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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

21 海運と遺跡篇

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21-18 カイナ村の新年

 予約投稿時に間違えて普通に投稿してしまいました。30秒ほどですが、ご覧になれた方はラッキー? だったということで。m(_ _)m
「うわーい、はやーい!」
「きゃあー」
「いっくぞー!」
 二堂城の広場に子供たちの歓声が響き渡っていた。
 年越しの宴会が響いている大人達を尻目に、新しい年を迎え、子供たちは張り切っている。
「ぷわっ!」
「つめたーい!」
「うわあ、せなかにはいった!」
 子供たちが何をしているかというと、そり遊びである。
 広場に雪を集めて作った、即席のゲレンデに、仁が用意した各種のそり
 1人用、2人用から、5人用まで。更に、色やデザインまで変えたものなど、子供たちは思い思いに好きなそりを選んで遊びに興じていた。
「あー、のどがかわいた」
「おなかすいたー」
 そして、喉が渇いたなら温かいお茶や適度に冷たいジュース。
 お腹が空いたなら、焼きアプルルやお汁粉などの軽食が用意されている。
 汗をかいたなら、二堂城の地下温泉で汗を流している間に、ゴーレムメイド達が服を洗濯してくれる。
 ……などと、至れり尽くせりの遊び場なのである。
「おにーちゃーん!」
 そしてハンナも、仁がプレゼントした赤いジャンパーを着て遊んでいた。
「おにーちゃんもおいでよ!」
「よーし、行くか!」
「エルザおねーちゃんとレーコおねーちゃんも!」
「はい、ハンナちゃん」
「ん、行こう」
 子供5人用という大型のそりに仁たち4人が乗り込んだ。
 ゲレンデ上の高さは20メートル、そこから平均斜度30度という、かなりの傾斜でスロープが付いていた。
「行くぞ!」
 ハンナ、仁、エルザ、礼子の順で腰を下ろしたそり
 形はスノーボードに似ており、柔軟性のあるGS(グランドスパイダー)(樹脂)で出来ている。幅は30センチほど、足を浮かせばそりは滑り出す。
 足を雪面に付ければブレーキになるが、4人ともそんなことはしない。
「きゃー、はやーい!」
「うぉ、思ったよりスピードが出るなあ」
 GS(グランドスパイダー)(樹脂)は、汚れがつきにくい。つまり、摩擦係数が小さいので、雪の上では良く滑る。
 50メートルほどのスロープを滑り降りたそりは、勢いのままに30メートルほど滑って止まった。
「おにーちゃん、もういちど!」
「よーし」
 そりを担いで斜面の裏側に作られた階段を登る仁。最近は、身体強化せずとも、大分体力も付いてきた。
(礼子、ほんの少し、力場発生器フォースジェネレーターで後押ししてくれ)
(はい、お父さま!)
 そりを雪面に置き、座る前に、仁は礼子に指示を出す。
「よーし、行くぞ!」
 今度は、先程の3割増しくらいの速度が出た。
「うわあ、はやーい!」
 はしゃぐハンナ。
 今度は滑り降りた後、60メートルほど滑って……。
「うお、危なっ!」
 エルメ川に落ちる寸前で止まった。もちろん、危険を感じた礼子が力場発生器フォースジェネレーターで止めたのだ。
 もし川に落ちたら、真冬の最中、ただでは済みそうもない。
「危なかったな……」
「ん」
「でも、おもしろかったね!」
 胸を撫で下ろした仁とエルザであるが、ハンナはけろりとしていた。

