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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

16 魔族黒幕篇

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16-09 プローブ

「盗聴だって?」
 アンの発言に仁は驚いた声を上げた。が、考えてみれば、自分だってそのような手段を持っているわけであるから、驚くほどではないと思い直す。
 礼子が見つけた異常な魔力集中、そこを探ってみる。が、仁(の身代わり人形(ダブル))にはわからなかった。
「ここにエルザがいてくれたら……いや、今エルザに危ない橋を渡らせるわけにはいかないな……そうだ!」
 連れていているミニ職人(スミス)に思い至った。単純計算で仁の16分の1という精密作業をこなすことができるはずだ。
「ミニ職人(スミス)、起動」
「ハイ、ご主人サマ」
 身長10センチのミニ職人(スミス)を1台起動させた仁。それを見たイスタリスとシオンは目を丸くした。
「えっ? な、なに、これ?」
「……可愛いです」
「今は説明している時間が無い。……ミニ職人(スミス)、調べてくれ」
「ハイ、ご主人サマ」
 ミニ職人(スミス)はアレクタスの肩に乗り、まず耳の後ろを。そしてアレクタスを横たえて、その胸部を調査した。所用時間2分。
「耳の後ろ、皮膚の下に、魔導具が埋め込まれてイマス。胸部のものは心臓に達してイマス。どちらからも魔力が出ていて、どこかと繋がってイマス。どこかは、今の状態ではわかりマセン」
 魔法障壁(マジックバリア)が展開されているため、魔力による繋がりが切れているのだろう。だがこれで、その魔導具が何らかの影響をアレクタスに与えているらしいことがわかった。
「取り出せるか?」
「ハイ、耳の後ろのものならスグ。胸部のものは時間が掛かりマス」
 心臓に達しているものは簡単には取り出せないようだ。ここはやはりエルザの出番かもしれない。
「よし、耳の後ろのものを取り出してくれ」
 まずはそちらを取り出し、どんな魔導具か確かめようと仁は思った。その結果次第で、エルザを呼ぶか、あるいはアレクタスを蓬莱島へ送って処理するかを決めようと考えている。
「ご主人サマ、終わりマシタ」
 1分ほどでミニ職人(スミス)は問題の魔導具を取り出してしまった。長さ2センチ、太さ1ミリくらいの針状の魔導具である。
 抜いた後にはぽつんと赤く血が滲んでいたが、初級の治癒魔法、『治療(キュア)』で跡形もなく治ってしまった。
「さて、この探針(プローブ)はどんな魔導具なのか……」
 それについてもミニ職人(スミス)を使って解析させることにした。約2分でそれは終了。
「わかりマシタ。これは、マスター側の指示を装着者に伝えると共に、装着者が聞いた音声をマスター側に送りマス」
 これには蓬莱島に居る仁も驚いた。
 更には、『読み取り(デコンパイル)』で読み取られた情報が提示される。
「なるほど……」
 古い形式の魔導式(マギフォーミュラ)が並ぶ。先代の時代よりも古そうな魔導式(マギフォーミュラ)である。
 だが、その目的と結果は明らか。装着者を支配するための魔導具、その片割れである。
「こうなると、心臓に達しているという魔導具を一刻も早く取りだした方がいいな……」
 身代わり人形(ダブル)の操縦席周りに集まっていた蓬莱島メンバーは、騒動が終わり、単なる移動になったのでそれぞれ散って行ってしまった。
 エルザもどこかへ行ってしまっていたので、仁はあらためて老君に呼んで貰ったのである。
「ジン兄、何? 何か進展があったの?」
 2分ほどでエルザが顔を出す。
「ああ。実はな……」
 仁が説明すると、エルザは真剣な顔になった。
「……心臓に魔導具を埋め込んで操る?」
「ああ。おそらくそういうものだ」
「鬼畜、としか思えない」
「同感だ」
 エルザがなんとしてもその魔導具を取り出す、と言ってくれたので、仁はカプリコーン1の礼子に、転移門(ワープゲート)を使ってアレクタスを中継基地である『しんかい』まで送るよう指示をした。
 仁は仁で、エルザと協力して必要なものを準備。といっても回復薬や治療の魔導具くらいだが。

