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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

16 魔族黒幕篇

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16-15 黒幕

 礼子が蹴り飛ばした扉は、部屋の中へ猛スピードで飛んでいった。
 その勢いは部屋を破壊するかと思われたのだが、それがいきなり消失した。
 そして部屋の中が見えてきたのである。

「なんだ、あの部屋?」
 蓬莱島の司令室では、礼子の目が見たものを映し出すスクリーンの前で仁が目を見張っていた。
 窓。窓。窓。窓だらけである。
 小さな窓。丸い窓。四角い窓。大きな窓。細長い窓。楕円形の窓。
 明るい窓。暗い窓。光る窓。透明な窓。
 赤い窓。青い窓。黄色い窓。風景を映し出す窓。文字を浮かび上がらせる窓。
 壁と天井はいろいろな窓で埋め尽くされていた。
「……もしかして、モニタ、なのか?」
 窓に見える部分を、液晶パネルだと思ってみると、その部屋はハイテクな電子機器でいっぱいの部屋にも思える。
 だが、仁の知る技術に比較して、その光景はあまりにも異質だった。
「先代よりも古い、技術なんだろうか」
 独りごちる仁。老君も無言のままである。

*   *   *

「ここまでやって来たのカ。魔法工学師マギクラフト・マイスターとやらの従者ヨ」
 異様な部屋の真ん中に、それは立っていた。
 身長は120センチくらいで礼子よりも小さい。
 頭髪はなく、つるりとした頭。だが目だけは異様に大きく、ぎょろりと濁った光を湛えている。
 体格は痩せ気味。性別は判別できないが、女であるようには見えなかった。
 肌の色は黄土色というより土気色と言った方がいいだろう。不健康そうな肌の色だ。
 その手には何か魔導具らしきものが握られていた。

「あなたが……『始まりの一族』ですか?」
 最初に口を開いたのはアレクタスだった。
「違ウ。ワレは『負の人形(ネガドール)001』ダ」
「『負の人形(ネガドール)001』?」
「その通リ。貴様等を甘く見すぎていたようダ」
 自身を負の人形(ネガドール)001と呼んだその存在は、顔を憎々しげに歪めた。
「『針』で魔族を操っていたのはあなたですね?」
 礼子が進み出て負の人形(ネガドール)001に対峙した。
「貴様は……自動人形(オートマタ)カ。疑問も持たず製作者に盲従する哀れな人形ヨ」
「何ですって?」
 声に怒気が混じる。
「ほう、怒ったのカ。感情はあるらしいナ。……先程の質問に答えてやろウ。『そうダ』、とナ」
「何のために!」
 アレクタスの声にも怒気が混じった。
「何のために、だト? 復讐ダ」
「復讐? 魔族全体にですか?」
 今度はアンが一歩踏み出して尋ねた。負の人形(ネガドール)001は1歩下がる。
「違ウ。人間にダ」
「なら、何故魔族に『針』を……!」
「やられたことをやり返しただけダ」
「何だと?」
「……時間ダ。予定外の扉を消したために消費してしまった魔力素(マナ)がようやく充填できタ」
 その言葉と共に、負の人形(ネガドール)001は手にした魔導具をなにやら操作した。
 すると、たちまちにしてその姿は消えてしまったのである。
「転移魔法?」
「しかし、エーテルジャマーを使っていたのに、なぜ?」
 礼子とアンが首を傾げた。2人は、前方に向けてエーテルジャマーを発動させていたのだ。
 アレクタスは大丈夫だったが、負の人形(ネガドール)001は魔法を一切使えなかったはずなのに転移で姿をくらましてしまった。
「あの魔導具かも知れませんね」
 負の人形(ネガドール)001が手にしていた魔導具に秘密がありそうだ、と結論したアン。魔素変換器(エーテルコンバーター)は機能しなくなるが、魔素貯蔵庫(エーテルタンク)魔力貯蔵庫(マナタンク)は影響を受けないのである。
 一方礼子は部屋の中を見渡し、一切の情報を蓬莱島へと届けていた。

