時間をおいて発火させることが出来る」
 隣で聞いていたラインハルトがそう言った。仁も同じ意見である。
「な、なるほど。そうすると、その魔結晶(マギクリスタル)を投げ込んだ男もしくは女が放火犯ということだな」
 幾分びくついたような態度で隊長が言った。
「そうなりますね」
「わ、わかった。我々はその犯人を捜すこととしよう。御苦労だった。マルシアも解放する」
 そう言って隊長は、現場の者達に凶魔海蛇(デス・シーサーペント)の死骸を片付けるよう命令すると、そそくさと帰って行ったのである。
「よくわからないが、あそこに浮かんでる魔物が襲ってきたのか?」
 仁がラインハルトに尋ねると、
「そうなんだ。で、レーコ嬢の力を借りて、僕が火魔法を叩き込んで倒したというわけさ」
「ふうん。ラインハルトは魔法も得意なんだな」
 感心したように仁がそう言うと、
「いやいや、こいつのおかげさ」
 そう言って、ミスリル銀で作られた小さな短杖(ワンド)を見せた。掌にすっぽり収まるくらいの大きさである。それを見た仁は、
「そうか! 魔法をあらかじめ込めてあるのか! これなら、魔力を送るだけで魔法を発動できるわけだ」
 それを聞いたラインハルトは仰天して、
「なんと! 一目見ただけで機能を察するとは! ジン、君はすごい! 本当に、我が国へ1度来てみてほしい!」
 そう言って仁の背中をばしばし叩いてきた。仁もその勢いに感じ、
「あ、ああ。機会があったら是非行ってみたいな」
 そう答えたのである。

*   *   *

 貸しドックのある区域にほど近い倉庫街で。
「申し訳ありません、失敗のようですな」
 がっしりした男が、その前に立つやや華奢な男に謝っている。
「それに凶魔海蛇(デス・シーサーペント)のせいでうやむやになってしまいましたし」
 凶魔海蛇(デス・シーサーペント)のせいで火事騒ぎが話題にも上らなくなってしまっていた。
「まさか、事前に海へ脱出するとは。しかし、運のいい奴め。まさかここへ凶魔海蛇(デス・シーサーペント)が来るとはな」
「まあいい、本番で叩き潰してやる」
 それだけの会話で、2人の男はその場を立ち去っていった。
 礼子が50パーセントも出せば、多分凶魔海蛇(デス・シーサーペント)の胴体を吹き飛ばすどころか貫けます。さすがに目立ちすぎるのでやりませんが。
 魔結晶(マギクリスタル)魔導式(マギフォーミュラ)を書き込めば、時限発火もできます。が、高価な魔結晶(マギクリスタル)、そんな使い方、普通はしません。普通は。
 そしてやはり何者かの放火だったようです。凶魔海蛇(デス・シーサーペント)は偶然だったようですが。そして警備隊隊長は多分仁をナイフか何かで刺すつもりででもあったらしいです。
 運がよかったですね。礼子を前にしてそんな素振り見せたら星になってたかも。
 お読みいただきありがとうございます。


 20130617 誤字修正
(誤)さっきの魔法を打ち込んで下さい
(正)さっきの魔法を撃ち込んで下さい

 20131205 誤字修正
(誤)待避
(正)退避
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