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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

21 海運と遺跡篇

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21-01 蓬莱島強化案

 話がもう少しすすみましたら、章の副題も追加します。
御主人様(マイロード)、大型船の普及を考えますと、この蓬莱島と崑崙島も強化する必要があると考えます』
 12月17日のことである。老君は、将来のことを見据えた方策を仁に提案してきた。
「うん、それはそうかもしれないな」
 今はまだだが、船が遠洋へと進出してきた場合、崑崙島や蓬莱島が発見される可能性がある。
 特に崑崙島が危ない。
『それから扶桑島ですね』
 かつて、教育機関を作ろうかと考え、中途半端に開発しかけたのが扶桑島だ。
 旧レナード王国からも近く、大陸東岸沿いに船が航行してくれば、見つかる可能性が非常に高い。
「うーん、とりあえず扶桑島は放棄しよう」
『それが賢明ですね』
 今現在、扶桑島に駐在しているスタッフはいない。このまま放置することにした。
 この時点で仁には、近未来の展望があったのだが、あまりにも不確定要素が多すぎるので、まだ誰にも話してはいない。

「幻影結界の実用化はどうだ?」
 かつて旧レナード王国の上空に張られていた、3Dプロジェクション的な結界である。光学的、音響的に誤魔化すことができるというもの。
 つまり、目視だけでなく、ソナーやレーダーさえ欺けるのだ。
『あと1歩……いえ、2歩でしょうか。作り出す幻影のデータが膨大でして』
 幻影を作り出すためにはそれなりにデータが必要である。いかに老君といえど、島全体を覆うほど大きな幻影のデータを作り出すのは容易なことではなかった。
「うーん、それじゃあ、バリアの方は?」
『そちらは大丈夫です。既に障壁発生器(バリアプロジェクター)は配置済みですから』
「それならまずは安心か」
「お父さま、潜水艦の建造も考えるといいかもしれません」
 礼子の提案。
「潜水艦か……。そうだな、必要だな」
 海底探検とか、ちょっと考える仁。
「ああ、そうか。海へ出るとき、潜水艦なら目立たないんだ!」
 何かスイッチが入ってしまったようだ。仁は、考えに耽り始めた。

「ジンに……ジン、さん、お昼ご飯」
 そこへ、エルザがやって来た。まだ時々ジン兄、と言いそうになるのはご愛敬である。
「……あ、ああ、わかった。今行く」
「何か考えてるの?」
「わかるか?」
「ん。その顔は、食事なんてそっちのけで何か作りたい、という顔」
 見抜かれていた。仁は、食堂への道すがら、老君と検討していた内容をエルザに説明した。
「蓬莱島の強化は必要と思う。潜水艦は……面白そう」
「エルザもそう思うか?」
 我が意を得たり、と仁の声のトーンが上がった。
「ん。でも今はお昼ご飯」
「……わかったよ」

 研究所内の食堂に、エルザの作った昼食が載っていた。
 天ぷらそばである。そばに載っているのは小エビとマルネギ(タマネギ)のかき揚げ、それにエビ天。
「天ぷらの衣をさくっと揚げるのは、難しい」
 ペリドリーダーに教えてもらったけど今一、というエルザ。
「うーん、でも、どうせめんつゆを吸うからな。……いただきます」
 猫舌なので少しずつ啜る仁。
「……どう?」
「うん、美味い。つゆもちょうどいい」
「良かった」
 仁の感想を聞いてから、エルザも食べ始めた。彼女もお嬢様育ちなのでそれなりに猫舌である。
 しばらくふうふうと息を吹きかけ吹きかけ、そばを啜る2人であった。
「ごちそうさま」
「こちらをどうぞ、ご主人様」
 そこに出てきたのはそば茶だ。
 ソバの実を焙煎加工したもので、こちらはペリドリーダー苦心の作である。
「おお、美味い」
 昔飲んだ味と同じだ、と仁は相好を崩した。
「……でな、潜水艦というのは、水圧が掛かるから、球形がいいんだが……いかにも格好悪いよなあ……宇宙船じゃあるまいし」
 食べ終わったと思ったら、潜水艦のことを考え始める仁である。
「ん、そう思う」
 エルザも仁の性格は把握しているので普通に相槌を打っている。
「それに、海面に浮かんだときは普通の船に見えた方がいいと思うんだ」
「ん、それには賛成。……まあ、ちょっと特殊な船に見えるのは仕方ない、と思うけど」
「そうだよな」
 そこで仁とエルザは、後片付けをゴーレムメイドに任せ、工房へ戻った。
 仁はホワイトボードを引っ張り出し、そこにラフスケッチを書いてみる。
「俺の知っている潜水艦はいわばこういう棒状なんだが、それは機動性に劣りそうでいやだ。だから水滴型にしたい」
「ん、それならここはこう、したら?」
「ああ、いいかもな。……礼子、お前の意見は?」
 一歩引いて、少し寂しそうな顔の礼子に仁が声を掛けた。途端に礼子は嬉しそうな顔になる。
「そうですね、力場発生器フォースジェネレーターを取り付けるんですよね? でしたらどんな形状でも大丈夫だと思います」
「それもそうか。高速航行の時は水避け結界張るしな」
 先日開発した魚雷と同様、スーパーキャビテーションを利用しようというのである。
「それじゃあここはこうして……」
「定員は6名から8名くらい?」
「うん、それでいいだろう。動力は力場発生器フォースジェネレーター水魔法推進器(アクアスラスター)の両方を使おう」
「お父さま、海中にはどんな魔物がいるかわかりません。強力な武器も搭載して下さい」
「わかった。ホーミング魚雷と、それから……」
 こうして、新しい蓬莱島の戦力、潜水艦の設計が進んでいったのである。

「よし、それじゃあ明日は1号機の製作に取りかかれるな」
「ん」
「はい、お父さま」
 今や仁は、礼子のみならず、エルザも加えての体制で新規製作に臨んでいるのだった。

*   *   *

「ごちそうさま」
 夕食は館で食べた。ソレイユとルーナが交代で用意してくれているのだ。片付けも彼女等がやってくれる。
 食事を済ませれば、あとはやっぱり。
「ジン……さん、お風呂は?」
「ああ、入る。……なあエルザ、その呼び方、何とかならないか?」
「……嫌?」
「嫌って言うか……なんか落ち着かなくてむずむずする」
 呼ばれ慣れていないため、違和感がありすぎるのである。
「でも、もうジン兄、って呼ぶのはおかしいし、ジン君、っていうのも余所余所しいし」
「だから呼び捨てでいいって言ったろ」
「でも、……ジン」
「ああ、それで……」
 だが、当のエルザが今度は拒否する。
「やっぱり駄目。呼び捨ては嫌」
「……困ったな」
 落としどころが無い。
「ダーリンとか、ハニーとか、あなた、とかいろいろあるじゃないですか」
「!!」
 礼子の発言。
 仁もエルザも、まさか礼子からそんな言葉が出てくるとは思わなかったので、飛び上がらんばかりに驚いた。
「そ、そんな恥ずかしいこと、言えない」
初心うぶですね……」
 礼子は、仁とエルザの邪魔をしなくなったと思ったら、時折からかうようなセリフを言うようになった。
(これも感情が育ってきた証拠なんだろうが……)
 喜ばしいことなのだが、なぜか素直にそう思えない仁であった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20150116 修正
(誤)沿岸沿いに船が航行してくれば
(正)大陸東岸沿いに船が航行してくれば

(誤)そこで仁はとエルザは
(正)そこで仁とエルザは
+注意+
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