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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

20 新造船と異民族篇

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20-07 計画発表

 11月22日、『シャーク』を完成させた仁は、一旦蓬莱島から、ショウロ皇国首都ロイザートにある屋敷へ戻ってきていた。
 そこには既にエルザが帰っていて、地下の転移門(ワープゲート)室で仁を出迎えたのである。
 そして、エルザの隣にもう1人。
「久しぶり、ジン」
「やあ、ラインハルト」
 ラインハルトはエルザと共にロイザートにやって来ていたのである。

「お帰りなさいませ、ジン様」
 バロウとベーレも仁を迎えた。
「ラインハルトも来ていたのか」
「うん、陛下から呼び出しがあってね」
「そうなのか。まあ、上でゆっくり話を聞こう」
 そうして一同は居間へと移動した。
 丸テーブルに着く3人。礼子とエドガーはそれぞれ仁とエルザの後ろに立った。
 ベーレはすぐさまお茶を淹れ、全員の前に置く。今日のお茶はほうじ茶であった。
「うん、美味しいな。うまく淹れてあるじゃないか」
 一口飲んで仁が褒めた。
 ほうじ茶は熱湯で淹れるのがセオリーである。そして仁は猫舌。
 であるから、仁の分は、湯飲みに入れてから少し冷まさねばならない。そのあたりの加減は、蓬莱島のゴーレムメイドたちなら全員心得ている。
 その加減をベーレも習い憶えたと見え、ちょうどいい温度だったのである。
 褒められたベーレは、畏れ入ります、と短く言って礼をして下がった。このあたり、ラインハルト邸での修業の成果と言えそうだ。
「さて、まずはエルザ、お帰り。どうするのか決めたんだろう?」
「うん。……ランドル家を再興することに、決めた」
 仁の顔を真っ直ぐ見ながらエルザは答えた。そんなエルザに仁は優しく言った。
「そうか、わかった。きっと考えに考えた末の結論なんだろう。俺は応援するよ」
「ありがとう、ジン兄」
 少し頬を染め、エルザは軽く頭を下げた。
「……それで、ラインハルトは、陛下から呼び出されたんだって? 何かあったのか?」
「いや、ごたごたとか、そう言うんじゃないらしい。技術的な諮問らしい」
 らしい、というのは、内容に関してはまだ聞かされていないからだ、と補足するラインハルト。
「ふうん。……まあ、今日は俺も行くからさ」
「え、ジン兄も?」
「ああ。俺がいた方がきっと話は早いぞ?」
 仁は『帝室名誉顧問』であり、アポイントなしに登城出来、陛下への謁見を願い出ることができる立場にいるからだ。
「それは確かに助かるな。……とは言っても、ジンが行くのはエルザの為なんだろう?」
「ん、まあ、な」
「……」
 からかうようなラインハルトの軽口に、仁は真顔で答えた。横で聞いていたエルザは頬を染めて俯いてしまう。
「ジン、エルザの事、よろしく頼むよ。僕の大事な、可愛い従妹だからな」
「……? ああ、もちろん」
「……!」
 何気ないやり取り。ラインハルトと仁とでは微妙にニュアンスが違っているような気がしないでもないが、横で聞いているエルザはいたたまれないような表情をしていた。

*   *   *

 時刻は午前10時、仁、エルザ、ラインハルト、礼子、エドガーらは飛行船で宮城(きゅうじょう)へ向かった。
 そうそう話で時間を潰してもいられない。
 飛行船で行くのは、時間短縮の他に、仁がやって来たことをいち早く知らせるためでもある。
 仁の思惑通り、着陸したときには、宰相が出迎えてくれたのである。
「これはこれは、ジン・ニドー卿、歓迎しますぞ。レーコ媛もようこそ」
「突然の訪問で申し訳ないのですが、エルザとラインハルトを連れてきましたので……」
「ますます好都合。陛下もお待ちなので、どうぞ」
 仁に皆まで言わせず、執務室へと先導していく宰相であった。