 5分後、『しんかい』の中で、仁とエルザはアレクタス、それに彼を連れてきた礼子と合流した。抜き出した探針(プローブ)を持ったミニ職人(スミス)も伴っている。
 因みに、転移門(ワープゲート)をカプリコーン1と『しんかい』間で繋ぐため、一瞬だけ魔法障壁(マジックバリア)を解除せざるを得なかった。
 また、ここ『しんかい』にも今現在魔法障壁(マジックバリア)を展開してある。それだけ用心しているのだ。
「エルザ、時間がもったいないから急いで頼む」
 カプリコーン1では、転移門(ワープゲート)のことをイスタリスたちに知らせてはいないので、礼子がアレクタスを処置するために小部屋に入ったとしか思われていないはずだ。
「うん、わかってる」
 仁と礼子が助手を務め、エルザはアレクタスに埋め込まれた『探針(プローブ)』の除去に取りかかった。
「……『診察(ディアグノーゼ)』……わかった。心臓の冠状動脈そばに探針(プローブ)が突き刺さっている。無理に抜くと大出血を起こす」
 エルザはほんの少し、処置の方法を考えた。そして出した結論。
「『麻痺(パラライズ)』が掛かっているから麻酔の必要は無い。『全快(フェリーゲネーゼン)』を掛けると同時に、一気に、しかも周りの組織を傷付けないように探針(プローブ)を抜く必要がある」
 ここでもミニ職人(スミス)の出番のようだ。
「いい? ……3、2、1、0。『全快(フェリーゲネーゼン)』」
 エルザのカウントダウンに合わせて、ミニ職人(スミス)探針(プローブ)を一気に引き抜いた。
 同時に掛けられた治癒魔法のおかげで出血もほんの僅かで済み、処置は終了した。
「よし礼子、彼をカプリコーン1に運んでくれ」
「はい、お父さま」
 アレクタスを抱えて転移門(ワープゲート)に向かった礼子の背中に向け、仁が一言。
「頼りにしてるからな」
 その一言を聞いた礼子は満面に笑みをたたえ、転移門(ワープゲート)をくぐったのである。

*   *   *

「何をやっているのかしら」
 一方、カプリコーン1の中では、シオンがじりじりして待っていた。
「雑菌がない条件でないと手術は難しいのです」
 アンが説明するが、シオンには通じていないようだ。
「大丈夫です、もうすぐ終わりますよ」
「そう言ってもう10分よ?」
「本当にもうすぐですから」
 そんなやり取りの最中、転移門(ワープゲート)を設置した小部屋のドアが開いた。
「終わりました。無事魔導具……『探針(プローブ)』は抜き出しましたよ」
 礼子の肩に乗っているミニ職人(スミス)探針(プローブ)を掲げて見せた。
 怪しまれないよう、抜き取った探針(プローブ)の解析を急いで済ませ、礼子たちに再び預けたのである。
「こっちの探針(プローブ)は、マスター側からの操作で、心臓に苦痛を与えるもののようです」
「何ですって!」
 シオンが大声を出した。仁にもその気持ちはよくわかる。
「落ち着け。もう抜き出した。だからアレクタスはもう隷属から逃れたはずだ」
 念のため、緩くではあるが、もう一度補助席に縛り付けた後、『回復(ヒーリング)』で目を覚まさせた。
「う……」
「気分はどうです? 埋め込まれていた魔導具は取り出してしまいましたよ?」
 目を開けたアレクタスに仁がそう言うと、彼は目をしばたたかせ、頭を何度も振ってみている。そして、
「……感謝します、魔法工学師マギクラフト・マイスター、ジン殿。頭が軽くなりました」
「やはり、あの魔導具で支配されていたのですね?」
「はい。『針』と奴等は呼んでいましたが、あれを埋め込まれると、頭の中に声が響くのです。そして逆らおうとすると胸が苦しくなり、息が詰まって気が遠くなったりするのです」
 思った通りの凶悪な魔導具であった。
「氏族の全員、子供にまで埋め込まれていまして、逆らうに逆らえませんでした」
 申し訳ない、と謝罪するアレクタス。仁は礼子に命じて縄を解かせた。
「ありがとうございます、信じていただいて」
 縄を解かれたアレクタスは改めて頭を下げた。
「今朝は、あまり『支配の声』が聞こえなかったので、ジン殿たちを歓迎し、我々の窮状を伝えられると思ったのですが、やはり甘かったようです」
 支配者も四六時中監視しているというわけでもないようだ。まあ仁だって、常に身代わり人形(ダブル)を操っているわけでもないのだが。
「ところでジン殿は、お身体なんともないのですか?」
「え? はい」
 身代わり人形(ダブル)の調子には変化はない。
「それならいいのですが。実は今朝、ジン殿に一服盛ったのですが、どうやって無効化されたものか。何ともないのなら良かったですが」
「……」
「ジン殿だけは何とかこちら側に引き込みたくて薬を盛ってしまいました、併せてお詫び致します」
「何ともなかったんだからもういいですよ」
 身代わり人形(ダブル)であるから、どんな毒も効くはずがない。改めて胸を撫で下ろした仁であった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20140804 07時51分 表記修正
(旧)操縦席周りに集まっていたメンバーは
(新)身代わり人形(ダブル)の操縦席周りに集まっていた蓬莱島メンバーは
+注意+
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