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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

01 カイナ村篇

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01-21 閑話1 オートマタの流離い

 仁が受け入れ先の無くなった転移門(ワープゲート)によりいずこかへ飛ばされた後、自動人形(オートマタ)もまた、仁を探しに同じ転移門(ワープゲート)を使う。
 一瞬の暴走、そして自動人形(オートマタ)が飛ばされたのは海の上だった。
 着水、そして沈んでいく自動人形(オートマタ)。彼女の体は人間とほぼ同じ比重なので楽に泳げるのだが、帰還用に背負っている転移門(ワープゲート)用の資材が重かった。
 約20キロあるその質量は、30キロ足らずの自動人形(オートマタ)を海底へと引きずり込んでいく。
 だが、彼女はただの自動人形(オートマタ)ではない。仁が自重無しに再組み立てした、いわば超・自動人形(スーパーオートマタ)である。その体力は人間の数十倍、持久力はほぼ無限。彼女が華奢な手足を動かせば、楽々海の上へと浮かび上がることが出来た。
「ここは……」
 見渡すと、遙か水平線の彼方に島影が1つ。自動人形(オートマタ)はとりあえずそこを目掛けて泳ぎだした。服を着たまま、しかも20キロの荷物を背負っているのに、その速度は60ノット(時速100キロ以上)を超えている。彼女より速い水棲生物はまずいないだろう。
 1時間ほどで自動人形(オートマタ)は島に着いた。島といってもかなり大きい。
「ここは……研究所のある島ですか? いや、まさか……」
 上陸した彼女は、そこが自分の出発した、研究所のある島だと知り、さすがに驚いた。なぜならば、彼女が知っている『島』は、もっとずっと小さな島だったからである。
 彼女の記憶にある島は火山島であり、島の中央にそびえる山はいつも煙を噴いていたものだ。それが、今は煙もなく、高さも1000メートルは高くなっている。標高三千メートルをかなり越えているようだ。頂上部には雪も見えた。
「1000年のうちに隆起したとしか考えられませんね」
 感情のこもらない声でそう呟くと、研究所があると思しき方向へ向かう。島は疎林と草原に覆われていて歩きやすい。熱帯ではないので、密林化はしなかったようだ。
「大型動物もいないようですね」
 見かけるのは昆虫、鳥類、そして小型の哺乳類と爬虫類、それに両生類。元々の島にいた生物とそれほど変わってはいない。
 研究所は島中央部の台地、その地下にあった。そこまでの所要時間から、自動人形(オートマタ)は現在の島の大体の大きさを推定する。
「100倍以上になってますね……まあ、不都合は無いと思いますが」
 大体、元々は伊豆七島の三宅島くらいだったのが、栃木県くらいの面積になっていた。
 が、自動人形(オートマタ)は特にそれを気にすることなく進む。そして研究所の入り口に到着。そこは蔦に覆われていたが、元々の住人である自動人形(オートマタ)はすぐにそれを見つけることが出来た。彼女の力の前には、絡み合った蔦も、道端の雑草程度でしかなく、あっけなく扉を開き、中へと入る自動人形(オートマタ)
「もういちど、ですね」
 疲れを知らない彼女は、あらためて転移門(ワープゲート)に乗り、再度の暴走を起こした。

 今度自動人形(オートマタ)が出現したのは砂漠であった。
「砂漠、ですか。さて、人のいそうな方向は……あちらですね」
 わずかな魔力を感知した彼女はそちらへ向けて歩を進める。疲れを知らない彼女は灼熱の昼も凍える夜もものともせず、4日で町に辿り着いた。
「お父さま……はいないようですね」
 自分を造ってくれた仁の魔力は見間違える筈もなく、ここに仁はいないと判断。
「この転移門(ワープゲート)をどこかに設置して研究所へ戻りますか」
 町からかなり離れた所にある岩山、その中腹に開いていた洞窟内に転移門(ワープゲート)を設置することとした。入り口は岩で塞ぎ、知らない者に入られないようにする。更に結界で防護。
 まあ、魔力判別機能があるので、仁とその関係者(オートマタ含む)以外には使えないのだが。
「では、転移」
 そして自動人形(オートマタ)は研究所に戻ってきたのである。

 3度目の転移。
 今度出現したのは荒野のただ中。人間のいる集落まで7日。これも付近に転移門(ワープゲート)を設置して研究所へ戻った。
 4度目は魔物の住む土地であった。大半の魔物は自動人形(オートマタ)を無視していたが、中には襲ってくるものもいたので、仕方なく撃退。その中には疑似竜(シャムドラゴン)種もいた。その革や羽、牙や骨は良い素材になりそうなので、全て回収してから転移門(ワープゲート)を設置し、研究所へ戻った。戻った後、資材はいつでも使えるよう分別して収納した。
 このようにして、自動人形(オートマタ)は仁が死んでいるなどという可能性はまったく考えず、何度も何度も繰り返し探しに出掛けた。

