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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

11 ショウロ皇国とカイナ村篇

332/1503

11-34 悪巧み?

 仁が久々に、本当に久々に米を堪能した翌日。
「ラインハルト、頼みがあるんだ」
 仁はラインハルトと2人きりで密談をしていた。
「実は……」
 仁は、クライン王国でちょっとした(と仁は思っている)実績を上げ、とある村を租借地とした事を説明する。
「で、そこにクライン王国からの大使が来ているんだよ。顔を出さないのもまずいし、解決済みではあるが何か事件が起きたようでもあるんだ」
「なるほど、それで3、4日そっちに行きたい、というわけか」
「ああ。何かいい手はないかな?」
 そう言われたラインハルトは腕を組み、目を瞑って考え込む。
「……やっぱり仮病しかないかな」
 再び目を開けたラインハルトはそう結論を口にした。
「仮病か」
 学校や仕事を休むときの定番ではある。
「だが、1日くらいならいいが、3日も4日もとなるときっと見舞いが来るぞ」
 ラインハルトは問題点をそう言って指摘するのも忘れなかった。が、それなら仁には手がある。
「ああ、そうしたら『身代わり人形』を使えるな」
 以前作った身代わり人形だが、デウス・エクス・マキナに改造してしまった。が、あれなら簡単に作れるし、布団で寝ていればいいので見破られる心配も少ない。
 簡単な受け答えは老君に任せられる。
 仁がそれをラインハルトに説明すると、
「うーん、なるほど、身代わり人形か。ジンの技術だからこそ可能な手だな」
 普通の自動人形(オートマタ)ではすぐに見破られてしまうが、仁の作ならそのリスクは格段に減るだろう。
 まして具合が悪いということになっているのだから、寝ているだけでいいし、あまり長居もされないだろう。

 話が決まったところで、行動に移す。
 まずは、ショウロ皇国宮城から出る所からだ。これは、ラインハルトが仁に街を案内するからという理由で簡単であった。
 そうなれば、仁の馬車に備え付けられている転移門(ワープゲート)で蓬莱島へ移動できるわけだ。
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
 次は仁が蓬莱島に移動し、身代わり人形を持ってくる事。しかし以前作った物は外見が改造されているので、新たに作ることになる。
『準備は整っております、御主人様(マイロード)
 あらかじめ礼子を通じて伝えてあるので、材料その他は老君が準備してあった。おかげで、30分とかからずに身代わり人形は完成した。今回は完全遠隔操作型。
「……やっぱり不気味だ」
 自分と同じ顔、同じ姿の人形というのは何度見ても慣れないものである。
「……あとは礼子、か」
 仁のそばに礼子が付いていないというのはおかしいので、礼子の身代わりも必要である。
 これには、第5列(クインタ)のミラ10を呼んで擬装させることになる。
 元々第5列(クインタ)は変装機能を持つので、これは簡単であった。
「よし、戻ろう」
 老君に身代わり人形の基本操作を任せて、仁とミラ10は一緒に馬車へ戻った。
「お、おお!?」
 ラインハルトが目を剥いた。仁が2人いたからだ。
「す、すごい! ジンそっくりだ!」
 興奮気味のラインハルトだが、時間がもったいないので仁はそれを遮るように声を掛けた。
「すまない、ラインハルト。それじゃあ、この人形と一緒に戻ってくれ。……礼子、頼んだぞ」
「はい、……お父さま」
 礼子に化けたミラ10が返事をする。礼子も身代わりだということはラインハルトにも知らせていない。
「ジン、それじゃあ打ち合わせ通り、4日間でいいな?」
「ああ。頼んだ。……この穴埋めはいずれするよ」
「はは、それは楽しみだ。そうだな、そのうち僕もその村に行ってみたいな、いいだろう?」
 従妹のエルザもいるカイナ村。ラインハルトも興味を持っているようだ。仁は頷き、手を振ると再び転移門(ワープゲート)をくぐった。

*   *   *

 ラインハルトは打ち合わせ通りに宮城へ帰った。もちろん仁の馬車の御者はスチュワードである。
 そして身代わり人形たちと共に仁の居室へ戻り、ベッドを準備した。
 ここで、過日、『私がおりますから侍女は必要ありません』と強硬に主張した礼子の発言が役に立った。
「ラインハルト、ジン君が倒れたんですって? 大丈夫なの?」
 仁が寝込んだことは真っ先に皇帝陛下に伝わり、案の定、気さくな女皇帝は政務の合間を縫って面会にやってきた。
「ええ、倒れたと言っても、旅の疲れが出ただけだと思います」
 ラインハルトはそう説明し、暗に長時間の面会は止めて欲しいと匂わす。聡明な女皇帝はそれを察し、ベッドに寝ている仁(の身代わり人形)に二言三言声を掛けて戻っていったのである。
 全て、仁とラインハルトの計画通りであった。

