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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

11 ショウロ皇国とカイナ村篇

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11-18 塩が!

『トーゴ峠に荷馬車。行商人、ローランドですね。連れている者には見覚えがないですね。新人でしょうか』
 監視システム『庚申』からの情報で、老君はいち早く商人ローランドがやって来たのを知っていた。
『カイナ村で自給できないものをもたらす商人です、危険がないよう、密かに護衛するように』
 その命令で、ランドSがエルメ川までローランドを密かに護衛していった。もちろん当のローランドはそんな事とは知らない。
「あーっ! おみせやのおじちゃんきたー!」

 エルメ川に架かる橋の上から少女が手を振っているのを見たローランドは手を振り返す。
「あれはハンナちゃんだな。いつも元気だねえ」
 そして馬車は橋へさしかかる。
「ほう、前は木だったのに今は石造りか。丈夫そうだな」
 そんな独り言をいいながらローランドは馬を歩かせた。ハンナはローランドが来たことを村に知らせに行った。
「専務、あれってなんですか?」
 新人のボーテが指差す方をローランドは見た。そして目を丸くする。
「何だありゃ?」
 それは仁の城だった。

*   *   *

 ローランドが着いたのは午後遅くだったので、商売は翌日とし、その日はいつも通り村長ギーベックの家に泊まる。
「えーっ、エリック来なかったの!?」
 そんな声を上げて、バーバラは目に見えて落胆した。
「済みません、奴も技術主任として忙しい身なんです。分かってやって下さい」
「あたし……アルバンへ出ようかなあ……でもこの村を離れたくないし……」
 ぶつぶつと呟くバーバラ、そんな彼女をギーベックは窘める。
「こらこら、今はそんな事考えてる時じゃないだろう?」
 そしてギーベックはローランドとの話を再開。今、仁がこの村を租借地とした話をしているところ。
「は、はあ、ジンさんがこの村の……」
「ええ、向こう50年間、所有者というわけです」
 ギーベックは仁の功績をかいつまんで説明する。
「そんなことがあったんですか……首都にいたのに知りませんでした」
 王城内の出来事であるから、一般商人の耳に入らないのは致し方ない。
「で、先ほどご質問のあった建物ですが、あれがジンのいわば『お城』です」
「お城ですか……さすがというか何と言うか……ジンさんらしいですね……」
「お泊まりになりたければ、代理のバトラーAに話してみますよ」
「い、いえ、結構です。慣れたこちらに泊まらせていただければ」
 慌ててそう言うローランドであった。

 そんな話の後、ローランドは困ったことが、と、気になっていた事を口にした。
「それでですね、実は困ったことが一点だけあるのですよ」
「ほう?」
 そしてローランドは、塩を盗まれてしまい、売ることができなくなったと打ち明けた。
「塩が無いのですか……それは困りましたね。我が家でも塩の残りが乏しくなってきましてね。他の家でも似たようなものだと思いますよ」
「まことに申し訳ない事です。この後、店に戻り次第、馬を使ってでも塩はお届けしますから」
 平身低頭と言うに相応しく、ローランドは頭を下げっぱなしであった。

*   *   *

『塩を盗まれた、というのですか』
 ギーベック邸の窓越しに会話を傍受していたランドCが老君に報告している。
「はい、会話を聞いた限りでは」
『わかりました。あとはこちらで対処を考えます。また何かあったら報告して下さい』
 通信を切ったあと、老君は思考を巡らす。
例の(・・)伯爵の嫌がらせですね。まさか買い占めるだけでなく盗ませるとは思いませんでした。ローランドさんにも護衛を常時付けておくべきでしたか……私もまだまだ甘いですね。いずれにせよ、対処法は変わりませんが』
 そして老君は自らの移動用端末、老子に指示を出した。

 老子は、蓬莱島の倉庫へ向かった。塩なら文字通り売るほどある。というか既に幾らか売っている。
「藻塩ではまずいでしょうね。普通の塩でいいでしょう」
 タツミ湾の海水から作った塩が、今では100トンほど溜まっていた。
 湿気から守るため、100キロずつに分けて24金製容器に入っている。24金は通常の使用では錆びないので重宝する素材である。
 それを一つ運び出した。
 容器を魔獣の革で作った袋に入れ、肩に担ぐ。
 そのまま老子は転移門(ワープゲート)へと向かった。もちろん行き先はカイナ村である。

