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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

18 更なる進歩篇

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18-28 打ち明け話

「バロウ、迎えに来たぞ」
 仁は礼子を伴ってバロウの家を訪れた。
「ジン様!」
「おう、ベーレもいたのか」
「はい!」
 話を聞いてみると、バロウの弟や妹の面倒を見つつ、家事も手伝っていたそうだ。
「ベーレちゃん、すごく手際がいいんでびっくりしちゃったわ」
 とは、バロウの母、メイツの言。
「あ、いらっしゃいませ、ご主人様!」
 バロウの弟妹が仁を見て大きな声で挨拶をした。
「ご主人様?」
「はい、おにーちゃんが働いているところのご主人様なんでしょう?」
 弟コーノがませた口を聞いてきた。
「はは、確かに間違っちゃいないな」
 仁は笑ってコーノの頭を撫でた。
「バロウ、ベーレ、急な話で悪いんだけどそろそろ休暇は終わりでいいかな?」
 事前に連絡する手段があればいいのに、と仁は残念に思う。この先、この2人に魔素通信機(マナカム)を渡すかどうかは未定だ。
「はい、もちろんです。思いがけない長期休暇をいただけてありがとうございました」
 背筋を伸ばし、きちんとお辞儀をしながらバロウは答えた。
「それじゃあ、昼食を食べたら、ロイザートへ行くから」
「わかりました」
「おに、……ちゃ、いっちゃう、の?」
 小さな妹、ルッカが寂しそうな顔で見上げてくる。
「ああ、お仕事なんだ。また帰ってくるからな」
 バロウはルッカの前にしゃがんでその頭を撫でる、ルッカの目から涙がこぼれた。
「……」
 それを見た仁は、バロウに尋ねることにした。
「バロウ、いいのか? もしお前が望むなら村に残っても……」
 と言いかけた仁の言葉を遮るようにバロウが答える。
「いえ、ジン様の下で働きたいのです」
「そうか、わかった。またよろしくな」

*   *   *

 バロウの小さな妹、ルッカの寂しげな顔が気になった仁は、昼食までの約1時間を利用して人形を作ることにした。
 小さい女の子の機嫌を取るには人形、というのが仁の公式であり、この世界でもそうそう外れた考えではなかった。
「ジン兄、手伝う?」
 横で見ていたエルザも申し出てくれたので、服を作ってもらうことにした。
 礼子を通じて老君に連絡し、蓬莱島から転送機で必要な素材を送ってもらったので問題なく作る事ができた。
 抱き人形に分類される人形である。柔らかなボディは魔絹(マギシルク)魔綿(まわた)で作られており、ステンレスの針金で作った芯が入れてあるので思うポーズを取らせることもできる。
 服も魔絹(マギシルク)なので手触りがよい。目は青い貝ボタンを使い、髪の毛は金色に染めた魔絹(マギシルク)。買えば数千トールはするだろうことは想像に難くない。

「おにーちゃん、またね!」
「バロウ、しっかりやるんだよ。……ジン様、息子をどうかよろしくお願いいたします」
 昼過ぎ、いよいよ出発である。バロウの家族は、全員で見送りにやって来た。
「おに、……ちゃ、がんば……て、ね」
 言葉も辿々しいルッカに、仁は抱き人形をプレゼントした。
「これ……?」
「ルッカと言ったっけ。寂しいだろうけどおにーちゃんを励まして、えらいね。これはそんなルッカに俺からのプレゼントだよ」
「あり……がと」
 人見知りをするルッカであったが、仁がくれた抱き人形は素直に受け取った。そんなルッカの頭を仁は撫で、
「お兄ちゃんが時々は帰れるように気を付けるからね」
 そう慰めてやったのである。
「ベーレ、バロウをよろしくな」
「はい、小父さん」
「もう嫁に来てくれていいんだよ?」
「お、小母さん!?」
 ベーレも、バロウの両親から冗談とも本気とも付かない言葉を掛けられあたふたしていた。