「ジン・ニドー卿、レーコ媛、ラインハルト・ランドル卿、そしてエルザ、ようこそ」
 通されたのは、執務室は執務室でも、女皇帝の執務室であった。
 全員が席に着くと、挨拶もそこそこに、女皇帝はさっそく話に入った。
「急ぎの話もあるから、堅苦しい言葉づかいはやめにしましょう。ジン君もいてくれて助かるわ。……まずはエルザからね。どう? 決心はついた?」
「はい。私は、エルザ・ランドルを名乗りたいと、思います」
 女皇帝は大きく頷いた。
「それでいいのね? わかったわ。宰相、いいわね?」
「は、もちろん、問題ないですな。それでは、本日、3457年11月22日付けで、ランドル準男爵家を承認いたします」
「ありがとう、ございます」
 エルザは席を立ち、女皇帝に、そして宰相に向かって頭を下げた。ここに、エルザ・ランドル・フォン・ラズーラ女準男爵が誕生した。
「念のために言っておくが、領地はない。代わりに、準男爵としての俸給、年100万トールが支給される。受取人はどうするかな?」
 領地があれば、そこからの税収で家を維持できるのだが、ショウロ皇国では、領地のない貴族は国からの俸給が払われるのである。
 この他、役職に付いていればその分だけ俸給は加算されることになる。今のところ、エルザへの俸給は最低線と言うことだ。
 これで、実家にある財産を食いつぶすだけであったエルザの両親は、生活基盤を得たと言うことになる。
 その代わりに、役に付いておらずとも、国のための仕事を一定期間負う義務が生じるのだが。
「……実家の、母で、お願いします」
「わかった。……書記官、記録せよ」
 張り詰めた気持ちが顔に出ているエルザを見て、女皇帝はにこやかに声を掛けた。
「そう緊張しなくてもいいわ。エルザ、あなたの主な役目は、ジン・ニドー卿の助手。いいわね? ジン君を手伝い、助けてあげるのよ?」
「……はい!」
 一瞬、何を言われたのかわからず、ぽかんとしてしまったエルザであったが、言われた意味を理解すると、顔を輝かせ、勢いよく返事をした。
「……いい笑顔ね。女の子はそうでなくっちゃ。ジン・ニドー卿、エルザをよろしくね」
「はい」
 仁も微笑みながら返事をしたのである。

「さて、ラインハルト・ランドル卿、あなたを呼んだ理由は、造船計画のためなのよ」
「造船、ですか」
「そう、造船。ジン君も来てくれて、非常に助かるわ。話を聞いてもらえるかしら?」
「はい、陛下」
 モノ作りの話となったら、仁も否やはなかった。
「ありがとう。……では宰相、話を頼むわ」
 女皇帝は宰相を見て、話を促した。
「は。……まず、我が国は水運に船を使っており、これからの事を考えると、更なる船の開発が必要だと考えたのだ」
「これからの事、ですか」
 ラインハルトが身を乗り出した。
「そう。我が国南部には海がある。そして、海はまだまだ未知であり、利用されていない。これを放っておく手はない」
「ええ、それは賛成です」
 今度は仁が答えた。
「まずは、遠洋に出られる、そして数日から十数日の航海に耐えられる船を作ろうと思う。物資の輸送がその主な目的である」
「水運の発展を促すため、ですね」
 エルザは先日、クライン王国において、リオネス・アシュフォードと交わした会話を思い返していた。
「そうだ。そのために、大型の船を建造したいと思う。そのための計画に、ラインハルトに参加してもらいたいのだ」
「船について、概略は決まっているんですか?」
「いや、大きさが30メートルから40メートルくらいになるだろうということしか決まっていない。詳細は専門家たちに任せるつもりだからな」
「……面白そうですね」
 ついこの間まで、蓬莱島で船作りに勤しんでいた仁もつい身を乗り出してしまった。

 セルロア王国には、馬車を乗せてアスール川を渡すため、40メートル級の船がある。もちろん、これは単なる渡し船で、機動力に乏しい。
 また、統一党(ユニファイラー)も、大型船を所有していた。
 が、これらは全て浅底船であり、仁から見たら、筏に毛の生えたような船に過ぎず、外洋の航海に耐えるような構造ではなかった。
 本当の意味で、外洋航海に出る目的で作られた船は、今のところは、未完成だが、セルロア王国でエカルト・テクレスが建造中の船くらいだろう。

 そう言う意味でも、この世界初お目見えになるであろう新型の大型船。
 仁が乗り気になるのも当たり前であった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20141208 13時54分 誤記修正
(誤)ジン君もいてくれるて助かるわ
(正)ジン君もいてくれて助かるわ

(誤)国のための仕事を一定期間追う義務が生じる
(正)国のための仕事を一定期間負う義務が生じる

(誤)その代わりに、役に付いていずとも
(正)その代わりに、役に付いておらずとも

 20141209 07時58分 表記修正
(旧)レーコ嬢もようこそ
(新)レーコ媛もようこそ

(旧)ジン・ニドー卿、ラインハルト・ランドル卿、そしてエルザ、ようこそ
(新)ジン・ニドー卿、レーコ媛、ラインハルト・ランドル卿、そしてエルザ、ようこそ
 礼子は名誉士爵ですので、呼び方を本来なら『デイム』としたいのですが、「サー」とは呼んでいないので、あの世界独自ということで『媛』(ひめ、身分の高い女性)としました。姫とは違います。
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