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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

13 拠点充実篇

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13-33 反省会

 百足退治が終わった翌日、つまり7月3日の蓬莱島。
 ステアリーナも戻って来て、反省会めいた事が行われていた。

「今の防衛力で十分だと思っていたけど、不十分だと思い知った」
 とは仁の言。普通なら、蓬莱島の現状戦力で瞬殺できないような相手はいないとさえ思っていたのだ。
 そして、ラインハルトたちも、仁に心配しすぎだと言うこともできなかった。
「使わなければいいだけで、万一のことを考えれば、強くて悪い事はないかもだね……」
 サキまでがそんなことを言う。昨日の経験は強烈だったようだ。
「ごしゅじんさま、やはり武器の特性がやや偏っているということがあると思います」
 これはアンの発言だ。エルザやラインハルトは知っていたが、サキ、ベルチェ、ミーネ、ステアリーナは初めて目にする。
 普段は老君の片腕として、第5列(クインタ)たちの報告を受け、仁や蓬莱島に不利になるような事態を未然に防ぐような計画を立案、指示しているのである。『裏』の元締めと言っていいかもしれない。
 今回は軍師としての意見を欲しがった仁の希望により同席している。
「遠距離ならレーザーと魔力砲(マギカノン)ですね」
 アンの分析は続く。
「中〜長距離なら電磁誘導放射器インダクションラジエータがありますが相手によっては効かない可能性があります。近接なら超高速振動剣バイブレーションソード麻痺銃(パラライザー)、戦力としてゴーレム軍団とタイタン」
 仁は黙って聞いていた。
「防御として障壁結界(バリア)魔力妨害機(マギジャマー)があり、サポートとしては治療器(トリートメンター)と治療薬ですね」
 そしてアンは別角度からの考察も述べた。
「対剣士、対魔導士などの対人用としては十分です。対魔獣としてみると、殲滅戦はいいとして、局地戦といいましょうか、今回のようなケースへの対応ができませんね。そしてタイタンの武装が無いというのがまずいです」
 聞き役に徹しようとしていたラインハルトだったが、黙っていられなくなった。
「だ、だが、今回のような相手がそうそう現れるとも思えないのだが?」
「いえ、以前ラインハルトさんが倒した凶魔海蛇(デス・シーサーペント)や、ハリハリ沙漠にいるという砂虫(サンドワーム)などがいい例です」
 これは礼子。どちらも過去、礼子が倒していたが、いずれも周囲への被害は無視しての攻撃であった。
「まあ、それに関しては今回使った魔法剣、いやプラズマソードを実用化するつもりだ」
「……打撃系の武器がない」
「エルザ!?」
 エルザがそんな発言をするとは思わなかった仁は驚いた。いや、仁だけでなく、ラインハルトたちも。
「……私たちは仲間。ジン兄を手伝うのは、当然」
「……確かにな。一人で抱え込みすぎ、ってこの前エルザが言ったんだったな。ジン、すまん。我々もジンに甘えてる面があったな」
「そうね。ジン君、突き刺す系の武器もないわね?」
「縛る、というかロープや鎖で身動きできなくする、というやり方もあるよ?」
「光、水、弾丸……はあるから、熱とか氷とか?」
 なかなか有用なアイデアを出して貰えて仁は内心喜んだ。槍やドリル、メイス、熱線、冷凍、アンカーロープ等々。
 これに開発中の魔力爆弾(マナボム)と重力兵器が加われば、かなり理想に近づけるだろう。
「あとは、威力重視した武器が多すぎますわ」
「確かにそれは言えるな。特に近接。一撃必殺系が多すぎるだろうな」
 仁もそれは認めた。対人で非殺傷が麻痺銃(パラライザー)系のみというのも偏っているといわれる所以であろう。
「ナイフとか吹き矢系の飛び道具や小口径の銃とかかな?」
 ブレーンストーミング、という手法がある。集団でアイデアを出し合うことによって互いに刺激を与え合い、アイデアを出しやすくする技法である。
 それに近いことが今なされていた。

『(ナイフ、銃、槍、メイス、棒、ドリル、アンカーロープ、熱線、冷凍ですか……)』
 その話し合いの一部始終を見聞きしていた老君は、さっそく可能なところから手を付けていくのである。

