挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

13 拠点充実篇

440/1472

13-28 巨大百足

『緊急事態発生』
 カイナ村監視システム『庚申』から老君への緊急連絡が入った。老君はすぐに魔導回線を繋ぐ。
『イナド鉱山から5匹の巨大百足が出現しました。体長約50メートル』
 地底で掘削していた汎用ゴーレムからの情報で、老君も概要は把握していた。

 掘削していたら地下の空洞に出たこと。
 そこには魔獣が住んでいたこと。
 体表は硬く、汎用ゴーレムの力ではまるで相手にならなかったこと。
 地上への出口を見つけた魔獣は一気呵成に地上を目指したこと。
 その口から吐かれる粘液が掛かった物質は白煙を上げて溶けること。
 などである。
『姿形はピーダーという魔物に似ているのですが』
 ピーダーは百足型の魔物であるが、せいぜい体長50センチ。間違っても50メートルではない。
巨大百足(ギガントピーダー)とでも呼びますか……』
 その巨大百足(ギガントピーダー)は無数の脚を蠢かせてイナド鉱山を後に、山を下っていく。
『どこへ向かうにしても、御主人様(マイロード)に連絡しなくては』

*   *   *

 仁はまだ『仲間』と共に蓬莱島にいた。
「な、何だ、これは……」
「……不気味」
 地下1階にある司令室で魔素映像通信機(マナ・テレカム)を通して見るその映像は臨場感があり、女性達はもちろん、仁やラインハルトでさえ嫌悪感を持たざるを得なかった。
地底蜘蛛(グランドスパイダー)が可愛く見えるな……」
 その巨大百足は山をゆっくりと下っていく。時速は20キロくらい、思ったよりは遅いのが救いだ。
「カイナ村へ向かうのか それとも……」
 襲うのがカイナ村にせよトカ村にせよ、このまま指を咥えてみているわけにはいかないと、仁は立ち上がった。
「ジ、ジン、どうする気だい?」
 不安そうな顔のサキ。
「まさか、あいつらをなんとかしようと言うんじゃないだろうね!」
「そのまさかさ。カイナ村は言うまでもないし、トカ村には知り合いもいる。何とか出来るのは俺だけだ」
「……ジン兄、私も行く。怪我人が出るかもしれない」
 幾分青ざめた顔で、それでも気丈な姿勢を崩さないエルザ。
「よし、行こう。……ラインハルトたちはここで様子を見て、必要なら後背援護を頼む。老君はマキナを使って、逃げ遅れた人がいたら救助してくれ」
『承りました』
「……わかった」
 仁とエルザが部屋を出ていこうとした、その時。
「ま、待ってくれ! ボクも連れていってくれ! 何が出来るかわからないが、じっとしていられない!」
 サキが大声を上げた。
「わかったよ。行こう」
 3人は部屋を出ていく。残ったラインハルト、ベルチェ、ミーネ、ステアリーナは魔導投影窓(マジックスクリーン)を見つめていた。
 巨大百足(ギガントピーダー)は今、カイナ村とトカ村を結ぶ街道に出たところ。
 そこで1匹は右に、残り4匹は左に向きを変えた。右はカイナ村、左はトカ村である。
『トーゴ峠の麻痺結界、最高強度で作動させます。この結界は……』
 司令室に老君の声が響いた。続いて簡単な解説。ラインハルトたちは皆、仁の用意周到さに感心すると共に、それですら防ぎ切れそうもない脅威に背筋を寒くさせていた。
『トーゴ峠を越えられたら、カイナ村に非常警報を出します。二堂城シェルターに避難させて様子を見、百足がエルメ川を渡るようなら住民を崑崙島へ転移させる計画です』
 避難計画の説明。人的被害は出さずに済みそうなのが救いである。

