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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

11 ショウロ皇国とカイナ村篇

324/1565

11-26 ネオン

 ネオンが踊りを披露したのと同じ場所に出た礼子。
「礼子と申します。皆様の無聊をお慰めできますれば」
 そう言って綺麗なカーテシーを行い、踊り始めた。
「……これは……!」
「え……!」
 礼子が披露している踊りは、先ほどネオンが行ったものと寸分違わなかったのである。
 しかも、心持ち速く、その上、動きが滑らか。
 更に、踊りながら礼子は歌い始めた。メロディはやはり先ほどネオンが歌ったものと同じ。
「春はたちまちに移ろいゆき 夏は足跡を残さず去っていく 秋はひっそりと過ぎ 冬は駆け足でやって来る」
 しかも歌詞が意味あるものになっていた。
「大地は変わらず人の営みを見つめ 水は移ろい流れ去るだけ 炎は照らし温め燃やしながら立ち上り 風は万物を通り抜けていく」
 見つめる人達はしわぶき一つせずに礼子を見つめていた。
 そして歌と踊りは終了する。
「お粗末様でした」
 再びカーテシーでお辞儀をする礼子。
 そして静かに仁の元へ戻ってくる。人々はまだ無言である。
「お父さま、いかがでしたか?」
 そう尋ねられた仁は我に返る。
「ああ、見事だったぞ、礼子。さすがだな」
 そう言って頭を撫でると、礼子はにっこりと嬉しそうに微笑んだ。
「す……すごいですわ!」
 ようやく我に返ったベルチェがそう叫んだのを切っ掛けに、
「レーコちゃん、おみごと!」
 ラインハルトが、
「いや、脱帽だ!」
 マテウスが。そしてホテルの給仕、ウェイトレス達も称賛の拍手を惜しまなかった。
「レーコちゃん、すごいですわ! いつ憶えたんですの?」
 興奮気味のベルチェがそう尋ねてきた。
「ネオンさんがお手本を見せて下さったので」
 礼子はしれっと答える。
「え?」
「……あれ一度で?」
 みな驚いているが、一部の上級魔法でさえ1回で憶えてしまう礼子である。
「な、言っただろう、ベルチェ。とにかくレーコちゃんは素晴らしい自動人形(オートマタ)なんだよ!」
 ラインハルトがまるで自分の事のように自慢している。
「ありがとうございます。でも全ては私を作って下さったお父さまのおかげです」
 そう言って一礼する礼子。ベルチェは更に感心する。
「素晴らしいですわ! 人間そっくり、いいえ、女の子そのもの! ジン様、末永くラインハルト様とお友達でいてくださいましね」
「ええ、もちろんです」
 仁も笑ってそう答えたのである。

 賑やかな宴も終わり、みなそれぞれの部屋に引き上げた。
 ラインハルトとベルチェは同室かと思って、
「今夜は一緒ですか?」
 と聞いたら、
「そそそそ、そんなはしたないことはできませんわっ!」
 と真っ赤な顔をして否定していたのを思い出す。
「さーて、村の方へは明日行くとしよう。今夜はもう寝る」
「はい、お父さま」
 そう答えた礼子の頭を撫でた仁は、
「今夜は大活躍だったな、礼子。俺も鼻が高いよ」
 そう言ってもう一度褒めた。礼子は幸せそうな笑顔を浮かべた。