*   *   *

 それから、集まっていた子供たちを誘い、雪合戦が繰り広げられることに。
 仁が教えた『グーパー』で組み分けをした。因みに、仁の掛け声は『グーパージャン』だ。
 仁はといえば、エルザ、ハンナとは敵同士になった。礼子はさすがに参加させるわけにはいかず、監視役をしてもらう。
 ルールは、それぞれの陣地に置かれた旗(仁が急遽作った)を先に奪取した方が勝ち。
 ゴーレムメイドがそれぞれの組に10体ずつ付き、雪玉を作ってくれる。危険がないよう、堅すぎず脆すぎず、大きさも子供の手に合う大きさ。
 これをぶつけ合うのだ。
 手袋は全員分、仁が支給した。魔族領から輸入した『岩氷ウサギ』の革でできたもので、内部に毛が来るようになっていて温かい。
「では、始め!」
 礼子の掛け声で、子供たちは一斉に雪玉を投げ始めた。
「ぶわっ!」
「冷てえ!」
 仁の組にいたやんちゃなクルトが旗を狙って飛び出した。当然、雪玉が集中する。
「くそっ! 負けるもんか!」
 とはいえ、10人を超える子供たちからの集中砲火を喰らってはたまらない。
「おぼえてろよー!」
 戦術的撤退をする事に決めたようだ。
「はあ、はあ……あー、冷てえ」
 陣地に戻ってきて身体に付いた雪を振るい落とすクルト。小犬のようである。
「おっ! マリオが来たぞ! みんな、狙え!」
 ロックの子、マリオは、ジグザグに動いて狙いを付けにくくしつつ、近付いて来た。だが。
「残念でした」
 いくら目くらましを工夫しようとも、狙いは旗であるから、近付けば近付くほど動きの範囲は狭くなるわけだ。
「ぷあっ! くっそー、また来るぞ!」
 マリオも撤退していった。
「今度は……え、エルザ!?」
 どういう風の吹き回しか、エルザは真っ直ぐに突っ込んでくる。当然標的になるわけだ。子供より大きい分、狙いも付けやすい。
「……きゃっ!」
「それー! ねらえねらえ!」
「……ぷ、ぷっ……」
 あっという間にエルザの髪に、顔に、胸に、お腹に、手に、足に、雪玉が投げ付けられる。
 たちまち、エルザの身体は真っ白い雪まみれになった。
「あはははー!」
 子供たちは容赦がない。足が止まったエルザに、さらに追撃が行われる。雪だるまのようになってしまうエルザ。
 さすがに手が止まった仁。その目の端に赤いものが写った。
「あっ、ハンナ!」
 エルザは囮だった。そちらに攻撃を集中させておいて、大回りしたハンナが旗を狙って駆け寄ってきたのだ。
 仁の陣営は、エルザを集中攻撃するのに気を取られ、反応が遅れた。
 真っ先に気が付いた仁は、急いで雪玉を投げ付けたが、簡単に躱されてしまう。
「あっ、ハンナちゃんが!」
「いけねえ、こっちだ!」
 子供たちが気が付いた時には、旗まで5メートルのところまで迫っていたハンナ。
 そのハンナに雪玉が集中する……が、ハンナの足は止まらない。
 いや、さすがに少し速度は鈍ったものの、最後の1メートルを飛び込むようにして滑り込んだハンナは、見事に仁陣営の旗を奪取したのである。
「やったー!」
「やられたー!」
 勝敗は決した。仁陣営の負けである。
「……勝った」
 雪だるまになったエルザがぼそりと言った。

*   *   *

「……生き返る」
 雪合戦の後、二堂城地下温泉で全員温まることになった。
 背中や懐にまで雪が入り込んだエルザは、お湯に浸かって、ほっと小さく溜め息をついた。
「おねーちゃん、あったかいねー!」
 ハンナが近寄ってきた。
「うん、気持ちいいね」
「エルザせんせーって肌しろいなー」
 今でも時々勉強を教えているエルザは、一部の子供たちからは『先生』と呼ばれていた。
 カイナ村の子供たちは、外で遊んだり、畑仕事を手伝ったりする関係か、エルザに比べるとやや小麦色に近い。
 エルザの肌は抜けるように白いので、女の子達からは憧れの的であるようだ。
「ねーねーせんせー、もうすぐあたし、おねーさんになるんだって!」
「そう、楽しみ、ね」
「うん!」
 仁が来てからの環境改善によるベビーラッシュは今年も続くようだ。
「赤ちゃん……」
 エルザはふと自分のお腹を撫でてみる。
「……」
 もちろん、膨らんでいるわけもなく。
「いつか、私も」
 そしてまだ見ぬ、未来の子供に思いを馳せ、気が付いて真っ赤になるエルザだったが、お湯の中なので誰もそんな彼女の変化には気付かなかったのである。
 エルザって、どうして子供が出来るのか知らないかもしれません(ぇー

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160523 修正
(旧)「エルザおねーちゃんとれーこおねーちゃんも!」
(新)「エルザおねーちゃんとレーコおねーちゃんも!」
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