 そして、いちいちカウントしてないので何度目かわからない転移。
 今度出たのは雪の中であった。背負った重みで雪に潜る自動人形(オートマタ)。雪は乾燥粉雪で手応えが無く、いくら手足を動かしても脱出出来そうもなかった。
「しかたないですね、加熱(ヒート)
 自動人形(オートマタ)の体が熱を持ち始める。背負った荷物に影響のないレベルに抑えつつ、彼女は雪を溶かしていった。転移門(ワープゲート)の部品には高熱に弱いものがあるので時間が掛かったが、丸一日掛けてなんとか雪の中から脱出することに成功した。
「さて、ここはどこでしょう」
 岩の上に登って辺りを見回す。かなりの高山のようだ。
「下りていけば雪も少なくなりそうですね。でも、どっちへいけば……」
 距離がありすぎるのか、人間の気配も魔力も感知できない。
「この方面の機能を今度強化していただきましょう」
 仁を探し出すために足りない機能を強化する、それは仁にしかできないのでまず仁を探し出さねばならないという堂々巡りになってしまうが。
「南へ、が無難でしょうね」
 季節は冬、北へ向かうより南へ向かった方がいいと判断し、雪の少ない尾根伝いに山を下っていく。時々吹きだまりに落ち込み、その度に加熱(ヒート)で抜け出すので時間が掛かり、雪の少ない地点に辿り着くまで3日掛かった。
 今、彼女の目の前には3000メートル級の山がそびえている。振り返れば、下りてきた高山、氷河がかかる6000メートル級の山。
「まだ時間が掛かりそうですね。転移門(ワープゲート)を設置する場所はもう少し先にしましょう」
 自動人形(オートマタ)は3000メートル級の山へと向かう。とはいえ、律儀に山頂を越える必要はないので、少しでも低くなっている鞍部コルを目指す。
 それでも稜線付近には1メートルを越える積雪があり、2日かけて第2の山越えが完了した。
「あとは問題無さそうですね」
 3000メートルの稜線から確認していたので残るは2000メートルに満たない岩山と知っている。自動人形(オートマタ)はその山頂あたりに転移門(ワープゲート)を設置するつもりでいた。
 雪さえ無ければ彼女なら半日で登り着ける。
 頂上に着いた時は既に日が暮れていたが、暗闇でも見える彼女には関係なかった。
 登り付いた頂上は広く、転移門(ワープゲート)を設置するのにちょうど良さそうな洞窟もあった。
「あそこが良さそうですね」
 自動人形(オートマタ)がそこへ近づく。と、彼女は大きく飛び下がった。見れば、今まで彼女が立っていた場所が大きく抉れている。
「……百手巨人(ヘカトンケイル)ですか」
 身長20メートル、腕が100本ある巨人。それが彼女と反対側の斜面から登ってきて、いきなり手にした岩を投げ付けてきたのである。
「魔力を内部に蓄えるタイプの魔物ですか。だから感知できなかったのですね」
 あくまで冷静に相手を分析する自動人形(オートマタ)。巨人系の魔物は、魔法を使えない物が多い。それは、巨体を支え、維持するために内部で魔力を消費しているためである。
 ゆえに外部に漏れる魔力は微少で、今の彼女には感知できなかったと判断した。
「背中の荷物がなければ正面から相手できるのですが、いたしかたありませんね」
 諦めたようにそう呟いた自動人形(オートマタ)は、今まで5パーセント程度だった体内の魔素変換器(エーテルコンバーター)の稼働率を20パーセントへと引き上げる。
 同時に魔力炉(マナドライバー)の稼働率も引き上げ、一気に魔力を練り上げた。そして。
魔力爆発マナ・エクスプロージョン
 最強の攻撃魔法を放った。出力は20パーセント。
 その衝撃は百手巨人(ヘカトンケイル)自身の魔力核(コア)をも巻き込み、巨大な爆発を生じさせ、その巨体を一瞬で消滅させた。
 この魔法の利点は、魔力を持った相手だけを消滅させることが出来る事。山頂付近の地形には影響がない。洞窟も無事である。
「……討伐完了。少々もったいないとは思いますが、まあ仕方ないでしょう。それよりも」
 利用できる素材を残すことなく、完全に消滅させてしまった事に若干もったいなさを感じるが、彼女にはそれ以上に重要な事があった。
「……この魔力は、お父さまに間違いないですね」
 ここへ来てようやく、仁の魔力が感知できたのである。
「急いで転移門(ワープゲート)を設置しないと」
 たった今討伐した百手巨人(ヘカトンケイル)の洞窟に転移門(ワープゲート)を設置していく自動人形(オートマタ)
 周囲には、百手巨人(ヘカトンケイル)の獲物であろう森熊ウッドベアーの骨が散乱していたので谷底へ投げ込んでおく。
 慎重に転移門(ワープゲート)組み立て、動作を確認。完成すると、それを使い一度研究所へ戻り、またすぐ戻ってくるという念の入れようだ。それもこれも仁のため。万一、仁を研究所に連れ帰る際に動作不良を起こしでもしたら、自動人形(オートマタ)は自分を自分で破壊してしまうだろう。
 全て完了した時にはすっかり夜が明けていた。自動人形(オートマタ)は、急いで山を下る。目指すはもう一つ低い山を越えた向こう。
 その低い山を越えると小さな村が見える。その外れに立つ柵のそばに、自動人形(オートマタ)が会いたくてたまらぬ人物、仁の姿を見つけた時、彼女は100パーセントの出力を出した。
 それは音速に近い速度を彼女に与え、100メートル以上の距離を瞬時に移動させた。そして自動人形(オートマタ)の前には。
「お父さま!」
 半年がかりで探し当てた父親(クリエイター)、仁が呆気にとられた顔で立っていたのである。
 自動人形(オートマタ)の視点からの回でした。
 元々の島は火山島でしたが、1000年のうちに火山活動が沈静化したり、島が隆起したりしたようです。
 火山に研究所があったのは地下資源が豊富だからです。火山の脅威は魔法で防いでいました。
 森熊は百手巨人(ヘカトンケイル)が食べてしまったようです。
 お読みいただきありがとうございます。

 20161014 修正
(旧)大体、元々は伊豆七島の三宅島くらいだったのが、四国くらいの面積になっていた。300倍以上である。
(新)大体、元々は伊豆七島の三宅島くらいだったのが、栃木県くらいの面積になっていた。
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