*   *   *

「…………」
 ベルチェは自室でベッドに座ってネオンを眺めていた。
 そこにドアがノックされる。
「どうぞ」
 そう返事すると、ネオンが歩いて行ってドアを開けた。
「夜分失礼するよ」
 入って来たのはラインハルトだった。
「ラインハルト様、どうなさったんですの? 式を挙げるまでは……その、駄目ですわよ?」
 若干頬を赤らめてそう告げるベルチェ、だがラインハルトは別の話題を口にした。
「いや、そんな事じゃなくて、ベルがちょっと心配で」
「……そんな事、と言われるのも少し傷付きますわ」
「あ、す、すまん。いや、だからだな……」
 ベルチェに睨まれて慌てるラインハルト。それを見てベルチェはくすっと笑う。
「冗談ですわ。ラインハルト様、わたくしが心配って……何がですの?」
 心配されるような心当たりがない、とベルチェは怪訝な顔。
「うん、その、つまり……ネオンのことで、だ」
「ネオンの?」
「ああ。言ったろう? ジンは特殊な魔法工作士(マギクラフトマン)だ、って。僕個人としては世界一だと思っている。ジンにかなう魔法工作士(マギクラフトマン)なんていやしないと」
 熱っぽく語るラインハルト。そんな彼の様子を見たベルチェは苦笑する。
「……まったく、ジン様のことになるとムキになって。ラインハルト様の事を信頼していなければ、誤解してしまいそうですわ」
「え? え?」
 マテウスに誤解された事を思い出したラインハルトは若干うろたえた。が、目の前のベルチェが悪戯っぽい微笑みを浮かべているのを見て、からかわれたと悟る。
「茶化さないでくれ。とにかく、ベルがネオンを大事にしていたことを知っている僕としてはだな、何と言うか気になったんだよ」
「気に?」
「ああ。ジンのレーコちゃんを見て、ネオンに愛想が尽きたとか言い出すんじゃないかと思ってな」
 それを聞いたベルチェは驚いたように一瞬目を見開いたあと、笑い出した。
「うふふ、ラインハルト様、そんな事考えてらしたんですか」
 そしてまたひとしきり笑い、
「……笑ったりしてごめんなさい。でも、そんな風にわたくしのこと見てらしたのですか? だとしたら少し残念ですわ」
 と悲しげな顔。
「わたくしがネオンに愛想尽かしするはずが無いじゃないですか。ラインハルト様が下さったこのネオンを」
 ネオンは、ラインハルトが外交官として国を出る前に、師匠の兄弟子であるゲバルト・アッカーマンに頼んで作ってもらった自動人形(オートマタ)であった。
 ベルチェは更に、
「ネオンとあのレーコちゃんと、どこか違ってましたわ、何が違うのか、考えていましたの」
 そう言って、ネオンを手招いて横に座らせ、肩を抱いた。その様子は双子の姉妹のようである。
「そう、か。ならいいんだ。少しでも疑って悪かった。……ネオン、いい主人をもって幸せだな」
「はい、ラインハルト様。わたしのごしゅじんさまはせかいいちです」
 そう答えて微笑むネオン。そして更に、
「あのれーこさんというかたはすばらしいかたです。おともだちになりたいです」
 と言ったのでラインハルトも微笑む。
「そうか。領地に案内する予定だから、その時ジンに話してみるよ」
 そう言ってネオンの頭を撫でた。
 その隣に座るベルチェはそれを見て口を尖らせる。
 そんなベルチェの表情を正しく読み取ったラインハルトは、
「それじゃ、邪魔したね」
 そう言ってベルチェの額に口付けをした。
「あ、い、いいえ、ラインハルト様」
 額にとはいえ、不意打ちの口付けで真っ赤になったベルチェは慌てて立ち上がり、ドアの所までラインハルトを送る。
「おやすみ、ベル」
「おやすみなさいませ」
 そしてドアは静かに閉じられた。
 その夜、ベルチェはきっといい夢を見たことであろう。
 何人かの方に言い当てられてしまいました……

 お読みいただきありがとうございます。

 20140313 19時17分 表記修正
(旧)師匠の兄弟子であるゲルハルト・アッカーマンに頼んで
(新)師匠の兄弟子であるゲバルト・アッカーマンに頼んで
 名前が直っていませんでした。

 20160417 修正
(旧)「じゃあ、明日朝5時に起こしてくれ」
「はい、わかりました。お休みなさいませ」
「お休み」
(新)削除
 次話で、廊下に仁がいますよね……orz
+注意+
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