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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

12 ショウロ皇国錬金術師篇

379/1620

12-29 ワイリー採り

 ギャラリーページ新設。サキの新眼鏡バージョン描きました。
「ハンナちゃーん、いる?」
 ちょうどそんな時、クルト、ジェシー、ジム、パティ、マリオらが連れ立ってハンナを呼びに来た。
 何をするのか仁が尋ねると、ワイリーを採りに行くらしい。
 ワイリーとは要するに野苺。そのままでは酸っぱくて美味しくないが、煮込むとジャムが出来る。
 カイナ村では子供たちがこの実を採ってきて、各家庭でジャム作りをするのだが、煮込むのに燃料代がかかるため滅多にやらないのだ。
 それが、昨年仁が魔石コンロを作ったため、今年は子供のいる各家庭がこぞって作ろうとしているらしい。
「面白そうだね、ボクも行っていいかな?」
 話を聞いたサキは乗り気である。
 サキが行くならエルザも行くと言うので、仁ももちろん付いていくことにした。
 当然礼子、エドガー、アアルも行くことになるので、ゴンやゲンは行かないで済む。

「おにーちゃーん、こっちこっち!」
「……はあ、ふう」
 子供たちのタフさを舐めていた仁とサキ。2人とも体力が無い。
 一方エルザはそれなりに身体を動かしているので、籠を持った子供たちと一緒に進んでいた。
 ワイリーが生えているのはカイナ村東部の森。
 広葉樹が多く、山野草が豊富である。更にその北側は多少の岩場があったりして、ワイリーが多いという。
 その分歩きにくく、仁とサキは遅れ気味だった。
「おにーちゃん、このへんからワイリーがあるよ」
 ハンナに教えられ、あたりを見回す仁。サキも同じように見回している。
「お、あったあった。ハンナちゃん、これだろう?」
 眼鏡をかけたことでサキは仁よりも早くワイリーを見つけたようだ。
「うん、それ。たくさんあつめてね!」
 それで仁はじめ、子供たちも散らばってワイリー探しとなった。
「危ないところへは行くなよ」
 仁も注意を口にする。
「うん、わかったー」
 返事をして、子供たちは森の中へ消えていった。
「さて、俺も」
 疲れて座り込んでいた仁も腰を上げる。
「お父さま、あそこにあります」
 礼子が教えてくれるが、仁としては自分で見つけたい。それでそのワイリーは礼子に採ってきてもらう。
 熟したワイリーは軟らかくて潰れやすいが、触覚を備えた今の礼子なら、楽々潰さずに採集できる。
「お、あったぞ」
 仁も一叢ひとむらのワイリーを見つけ、腰に着けた籠に入れていく。
 サキもけっこう見つけているようだ。
 エルザはきびきびと動き回って、もうかなりの量を集めていた。

