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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

12 ショウロ皇国錬金術師篇

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12-39 博覧会に向けて

 楽しい日々はあっと言う間に過ぎる。
 6月10日の午後、ラインハルト、ベルチェ、サキの3人は、一旦ショウロ皇国の家に戻ることとなった。
「当分、転移門(ワープゲート)はサキの家の納屋に置かせてもらうよ」
 仁がそう言うとサキも二つ返事で頷いた。
「ああ、そうしてもらえると嬉しいね」
「ここなら、僕の家からも近いし、人もあまり来ないし」
 ラインハルトも頷いた。
「くふ、人が来ないというのは喜んでいいことなのかな?」
 サキが自嘲気味に笑う。
「ま、まあ、今回に限ってはいいことだと思う……」
 仁もそうフォローするしかなかった。
「まあ、それはともかく、この眼鏡さえあれば、いつでも蓬莱島へ行けるというのは嬉しいね」
 レンズを魔水晶(マギクオーツ)に交換してあるのだ。
 魔水晶(マギクオーツ)は礼子の目にも使われている素材で、弱い光属性を持つ。魔力で屈折率を変えられるのが特徴だ。
「遠くも近くも良く見えるねえ。まったく、こんな日が来るとは思わなかったよ」
 つまり遠近両用眼鏡であった。
 近視のサキなので、遠くを見るときは度を強くし、手元を見るときは度を弱めればいい。
 魔力の弱いサキではあるが、それくらいのことはできるので、すぐに慣れ、今ではこれ無しでは過ごせないほどであった。

*   *   *

「え!?」
 家に戻ったラインハルトは、今年の『技術博覧会』が、ここバンネの対岸の町、コジュで行われるとの話を聞き、驚いていた。
 てっきり首都ロイザートで開かれるものと思っていたからだ。
「そうか、お前は国外に出ていたから知らなかったのか」
 ラインハルトの父、ヴォルフガングが意外そうな顔で言った。
「てっきりロイザートで聞いているものだと思っていたよ。……まあいい。お前はもちろん参加するのだろう?」
「はい。そして、ジン、それにサキも」
 ヴォルフガングは笑って頷く。
「わかった。彼等の分は私の方から申請しておこう。ジン殿が何を出品されるか楽しみだな」
「ああ、それから、ジンは助手1人を連れて行くそうですので、その分も申請お願いします」
「助手?」
「助手、です」
 ヴォルフガングはそれ以上詮索しなかったし、ラインハルトも助手について詳しくは言わなかった。

「……と、いうわけで、ジンとエルザ、それにサキの出場枠は確保出来たぞ」
 ラインハルトの部屋で仁はその話を聞いた。
「そうか、ありがたいな」
「で、ジンは何を出品する気だ?」
 ベルチェが淹れてくれたお茶を飲みながらラインハルトが尋ねた。
「それは見てのお楽しみだ」
 悪戯っぽく笑って答える仁だった。
「ラインハルトはあの船だろう?」
「うん、僕はあの外輪船を出そうと思う。あとは専用のゴーレムを作ればいい」
 ラインハルトは、初めから蓬莱島で作製した外輪船を出品することに決めていたらしい。
 だから材質も普通に手に入るもので作っていた、と言った。
 その外輪船は大きすぎるので、仁が後ほどこっそり運ぶことを約束していた。
「あと10日。ベルに怒られない程度に、ゴーレムの方も作るさ」
 そちらは自分の工房で作る、というラインハルト。
「そうか、それじゃあもし何かあったら、いつでも蓬莱島を頼ってくれよ」
 お茶を飲み干すと、仁は立ち上がった。
「ジン、もう行くのかい?」
「ああ。俺も出品するもの作りたいし、新婚の邪魔をするのも悪いしな」
「そ、そうか。それじゃあ、今度戻ってくるのは?」
 少し顔を赤くしながらラインハルトが尋ねる。
「一応、18日を予定してる」
 8日後を約束する仁。
「わかった。それじゃあ、楽しみにしてるよ」
 そう言って、仁とラインハルトは一旦別れたのである。

