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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

15 魔族との出会い篇

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15-14 捕虜

 通算500話(設定など入れて)ありがとうございます。

挿絵(By みてみん)

 記念イラスト、作中では多分着ることのないビキニバージョン。
「さて、あの2人はどうしたかな?」
 仁(の身代わり人形(ダブル))は、村長ギーベック宅を出ると、散歩中のはずのシオンとルカスを捜した。
 とはいえ、彼等を監視しているランド隊が老君に報告を入れているのですぐにその位置は判明する。
 今、2人は村の北にある柵のそばにいた。小麦畑を見ているらしい。
 ゆっくり歩いて10分ほどで仁(の身代わり人形(ダブル)、以下仁)はそこに辿り着いた。
「おはよう」
「あ、ジン様、おはようございます」
「……おはよう」
「ジン様、おはようございます」
 仁が挨拶すると、案内役のベーレ、ルカス、シオンの順で挨拶を返した。
「大分元気になったようだな。よかったよ」
「はい、おかげさまで。あの、ここの小麦は出来がいいですね」
「ああ、君たちのところにも小麦はあったんだな」
「ええ、なんとか、一年のうち4ヵ月くらいは作物を作れるんです」
「ああ、海洋性気候というわけか」
「は?」
 シオンが疑問符を貼り付けた様な顔をした。
「えーとな、海洋性気候というのは……」
 海に近い地方は、水の性質である『温まりにくく冷めにくい』という影響を受け、気温の年変化が少ないうえ湿度が高めで年間降水量も多くなる、という一般的な知識を披露する仁。
「はあ、そうだったんですか。確かに私たちのところでは海辺に居を構えている一族が多いですね。知らず知らずにその海洋……性? 気候、というものを利用しているんですね」
 感心したように1人頷くシオン。
「あ、それって図書室にある気象の本に出てました!」
「え、ベーレさんも知ってらっしゃるの?」
 ベーレのセリフに少しショックを受けたようなシオンであった。
「あまり歩き廻って疲れてしまってもいけないから、そろそろ帰らないか?」
「……そうですね……」
 一気に元気が無くなったシオンである。

「ジン様の知識は、やはり魔法工学師マギクラフト・マイスターだからなのですか?」
 二堂城に戻るや否や、そんな質問を投げかけてくるシオンである。
「うん、まあ、そうなんだろうな」
 嘘ではない……と仁は思う。2代目として召喚されたということは、そういう知識も含めて仁という人間が選ばれたということだろうから。
「ベーレさんが羨ましいです……そんなジン様の教えを受けられるんですから」
「え?」
 仁は何か勘違いしているらしいシオンに、ベーレの知識は図書室の本を読んだからだ、と説明した。
「本、ですか。拝見してもいいですか?」
 シオンも本には興味があったらしく、目を輝かせている。
「ああ、いいよ。3階の図書室へ行こうか」
「はい!」
 シオンとルカスを連れ、仁は3階へ。執務室隣の図書室を見たシオンは言葉を失った。
「……」
 きらきらした目で本棚に並んだ本を見つめている。
(なんだか更に本が増えているな……)
 老君の拘りを感じた仁であった。
「気に入ったならどれでも読んでいいから。ここはそういう部屋だし」
「ありがとうございます、ジン様!」
 シオンは仁に礼を言うと3冊ほど本を取り出し、さっそく読み出した。
「お嬢様は本当に本がお好きですね……」
 ルカスが呆れたような顔でそんなことを言った。
「あら、ルカスも読めばいいのに」
「……俺は護衛です」
「うふふ、字が苦手、って素直に言えばいいのに」
「……」
「ま、まあ、好きなだけいていいから。お昼はベーレに運ばせるし」
 仁は図書室をあとにした。

 蓬莱島では、本物の仁が安堵の溜め息をついていた。
「ふう、身代わり人形(ダブル)の出来もまずまずだった。改良点はとりあえず無いな。あと1日2日であの2人も全快しそうだし」
 明後日頃には、ゴンドア大陸に向けて出発することも視野に入れておく必要がありそうである。
 その際に考えられる不測の事態……考えられるならもう不測ではないな、などと自らの思考に突っ込みつつ、蓬莱島で身代わり人形(ダブル)の行動を追っていた仁本人はモニター席を立ち、背伸びをした。

*   *   *

「老君、モグラの方はどうなってる?」
 そちらは老君に任せきりであったため、改めて進捗状況を確認する仁。
『はい、御主人様(マイロード)、順調です。イナド鉱山地下を調査しながら進んでいます』
「順調なんだな」
『はい。これでかなりのデータが集められます』
「そうだな」
『見落とした鉱脈もありましたし、廃鉱とはいえませんね』
 地下探査専用のモグラである、人間にできないこともやってのけるのだ。
『明日には例の巨大百足(ギガントピーダー)がいた深度まで行けるかと』
「そうか。慎重にな」
『はい。用途不明な魔導具も見かけていましたので、慎重に掘り進めます』

*   *   *

『ところで御主人様(マイロード)、少し気になる情報がフランツ王国から入って来ました』
「うん? いったい何だ?」
『はい、魔族が捕らわれた、ということなのです』
「魔族が?」
 老君が説明を始めた。
 一昨日レグルス7からもたらされた情報では、魔族と思しき人物(?)が王国北東部外れにある町、イーナクで捕らえられたということだった。
 魔族は2名。男と女、と思われ、見た目はどちらも17、8歳。女は『森羅』のイスタリスと名乗り、男は護衛のネトロスと名乗ったという。
『彼等が何をしにフランツ王国に現れたのか、それは不明です』
 何故ならば、イーナク町長が一計を案じて2人を捕らえたからだそうだ。
 適当に相手に話を合わせ、持ち上げておいて、歓待しているように見せかけた、その夕食に毒を盛ったらしい。
 らしい、というのは、その2人が首都に護送されてきてようやくその事実を掴んだからである。
「うーん、『森羅』か。シオンと何か繋がりがあるのかな?」
『その可能性は大ですね。フランツ王国を少し見くびっていたかもしれません。重要度を他の国より下に見ていました』
「まあ仕方ないだろう。事実上セルロア王国の属国のようなものなんだしな」
『ええ。それでも、首都とその近隣以外にも第5列(クインタ)を送り込んでおくべきでした』
「今からでも送り込んだらどうだ?」
御主人様(マイロード)のお許しが出れば、レグルスを10体増やしたいと思います』
「わかった。是非やってくれ」
 即座に許可を出す仁。情報は何にもまして貴重であり、重要である。
『ありがとうございます。それではさっそくに』
 老君の方はそれでいいとして、仁はこれからどうしようかと考えた。
 シオンに教えてやるか。あるいは教えないか。教えたらシオンはどうするだろう? 助けに向かう? それとも無視する? 答えは出ない。
 仁は暫く考え、やはり知らせておくか、と結論した。

 今、仁のそばに礼子はいない。身代わり人形(ダブル)の方に付いているからだ。
「……何か落ち着かないな」
 例えて言えば、片足だけ靴下を履いていないような感じ、と言えばいいだろうか。仁の隣にいつもいる、影のような存在である礼子。
「やっぱり俺って、礼子に依存しているのかな」
 その呟きには老君も答えてはくれなかった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20140707 07時51分
 サブタイトルを拿捕から捕虜へ。
 拿捕には船舶の、という意味が付加されやすいので。

 20160517 修正
(旧)知らず知らずにその海洋性気候、というものを利用しているんですね」
(新)知らず知らずにその海洋……性? 気候、というものを利用しているんですね」
+注意+
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