*   *   *

 武器についての話し合いが一段落するとティータイム。礼子の配下、ルーナとソレイユがお茶を運んできた。
「ところで老君、あの時『まだ2つ、手が残っている』、と言っていたけど、どんな手段だったのか教えてもらえるかな?」
 お茶を飲みながらラインハルトがそんなことを言った。
『はい。一つは氷魔法で凍らせることです。節足動物……虫ですから低温には弱いと思ったのです。もう一つは礼子さんにマギカノンの砲弾を投げ付けてもらうことでした』
 確かに、有効そうではある。
『ですが、御主人様(マイロード)の方法には及びませんでした』
「俺だって冷却は思いつかなかったよ」
 仁は笑ってそう言った。
 一同はそのまま次の話題に移行する。
「あの巨大百足(ギガントピーダー)について、これまでにわかったことを老君から説明して貰おう」
 お茶を一口飲んでから仁が言った。
『はい。巨大百足(ギガントピーダー)がどうしてあれ程大きくなったか、はまだ不明ですが、素材としての分析はかなり進みました』
 蓬莱島戦力を手こずらせた巨大百足(ギガントピーダー)は、逆に言えば優秀な素材になると言うことである。
『外皮は非常に堅牢で、レーザー光線を約90パーセント反射します。追加加工することで更に反射率を上げることも可能と思われます』
 盾や鎧に使えそうな素材である。
『地底に棲息する魔物がどうしてそんな耐光性を持ったのかは今のところ不明です』
 地底に住む魔物は光に弱い、と言うのが定説である。現に地底蜘蛛(グランドスパイダー)地底芋虫(グランドキャタピラー)は光を嫌う。
『体液はほとんどの物を溶かしてしまうことがわかっています。今のところ判明している溶かされない素材は、巨大百足(ギガントピーダー)自身の体組織と地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸くらいです。海竜素材は溶かされます』
「地中にいる魔物から取った素材以外は溶かされるのか……」
『はい。ぶつ切りにされた5体から、体液約2トンを採取し、地底蜘蛛(グランドスパイダー)樹脂で作った容器に保存、魔力庫(エーテルストッカー)に保存済みです。成分は引き続き分析中』
 酸やアルカリ、といった既知の化学物質ではない可能性が高そうだ。
「アダマンタイトでも溶けるのか?」
『はい。軽銀、金、白金、ミスリル、アダマンタイト、ステンレスなどでも溶かされます。ただし溶ける速度はゆっくりですが。ランド達の足も少しですが溶けていましたし』
超高速振動剣バイブレーションソードも溶けていたのか?」
『あれだけの数を斬ったため、大半は再生しないと使い物になりません』
「わかった。分析は継続してくれ」
 仁は、巨大百足(ギガントピーダー)の謎の解明、その一端になるのではないかと思った。もちろん兵器への転用も視野に入れてはいる。
『付け加えますと、揮発性が高く、現場にはもう体液は残っていません。蒸発した気体は、どういうわけか無害になる模様。理由は調査中です』
 紫外線や化学反応で無害化する農薬もあった気がする、と仁は思い出した。毒ガスにならなくて良かったというべきだろう。