*   *   *

 仁は、サキの家に置いてある馬車、そこに備え付けられた転移門(ワープゲート)を確認した。
「おや、ジン、また帰るのかい」
 ちょうど外へ出てきたサキが仁を見つけた。
「ああ。18日にまた戻ってくる予定だ。そうそう、ラインハルトに聞いたが、サキも俺も、技術博覧会に出られるよう申請済みらしい」
「それはいいね。それじゃあボクも論文を完成させないとね」
 サキは、先日蓬莱島で考察していた魔法についての論文を出す予定だと言った。
 論文は地味ではあるが、その分出す者が少なく、新たな魔法理論が出てこないことが問題視されているそうだ。
「『工学魔法の働きと魔力について』、で書いている。わからない事があったら聞きに行くかもしれないね」
「ああ、いつでも来いよ。サキもファミリーなんだから」
「くふ、嬉しいね。それじゃあ、ジン、また会おう」
「ああ、またな」
 仁はまず、中間基地しんかいへと転移した。

 しんかいの転移門(ワープゲート)は、実はかなり特殊である。
 普通の転移門(ワープゲート)は受け入れ・送り出しが一対一対応しているのだが、しんかいのものはマルチ対応である。
 その秘密は、接続核(リンクコア)
 接続核(リンクコア)は、通常一対一で転移門(ワープゲート)同士を結んでいるが、しんかいの転移門(ワープゲート)はそれを複数持っているのである。
 それぞれの転移門(ワープゲート)に対応する接続核(リンクコア)を切り替えることで、複数の転移門(ワープゲート)からの転移を受け入れることが出来るし、また送り出せるのだ。

「これはこれで確実性が高いから、このままでもいいかな」
 周波数を変えるようなイメージで、対応転移門(ワープゲート)を切り替えられるようにとも思ったことがあるが、調整を間違うととんでもない事になるのは身を以て体験済みな仁。
 確実性を重視するのはあたりまえだろう。
 それはさておき、蓬莱島へ飛んだ仁は、アンを呼んだ。
「はい、ごしゅじんさま」
 やって来たアンに幾つか質問をし、そのあと仁は礼子とアンを助手に、何か複雑な魔導具を作り始めていた。
「そう、そこにポンプを……」
「気密はしっかりとな」
「肝心なのはここなんだ」
 ある程度そちらの形が出来上がると、今度は地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸を大量に用意し、先日作ったオリジナル工学魔法『融解(ディソルート)』を使い、一体化。更に変形(フォーミング)で薄いシートに変え、大きな袋状にしていった。

 その横では、エルザが考え込んでいる。
 仁に言われて、出品するものを考えているのだ。
「うーん、ここを、こうして……」
 試行錯誤しているらしい。仁はこれも経験、と、エルザが質問してくるまでそのままやらせておくことにした。

*   *   *

「よし、完成だ!」
 一方、ラインハルトは、自分の工房でゴーレムを完成させていた。
「あなた、2体、作ったんですの?」
 休憩時間にお茶とお茶うけを持ってきたベルチェが、完成したゴーレムを見て言った。
「ああ、この2体は、『ツイン』なんだ」
「ツイン、ですの?」
 ツイン、つまり双子である。
「ああ。外輪船の右と左の外輪をそれぞれが受け持つ。動きを同期させるのに苦労したが、蓬莱島で憶えた『魔素接続(リンケージ)』でうまくいったよ」
 ラインハルトもそれなりに進歩していた。
「それで、名前はどうなさるんですの?」
「名前か……。ベルに付けてもらおうかな」
 そう言って微笑むラインハルト。ベルチェは暫く考えた後、名前を口にした。
「マック、とミック、というのはどうでしょう?」
 ラインハルトは一も二もなく賛成した。
「うん、いいな! よし、マックとミックでいこう!」
 お読みいただきありがとうございます。

 20140316 13時59分 表記修正・誤記修正
(旧)わかった。彼等の方は私の方から申請しておこう
(新)わかった。彼等の分は私の方から申請しておこう

(旧)ここの転移門(ワープゲート)は、実はかなり特殊である
(新)しんかいの転移門(ワープゲート)は、実はかなり特殊である

(誤)受け入れ・送り出しが一体一対応
(正)受け入れ・送り出しが一対一対応

 20160410
(誤)「仁、もう行くのかい?」
(正)「ジン、もう行くのかい?」
+注意+
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