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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

12 ショウロ皇国錬金術師篇

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12-30 責任

「礼子、よくやってくれた」
 仁は礼子を褒め、頭を撫でる。いつも以上に嬉しそうな顔をする礼子。
「……お父さまの手を感じられます」
「エドガー、アアルも、よくやってくれたなあ」
 そして、仁だけでなく、サキやエルザもそれぞれ自分の自動人形(オートマタ)を褒めた。
「アアル、ご苦労だった」
「エドガー、すごかった、ね」
 仁はジェシーとクルトの様子を見る。ジェシーは肘と膝、それに掌を擦りむいていたので治癒魔法を掛けようとして、思いとどまった。
 傷口に砂や土が入り込んだまま治すと、体内に残ってしまう。それで仁は『凝縮(コンデンス)』を使う。空気中の水分を集める魔法だ。
 それほど大量の水が作れるわけではないが、傷口を洗うには十分。しみるので泣きそうな顔をするジェシーに、仁は優しく声を掛ける。
「もうちょっとの我慢だよ。『治療(キュア)』」
 洗い流した傷口に治癒魔法を掛け、ジェシーの傷が癒えた。泣きべそをかいていたジェシーもにっこりと笑った。
「ありがとう、ジンおにーちゃん」
 なんでもないよ、と言うようにそんなジェシーの頭をぽんぽんと叩いた仁は、クルトの方に向き直る。
 クルトは気を失っていたのでエルザに任せていたのだ。
 初級篇とはいえ、現代知識を身に着けたエルザは、クルトの状態をショウロ皇国式の『診察(ディアグノーゼ)』で診察、外傷と骨折以外に異常は無いと仁に言った。
 頭を強く打ったとかそう言うことはないようだ。骨折も閉鎖骨折で、骨が飛び出したりはしていない。
 仁も『分析(アナライズ)』を応用して調べてみたが間違いなさそうだ。
「『快復(ハイルング)』」
 エルザがショウロ皇国式の治癒魔法を称えた。骨折までを治す中級魔法である。これにより擦り傷なども治る。更に、
「『完治(ゲネーズング)』」
 万が一、内臓や脳に障害が残らないよう、また傷口から感染症にかからないように最上級魔法も使うエルザであった。
「うーん……」
 そのおかげで、少しするとクルトも気が付いた。
「あれ?」
 目を開けてきょろきょろと見回すクルト。自分を全員が見下ろしていくのに気付く。
「俺……どうしたんだっけ?」
「クルトのばか! しんぱいしたんだから!」
 ハンナやパティが涙を浮かべているのを見て、
「ああ、そっか。ワイリーを採ろうとして、崖から落ちたんだ」
「クルト、最初に言ったろう? 危ないところに行くなって」
「うん、……ごめん、ジンにーちゃん」
 仁はそんなクルトの頭をがしがしと強く撫で回し、
「もう反省しているようだな。もう2度と同じ事繰り返すなよ?」
「うん」
 仁は、そんなクルトの顔を覗き込んで、心底悪かったと思っている表情だと思い、お小言はそれまでにする。
 多分、家に帰ったら父親のデイブに叱られるだろうし。ジェシーも同じく父ハワードのお小言を喰らうだろう。
「それじゃあみんな、帰るぞ」
「はあーい」
 と言った仁だったが、帰りもやっぱりサキと共に最後尾であった。

*   *   *

「……ということがあったんです。俺が付いていながら、済みません!」
 仁はまず、デイブの家へ行き、正直に話した。
「ジン、謝ることはないぜ。お前とレーコちゃん、それにエルザさんたちは俺の息子を助けてくれたんじゃねえか」
 そう言ってデイブは仁を許し、クルトには怖い顔を向ける。
「おい、この馬鹿息子。危険を危険とわからないような奴に育てた覚えはねえぞ?」
「ごめん、父ちゃん」
 拳骨1発。
 それでデイブからのお小言は終わりであった。
 仁たちは、次にジェシーを連れてハワードの家へ行く。そこでも仁は感謝をされこそすれ、非難されることはなかった。

