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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

16 魔族黒幕篇

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16-14 到着

「アレクタスさん、これをどうぞ」
 アンは、いざと言うときのために持って来た蓬莱島特製ペルシカジュースの小瓶を取り出し、アレクタスに振る舞った。
 およそ100ミリリットルほどのそれを飲んだだけでアレクタスの疲労は消え、元気が漲ってきたのである。
 これに一番驚いたのはアレクタス本人。
「すごいな……! 秘薬なのか? 疲れが一気に無くなったぞ」
「それはよかったですね。では進みましょう」
 まだ全てを話すのは尚早と、アンは先へ進むことを優先した。アレクタスもそれ以上聞く事はしない。
 天井の高さは元に戻っていた。屈まなくて済むのは有り難い。
 そうして進むことおよそ20メートル。通路は緩やかにカーブしていく。
「あれは?」
 通路の先が小広いホールのようになっていたのである。
「また罠がある可能性もありますね」
 礼子は慎重にホールを覗き込んだ。がらんとしていて、円形。直径は10メートルくらいだろうか。天井までの高さは4メートルほど。
 飾りも何も無く、金属製の床と壁、天井があるだけ。
 ホールの反対側には通路が見えていた。
「どう考えてもここに罠がないとは思えませんね。しかしもう引き返す訳にもいきません」
 目指す目的地は通路の向こうのようなのだ。
障壁結界(バリア)を張りながらわたくしが行きます」
 礼子が言う。障壁結界(バリア)を張った礼子なら、大抵の罠にはやられないだろう。
「おねえさま、お気を付けて」
 それでもアンは礼子の無事を祈らずにはいられなかった。
「行ってきます」
 障壁結界(バリア)を張った礼子は小走りでホールを横切り……。
「あっ?」
 床が1センチほど沈んだ。床下の空洞は検知されていなかったため、礼子も予測できなかったのだ。
 爪先が引っ掛かり、一瞬礼子の動きが止まった、その時。
「おねえさま!」
 ホールの天井が開き、粘性物質が落下してきたのである。
 例えるなら半透明なトリモチ。障壁結界(バリア)を張っていた礼子自身にはトリモチは粘り着かないが、バリア全体がトリモチに包まれてしまった。
 内部の礼子は焦ってはいないものの渋い顔。
 拘束力は弱いとはいえ、なかなか厄介である。
 トリモチは弾力性があり、振り切ることが出来ない。床にもくっついているため、礼子が移動すれば踏みつけることになり、そうなったら礼子自身にトリモチが粘り着くであろう。
「ど、どうするのだ?」
 アレクタスはおろおろするばかり。
「これはなかなか厄介ですね……」
 アンも礼子と同じ感想を持ったその時、アンは老君からの指示を受け取った。
「……なるほど、その手を使いますか」
 礼子にも同じ内容が伝えられているのだろう、半透明なトリモチ内に薄ぼんやり見えるその姿はじっとしていた。
 アンは自分に使える最強力な魔法の行使に掛かった。
「『火の嵐(ファイアストーム)』」
「な、何を!?」
 驚いて青ざめるアレクタス。さもあろう、アンが礼子目掛けて火属性魔法を放ったのだから。
火の嵐(ファイアストーム)』は対象を火で覆い尽くす魔法だ。礼子と礼子を包むトリモチはたちまち火の中に見えなくなった。
 アンはうまく炎の範囲を調整し、壁や天井に大きなダメージがないようにしていた。
「おねえさまならこの程度の火魔法は何でもないはずです。そもそも障壁結界(バリア)の中ですから。ですがトリモチは……」
 老君の読み通り、トリモチは『火の嵐(ファイアストーム)』の火に炙られて燃え上がり、その後数分で燃え尽きてしまった。
 障壁結界(バリア)を解いて礼子が笑う。
「上手くいきましたね」
 そのまま反対側の通路まで歩いて行き、アン達を手招きした。
 アンも、アレクタスを伴い、当然障壁結界(バリア)を張りながらホールを横切り、礼子の待つ通路へ辿り着いた。
「アン、助かりました」
「いえ、おねえさま、老君からの指示でしたから」
 短くそんな会話を交わし、また3人は通路を進んでいったのである。