「ランドたちの損傷は修理したが、クライン王国で俺が作った汎用ゴーレムはどうしたろう?」
「……!」
 その話題にエルザがぴくっとなった。仁が汎用ゴーレムを作る、その現場にいたのだから。そしてエルザは、仁が自分の作品に愛着を持っていることを知っている。
『昨日、グロリアさんたちが現場検証に来た後。先程10体全部回収終わりましたが、ひどいありさまです』
「そうだろうな」
『言葉で説明するよりその目でご覧下さい』
 老君は魔導投影窓(マジックスクリーン)に回収した汎用ゴーレムを映し出した。
「……ひどいな」
 片腕、両腕が無いもの、片脚、両脚が無くなったもの。胴体の凹み、傷、穴。頭部破損、欠損。
 原形を留めていないものもあった。
「直すことは簡単だ」
 ここは蓬莱島なのだから。
「だけど……もうあの連中には渡したくないな」
 仁は本音を口にした。
「うん、それでいいと思う。王女様と王様は、多分誠実な人。それに……リシアさん、グロリアさんやボールトンさん、ジェシカさんは」
 共にクライン王国に行ったエルザの意見も、仁とほぼ同じだった。
「僕は話に聞いただけだが……クライン王国は、あまり王の権力は強くないらしいね。旧態依然とした体制が直らないようだ」
 外交官だったラインハルトの意見はクライン王国の歪みを言い表していた。
「あなた、それって、領地を持った貴族が複数集まり、その中からとりあえずまとめ役を選んで王に祭り上げておこう、ということですの?」
「そうだな、ベル。だいたいそう言う見方で合ってる」
「あの……ね、確かな裏付けがあるわけじゃないけれど、フランツ王国やセルロア王国が裏で手を回して、元々強くない王家の力を更に削ぐ工作をしているという噂があるの」
 セルロア王国出身のステアリーナが言うからにはかなり可能性が高そうだ。
『そういうことでしたら確かにその事実はあります。行っているのは実質セルロア王国と言っていいでしょう』
 第5列(クインタ)を各地に派遣している老君だからこその情報である。これまでは特に仁に取って不利に働くとは思えないので放置していた、とも付け加えた。
 そのこと自体に問題は無い。国家間の策謀にまで踏み込んでいく気は無いのだから。ただ、それが自分と自分の知り合いに影響を及ぼすなら話は別である。
『能力は無い癖にプライドだけは高い、そんな貴族に的を絞って資金などの援助をし、巧妙に持ち上げ、それとなく離反の種を播いているようですね』
「兵は詭道なり、か」
「ジン、なんだい、それ?」
 思わず漏れた仁の呟きを、ラインハルトが聞きとがめた。
「え?あー、兵は詭道なり、ってか? えーと、俺の世界の『孫子』という軍事の天才が遺した言葉……かな?」
「ほう? ジン、そうすると君は、軍師としての知識もあるんじゃないか!」
「いや、教養、というか、古典の引用というか、ことわざ的、といえばいいか……その程度の知識しかないんだよ」
 実は漫画で仕入れた知識だったりする。
「で、なんだっけ……ああ、そうだ、戦争というのは戦わずして勝つ、というのが最上だ、と言っていたような……気がする」
 このあたりが仁の限界である。
 実際は『百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり』、と言っている。つまり、百回戦って百回勝つよりも戦わずに勝つ方が更に上だ、と言っているわけだ。
「なるほど、戦わずして勝つ、か。そのための外交であり、謀略というわけか。確かに、人的被害や国土を荒らさないと言う意味では戦って勝つよりも戦わずして勝つという方が上だ」
 さすが、ラインハルトは孫子の言わんとするところを酌み取っていた。
「ちょ、ちょっとラインハルト、話がずれてるよ」
 サキにそう言われなければこのまま外交や謀略の話に花が咲くところだった。
「そうだったな。……離反の種、か。まあそっちは実害が出ない限り置いておこう。ただ動向は掴んでおいてくれ」
 先程も言ったように、国同士が牽制し合っている間は、仁も何かする気は無かった。
「リースがさっさとエゲレアに嫁いでしまえば安心だなあ」
 だが、さらりととんでもないことを口にする仁である。
「カイナ村にとって一番いいのはなんだろうな?」
 仁はそこにいる一同の顔を見渡してそう言った。
 お読みいただきありがとうございます。

 20140510 12時19分 誤記・表記修正
(誤)特製
(正)特性

(旧)王家の力を削ぐ工作を
(新)元々強くない王家の力を更に削ぐ工作を

 20140510 21時28分 表記修正
(旧)グロリアさんやボールトンさん、ジェシカさんは
(新)リシアさん、グロリアさんやボールトンさん、ジェシカさんは
 リシアごめん……。

 20150309 修正
(旧)『体液はほとんどの物を溶かしてしまうことがわかっています。今のところ判明している溶かされない素材は、巨大百足(ギガントピーダー)自身の体組織、『海竜(シードラゴン)』の表皮、羽膜、それに地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸くらいです』
「魔力の強い魔物から取った素材以外は溶かされるのか……」
(新)『体液はほとんどの物を溶かしてしまうことがわかっています。今のところ判明している溶かされない素材は、巨大百足(ギガントピーダー)自身の体組織と地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸くらいです。海竜素材は溶かされます』
「地中にいる魔物から取った素材以外は溶かされるのか……」

 22-08で、判明した事実と矛盾するので修正しました。
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