 気が付けば夕方。
「ああ、なんだか疲れた」
 あらためて仁は、子供たちを引率する難しさを噛みしめていた。
 デイブもハワードも、子供とは言え、森へ行ったりする際の危険については自己責任だという考えであったが、それでも仁はもやもやしていた。
 自分にもっと体力があって、子供たちと一緒に森の奥へ入っていれば。
 今更『たられば』は意味がないとわかってはいても後悔せずにはいられない仁。
 そんな仁を見かねたのはエルザ。エルザは前を歩く仁の袖をくい、と引いて、声を掛ける。
「ジン兄、そんなに自分を責めちゃ駄目。私だってもっと子供たちに気を付けていれば良かった。それをしなかった私にも責任がある」
 仁はエルザの言葉を聞いて、顔の険しさをほんの少し緩めた。
「うん、ありがとう、エルザ。そうだ、エルザがいなかったら、クルトの治療もすぐには出来なかっただろうからな。あらためて、ありがとう」
 そう、礼子はまだエルザの治癒魔法全てをマスターしてはいなかったのである。今回でほとんどマスターできたのであるが。
「ううん、それはいい。私は私に出来ることをやっただけ」
 エルザは首を振ってなんでもないこと、と身振りで示す。
 そんな2人のやり取りを見ていたサキがぽつりと言った。
「ふふ、エルザ、立派に成長したんだね。何も出来なかったボクは自分で自分が恥ずかしいよ」
 だがエルザはそんなサキにも、
「そんなことはない。人はみんな、自分の出来ることをやればいい。だから私は出来ることをした。ただそれだけのこと」
 と言ってその手を取った。
「ふう。……ホントに敵わないな」
 サキもほんの少し笑顔を浮かべて見せたのである。

*   *   *

「……ということがあったんだ」
 夕食後、仁は礼子だけを連れて蓬莱島へ移動し、老君と相談していた。
「カイナ村周辺の危険箇所のマップを作り、崩壊しそうな箇所は補強するなりしておきたい」
『そうですね。そして、そういう場所にランドを重点的に配備するのがいいでしょう』
「そうだな、任せる」
『了解しました』
 この後老君は、監視システム『庚申』を更に強化し、村人が危険箇所に近付くような時にはランドもしくはゴンやゲンを警護に回すようにしていくことになる。

 こうして出来る対策を打っていくに連れ、仁も少しずつ元気を取り戻していった。
(よかった……)
 内心、礼子もほっとする。
(お父さまは、やっぱり何か作っていらっしゃる時が一番生き生きしてますね)

御主人様(マイロード)、報告があります』
 一通りの打ち合わせを終えた後、老君が言い出した。
『前々から確保を急いでいました、ショウロ皇国の『米』ですが、以前報告しましたように、3種類が倉庫にそれぞれおよそ1トンずつ溜まりました。また、苗も手に入り、本日田植えをしたばかりです』
「何! それは朗報だ!」
 落ち込んでいた仁だったが、米に関するいいニュースを聞き、テンションが上がる。まさかこのタイミングを狙っていた、とも思えるほどの絶妙さ。
『お茶の木の苗も植えましたので、近いうちに収穫出来るようになると思われます』
「ああ、楽しみにしてるぞ」
『それに、テングサに似た海草から棒寒天を作る事にも成功しています』
「おお! それは初耳だ」
 タツミ湾ではいろいろな海草が採れる。これまでに収穫出来たのは昆布、ワカメ、海苔、テングサ、そしてホンダワラ(藻塩を作る)。
『海苔と昆布も量産出来るようになっております』
 仁が旅をしているうちに、蓬莱島ではかなりの海産物が蓄積されていたのであった。
『タツミ湾産の海藻も、例外なく自由魔力素(エーテル)含有量が多く、魔力庫(エーテルストッカー)での長期保存が可能です』
「いいぞいいぞ。そうだ、今度おにぎりを作ってみよう。塩と海苔だけでも美味いだろう」
 懐かしい味が再現できそうなことを知り、仁は色々想像を膨らませる。
 その様子を見た礼子と老君はほっとするのであった。
 礼子も老君も仁を気遣ってました。

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