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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

19 クライン王国国王治療篇

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19-08 おともだち

「お父さま、そろそろお時間です」
 鰹節の情報に興奮した仁が仮眠を取り始めたのは1時間前。
 1時間経ったら起こしてくれとの指示に従い、礼子は仁を起こしに掛かる。
「うーん……」
 眠そうな目を擦りながら仁は起き上がった。ふわああ、と大きな欠伸を1つ。
「あー……少しすっきりしたかな」
 洗面所で顔を洗い直すと、仁はかなりすっきりした顔をした。
「……もうお昼か。エルザとハンナをこっちに呼んでお昼にするかな」
 鰹節を使った味噌汁が楽しみな仁。
「お父さま、そのことなんですが……」
「ん、何かあったのか?」
「はい、実は、ハンナちゃんがお友達をお連れになりまして」
「へえ? ロイザートで知り合った友達かな?」
「はい。シーデさんと言うそうです」
「ん? シーデ?」
 仁はその名前に聞き覚えがあった。
「えーと、ふわっとした金髪で青い眼の、ハンナと同じ年頃の子か?」
「はい。お父さまがご存知の子です」
 最初に会ったのはエゲレア王国ヤダ村の鉱山、次に会ったのはセルロア王国の都市、テルルス。礼子も一緒にいたので知っているのだ。
「そうか……」
 せっかくハンナが仲良くなった友達を連れてきたのだから、歓迎して上げたい、と思う仁である。
「それにはいくらなんでもごはんと味噌汁を出すのは……なあ」
 楽しみは後回しにして、まずはハンナの友達を歓迎しよう、と決めた仁。
「そっちは夜にしよう。とりあえず急いでロイザートに戻るぞ」

*   *   *

 ハンナがシーデを連れて仁の屋敷に帰ると、エルザが出迎えた。
「いらっしゃいませ、シーデちゃん」
 予め、ハンナの護衛であるイリスが一足早く屋敷に帰り、来客を告げていたのである。
「あ、あのときのお姉さんです」
「エルザおねえちゃん、あのね、シーデちゃんのけがをなおしてあげてほしいの」
「え?」
「あのですね、エルザ様……」
 そこで、ベーレが状況を説明する。カスタニイの実を夢中になって拾い集めていた2人がぶつかって尻餅をついたことまで。
「あたしはへいきだったんだけど、シーデちゃんがてのひらすりむいちゃったの」
「ん、わかった。……こっちへおいで、なさい」
「はいです」
 エルザはシーデを連れて洗面所へ向かった。
「ちょっとだけしみる、かも」
 傷口をきれいな水で洗い、付着している土などを落とす。
「大丈夫?」
「はい、です」
「……『殺菌(ステリリゼイション)』。『手当(ベハンデルン)』」
 消毒をし、治癒魔法を掛ける。傷が塞がり、きれいな掌になった。
「わあ、ありがとうです、お姉さん!」
 シーデはぴょこんとお辞儀をした。エルザは笑みを浮かべ、
「どういたしまして」
 と返事をした。
 応接間へ戻ると、付いてきた執事、ハウロがエルザに礼を言う。
「エルザ様、お嬢様のお怪我を治していただき、お礼申し上げます」
「い、いえ、大したことでは」
 そんな時、仁も戻って来たのである。
「ただいま。……やあ、シーデちゃん」
「あ、おにいさんです! ……おじゃましてますです」
「ジン兄、おかえりなさい」
「おにーちゃん、おかえりなさい」
「ハウロと申します。お嬢様共々、お邪魔させていただいております」
 そんな挨拶を交わしたあと、仁は昼食のお誘いをする。
「ようこそいらっしゃいました。是非お昼を食べていってください」
 よろしいのですか、などと恐縮するハウロだが、仁はかまわず食堂へ案内していく。
 ペリド102は急な来客にも慌てることなく、食事の仕度を調えていた。
 献立は、白いパン、野菜のスープ、プレーンオムレツ、それにフルーツジュース。
 そこに、サツマイモ……イトポを使った『焼き芋』を添えた。
 イトポもサツマイモと同じく、じっくりと熱を加えるとデンプンの糖化が進み、甘味が増す。石焼き芋はこの典型的な調理法である。
「わたくしもご一緒してよろしいので?」
 執事のハウロも同じテーブルに案内したので恐縮しているようだ。
「ええ、どうぞ。……ところで、このロイザートへはご旅行ですか?」
 シーデの父、テレンス・オデオ・セカット子爵はエゲレア王国の地方都市、ディジール領主補佐である。おいそれと旅行できる立場ではない。
「はい。奥様の妹様がこちら、ショウロ皇国に嫁がれておられまして。この度、2人目のお子様がお生まれになったと言うことで、奥様がシーデ様をお連れになってこちらまで」
 長男のエデムはディジールに戻ったらしい。シーデは母親のマリリアと共にこのショウロ皇国まで旅してきたのだそうだ。
「それはおめでとうございます」
 社交辞令ではあるが、仁は祝辞を述べた。一方でシーデとハンナは楽しそうにおしゃべりをしながらゆっくりと食事を進めていた。
「この『おいも』、おいしいです」
 シーデが焼き芋を食べて幸せそうな顔をしている。それを横目で見た仁はよかった、と思う。
 仁の中では女の子といえば焼き芋、なのだ。いったいいつ頃の感覚なのだと言われそうであるが。
「ん、おいしい」
 エルザも焼き芋は好物である。ハンナも頬張っている。
 パンそっちのけで焼き芋にかぶりつく女性陣。仁は笑いながら自分も焼き芋を口に入れた。

