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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

02 ブルーランド篇

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02-06 へんじがない。ただの……

「わかったか? これじゃあ欠陥商品と言われるぞ」
「そ、それならどうすればいいの?」
「こういう場合は、何時間結界を張るという指示をあらかじめ出しておくか、少しだけ風に対する強度を弱めておくかするんだ」
 その説明にビーナは首をかしげる。
「時間指定はわかるけど、風に対する強度って何?」
「声で解除する方式だろ? 声ってのは空気の振動なんだよ。だから弱い風なら通すようにしておかないと声が届かないのさ」
 その説明にもビーナは首をかしげたままである。
「声が空気の振動? なにそれ?」
 仁は溜め息をつく。理科の授業までする気はない。
「まあそう言うもんだと思っておけばいいよ。最後に1つ、この強度の結界を張ったら、この魔石(マギストーン)だと1分以内に魔力切れになると思うんだが、そんな短い時間しか張れない結界に意味あるのか?」
「あっ」
「な、性能追求だけじゃなく、使い勝手とか、バランスとか考えなきゃ駄目だって事だ」
「ばらんす?」
「ああ、偏らないようにほどほどに、って意味」
「うーん、そっかあ……」
 まだ2つについてしかアドバイスしていないが、ビーナも自分の作品の欠陥に気が付いたらしく、腕を組んで考え込み始めた。
 そこへ礼子が戻ってくる。
「お父さま、戻りました」
「ああ、ごくろうさん」
「お父さま!? 今、お父さまって言った?」
 仁を呼んだ『お父さま』というセリフに驚くビーナ。
「あれ、話してなかったっけ? 礼子は俺が……まあ造った自動人形(オートマタ)だからな」
「お、お、自動人形(オートマタ)!?」
 目を見開いて固まるビーナ。仁はそんなビーナに気が付かず、礼子に向かい、
「それで、魔石(マギストーン)は?」
「廃棄場所が地底深くだったのでとりあえずこれだけ集めて来ました」
 そう言って、さっき露店で見たものと同じくらいの大きさの魔石(マギストーン)を10個、仁に手渡した。
「お、これならちょうどいい。よくやった。そんで、桃もどきは?」
「はい、カゴに入れて表に」
 仁がビーナの工房の外を見てみると、大きめのカゴに20個ほどの桃もどきが入れられていた。
「おし、ごくろうさん」
 そして仁はビーナを見返ると、まだ固まっていた。
「おーい、ビーナ」
 固まったままである。
「へんじがない。ただのしかばねのようだ」
「お父さま、彼女はまだ生きていますが」
 礼子から容赦のない突っ込みが入った。
「わかってるよ、1度言ってみたかったんだよ」
 そう言って仁は、軽くビーナの頬を叩いてみた。
「あ、な、なによ、痛いじゃない!」
 どうやら再起動したようだ。
「いや、だから、さっきから呼んでるのに返事しないから」
 仁がそう言うとビーナは慌てて、
「はっ、……そうよ、お、自動人形(オートマタ)ですって!? 古代遺物(アーティファクト)級じゃない! どうやって手に入れたのよ?」
 仁はそれを聞いて、あー、また面倒なことになりそうだ、と感じ、誤魔化すことに決める。
「えーと、もっとずっと北の方にある遺跡で見つけて、故障していたのを直したんだよ。それで俺に懐いているのさ」
 そう答えると礼子がちょっとだけ眉をひそめたが仁は気が付いていない。
「へ、へえ。運がよかったのね。そっか、それでさっきはあたしの杖を平然と受け止めたのね。古代遺物(アーティファクト)だったら納得だわ」
 最初は『造った』と言っておいて、今度は『直した』と言っているのだが、礼子が自動人形(オートマタ)だったことに驚いているビーナは細かいことに気が付かず、上手い具合に納得してくれたようなので、
「それで、礼子に果物を採ってきてもらったんだが、食べるだろ?」
 そう言って外のカゴを指差すと、ビーナは再び目を見開き、
「な、なな、あれって、『ペルシカ』じゃない!」
「ペルシカ?」
 聞き慣れない名前に仁が聞き返すと、
「持ってきた本人が知らないの? ロイヤルフルーツとも呼ばれる、東の島国から輸入される高級品よ? 美味しくて、栄養豊富で、貴族だってなかなか口に出来ないっていう」
 仁はまたやらかしたか、と思ったがもう遅い。
「まあ、えっと、礼子を見つけた場所にたくさん成ってたから採ってきただけなんだ。いいから食べてくれよ」
「いいの!? 露店で売れば大儲けできるわよ?」
 ああ、そう言う手もあったか、と思う仁であるが、そうするとどこで見つけたのか、とかいろいろ面倒になりそうなので、
「売る気はないよ。弟や妹にも食べさせてあげてくれ」
 そう言った。そうしたらビーナは大喜び、
「ほんとにいいのね? じゃあ2つもらうわ!」
 そう言ってカゴから2個ペルシカを取り、家へと向かった。仁は、残りのペルシカを外に出しっぱなしにするのもまずいので、カゴを持ってビーナに続く。
 ビーナは丁寧に皮を剥き、慎重に果肉を切って皿に盛り、弟妹のところへと持っていった。
「ほら、おいしい果物もらったからお食べ」
「うん!」
 ナナとラルドは大喜びでペルシカを食べていく。
「おいしいね!」
「そう、全部食べていいのよ」
 ビーナはにこにこしながらナナとラルドが食べるのを見ていた。

 ビーナが空になった皿を持って台所へ戻ると、仁がペルシカを食べているところだった。種が6個転がっている。1人で随分食べたな、とビーナが思っていると、
「そこにビーナの分剥いてあるぜ」
 見ると、3個分のペルシカが剥かれて皿に乗っていた。仁が食べたのは3個だったようだ。
「い、いいの?」
 おそるおそるビーナが聞くと、
「いいって言ってんだろ。傷む前に食べた方がいい」
 そうまで言われてビーナはようやくペルシカに手を伸ばした。一切れ口に運ぶ。
「おいしい……!」
 以前、師事していた魔法工作士(マギクラフトマン)、グラディア・ハンプトンのところで一切れだけ口にする機会があったのだが、今口にしたそれは、数段上である。
 それもその筈で、この国に流通しているのは青い内に収穫されて運ばれてくる内に熟したもの。一方、仁が持ってきたのは木で熟したもの、しかも採れたてである。
「こんなに美味しいとは思わなかったわ!」
 あっという間に皿の上のペルシカは無くなってしまった。
「残りはビーナ達にやるから、早めに食べな」
 まだカゴには10個くらいも残っていた。
「……いいの?」
「だからいいって言ってんだろ」
 仁がくどいほどに言って初めてビーナはペルシカを受け取り、
「ありがと、ジン」
 そう礼を言ったのだった。
 礼子は「遺物」と言われたのが気に入らなかったようです。
 そして余談ですが作者はモモが大好きです。
 お読みいただきありがとうございます。

 20130714 16時42分 誤字修正。
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