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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

11 ショウロ皇国とカイナ村篇

317/1503

11-19 スカウト

 メリークリスマス。
 ということで、24日には間に合いませんでしたがクリスマス絵です。
http://8492.mitemin.net/i94270/
挿絵(By みてみん)
 仁とラインハルト、そしてマテウスらは順調にショウロ皇国首都ロイザートを目指して進んでいた。
 5月10日はリンダウの街、そして5月11日はフォンデに泊まる予定。
 道中は概ね平和で、ラインハルトはもうすぐ終わるこの旅をのんびりと楽しんでいた。

 11日午前、仁は仁で、時間を区切って馬車の中に一人(もちろん礼子は一緒)にしてもらうと、カイナ村へ飛んだのである。

*   *   *

「おお、まさしくお城だ……」
 それ以上特に突っ込みもないあたり、仁も薄々察していたか、作ってみたかったと思っていたのか。
 エルメ川にほど近い場所に建てられた仁のお城。高さはおおよそ30メートル。カイナ村では最も高い建物である。
 が、川のほとりという低地なので、お城の最上階から見ると、村の一番高い場所より少し高いだけだし、その向こうには山が連なっているから、村を見下ろす感は薄い。
 それでも下から見上げた時の威圧感は大きかった。
 すぐ脇にはシェルターがあって、非常用の避難場所としても有効だ。そんな日が来るとは思えないが。
「ご主人様、それでは中をご案内します」
 と、待ち構えていたバトラーAが仁を案内してくれた。
 基礎の天守台(石垣)の内部が地下1・2階に相当する。その上に5重6階建の建築が乗っていて、1階が大広間。村人を全員呼んで宴会が出来る。トイレはおろか風呂まである。
 2階が客室や応接室。3階が執務室や資料室。図書室も設け、蔵書はおいおい増やしていく予定。
 4階は予備に開けてあることになっているが、実はトラップだらけの階だそうだ。
 5階が仁の居室、こっちにも寝室がある。そして6階が望楼。
 地下1階は食料庫で、カイナ村の住民が1ヵ月暮らせるだけの食料が備蓄されている。地下2階には何故か地下牢があった。
「各層には隠し部屋、隠し通路がありまして、忍者部隊が潜めるようになっております。もちろん天井裏もそういう造りです」
『忍者部隊』とは、『隠密機動部隊(SP)』の別名である。
 バトラーA曰く、この城の外見だと『隠密』より『忍者』の方が似合っているからそう呼んでいるそうだ。
「1階、2階、4階には床が抜ける落とし穴の仕掛けや、天井が下がってくる吊り天井もあります」
 と聞いた時、仁は苦笑するしかできなかった。
 基本的に全室空調付き。壁は防音断熱、耐衝撃性、耐魔法性を備える。
 1階の大広間は板張り、座布団100枚が用意されている。
 2階客室は見てくれのいい客室と、質素だが品のいい部屋とがあって、客に応じて使い分けられる。使用人の部屋もこの階にある。
 3階の仁の執務室には壁がどんでん返しになる仕掛けもあり、どこの忍者屋敷だ、と思わなくもない。
 4階のトラップは、麻痺(パラライズ)の部屋有り、高熱の部屋有り、低温の部屋有り、吊り天井の部屋有り、だそうだ。