 食後のテエエを飲みながら、仁はハウロと、ハンナとエルザはシーデと、それぞれ話をかわす。
「そうですか、エゲレア王国ではあまり長雨の影響は無かったんですね?」
「そう聞いております。ですが、セルロア王国東部は酷かったようです」
 ディジールはエゲレア王国の中でもセルロア王国に近い地方都市なので少々かの国の動向が気掛かりだ、ということであった。
「クライン王国はそれよりも酷い状況らしいです」
「……」
 老君からの報告で概略は知っていたが、実際の生活に密着した形で話を聞くと生々しさが違う。
 食糧援助を検討しないとまずいだろうか、と考え始めた仁であった。

「……で、ですね、テルルスからジロンまで半月もかかったのです」 
「ふうん」
 一方シーデは旅行の話をハンナにして聞かせている。
 ちょうど統一党(ユニファイラー)との戦いが終わり、セルロア王国がごたついていた時期と重なったらしく、ナウダリア川を渡るのに時間を取られたようだ。
 エルザは聞き役に徹し、質問はもっぱらハンナの役目。
「そのあと、どうしたの?」
「……川をわたったあとはじゅんちょうだったです。スカビアとかタンステンとかアスタンとか通ったです。ぜんぶの町は覚えきれなかったですけど」
「でも、たのしそうだね!」
「じっさいはたいへんだったです。シーデも、1回、とちゅうで熱を出したりして……」
 まだまだ話題は尽きなそうだが、いつの間にか時刻は2時を回った。
 執事のハウロは仁に一礼して立ち上がると、
「お嬢様、お楽しみの最中ではありますが、そろそろおいとま致しませんと……」
「あ、もうそんな時間です?」
 残念そうな顔をするシーデ。
「シーデちゃん、かえっちゃうの?」
 ハンナも寂しそうな顔をする。
「ハンナ、シーデちゃんたちにも都合があるんだよ。また改めて遊びに来てもらえばいいじゃないか」
 仁はハンナを慰めるように言う。
「……うん、そう、だね。シーデちゃん、またあそびにきてね!」
「はい、ハンナちゃん、また来る、です」
 名残を惜しむかのように振り返り振り返り、シーデはハウロに手を引かれて帰って行った。
 その姿が見えなくなるまで、ハンナは門に立って見送っていたのである。

 ところで、ハンナが拾ったカスタニイの実は、ベーレが水でさらし、食べられるようにするということになった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20150415 修正
(旧)「ようこそいらっしゃい。是非お昼を食べていってください」
(新)「ようこそいらっしゃいました。是非お昼を食べていってください」
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