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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

19 クライン王国国王治療篇

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19-23 危機回避

 仁は、侍女の記憶を読み込んだ魔結晶(マギクリスタル)を手に、どうやって解析しようかと考えていた。
 解析には蓬莱島の老君が一番の適任である。が、短時間でこれを蓬莱島へ送る手段が無いのだ。
「お父さま、わたくしにはできないのでしょうか?」
 そんな仁に、礼子が尋ねた。
「うーん、お前が、か……そうだ、できるかもしれない」
「本当ですか!?」
 仁の役に立てるかもしれないと知り、喜ぶ礼子。
「お前の予備制御核(コントロールコア)とこれをリンクさせるんだ。そうすれば危険無く内容を読み取る事ができるはずだ」
 直接、メインの制御核(コントロールコア)とリンクさせると、記憶領域に干渉するおそれがあるので、予備制御核(コントロールコア)を使うことを思いついた仁。
 いずれも仁の魔力パターンで書き込まれているからできることである。礼子はその魔結晶(マギクリスタル)を受け取ると、早速予備制御核(コントロールコア)との魔素接続(リンケージ)を行った。
「……お父さま、彼女はシロです」
 仁の知識を分け与えられているので、変なところで専門用語が出てきた。
「本当に、何も知りません。普通の仕事をしていただけです」
「そうか」
 部屋の片隅で行われた会話。聞いていたのはエルザだけだ。
 リースヒェン王女はハンナを守るように抱きしめ、ソファに座っている。
 宰相とアーサー王子、それにジェシカは相談中だ。
「とにかく」
 アーサー王子が結論を出したようだ。
「リースとエルザ嬢、それにお客人たちはこの離宮ではなく、王城に移ってもらい、警護を増やすべきだ。少なくとも犯人が特定されるまで」
「……それがよろしいでしょうな」
 宰相もその意見には頷かざるを得ない。国賓であるエルザと仁の身に何かあったら国際問題になるからである。

 それからの展開は早かった。
 仁、エルザ、ハンナ、礼子、エドガーは王城内の貴賓室に移動。
 リースヒェン王女も王城へ。ティアも一緒だ。
 そしてティアが拘束していた侍女……『アメリ』という名前らしい……は、とりあえず牢屋に入れられることとなった。
 仁がこっそり行った『知識転写(トランスインフォ)』は一般的な魔法ではないし、仮にそういう魔法があると説明しても、それが本当であるかの証明には時間が掛かるだろう。
 加えて、そんな魔法が普及したら世界的な脅威になりかねない、ということで、公にできるような魔法ではない。
 だからこそ仁は秘密裏に侍女の記憶を調べたのであった。
 仁は彼女が無実だと言うことを確信しているが、それを第3者に納得させられるかどうかは別の話である。
 辛うじて、侍女アメリが犯人の可能性は低い、よくて実行犯である、ゆえに生かしておいた方が黒幕をあぶり出せる……という論法でなんとか処罰を先延ばしにできただけであった。
 が。
(礼子、隠密機動部隊(SP)はどうしてる?)
(はい、もう王城の中に展開しています)
 仁の飛行船に乗せることができないため、一旦蓬莱島に戻し、転送機でアルバンに送られた彼等である。
 今、城壁を越え、城内に入り込み、仁やエルザ、ハンナの周囲を姿を見せずに警護していた。
(よし、牢屋に入れられているアメリが真犯人に口封じされないよう、そうだな……リリーとローズに見張らせろ)
(わかりました)

 その日の夕食は、念入りに毒見された物が並んだ。
 更に仁やエルザが『分析(アナライズ)』し、更に礼子も毒見をし、と、万全の態勢で臨む。
 しかし、そうやって構えているときほど、何ごとも起こらないもの。
 食事に毒物は一切含まれてはいなかったのである。

「ハンナを連れてくるんじゃなかったな……」
 危険にさらしてしまったことを仁は悔いていた。
 だがこうなっては、できる限りの手を尽くして守るしかない。
 ターゲットがはっきりしていることが救いと言えば救いだろうか。
 つまり、ハンナを直接狙ってくる可能性は低いと言うこと。気を付けるべきなのは『巻き添え』の方である。
「礼子、イリスとアザレアには特に注意するよう指示を出しておいてくれ」
「わかりました」
 蛇足ながら、仁が直接指示せず礼子に頼むのは、礼子の方が適任だからである。礼子は内蔵の魔素通信機(マナカム)を使い、声を出さずに指示できるからだ。