 5階の居室には仁専用の転移門(ワープゲート)もあった。これは仁と礼子だけが使用可能なもので、それ以外の者が使った場合、とんでもないところに転移されるという。
 怖いので転移先がどこかは聞かないでおいた。
「マーサさんの家の地下と行ったり来たりも出来ます」
 確かに非常に便利ではある。
「まあ、いずれ、クライン王国から使者とか挨拶に来るかもしれないからな、間に合って良かった」
 そう呟いた仁は老君に連絡を入れる。3階の執務室には巧妙に隠された魔素通信機(マナカム)が備え付けられていたのである。
『まだご説明していない設備などもありますが、重要度は低いので、その都度ご説明したいと思います』
 と老君が締めた。
「老君、城の建設、ご苦労だった。それで、こちらに詰めさせる要員として、バトラーをあと2体作って派遣してくれ。ナンバーはBとCだ」
『分かりました、さっそく手配します』
 これでマーサ邸にある仁の家にはバトラーAが、城にはバトラーBとCが詰めることになる。
御主人様(マイロード)、お客様をおもてなしするのでしたら、ゴーレムメイドも何体か必要ではないでしょうか』
 と言う老君の提案に仁もそれはそうだと思い、5色ゴーレムメイドを各1体、つまり5体寄越してもらうことにした。因みに5色全部にしたのは、特定の色を贔屓できなかったためである。
 オートマタでなくゴーレムなのは、必要以上に技術を見せつけないようにしようとの配慮であるが、いろいろ手遅れであることには気が付いてはいない。
「さて、お城は見たから村へ行ってくるか。時間もあまりないし」
 そう呟いた仁は、専用転移門(ワープゲート)で礼子と共にマーサ邸にある自宅地下へと転移した。
 時間的にはお昼過ぎ。ちょうど昼食を終えたところらしく、ミーネとベーレが食器を洗おうと外へ出てきたところだ。
「あ、ジン様!」
 地下室から出てきた仁を見つけたベーレが叫ぶ。
「お帰りなさいませ、ジン様」
 落ちついて挨拶するミーネに対し、
「い、いったいいつお帰りになったんですか!?」
 と困惑気味のベーレ。その声を聞きつけて、ハンナとエルザも出てきた。
「あ、おにーちゃん、おかえりなさい!」
「ジン兄、お帰りなさい。……エアベールの匂い?」
 熟したエアベールは良い香りがする。エルザは鼻もいいらしく、礼子が持った籠のエアベールの匂いを嗅ぎつけたらしい。
「あたり。お土産だよ」
 と、仁は礼子の持った籠を指差した。今朝早く起きて朝市のような市場で買ってきたのである。
 それを見たベーレ、エルザ、ミーネの目が丸くなる。
「そ、それ、エアベールじゃないですか! しかも熟してる!? どこから持ってこられたのですか!?」
「エアベール……懐かしい」
「ああ、エアベールですね。昔良く採りに行きました。エルザも好きなんですよ」
 と、三者三様の反応を見せる。
「うん、やっとお土産らしいお土産を持ってくる事が出来たよ。ハンナ、これを洗ってみんなでおあがり」
「うん! おにーちゃん、ありがとう! ……わあ、おいしそうな匂い!」
 カイナ村の周辺にも野苺に似た『ワイリー』という植物があるが、実は小さく、酸っぱいうえ不味い。
 そこへいくとエアベールはオランダイチゴそっくりであるから、甘酸っぱくて美味しいのである。
「ジン兄、ありがとう、嬉しい」
 喜ぶエルザを見て、仁もこれを持って来て良かった、と思った。
「あっ! ジン様! いつお帰りに!?」
 バロウも出てきて仁に挨拶した。その際、エアベールを見つけて驚いたのは言うまでもない。