*   *   *

「執拗な罠だな……」
 蓬莱島の司令室では、礼子達の様子を見ていた仁が吐き捨てるように呟いていた。
『いえ御主人様(マイロード)、罠には違いないかもしれませんが、これは侵入者対策というより、この先にあるものを守るための防衛設備と言った方がいいかもしれません』
「防衛設備か」
『はい。礼子さんが口にした『ダンジョン』とは、迷路の要素も含んでいるのではないかと愚考しますが、ほとんど一本道ですから』
「なるほどな。そう考えると、ルートは間違っていない訳か」
『そうなります。それにしても、罠の内容がちぐはぐと言いますか、電撃罠のようにこれみよがしなものから、塩素ガスのような凶悪なものまで、レベルが揃っていないと言いますか……』
「逆じゃないか? それこそ、あらゆる外敵に対処できるように、いろいろな種類・レベルの罠を仕掛けたとも考えられるんじゃないかな?」
『なるほど、一理有りますね。……しかし、私としては、元々あった防衛機構に、後付けで幾つか加えたのではないかと思えるのです』
「うん、そういう見方もあるか……」
 全ては行き着く先でわかるであろう。

*   *   *

 ホールの先から、通路は真っ直ぐ斜め下へと伸びていた。
「間違いなくこの先が目的地です」
 斜め下へ、30メートルほど下ると、正面に扉が見えてきた。
「おそらくあの扉の向こうがそうかと」
 10メートルほど手前で3人は一旦立ち止まる。扉のそばに守備兵や守護ゴーレムなどがいるわけでもなく、結界に守られているわけでもなさそうだ。
「罠が無いとは思えません」
「確かに」
「ここであり得る罠は……」
 一度突破された罠を再度使う可能性は低い。
 今まで使われた罠はと言えば、落とし穴、電撃、毒ガス、トリモチ、ゴーレム。物理・魔法全般に渡っている。
「お父さまがご存知の『ダンジョン』に付き物の罠にはあと何があったでしょうか……」
 礼子は内蔵魔素通信機(マナカム)で老君と連絡を取り、相談をすることにした。当然司令室には仁本人もいるので、仁自身も考えている。

「嫌らしいと言えば目的地寸前で別の階層に飛ばされる罠だな」
『転移罠ということですね』

 その情報はすぐに礼子、アンに伝えられた。
「侵入者がそこに乗るとどこかへ転送される、ですか。防ぐには……」
「エーテルジャマーしかないでしょうね」
 悠長なことはしていられない、という理由もある。カプリコーン1にはイスタリスとシオン、ネトロス、ルカス、仁(の身代わり人形(ダブル))も待っているのだから。
「エーテルジャマー、発動」
「エーテルジャマー、発動」
 アンと礼子が2体でエーテルジャマーを発動させた。その状態で礼子はゆっくりと扉に近付いていく。
 何ごとも起こらず、扉の前に立った礼子は、開閉装置と思われる、扉横のレバーを押し上げた。
 が、何ごとも起こらない。
「もしかすると、何らかの魔力を使っていたのかもしれません。エーテルジャマーの働きで魔力が切れたために開かないのかも」
 アンの推測。あながち間違っていないかも知れない。
「では……仕方ないですね」
 礼子は扉に付いていた取っ手を掴み、思い切り引いた。
 だが、あろうことか、ばきん、と音がして取っ手がもげてしまう。
「脆いですね」
 仕方なく礼子は桃花を抜いた。少なくとも今の音で、中にいる存在には気付かれているだろう。
 もはや遠慮することなく、礼子は桃花を振り抜いた。
 X字に斬り裂かれた扉。礼子は更にそこを蹴り付ける。
 ロック機構も一緒に斬り裂かれたのか、扉は轟音と共に吹き飛び、彼女たちの前に、謎の部屋がその全貌を見せたのである。
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