 そして飛行船は空へと舞い上がる。
「またねー!」
 バロウもベーレも、見送る人たちが豆粒より小さくなるまで手を振り続けていた。
「……さて、まずはロイザートに行くわけだが」
 この時間を利用して、仁は屋敷をもらった話をする。
「まだしばらくはロイザートに留まるから、その間はこっちの屋敷で働いてくれ」
「はい、わかりました!」
 帰りも高高度を飛んだので、昼過ぎにはロイザートに到着した。
「えーと、どこだっけな……」
「お父さま、あそこです」
 改装した屋敷の場所がよくわからないでいた仁に、礼子が教える。
「ああ、わかったわかった。上手くやったもんだな」
 スレートと呼ばれる、粘板岩で葺かれていた屋根が取り払われ、平らな屋上となっていた。
 屋上には手すりが作られ、飛行船用の簡易車庫、いや船庫もできていた。
 仁は礼子のサポートで上手く屋上に下ろし、係留する。
 職人(スミス)ゴーレムが3体掛かりで飛行船を引っ張り、船庫に格納して固定した。
「こ、ここがジン様のお屋敷ですか」
「ああ。まだもらったばかりだから、いろいろ足りないものもあると思う。気が付いたら職人(スミス)に言ってくれ」
「わ、わかりました」
 普段あまり見かけない職人(スミス)に、少し2人は緊張気味だったが、バトラーやスチュワードとの付き合いがあったので、すぐに慣れた。
 1時間ほど様子を見ていた仁は、いよいよハンナを迎えに行くことにした。
「ジン兄、行ってらっしゃい」
 短時間のことなのでエルザは留守番である。仁は礼子を伴い、地下に設置した転移門(ワープゲート)でまず『しんかい』へ、そこからカイナ村に跳んだ。
 出たのは二堂城ではなく、工房の地下。カイナ村はもう薄暗くなっていた。
「あ、おにーちゃん!」
 夕食の準備をしていたハンナが仁を見つけた。
「おかえりなさい!」
「あ、うん」
「おやジン、お帰り。もう用事は済んだのかい?」

 仁はこの機会に、マーサにも転移門(ワープゲート)の事を話してしまおうと思っていた。それでマーサの家に入り、食堂で向かい合う。
「どうしたんだい? 何か大事な話があるのかい?」
「ええ、実は……」
 仁は、自分は『転移門(ワープゲート)』という古代遺物(アーティファクト)を使えること、最初にこの村に来た時はその暴走であったこと、きちんと設定していればそのような事故は起こらないこと、などを順序立てて説明していく。
「……ジンが規格外だっていうことは知っていたけど、それはまたとんでもない話だねえ……」
「済みません。この技術は、一つ間違えると各国に狙われそうなので」
「まあ、そうだろうね。兵隊やら武器やらをあっと言う間に送り込めるんだからねえ」
 しかし仁は、これはもっと建設的なことに使うべきだと自分の意見を述べた。
「ふふ、それは賛成だけどね。まあいいさ、ジンの持ち物なんだから、何に使おうと文句は無いよ。悪い事に使わなきゃね」
「それはもちろん」
 仁は大きく頷いた。そして最後に、この事を今まで打ち明けなかったのはこうした技術を狙うような輩に目を付けられないように、というつもりだったからで、決して信用していないからではない、と言い添える。
「わかっているよ、ジンのことだからね」
 マーサは明るく笑い、頭を下げた仁の肩を優しく叩いた。
「ハンナと仲良くしてやってくれ、と言ったのはあたしだからさ。じゃあ、これからハンナを連れていくんだね?」
「はい」
「やったー!」
 それまで黙って仁とマーサの話を聞いていたハンナだったが、話が終わったと見るや、歓声を上げた。
「ハンナ、王女様からもらった服も持っていこう」
 マーサに手伝ってもらい、仕度を調える。主に着替え類だ。

「それじゃあ、行ってきます」
「いってきまーす!」
「気を付けるんだよ」
 マーサに見送られ、仁とハンナは転移門(ワープゲート)に消えた。
 初めて転移門(ワープゲート)を見たマーサは独りごちる。
「……あの日ハンナが見つけてきた子は世界を変えるような子だったんだねえ……」
 仁を子供呼ばわりできるのはマーサさんくらいですね。

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