*   *   *

 改めて蓬莱島に戻った仁は、まず老君からの報告を聞いていた。
「……病気、か」
『はい。デネブ29の報告にあったように、謎の男が鳩に何かをしたとすれば、ですが』
「……許せないな」
 この世界での伝染病は恐ろしい。カイナ村の人口分布が偏っているのもそのせいであるから。
「だが、報復よりも優先すべきは村の安全だな」
 別のルートから病気が入って来ないとも限らないと仁は考えた。
 何せ、その『謎の男』の正体がわからないからだ。第5列(クインタ)の能力を以てしても、である。
 しばらく考えた後、結論を口にする仁。
「よし、まずは、俺はカイナ村でリシアたちに会う。そして彼女たちを含めた村人全員に何か理由を付けて……そうだな、城の落成式とでもするか?」
 仁は村人全員に伝染病予防として薬を飲ませる機会を作ろうとしたのである。
 腸が煮えくりかえる思いの仁であるが、まずは身近な人たちの安全を確保する事の方が大切だと、怒りを抑えた結果の判断であった。
自由魔力素(エーテル)ボックスに長期貯蔵したペルシカジュースは薬剤基(ドラッグベース)とまではいかないが、かなりの効果が期待できるんだったよな?」
『はい。今用意できるものですと、自由魔力素(エーテル)濃度10パーセント程度です。これに療治(メディケア)を付与することは可能です』
 魔法付与のないペルシカジュースは体調を整えてくれるが、明確に療治(メディケア)の魔法を付与することもできる。
 含まれる自由魔力素(エーテル)濃度が低いので、真血清のある蓬莱島では使用予定が無かったが、それと知らせずに飲ませるには最適である。
 自由魔力素(エーテル)濃度が低いが、ジュースなので大量に飲むものであるし、その点でも効果が期待できる。
 はっきりしないうちに伝染病を疑っても騒ぎになるだけだと仁は判断したのだ。
「よし、それじゃあ準備しておいてくれ。……謎の男の調査はそのまま継続だ」
 仁は老君にそう指示を出す。
『承りました。ワルター伯爵への報復は方法を練っておきます』
「……そっちも任せる。あとは、リシアが辿ってきた道筋で、同様の症状が出ていないか、も調べておくように」
 カイナ村だけを病気から守ればいいというわけではない。
 だが、同行しているパスコーには症状が出ていなかったので、本当に伝染性なのか判断に迷っていたというわけだ。それで1日だけ様子を見る事にしたというわけである。

「お父さま、荷物の準備が出来ました」
「お、ご苦労」
 仁の城のある執務室で使いそうな道具類を見繕っていた礼子からそう声がかかり、仁は礼子と共にカイナ村へ跳んだ。

 今回、仁はシェルターの転移門(ワープゲート)を使用。
 折からカイナ村はお昼であった。
 仁はまず城へ向かった。
「あー、城の名前も考えなきゃな……」
 カイナ城、仁城、二堂城……などと思いつくまま脳裏に名前を並べていく。
「二堂城か……二条城みたいでいいな」
 そこまで仁が考えた時。
「ご主人様、お嬢様、お帰りなさいませ」
 と声が上がった。
 見れば、5色ゴーレムメイドであるルビー、アクア、ペリド、トパズ、アメズそれぞれの101番と、バトラーB、Cの計7体が出迎えていたのである。
「おお、揃っていたのか、ご苦労さん」
 そう頷き返した仁は城に足を踏み入れる。
「バロウとベーレは?」
 後ろに付き従うバトラーBにそう尋ねると、リシアと、そのリシアの護衛というもう1人の貴族の世話のために村長宅へ行っていると言う。
「そうか。ちょうど昼だしな」
 おそらく料理その他の手伝いだろうと見当を付けた仁は、執務室へ向かった。
「3階か、荷物があると辛いかな?」
 そんな独り言を言うと、聞きつけたバトラーCが仁にそっと説明をする。
「ご主人様、中心の柱の中に秘密のエレベーターが仕込んであります」
 城にはなぜか五重塔のような心柱が通っているのだが、そこに隠しエレベーターが仕込んであるという。
 それを聞いた仁は、老君がなぜ前回説明してくれなかったのかと思った。
 が、その理由はというと。
「実は、掃除をするベーレが息を切らしていたので昨夜急遽工事したのです」
 とまさかの説明がなされたのだった。
 学校は休むために仮病使った事一度も無い作者です。学校は。

 お読みいただきありがとうございます。

 20140117 16時21分 誤記修正
(誤)今回は完全遠隔走査型
(正)今回は完全遠隔操作型

(誤)気さくな女帝は
(正)気さくな女皇帝は

(誤)ジュースなので大量に飲むのもの
(正)ジュースなので大量に飲むもの

 20140118 09時07分 誤記修正
(誤)聡明な女帝はそれを察し
(正)聡明な女皇帝はそれを察し
+注意+
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