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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

02 ブルーランド篇

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02-07 今度こそ、冷蔵庫

「さて、じゃあ今度は、売れる物とは何か、だな」
「そうね、ジンに言われたように、使う側の事を考えなきゃね」
 少しビーナもわかってきたようだ。
「何かないかしら」
 そこで仁は、以前考えていて作れなかった物を思い出した。
「なあビーナ、この辺は暖かいよな」
「そうだけど?」
「雪も降らないよな」
「そうね、あたしも雪って実物見たこと無いわ。遠くの山が白くなってるのを見るくらい。それがなにか?」
 仁はビーナを試すように、
「なあ、さっきのペルシカの実だけど、どのくらい保つと思う?」
「え? そうね、熟れてるからいいとこ2日ってとこかしら」
 そう答えたビーナに仁は、
「もっと長く保存できないか?」
 と尋ねる。少しビーナは考え込むが、ぱっと顔を輝かせて、
「そうか! 食べ物を保存する魔導具!」
「正解」
 仁も笑う。
「そうね、そういう魔導具ってあまり聞いたことないわね」
 そう答えるビーナに、
「そもそも、食べ物ってどうやって保存する?」
「そうね、乾燥させたり、塩漬けにしたり」
 そこで仁は、
「雪の降るような地方では、降った雪の中に野菜とかを埋めておくんだぜ」
 そう言ってみる。するとビーナは、
「そっか、冷やすっていう手もあるんだ。でも大変よ? 氷系の魔法は連続して使うと魔力消費が半端無いから」
 そんなビーナに向かって、仁はにやりと笑い、
「だからこそだろ。そういう魔導具作りに挑戦してこその魔法工学(マギクラフト・マイ)……魔法工作士(マギクラフトマン)じゃないか」
 あやうく魔法工学師マギクラフト・マイスターと言いそうになった仁。ビーナはそれには気づかず、
「そっか。そうよね。やってみるわ!」
 そう勢い込んだビーナだったが、
「あ……ダメ。もう魔石(マギストーン)の在庫がないの。かといって買うお金もないし」
 うなだれ、しゅんとしてそう呟く。そんなビーナに仁は、
「これ使っていいよ」
 礼子が持ってきた魔石(マギストーン)を2個、作業台に乗せた。1つは火属性、もう1つは土属性。
「え? ダメよ、そこまでしてもらうわけにはいかないわ」
 受け取れないと拒むビーナ、だが仁は、
「それじゃあ、新しい魔導具が出来て、売れて儲かったら返してもらうということにしよう。それならいいだろ?」
「う……また借金が増えちゃうけど……こうなったらもう思い切るしかないわね。ありがたく使わせてもらうわよ」
「よし、そうこなくっちゃ。じゃあ、構造を考えようか」
 冷蔵庫という物を知っている仁にしてみれば、半分完成したような物だが、ビーナにとっては違う。
「そうね、形は箱、かしら。蓋を付けて開け閉めできるようにして、中に野菜とかを入れる。で、中が冷える、と」
「そうだな、基本はそんなところだな」
「箱と、冷やす魔法、その2つが肝心よね」
「そう思う。箱は、できるだけ熱を伝えないようにした方がいいだろう」
 仁がそう言うと、
「なんで……ああ、そうか。冷やしたいのは中だけだものね」
 なかなか鋭い一面を見せるビーナである。
「そういうこと。だから箱の壁は厚くして、余裕があれば火に対する結界を仕込む」
「火の?」
「ああ。火に対する結界というのは、実は寒さも防ぐんだぜ?」
 要するに熱を遮断するということ。そう指摘した仁に、
「そうなんだ……気が付かなかった」
 そう呟いたビーナは仁を見つめて、
「あんた、もしかしてすごい?」
 それに反応したのは礼子。
「お父さまは世界一です」
「はいはい。そうよね。あんたのお父さまは世界一。……そうすると、問題は冷やす魔法よね」
 とりあえず流すビーナ。そして顔をしかめる礼子。仁はマイペースに、
「冷やすだけなら簡単だろ? 氷を出す魔法があるじゃないか」
「1番簡単なのが(アイス)。そのものよね」
 (アイス)は水や物を凍らせる魔法である。
「それでいいんじゃないか? 箱の中に氷を作って、その氷が無くなったらまた氷を作る」
「あっ、そうか! そうすれば、常時作動の必要はないわけよね!」
 だんだん構想が固まってくるビーナ。
「ああ。だから……」
 仁が魔法制御の流れ(マギシークエンス)を口にしようとすると、
「ちょっと待って。あたしに言わせて。……氷作製、氷監視、氷作製、の繰り返し。で、氷監視の内容は氷が無くなったら氷作製」
 ちょっと考えて仁が付け足す。
「そうだな。氷が無くなるより少し前、の方がいいんじゃないかな。あとはそれでいいと思う」
「うんうん、出来そうな気がしてきた」
 そこでまずは箱を作ることにする。基本は木で作り、要所要所を青銅で補強。縦型、つまり現代の冷蔵庫型にし、てっぺんに氷部屋を作った。
「ここに氷を作るわけね」
「そうだ。冷気は下へ下がるからな。氷は上が基本だ」
「ジンのそう言う知識がうらやましいわ」
 そして肝心の冷却部分。魔導基板(プレート)魔導式(マギフォーミュラ)を書き込んでいく作業だ。
「こうして、こうでしょ、ここはこう、っと」
 頭を悩ませながらも少しずつ書き込んでいくビーナ。この『書き込む』というのももちろん魔法を使ってである。
「そこはこうした方がいいと思うんだが」
「あ、そうね、その方が短くてすむわよね」
『焼き付け』と呼ばれる最後の作業前なら修正はいくらでもできる。仁はビーナの監修をしながら、まずまずの魔導式(マギフォーミュラ)を構築していった。
「よし、これで終了。どうかしら、ジン?」
 魔導式(マギフォーミュラ)に目を通した仁は、
「うん、いいと思う。これなら箱内に簡単な結界も施す余裕が出来そうだ」
「そうなのよね。魔導式(マギフォーミュラ)の上手下手で、こんなに魔力消費が違ってくるなんて初めて知ったわ」
 そして魔導基板(プレート)を組み込み、動力源の魔石(マギストーン)をセットすれば完成だ。
「出来たわ!」
「お疲れさん。さっそく試してみよう。中に入れるのはさっきのペルシカでいいな」
「そうね」
 それで、残っていた12個のペルシカを中に入れ、
冷却(クーリング)
 早速動作させてみる。少し待ってドアを開けて見ると、箱内部のてっぺんに氷が出来ていた。これなら上手くいきそうである。
「それじゃあ、じき夜になるから俺は一旦帰るよ」
「そう? 今日はありがと、ジン。明日も来てくれる?」
「ああ。そんじゃな」
 そう言って仁は、礼子と共にビーナの工房を出て行ったのである。
「……あ」
 仁が出ていってしばらくして、
「そういえば、仁ってどこに住んでるのかしら」
 ビーナの問いに答える者はいなかった。
 カイナ村では作れませんでしたが、ついに冷蔵庫完成です。仁一人で作ったなら、温度管理とか出来るようにしたかもしれませんね。
 お読みいただきありがとうございます。

 20141024 13時41分 表記修正
(旧)もう魔石(マギストーン)のストックがないの
(新)もう魔石(マギストーン)の在庫がないの
+注意+
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