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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

02 ブルーランド篇

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02-20 礼子無双

「ビーナだな?」
 私兵の長らしき男が尋ねてきた。
「そ、そうだけど」
 青い顔でビーナが返事をする。
「そうか。一緒に来てもらおう」
「待てよ。理由も無しに連れて行く気か?」
 そう言って一歩踏み出す仁、だがそんな仁を無視して、私兵の長は部下に向かい、顎をしゃくった。
 それを見た部下2人は、仁を押しのけるとビーナの腕を両側から掴んだ。
「な、何するのよ!」
 そう言って振り解こうとするが、ビーナの力では如何ともし難い。仁も、
「やめろ!」
 そう言って兵士を押さえようとするが、
「うるさいんだよ」
 虫を振り払うように振った手が仁の顔に当たった。
「いつっ」
「!!!」
 その時、一陣の風が吹きすぎる。
 風の名は礼子と言った。
「きゃあっ!」
「うおっ!?」
 ビーナと、ビーナの腕を掴んだ兵士2人が宙に舞った。その高さ実に5メートル。
 そんな高空に放り上げられれば、兵士とてビーナを掴んだ手を放さざるをえない。無駄とは知りつつも空中で手を振り回し、何とか体勢を整えようと無駄なあがきをすることになる。
 そして、自由になったビーナを、礼子はジャンプ1番、お姫さま抱っこで捕まえ、無事着地した。その背後では、飛べるはずもない兵士2人が地面に叩き付けられて気絶していた。背中から落ちたので、首の骨は折っていないようだ。
「あ、ありがと」
 震え声でお礼を言うビーナ、だが礼子は平然と、
「あなたを助けたわけではありません。お父さまを殴った人間を許せなかったからです。あなたのことはついでです」
 そう言い切ったのでビーナの顔が少し引き攣った。
「あー、やっちゃったか」
 そして思わず天を仰ぐ仁。
「き、貴様、何者だ!」
 私兵長が怒鳴った。
「あー、これで帰ってもらえないですかね?」
 そう聞いてみる仁だったが、兵士長は残った部下に、
「ビーナ以外は切り捨てて構わん!」
 そう命令を出していた。
(あ、終わった)
 心の中で溜め息をつく仁。
 一方、ビーナは少し離れた所に避難させられ、青ざめた顔で声もなく見つめるだけ。
 そして礼子は襲いかかってくる8人の兵士に、恐れることなく向かっていった。
「何だ、このガキ?」
 気負うでもなくゆっくり歩み寄る礼子に、兵士達は何か不気味な物を感じたのか、駆け寄る足を止め様子見をしている。
 礼子は更に歩を進め、1番前に出ていた兵士との距離が詰まり……。
「うおわっ」
 その兵士は何をされたのかもわからないうちに地に伏していた。
 兵士達はそれで呪縛が解けたかのように、
「このガキめ!」
「これでもくらえ!」
 そんな言葉を叫びながら、礼子に切り掛かった。
 だが、礼子はそれを避ける素振りも見せない。次の瞬間、恐怖に震えたのは兵士の方だった。
「そんななまくらで、お父さまにいただいたこの身体が傷付けられるわけ無いでしょう」
 兵士が振り下ろした剣は、確かに礼子の脳天に当たってはいた。だが、礼子の髪一筋切り落とすことさえ出来てはいない。
「う、うわああああ!」
 別の兵士が礼子の胴を薙ぐ。が、その剣も、服すらも切ること能わず、止まってしまっていた。
「これなら!」
 また別の兵士が、今度は剣を突き出す。それは礼子の胸を正確に狙っていた。が、それすら、1ミリたりとも礼子に食い込むことはない。
 地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸で出来た服は、聖剣、魔剣のような、高次の魔力付与された剣でなければ傷付けることは出来ないのである。