 こうして、クライン王国の夜は更けていくのであった。

*   *   *

 翌日の朝食も、厳重に調査されたもの。
 念入りに毒見されたため、当然冷めていた。猫舌の仁は文句を言わずに食べていたが。
「……ジン兄」
 食後、これも毒見済みのハーブティーを飲みながら、エルザが口を開いた。
「ハンナちゃんは、カイナ村に帰した方がいいと、思う」
「……ああ、俺もそう思っていた」
 身の安全は守れても、権謀術数渦巻くこんな場所が教育にいいわけがない。
「え? カイナ村に帰るの? うーん、いいけど、おにーちゃんたちは?」
 仁とエルザの会話を聞いたハンナは、帰ることには素直に頷いたが、仁たちの安全に関しては首を傾げたのである。
「私は、王様の病気を治さないと」
「エルザが残るなら、俺も付いていてやらないと」
 仁のセリフに少し頬を染めかけたエルザだが、すぐ真面目な顔になる。
「ジン兄、今日明日に王様の治療をするわけでもないから、ハンナちゃんをカイナ村に帰すのは早い方がいい、と思う」
「それもそうだな」
 仁は、さっそく宰相に相談することにした。
 幸い、執務開始時間にはまだ少しあったため、すぐに話し合うことができた。
 宰相としては、仁の不興を買うような事態はなるべく避けたいという思惑もあり、即刻許可が下りたのである。

 そうなると、仁の行動は速い。午前9時には飛行船の発進準備をしていた。
 こういう時であるから、船体のチェックは入念に行う。
 何か破壊工作が行われた可能性も考えたが、スチュワードが管理していたため、取りたてて問題は無かった。
「それじゃあ、行ってくる」
「おうじょさま、またねー!」
「うむ、ハンナ、また遊びに来るといい」
「ジン兄、気を付けて」
「ちょっとの間留守にするけど、エルザも気を付けるんだぞ?」
「ジン殿、お気をつけて」
 リースヒェン王女、エルザ、そしてジェシカらに見送られ、仁とハンナ、そして礼子を乗せた飛行船はアルバンの空に浮かび上がった。
 この日も曇り空であった。
 仁はそのままカイナ村へ行くつもりはない。
 高度を上げ、雲の上に出る。そこには、事前に呼んでおいたコンドル3が待機しており、その転移門(ワープゲート)を使い、蓬莱島へ。
 そこで飛行船から下り、改めてカイナ村へと移動したのである。
 飛行船は蓬莱島で再度のチェックと整備、そして若干の改造を行う指示を出してある。
 加えて、諜報用に超小型ゴーレムを用意するように命じた。大きさは5センチ、老子直属の『フィンガー』ゴーレムと同仕様である。

「おばーちゃーん、ただいまー」
 仁の工房地下にある転移門(ワープゲート)から出たハンナは、真っ直ぐマーサの所へ。手荷物を持った礼子が続く。
「おやお帰り、ハンナ。早かったんだね?」
「ただいま、マーサさん」
「ジンもお帰り。何かあったのかい?」
「ええ、実は……」
 仁は王城で起きた事件の説明を行った。
「ふうん、なんだか厄介なことになっているんだね。でもわかったよ、そういうことならハンナは帰って来てもらった方が安心できるからね」
 そしてマーサは更に仁にも言葉を掛ける。
「ジン、あんたも気を付けるんだよ? あんたは確かにいろいろ凄いことができるけど、怪我だってするし、万が一の時には……」
 ハンナがいるので、あまり危険を臭わせる単語を使うのは避けたマーサだったが、仁はその言わんとするところ、そして気持ちは十分に理解していた。
「ええ、ありがとう、マーサさん。気を付けますよ」
「うん、本当にね。そしてあんただけじゃない、エルザちゃんにも気を付けてやるんだよ」
「はい、わかっています」
 そんな仁に、マーサも大きく頷く。
「うん、それならよし。……それで、参考になるかどうかわからないけど、その毒草かい? それって、『アコニータ』を食べたときに似てるねえ……」
 いつもお読みいただきありがとうございます。
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