 時間を見計らって転移したため、カイナ村はちょうど真夜中であった。みな寝静まり、起きている()はいない。
「お待ちしてました」
 仁の家、その作業場地下から出てきた老子を迎えたのはバトラーAである。老子もバトラーAも、消身(ステルス)を起動している。
「計画は先ほど説明したとおりです。ローランド氏の荷馬車は?」
「はい、こちらです」
 バトラーAが先に立って老子を案内していった。
 村長ギーベック邸の裏庭にある厩に馬は繋がれ、その横に荷馬車が置いてあった。
 荷物はそのまま乗せてある。不用心かといえばそうではない。
 そばには仁が設定したカイナ村の守護神(ガーディアン)、ゴンが目を光らせていたからだ。
 但し、老君の端末である老子とバトラーAに対しては何もいうはずがない。
「荷物をそっと開けて下さい」
 バトラーAに命じ、荷馬車の幌をめくらせた老子は続けて指示を出す。
「空の塩壺が何個かあるはずです」
「はい、ありました」
 指示に従い、1分ほど荷物を探っていたバトラーAであったが、4つの塩壺を見つけ出した。
「十分です。それではこの塩を移し替えて……」
 持って来た容器から、塩壺へと塩を移し替えていく老子。バトラーAも手伝っている。
 守護神(ガーディアン)ゴンは、誰も来ないかどうか見張りをしていた。
 3分ほどで、持って来た塩は4つの塩壺に移し替え終わった。皮紙で厳重に封をして作業終了。
 残った20キロ分は仁の城に運んでおくことにした。
「これでいいでしょう。あとはこの塩壺を荷物の一番奥深くにしまって下さい」
 バトラーAは、塩壺を荷物の奥に押し込む。他の荷物は元あった通りに並べ、弄ったような形跡は残さないよう注意した。
「十分です。馬車ですから少々のずれはあってあたりまえ。さあ、引き上げましょう」
 まだまだ夜中。中天を過ぎた月が照らす中、老子は蓬莱島へ、バトラーAは仁の家へと帰ったのである。

*   *   *

「……はあ、気が重いな」
 村長ギーベック邸そばの広場が今回の店となる。
「専務、とにかく他の商品を売らないと……!!」
 言いかけて絶句したのを不審に思ったローランドがそちらを見ると、紙で蓋がしてある塩壺を持ってボーテが立っていた。
「どうした、ボーテ?」
「せ、専務! この塩壺、塩が入っています!」
「何だと?」
「それだけじゃありません! 重さからしてあと3つの壺にも、塩が入っているようです」
「…………」
 ローランドには訳がわからなかった。
 持って来た塩壺50個分の塩のうち、23個分はシャルル町で売れ、17個はゴホホ町で、そして5個がトカ村で売れ、残った5個のうち4個はどこぞの兵士が買っていった。
 はっきりと帳簿に残っている。そしてこれだけは、と確保した1個は一昨日の晩盗まれてしまったのである。
「……どこから出てきたんだ?」
「専務、いいじゃないですか! これでこの村の人達にも義理が立つというものですよ!」
 脳天気なボーテのセリフ。一理あるといえばあるのだが、商人としては収支が合わないというのは途轍もなく気になるものなのだ。
「専務、とにかく商売ですよ」
 せかすボーテの声。そしてちらほら集まってくる村人。
 ローランドも、悩むのはあとにして、商売へと無理矢理に頭を切り換え、商品の準備を始めたのであった。
 シオシオのパー……分かる人いるんかいなw
 24Kを便利に使っていますね(笑
 容器の方が重かったり……(値段も

 お読みいただきありがとうございます。

 20131224 13時08分 誤記修正
(誤)老子ととバトラーA
(正)老子とバトラーA

 20131224 13時17分 表記修正
(旧)バトラーAに命じ、荷馬車の幌をめくるバトラーA。
(新)バトラーAに命じ、荷馬車の幌をめくらせた老子は続けて指示を出す。
  「指示に従い、」を「1分ほど荷物を探っていたバトラーA・・・」の前に追加。

 20131224 16時00分 表記修正
(旧)ローランドさんにも監視を常時付けておくべきでしたか
(新)ローランドさんにも護衛を常時付けておくべきでしたか

(旧)湿気から守るため、100キロずつの24金製容器に入っている
(新)湿気から守るため、100キロずつに分けて24金製容器に入っている

 20131225 12時15分 表記修正
(旧)タツミ湾の水から作った塩
(新)タツミ湾の海水から作った塩

(旧)紙で厳重に封をして作業終了
(新)皮紙で厳重に封をして作業終了
 紙は無いですので皮で作った紙ですね。

(誤)昨夜盗まれてしまった
(正)一昨日の晩盗まれてしまった

 20140205 13時44分 誤記修正
 20131224 16時00分、下の修正が反映されていなかったのを直しました。
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