 1時間くらいすると、用意してきた籠は一杯になり、アアルに背負わせた大きな籠へとそれをあけることが出来た。
 大きな籠には半分弱、あと1時間採取することになった。
「よーし、おれがんばるぞ」
 やんちゃなクルトが張り切って駆け出していった。
「……俺はもういいや」
「奇遇だね、ボクもさ」
 体力の無い仁とサキは水を持ってこなかったのを悔やんでいた。
「大丈夫ですか? お父さま」
「ご主人様、お疲れですか」
 礼子とアアルはそれぞれの主を気遣っていた。
 はっきり言って、子供たちが行ける場所と言うことで舐めていた。
 試しにワイリーをかじってみたが、酸っぱすぎて仁の口には合わなかった。サキも同様だ。
「……向こうにこんなにあった」
 腰の籠一杯にワイリーを採って、エルザが戻ってきた。そしてばてている2人を見て、
「……2人とも、運動不足」
 ぼそりと言った。
「ああ、面目ない。父ならこんな事ないんだろうね。珍しいもの探してあちらこちら飛び回っているんだから」
 サキはインドア派、サキの父、トアはアウトドア派らしい。
 そんな時。
「おにーちゃーん!」
 ハンナの叫び声が聞こえた。
「どうした、ハンナ?」
 仁は立ち上がって、急いでハンナの所へ走っていく。
「たいへんなの! クルトとジェシーが!」
「え?」
 ハンナの顔は真っ青だ。
「いったい何があったんだい?」
 エルザとサキも追いついてきた。
「クルトとジェシーが、がけからおちたの」
「何だって!?」
 そこで3人はハンナの先導で、森の奥へ向かった。草を踏み、灌木をかき分けて辿り着いたのは10メートルほどの崖の上。
 眼下には川が流れている。エルメ川に注ぐ名も無き川だ。
「ほら、あそこ……!」
 ハンナの指差す方を見ると、ジェシーは崖の途中の岩に引っかかり、クルトは崖下に倒れている。
 崖は今にも崩れそうで、下手をしたら岩雪崩を起こし、動けないクルトが下敷きになる可能性が高い。
「ジェシー! 今助けてやるから、ぜったい動くなよ!」
 とりあえず仁は、ジェシーに声を掛けて安心させておく。ジェシーもあまり動けば岩が崩れて転落する可能性があったからだ。
「あ、ジンおにーちゃん……」
 仁を見たジェシーは安堵の表情を浮かべた。
「さて、どんな手順がいいか」
 ぱらぱらと、細かい石が転がり落ちていて、いつ岩雪崩になるかわからない。一刻も早く助けないと2人が危なかった。
「よし、礼子、エドガー、アアル、手伝ってくれ」
 仁は考えを説明した。
「……ということだ。一刻も早く助けたい。協力してくれ」
「はい、お父さま」
「はい、製作主(クリエイター)様」
「はい、ジン様」
「ジ、ジン、そう上手くいくのかい?」
「やるしかないだろう? あの距離までは俺の土魔法も届かないしな。崩れる前に助けないと。……礼子、行け」
 まず礼子はジェシーの引っかかった場所へ飛び降りた。
 パワーを完全に制御している礼子は、小石一つ落とさずに着地した。が、ジェシーと礼子、2人分の重さがかかった岩はぐらりと傾く。
 即座に礼子はジェシーを抱き上げ、絶妙な力加減で放り投げた。それをしっかりと抱き留めたのはエドガー。
 次いで、転がりだした岩よりも速く、礼子は崖下へとダイブ。倒れていたクルトを抱きかかえ、大急ぎでクルトを診察。『分析(アナライズ)』での簡単な診察によれば、頭を打ってはいないようだ。転がり落ちて打撲か骨折をしてしまい、その痛みで気絶したらしい。
 とりあえず安心した礼子は一気に崖を駆け上がる。
 60度を超える傾斜。転がりだした岩は止まらない。駆けながら右に左に、礼子は転がり落ちてくる岩を避けていく。
 ジェシーのように放り投げないのは、10メートルの高さまで投げ上げた時の加速度に、怪我をしたクルトでは耐えられない可能性があったからである。
 転がる岩は、周囲の岩を巻き込み、ついに岩雪崩が発生。
 崖半ばまで駆け上がっていた礼子は、上で待機するアアル目掛け、抱きかかえたクルトを放り投げた。
 この場合、クルトにかかる加速度は下から放り投げた場合に比べ半分以下。十分耐えられると判断したのである。
 それをアアルはしっかりと受け止めた。
 そして身軽になった礼子目掛け、岩雪崩が襲いかかった。
 刹那、礼子は一気に斜面を駆け抜ける。その速度はまさに疾風。
 飛び降りてから戻るまで10秒足らずのことであった。
 礼子、触覚付与した効果が出ました。

 お読みいただきありがとうございます。

 20140305 13時47分 表記修正
(旧)10メートルの高さまで投げあげた時の初期加速度が怪我をしたクルトに耐えられない可能性があったからである
(新)10メートルの高さまで投げ上げた時の加速度に、怪我をしたクルトでは耐えられない可能性があったからである
 助詞の使い方その他を直しました。

 20140305 19時49分 表記修正
(旧)サキの父、トアは行動派
(新)サキの父、トアはアウトドア派
「トア」が「アウト『ドア』」派というのがなんか語呂が悪そうだったのでさせていたのですが、その前のインドア派と対にならないと対比としての意味がないので。

(旧)倒れていたクルトを抱きかかえ、一気に崖を駆け上がる。
(新)倒れていたクルトを抱きかかえ、大急ぎでクルトを診察。『分析(アナライズ)』での簡単な診察によれば、頭を打ってはいないようだ。転がり落ちて打撲か骨折をしてしまい、その痛みで気絶したらしい。
 とりあえず安心した礼子は一気に崖を駆け上がる。
※クルトがもし頭を打ったりしていた場合、担ぎ上げたり放り投げたりというのはしてはならない行為なので、事前に簡単ながらも診察したと言う描写を追加。
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