「ペガサス1、発進する」
 仁とエルザ、サキはペガサス1に乗り、転送機へ移動する。同時にタイタン2を起動。礼子が操縦しているためか、タイタン2は最も総合性能が高いのである。
「ジ、ジン、あれも君が作ったのかい!?」
 タイタンを見てサキが驚いている。エルザも、何も言わないがその顔が全てを物語っていた。
 まずはペガサス1が転移。『庚申』からのポジションデータがあるから、誤差僅少で転移できた。不可視化(インビジブル)を展開する仁。
 そしてタイタン2が転移してくる。地上10センチという誤差しかなく、無事転移を終えた。こちらも即座に不可視化(インビジブル)を発動させ、カイナ村からは見えなくする。
 場所はトーゴ峠下、エルメ川の広い川原。見上げるトーゴ峠で閃光が走った。
「麻痺結界に引っかかったな」
 最強強度の麻痺結界。巨大百足(ギガントピーダー)は気絶こそしなかったが、衝撃は十分に受けたようで、向きを180度変えた。
 これで5匹ともトカ村へ向かう事になったわけである。とはいえ、トカ村までは直線距離で50キロ以上ある。それまでに退治すればいい。
「よし、行くぞ!」
 薄暮の中、仁はペガサス1をトーゴ峠上空へと移動させた。

*   *   *

「ま、まずい! このままだとトカ村かカイナ村か、いずれにせよ甚大な被害を受けるぞ!」
 ハインツ・ラッシュが下を見て叫んだ。
「わ、私は知らん! な、なんとかしろ! なんとかするんだ……!」
 バイヤー子爵は頭から血を流していた。噴き出した岩が当たったのである。更に混乱し、半ばパニック状態である。
「……あれは人間にどうこうできるようなものではない……」
 ボールトンは諦めの境地。
 そこへやってきたゴーレムが5体。蓬莱島から転送機で送られてきたランド21、22、23、24、25だ。
「ここは危険です、こちらへ」
「な、何だ、お前たちは? 何が目的だ!」
 ボールトンは不審に思い詰問した。
「我々はデウス・エクス・マキナ様にお仕えするもの。あなた方を守るよう指示されてきました」
「デウス・エクス・マキナだと? それは確か……」
「今はそれどころではありません。こちらへ」
 ボールトンが見れば、ハインツも、子爵も、そして1人残っていた荷馬車の担当御者も、同じ型のゴーレムに誘導され避難していく。
 見たことのない銀色をした構造物の中へ連れ込まれたと思ったら、3人が気を失うのが見えた。
 それを見たボールトンは、はっと身構えたが意味をなさず、他の3人と同様に意識を失ったのである。
『それでいいでしょう。そのままペリカン内に収容し、空中で待機していなさい』
 麻痺結界により意識を失わせ、ペリカン内で保護するという老君の指示であった。苦痛は伴わないので、蓬莱島の機密を守るにはこれがベターだと判断したのである。
 一応子爵の怪我は手当をしておく。とはいえ、自業自得なので消毒と血止めだけにとどめた。
 今のところ、他には保護すべき対象はなく、ペリカン3は空中へと舞い上がり、5体のランドたちは地上で警戒に当たった。

*   *   *

「まずは『光束(レーザー)』で攻撃してみる」
 最も高速の武器だ。照準さえ合えば、まず外すことはない。その照準も半自動である。
 仁は先頭を行く巨大百足(ギガントピーダー)に狙いを付け、引き金を引いた。
 ペガサス1の機首に付けられたレーザー砲から赤い光が放たれ、狙い過たず巨大百足(ギガントピーダー)の胴体中央に当たって……弾けた。
 正確には『反射された』のである。
 その金属光沢を持つ体表面に当たったレーザー光は拡散するように反射されたのである。
「うおっ!」
「……なんで?」
「な、なんだい、あれ?」
 レーザーの存在を知っているエルザは、仁と同じく信じられないような顔をした。だがレーザーは光であるが故に、当然光としての性質を持つ。
 つまり、反射率の高い物質には効かないのである。
 サキはといえば、光魔法を無効化する魔物がいるという事実に驚愕の表情を浮かべていた。
 周囲の立木や灌木が焦げている。反射したレーザーが当たったのだ。
「……すこしはダメージもあったようだな」
 その胴体中央部が少しだけ焦げていた。
 巨大百足(ギガントピーダー)といえど、超強力なレーザー砲の威力を100パーセント反射できたわけではなかったようだ。
 だが傷を受けたことで、先頭を行く巨大百足(ギガントピーダー)は更に凶暴化していた。
 お読みいただきありがとうございます。

 20140505 12時28分 誤記修正
(誤)二堂城シェルターに非難させて
(正)二堂城シェルターに避難させて

 20140505 16時43分 表記修正
(旧)消毒と血止めで留めた。
(新)消毒と血止めだけにとどめた。

 20140530 08時35分
 ライト(レーザー)光束(レーザー)に変更。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