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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

14 家族旅行篇

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14-19 登録

「ステアリーナ、亡命してきたんだね」
「ええ、ラインハルト君。よろしくね」
 7月23日。ステアリーナがサキの家に引っ越してきた翌日のこと。
 朝の9時頃、ステアリーナはカルツ村のラインハルトを訪ねていた。
「うーん、これは早いところ国に報告した方がいいな……」
 早ければ早いほどいいだろうと、ラインハルトはその日のうちに首都ロイザートへ行くことを決めた。
 領主としての仕事が一段落ついたところだったので、気分転換を兼ねている、というのがラインハルトの本音なのかも知れない。
 行く顔ぶれとしては、ラインハルト、ステアリーナ、そしてネオン。
 黒騎士(シュバルツリッター)でなくネオンなのは、表向きは船の重量削減、実はステアリーナとラインハルトが2人きりな事を危惧したベルチェのささやかな浮気監視役を仰せつかっているためである。

 一旦馬車でバンネへ行き、港に預けてある『スカーレット・トレイル』に乗り、対岸のコジュへ。コジュで馬車を雇い、首都ロイザートへ。
 そうやって急いだ結果、午後3時にはなんとか宮城(きゅうじょう)に入る事ができた。
 急ぎ宰相への面会を申し込む。もちろん理由も添えて。
 この日は業務が少なかったのか、なんと5分ほどの待ち時間で宰相への謁見が叶い、ラインハルトとステアリーナは執務室へと呼ばれた。

「おお、ラインハルト、それにステアリーナ殿」
「技術博覧会以来ですな」
 そこには、宰相ユング・フォウルス・フォン・ケブスラーだけでなく、魔法技術相デガウズ・フルト・フォン・マニシュラスも同席していた。
 そして更に驚いたことに、
「ようこそ、ショウロ皇国へ。ステアリーナ殿、歓迎いたしますよ」
 女皇帝、ゲルハルト・ヒルデ・フォン・ルビース・ショウロまでがその場にいたのであった。
「へ、陛下、こ、光栄ですわ」
 まさかの事態に、ステアリーナは面食らった。それはラインハルトも同じである。
「たまたま別の事案で宰相と相談していたら、ラインハルトからの報告と謁見申請があったのですよ」
 待ち時間が少なかった裏にはそんな理由があったのか、とラインハルトは密かに納得した。
「ステアリーナ殿、我が国は貴殿のように才知溢れる魔法技術者(マギエンジニア)をお迎えできて嬉しい限りです。現在はラインハルトのところにおられるのですかな?」
 にこやかに笑いながら宰相が言った。
「いえ、サキさん……サキ・エッシェンバッハさんのお宅にご厄介になってますわ」
 それを否定し、現状を説明するステアリーナ。
「ほほう、そうでしたか。ところで、お国のセルロア王国では、貴殿が我が国に亡命されたことを知っているでしょうかな?」
「いえ、知らないと思います。想像はできても、確証はないと思いますから。どこの国へ行くか、という手がかりは何も残してこなかったと思いますし」
「わかりました。折を見て、我が国からはっきりと宣言しておきましょう。ご安心下さい」
 宰相は国対国でステアリーナの亡命を処理するから心配はいらない、と笑って見せた。
「それで、我が国で何をなさるおつもりですかな?」
 途端に宰相の目が鋭くなる。だが、別に裏があるわけでもないステアリーナは、それで気後れすることはない。
「特にこれと言って目的はありませんわね。できれば静かに暮らしたいと思うのですが……」
 それは本音であった。あくまでも、ショウロ皇国『では』静かに暮らせればいいと思っていたのである。
 であるからして、さすがの女皇帝も、『蓬莱島では好き放題やるつもりである』ことまでは察することができなかった。
「そうですか。できましたら貴殿の技術を若手たちに伝えていただけると有り難いのですが……」
 そう言いかけた宰相を、女皇帝は手で制した。
「ユング、今はいけません。ステアリーナ殿は、お国での出来事に疲れきっているはず。その疲れが癒えたなら、あらためてお願いすればいいのです」
「は、陛下」
「ステアリーナ殿、今はお身体と心を休めてくださいね。何か必要なものがありますか?」
 親身に声を掛ける女皇帝に、頭を深く下げるステアリーナ。
「ありがとうございます。陛下。今は特にございません」
「そうですか。……それでは宰相、我が国の魔法技術者(マギエンジニア)である証明書、というのはあったかしら?」
「いえ、特には」
「そう。……どうしましょうか、ステアリーナ殿を我が国が保護している事を証明するには……」
「陛下、ジン殿からいただいた指導者(フューラー)から教わった中に『戸籍』というものがありましてですね……」
「ああ、それは私も習いました。ですがすぐに行えるものではありませんし……」
 国民を把握するということは管理だけでなく、色々な福祉などにも役立つのであるが、いかんせん『ローマは一日にして成らず』である。
「そうしますと、いかがでしょう、まずはショウロ皇国在住の外国人居住者に対し、何らかの証明書を発行する、という制度を作るのは?」
 宰相が代案を出してきた。パスポートやビザに通じるものがある。こちらは永住証明用であることが異なるが。
「そう、ね。その線で行きましょう。……ステアリーナ殿は栄えある第一号ですね!」
「え、え?」
 話がどんどん進んでいき、ステアリーナは付いて行けない。政治的な話は苦手だからだ。
 一方のラインハルトはその有効性を理解していた。
「陛下、証明書には是非、『肖像』を添付することをご検討ください。そして数年のサイクルで更新することも」
 仁から、現代地球の知識を転写させてもらったラインハルトだから言える助言である。
「ああ、いいわね。本人確認が楽に出来るし、他の人が使ったりするような悪用防止にもなるわね」
 その効果の程を想像し、女皇帝はすぐに採用した。
 こうして、ステアリーナはショウロ皇国在住の外国人登録者第一号と認定されたのであった。