「すっかり身体はいいようだな」
 バロウとベーレの血色の良さそうな顔を見て仁も安心した。
「はい、おかげさまで。……あの、その節は、お薬、ありがとうございました」
 ベーレは深々とお辞儀をした。
「ああ、元気になって何よりだよ。どうだい、この村には慣れたかい?」
 仁がそう尋ねると、2人とも頷いた。
「はい、皆さんいい人なので」
「そうだろう。ここは世界一いい村だ、と俺は思ってるよ」
 その時。
「ああっ! ジ、ジンさん!!」
「!?」
 大声で仁を呼ぶ声に振り向けば、そこにはローランドがいた。
「あ、ローランドさん、お久しぶり」
 だがローランドは興奮気味。
「ジンさあん、お会いしたかったですよ! もう誤解は解けたって言うのに、ずっとお帰りにならないで。聞けば先日アルバンにいらしたと言うし」
「あ、あはは」
 ローランドのテンションに仁はたじたじである。
「もう、あれから『ごむぼおる』が手に入らなくて、お客様からは催促が山のように来るし! お願いですから『ごむぼおる』売って下さいいい!」
「わ、わかりました」
 若干引きながら仁は承知した。
 そのローランドは興奮が収まると今度は顔色を青くした。
「あ……し、失礼しました!」
 腰を90度曲げた最敬礼である。
「え?」
「き、聞きました! ジンさ……まがカイナ村の所有者になられたと!」
「あー……」
 仁は頭を掻きながら、
「ローランドさん、たまたま手柄を立てたから租借地として借りただけですよ。俺自身は何も変わっちゃいない。だから今まで通りに接して下さい」
 仁がそう言うとローランドは顔を上げたが、まだ若干遠慮している。
「しかし、それではジン様の立場というものが」
「あー、ですからその様というのも止めてもらいたいんですが」
 しばしの押し問答の末、今まで通り『ジンさん』と呼んで貰えることになった。そうしないとゴムボールを作らないという一言が効いたようだ。
 で、ゴムボールであるが、ローランドがカイナ村を発つのは明日朝なので、それまでに用意すると言う約束をする仁。
 野球ボール、手まり、ドッジボールそれぞれ100個である。嵩張るが軽いので運搬可能だ。
 材料については前回詳しくは説明しなかったので、一晩でそれだけ用意しても怪しまれないだろう。
 一段落ついたので、仁は世間話のつもりで、
「そう言えば、塩がなんだか売れているんですって?」
 と聞いてみた。するとローランドは浮かない顔になった。
 何かあったのか、と仁が聞くと、道中塩が売れすぎてカイナ村へ持ってくる塩が無くなったのだ、とローランド。
 更には、壺1つだけ残しておいた塩を盗まれた事も説明した。
「……で、ですよ? 気が付いたら、荷の中に塩が80キロも見つかったんですよ!」
「良かったじゃないですか」
 老君から簡単に事情を聞いていた仁がそう言うと、ローランドは首を横に振った。
「そうはいきませんよ……どこから来たものか分かりませんし、何より、得体の知れないものを売るわけにはいきません。もし毒でも混ぜられていたらどうします?」
「なるほど……」
 仁は、ローランドが良心的な考えをしている事に感心すると共に、考え無しに塩を供給したのはまずかった、と反省する。
「それなら、俺が鑑定してみましょう」
 仁がそう提案する。
「工学魔法で成分を確認すれば、安心でしょう?」
「そうして頂ければ、村の皆さんも助かりますね」
 と言うことで、仁はさっそく塩の鑑定を始めた。
「『分析(アナライズ)』」
 解析の魔法。分かってはいるが、何も害になる成分は混じっていなかった。
 4つの壺を全部確認した仁は、大丈夫です、と太鼓判を押した。喜ぶローランド。
「ありがとうございます。これで塩をお配りできます」
「え?」
「この塩は帳簿に載っていないものですから、売るわけにはいきません。皆さんにただで差し上げますよ」
 そう言って塩を抱えて戻っていくローランド。仁はこの商人ならこれからも長く付き合っていける、と確信したのだった。
 そして仁は、少し遅くなったが、村長のところに顔を出す。
「おお、ジン、おかえり」
「またじきに出掛けますけどね。あの、バロウとベーレは村長さんから見てどうですか?」
「ん? あの2人か。うむ、悪くない。もう殆どの連中と顔馴染みになったしな」
 さすがギーベックは、仁の意図を正確に把握していた。
「そうですか。それじゃあ、もし2人が承知すれば」
「うむ、まったく問題は無い」
 それを聞いて安心した仁はマーサ宅へ急いで戻った。そろそろラインハルトたちのところへ戻る時刻だからだ。
 仁が戻ると、ハンナ、エルザ、バロウとベーレはエアベールを食べているところだった。
「あ、おにーちゃん、これ、おいしい! ありがとう!」
「ジン兄、懐かしい味、ありがとう」
「ジン様、故郷の味です、ありがとうございます!」
 マーサとミーネも少し摘んだらしく、美味しかった、と言ってくれた。そう言われて仁も嬉しい。
「それは良かった。持って来た甲斐があった」
 更に仁は微笑んでバロウとベーレに向かい、
「君たちが良ければ、この村の住人にならないか?」
 と聞いたのである。
 現代では、「様」は格上の相手だけ、「殿」は同輩や格下の相手にも使えるようです。
 塩の扱いでいろいろ御意見いただき、こんな結末に落ちつきました。

 お読みいただきありがとうございます。

 20131225 19時48分 表記修正
(旧)順調にショウロ皇国首都ロイザート目指して進んでいた。
(新)順調にショウロ皇国首都ロイザートを目指して進んでいた。

 20151123 修正
 サブタイトルが08-24と同じ「勧誘」だったのでこちらは「スカウト」に修正しました。

 20160512 修正
(旧)(ローランドのセリフ)ゴムボール
(新)『ごむぼおる』
 2箇所修正しました。
+注意+
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