「結局逃げられてしまったか」
「残念です」
 肩を落とすアレクタス、残念がるアン。だが礼子はそんなアレクタスに向かって言った。
「でも『針』を操作する魔力はまだこの部屋から出ていますよ」
「何? それは本当か」
「ええ。……多分、この魔導装置(マギデバイス)がそうです」
 礼子が指差したのは、負の人形(ネガドール)001の背後にあった魔導装置(マギデバイス)
 これにも小さな窓がたくさん付いていて異質である。
「操作法がわかりませんね……」
 アンや礼子にも、ましてやアレクタスにも操作できそうもなかった。
 蓬莱島に居る仁も同じである。時間を掛けて調査すれば何とかなるかも知れないが、短時間では無理だ。
「とにかく止める必要がありますね」
 内部に何か魔力源を持っているのか、マギジャマーでは停止しなかったのである。
「破壊ではなく、停止させましょう」
 それは蓬莱島にいる仁の希望。できれば後から調べてみたいと思っていたのだ。
 礼子は桃花を超高速振動剣バイブレーションソードモードにし、魔導装置(マギデバイス)の外装を慎重に切り開いた。
 礼子の力と桃花の切れ味、そして超高速振動剣バイブレーションソードモードの効果で、外装の金属がバターを切るように切り裂かれていった。
 アレクタスはその切れ味に目を見張って言葉もない。
 1分ほどで内部が露出した。
「……これが魔力伝導線でしょうか」
 ミスリル銀でできた太い線が4本通っている。少なくともこの線を切れば動作は止まりそうである。
「切りましょう」
 礼子は躊躇わず、4本の線を順に切り離していった。
「……止まったようです」
 礼子たちが追いかけてきた、『針』を操るための魔力、それはもう感じられなかった。
「少なくとも、これで自由意志は取り戻したはずなのだな?」
「ええ、おそらくは。しかし、『福音』の氏族だけ、という可能性もあります」
『森羅』の氏族や、他の氏族が同じように操られていたとして、ここにある魔導装置(マギデバイス)1台で全ての氏族を支配していたとは思えない。
「とりあえず、ここにある魔導装置(マギデバイス)は全て止めておきましょうか」
「いいえ、おねえさま。未知の魔導装置(マギデバイス)にそれを行ったら取り返しのつかない事態になる可能性もあります」
 ありきたりだが自爆装置があるやもしれない。また、自爆までは行かずとも、明かりが消える、空調が止まる、などのインフラ停止もありうる。
 礼子やアンは構わないが、アレクタスには致命的な事態になりかねない。
「それもそうですね」
 礼子もそれを認め、桃花を鞘に収めた。
「さて、それではどうしますか」
「『福音』の氏族のところに戻るという手もあります」
「それはいずれ」
 アレクタスを送る必要もあるから、一度は立ち寄ることになろう。
「でも、もう少しここを調べてみましょう」
 せっかくここまで潜入したのだから、できるだけの情報が欲しいと礼子は思っていたのだ。
 そしてそれは老君と仁の希望でもあった。

「おや? まだ奥に部屋があるのでしょうか」
 部屋の奥を調べていたアンが、扉らしき物を見つけたのである。礼子とアレクタスもやって来る。
「扉、でしょうね」
 その壁には縦2メートル、横1メートルの長方形状に細い亀裂が走っていたのだ。
 ただ、扉だとして、開け方がわからない。取っ手もつまみも無く、付近に開閉装置も見あたらない。
「純粋に魔法で開閉するとしか考えられませんが……」
 地球で言うと自動ドア、に相当するのだろうか。だが、地球の自動ドアも、緊急時には手動で開けられるようになっている。
「この扉も……」
 礼子とアンは周囲を探してみるが、非常用の開閉装置らしきものは見あたらなかった。
「……本当に扉なのか?」
 アレクタスが進み出、扉表面を撫でた、その時。
 音も立てずに扉が開いたのである。
 礼子も大胆。線を切ったら爆発とかの可能性もあったのに。後でお小言ですね。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20140809 13時25分 表記修正
(旧)むやみやたらとそれを行って取り返しのつかない事態に
(新)未知の魔導装置(マギデバイス)にそれを行ったら取り返しのつかない事態に
+注意+
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