*   *   *

 一方、同日、蓬莱島にて。
御主人様(マイロード)、幾つか報告があります』
 エルザと共にエドガー用の武器は何がいいか考えていた仁に、老君が語りかけてきた。
「うん、そうか。聞かせてくれ」
 ちょうど考えが行き詰まる、というか、何がいいか決めかねいていた仁は、気分転換を兼ねて報告を聞く事にした。
『はい。まず、以前手に入れたラルドゥスの短剣についてです』
諧謔かいぎゃくのラルドゥス』と名乗った魔族が使用していた短剣。追いかけたデネブ30が斬りつけられながらも奪い取ったものである。
御主人様(マイロード)は生物素材と仰いましたが、その通りでした。あの『巨大百足(ギガントピーダー)』に極めて近い生物のものと判明しました』
「なるほど……」
 巨大百足(ギガントピーダー)は仁も知らなかった魔物である。その場では判別できなかったのも無理はない。
巨大百足(ギガントピーダー)に酷似していましたが、似て非なる魔物の可能性もあります。とはいえ、節足動物系の魔物であることには疑いの余地がありません』
「要するに外骨格、か。カマキリの鎌とか、クワガタのアゴとか」
『そういうことです』
 軽銀よりも硬い外骨格を持つ生物がそうそういたら堪らないと思いながら、仁はその情報を消化する。
「そうか、エドガーの装備、あれを使ってみようか、エルザ」
「……あれ、って、巨大百足(ギガントピーダー)の、殻?」
「そうさ。軽いし、丈夫だ。ナイフと手甲、それに籠手を作るというのはどうだろう?」
 エドガーの装備について相談を再開した仁とエルザだが、老君にはまだ報告する内容が残っていた。
御主人様(マイロード)、まだ報告することがあります』
「お、そうだったか、すまん。……それじゃあ報告頼む」
『はい。2点目は、『モグラ』についてです』
「モグラ?」
 意味がわからず、聞き返す仁。老君はすぐに説明を開始した。
『地底探査用の魔導具です。先日の巨大百足(ギガントピーダー)が出て来た事を踏まえ、調査をした方がよろしいかと』
「ああ、確かにそうだ。で?」
『はい、私では制限が掛かっていて作れない魔導装置(マギデバイス)の製作をお願い致します』
 老君には、製作者たる仁の許可なしには作れないものが幾つかある。今までに存在しなかった新型の『魔導具』もその一つだ。
『構造はこのようになっております』
 老君が魔導投影窓(マジックスクリーン)に映し出した構想図を確認する仁。
 円筒状の本体があり、先端部にはハイパーアダマンタイトのチップが付いている。これで掘り進むわけだ。
 掘った岩石・土砂は、円筒内部に備えた転移門(ワープゲート)により、所定の場所へ転送する。
 円筒本体は、側面に設けたゴーレムエンジン駆動のキャタピラーにより前後進できる。
「うん、よくできてる。で、俺に作って欲しい魔導装置(マギデバイス)というのは?」
 これで十分な機能を備えていると仁は感じていたのだが。
『はい。『掘削(ディグ)』を使える魔導具です』
「ああ、そういうことか」
 仁は納得した。
 温泉を掘る時、仁は『掘削(ディグ)』を使う。これは土属性魔法では初級に分類され、本来は落とし穴を掘って敵を落とす魔法なのだ。それが仁にかかると、地下トンネルを掘ることに使われる。
 元々、並の、いや、上級の魔導士でも、5メートル以上離れた場所まで穴を掘ることは困難である。距離の二乗に反比例して、術者の魔力は弱くなるものだからだ。仁が例外中の例外なのである。
掘削(ディグ)』で取り除かれた土や岩は、穴から噴き出すようにして排出される。これにも魔力が使われるから、穴が深くなればなるほど、並の魔導士では扱いきれない事が想像できるというもの。
「『掘削(ディグ)』ならおそらく地中に異物があった場合、破壊せずに発見できるだろうからな」
『そうなのです』
 先日、巨大百足(ギガントピーダー)が這い出してきた穴の調査中に見つけたという謎の魔導装置(マギデバイス)。外見からは用途も名称もわからなかったのである。
「わかった。すぐに作ろう」
 仁は老君の意図を見抜き、請け合ったのである。
『3点目は、魔族対策として、『軽量化の魔導具』を蓬莱島勢全員に装備させましょう、という提案です』
 重力魔法対策である。仁も、先日それで助かっていたのですぐに承認した。
『それでは御主人様(マイロード)のご家族たち、礼子さん、お付きの自動人形(オートマタ)隠密機動部隊(SP)第5列(クインタ)、そして蓬莱島ゴーレム勢、の順に装備させていくことにします』
「うん、それでいい」
 こうして更なる強化が図られていくのであった。
 お読みいただきありがとうございます。

 20140603 08時48分 表記・誤記修正
(旧)エドガーの装備、それを使ってみようか/……それ、って、
(新)エドガーの装備、あれを使ってみようか/……あれ、って、

(誤)ナイフ
(正)短剣
 ラルドゥスが遺していったのは短剣でした。

 20140705 08時16分 表記修正
(旧)まずはショウロ皇国以外の外国人居住者に対し
(新)まずはショウロ皇国在住の外国人居住者に対し
+注意+
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