 更に今は、礼子自身が魔力で強化していたので尚更である。
「無駄というのがわかりませんか」
 彼等の剣を無造作に掴み取った礼子は、それを掌で握りつぶしてしまう。剣は小さな塊になって礼子の足元に捨てられた。
 礼子の皮膚は疑似竜(シャムドラゴン)の羽膜、しなやかで強靱。魔力を通せば鋼よりも硬くなる。
「ひ、ひいいいい! 悪魔だああああ!」
 逃げ腰になった兵士達、だが、
「弱いものは率先していたぶり、強いとわかったら我先に逃げる。最低ですね」
 ぼそりと呟いた礼子は、地を蹴った。
「ぎゃああ!」
 一瞬で逃げる兵士の前に回り込んだ礼子は、先頭の1人を、鳩尾みぞおちへの一撃で気絶させる。そして礼子はそいつの脚を掴んで片手で振り回す。
「ぎゃあ!」
「ぐわあ!」
 大の男を片手で振り回し、それを以て残りの兵士をなぎ倒していく礼子。
「うそ、だろ……」
 そう呟いた最後の1人が吹き飛ばされた。それを見ていた私兵長は、
「貴様、化け物か」
 そう言って右手に剣を構えた。私兵長は魔法を使えるらしく、その剣の柄には赤い魔石(マギストーン)が埋め込まれている。
火の玉(ファイアボール)!」
 そう言って突き出された剣の先から、2メートルほどもある炎の玉が飛び出した。
「こんなもの」
 だが、礼子は右手の一振りで炎の玉を消し去った。
「なにっ! これならどうだ、『炎よ、全てを焼き尽くせ、炎の嵐(フレイムストーム)』!」
 私兵長は己の最大威力の魔法を全力で放った。同時に剣の柄に付いていた赤い魔石(マギストーン)は砕け散る。
炎の嵐(フレイムストーム)』は正面だけでなく、上下左右から礼子を襲った。我に返ったらしくビーナは仁に駆け寄る。
「ジン! レーコちゃんが! いくら古代遺物(アーティファクト)級の自動人形(オートマタ)だと言っても!」
 だが、もはや開き直った仁は、
「大丈夫だよ。あんな程度の魔法で、俺の礼子がどうにかなるわけがないだろう?」
 その言葉通り、吹き荒れる炎の嵐が収まると、平然と立つ礼子の姿が見えてきた。
「それがあなたの使える最強の魔法ですか?」
 礼子の身体を構成している素材は、魔法耐性、物理耐性共に世界最高クラスの素材で出来ている。バリアを張らずとも、伝説級魔法でもない限り傷付けることは出来ない。
「う、う、うわあああ!」
 今まで、何十人もの相手を葬ってきた魔法が通じない相手を見て、さすがの私兵長も心が折れた。今はめちゃくちゃに剣を振り回すだけ。その剣目掛けて礼子が魔法を放つ。
電磁誘導(インダクション)
 それは、仁が教えた魔法、超高周波の渦電流。渦電流は金属に高熱を発生させる。
「熱っ!」
 私兵長の剣はあっという間に赤熱し、持っていられなくなった剣は手放される。今や、私兵長は丸腰であった。
「ひい……」
 一歩一歩近寄る礼子にただ怯える私兵長。蛇に睨まれた蛙のように逃げることも出来ず、ただ青くなって震えるだけ。
「お父さまに剣を向けたことを地獄で詫びなさい」
 そう言って礼子は右手を振り抜いた。
 20130414 15:32
 礼子が放り投げた私兵2人の高さが高すぎた(死ぬ確率大)なので高さを5mに。参考:ttp://www.h5.dion.ne.jp/~hkl/r_height.htm(h抜き)

 礼子無双の回でした。やはりそうとうストレスが溜まっていたようです。
 電磁誘導(インダクション)はポップコーン製造器を作る際の副産物として仁が思いつきました。
 お読みいただきありがとうございます。


 20130805  8時2分
ビーナが礼子を「礼子」と呼んでいたので、「レーコ」に統一しました。
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