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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

02 ブルーランド篇

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02-04 助っ人

「何をなさるのですか」
 赤い髪の少女が握っていた棒を礼子はこともなげに取り上げる。その際、小さな火花が飛んだように見えた。
「え?」
「危ないおもちゃですね」
 礼子はそのひったくった棒を半分に折ってしまった。
「な、な、な……」
 その時、隣の露店のオヤジが、
「おい、騒ぐならよそでやってくんな。商売の邪魔だぜよ」
 そう文句をいったので、2人の言い争いに口を出すタイミングを失っていた仁が、
「あ、済みませんでした。礼子、よしなさい。そんで君、ちょっとこっちへ」
 そう言って赤い髪の少女の腕を取り、露店から少し離れた木の陰へ連れて行った。そして、
「連れの礼子が申し訳無い事したね、ごめん」
 とまず謝った。礼子は後ろで神妙にしている。少女は、
「あ、あ、あんたたち、いったい何者? 『麻痺の杖』を素手で持ったり、2つに折ったり……そうだ! あたしの『麻痺の杖』が! どうしてくれるのよ! 高かったのよ、これ!」
「とりあえず落ち着いてくれ」
 放っておくとまた騒ぎ出しそうだったので、仁は慌てて少女をなだめた。
「はあ、はあ」
 息を弾ませている少女に、
「とにかく自己紹介しよう。俺は仁。これは礼子。君は?」
「あ、あたしはビーナよ」
「よろしくな、ビーナ」
 そう言って仁は、礼子がまだ手に持っていた杖を受け取る。
「ふん、握りの部分に小さな雷属性の魔石(マギストーン)を仕込んであるのか」
「え?」
「それを杖全体に行き渡らせて、触れると感電するようにしたわけだな」
「え? え?」
「杖の材質は……トネリコ、か。確かに木としては魔力伝導はいい方だろうが、所詮は木だからなあ、効率は悪そうだ」
「え? え? え?」
「発動の魔導式(マギフォーミュラ)は……うわ、杜撰ずさんな書き方。魔力を半分以上無駄にしてるぞ」
「えええーーーっ!?」
 いとも容易く『麻痺の杖』の動作原理を解析していく仁に、ビーナは驚きを隠せない。
「あ、あんた、ジンって言ったわね、いったい何者なの?」
「俺は……魔法工作士(マギクラフトマン)だよ」
 折れた杖をビーナに返しながら仁はそう言った。魔法工作士(マギクラフトマン)の方が通りが良さそうだからだ。
「あなたも?」
「も、ということは、ビーナも魔法工作士(マギクラフトマン)なのか」
「そうよ。これでも2年、『グラディア・ハンプトン』先生の下でみっちり修業したんだから!」
 あまり大きくない胸を張るビーナだが、
「誰それ?」
 仁の反応はこんなもの。
「誰それって……知らないの?」
「ああ、知らない」
「『グラディア・ハンプトン』先生は高名な魔法工作士(マギクラフトマン)よ!」
「そうなのか」
 ムキになるビーナと、対照的に冷静な仁。
「まあとにかく、商品をけなしたり、杖を折ったりしたことはあやまるよ」
 あらためて詫びを入れる仁。ビーナも仁が素直に謝ったので、
「あ、あたしも殴ろうとしたのは悪かったわ」
 と頭を下げたが、何かに気が付いたように、
「そ、そうだ! あんた、あたしの作品がしょぼいって言ったわよね!?」
「ああ、だから謝るって」
「怒ってるんじゃないの、いえ、少しは怒ってるんだけど、」
 そこで言い淀むビーナ。顔をしかめたり、赤くしたりしながら俯いて考えていたが、やがて心を決めたらしく、
「しょぼい、って言ったってことは、あんたなら、もっと良いものを作れる、ってことよね? お願い! 力を貸して!」
「え?」
 思っても見なかった方向に話が転がっていくので、仁は面食らっている。
「お願い! どうしても、お金が要るの! それには、作った物を売らなきゃならないの! なのに1つも売れないの! もうどうしたらいいかわからないの! お願い! 力を貸して!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
 暴走気味のビーナを再び宥め、
「順番に説明してくれ。まず、ビーナはお金が必要なんだな?」
「そ、そうよ!」
「それはなぜ?」
「説明しなきゃダメ?」
 うつむき、上目がちに見つめてくるビーナ。さっきとはうって変わってしおらしげな仕草だ。
「そりゃまあ。手を貸すにしても、理由がわからないとな。だいたい俺に何のメリットがある?」
「う……わかったわよ。恥を忍んで話すわ。……弟と妹の病気を治すためよ」
「病気なのか。それで医者か、薬が必要、と。両親は?」
 そう聞かれたビーナの顔が曇る。そして悲しげな声音で言うには、
「あたしがグラディア・ハンプトン先生のところで学んでいた時に病気になって、2人とも」
「そう、か。ごめん、悪い事を聞いた」
 頭を下げる仁に、ビーナは明るい声で、
「いいのよ。それで、先生に教えて貰うための授業料を無理して作ったので、借金はあってもお金がないのよ」
 強気のビーナからまさかの事情が語られてしまった。仁はこういうのに弱いのだ。
「わかったよ。何が出来るかわからないけど、杖のお詫びもあるし、手伝ってやるよ」
「ほんと!? ありがとう、ジン!」
 飛び上がって喜ぶビーナ。
「じゃあ、どうしたらいいかしら?」
「そうだな、今日の所はもう店じまいして、ビーナの工房に案内してもらえるか?」
「え、ええ。汚いところだけど」
 そういうわけで、仁は会ったばかりの赤毛の少女、ビーナの手伝いをする羽目になったのである。
  2章ヒロインの登場時、ちょっと凶暴すぎるという御指摘がありまして、殴りかかる描写を修正しました。修正は前章に跨ります。

なんだかんだ言って頼まれると断れない仁でした。まあモノ作り大好きですし。
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