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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

01 カイナ村篇

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01-16 採集行

「それじゃ行ってきます」
「気をつけてね」
「おにーちゃん……」
 仁は、カイナ村の奥山で魔結晶(マギクリスタル)が採れることを知り、本格的な採集に出掛けることにした。さすがに危険なのでハンナはお留守番。同行するのはロックである。
「とーちゃん、いってらっしゃい」
「あんた、ジンに怪我させちゃ駄目だからね!」
「おれは怪我してもいいのか……」
 ロックは泳ぎの上手い子供、マリオの父親である。農閑期なので案内を頼んだのだ。村にはゴンを残し、ゲンを連れての採集行である。ロックは愛用の弓矢を持ってきている。
「しっかし、ジンは魔法工作士(マギクラフトマン)だっけか? すげえもんだな」
 大きな荷物を担いで歩くゲンを見、ロックが呟く。
「俺も昔、騎士になりたくてよ、王都へ行ったことがあるんだけどな。2年足らずで夢から覚めて村へ戻ってきたんだ」
「そうなんですか」
「ああ。だから王都の暮らしぶりもそこそこ知ってるつもりだがな、ジンが作ったような魔導具とか見たことねえし、ゴンやゲンみたいなしゃべるゴーレムだっていなかったぜ」
「あ、あはは」
「まあ、おめえはいずれ村から出ていくんだろ。それがおめえのためだろうさ。でもよ、たまには村へ顔を出してくれると嬉しいぜ」
 珍しくロックがしみじみとした話をするので、仁は珍しい物を見た、と言わんばかりの表情をする。
「なんでなんでえ、その顔は」
「え、いや、その、ロックさんも意外と気遣いする人なんだなあと」
「それって褒めているようで褒めてねえよな」
 そう言いながらも目は笑っているロック。
「カイナ村の人たちはいい人ばっかりですからね。もちろん、ロックさんも」
「なんだか取って付けたようだがまあいいや。……で、あの谷へ下りるのか?」
 やって来た峠から見下ろす谷。先日、ハンナと一緒に来た谷である。
「ええ。前回は少し下っただけですが、今回はもっと下まで行ってみようかと」
 一泊するつもりで、幕営の用意もしてきたのだ。ゲンに持たせて。
「よし、おりてみっか」
 それで2人と1体は慎重に谷を下る。滝があれば迂回、藪はゲンが処理していく。
 そして昼を大分過ぎた頃、拓けた場所に着いた。
「ここに幕営しようぜ」
 そういう判断はロックならではである。
 言われたとおりに幕営の準備をする。
「まず石とかどかして平らにするんだ。ゲン、手伝え」
「ハイ」
 ゲンにも手伝わせたのですぐに地面は平らになった。そこへ柱を立て、紐で倒れないように支える。その上に横にした梁を渡し、上から大きな布を被せる。
 地面にはまず布を敷き、毛皮を敷けば寝床が出来上がる。
「しっかしゲンがいてくれたからこんだけいろいろ持って来られて助かるぜ」
 2人での幕営とは思えない快適さである。
「よし、そんじゃ俺は夕飯の準備をしておくから、ジンは探し物をしてな」
「はい、それじゃ」
 そこで仁は、食事の仕度をロックに任せると、鉱石の探査を開始する。
地下探索(グランドサーチ)
 しばらく、あちらこちらで地下探索(グランドサーチ)の魔法を使っていると、大きな反応が現れた。
「あった!」
 思わず声を出す仁に、ロックもやってくる。
「お、見つけたみてえだな」
「はい。それじゃあゲン、ここを掘れ」
「リョウカイデス」
 ゲンに指示を出し、地面を掘らせる仁。ゲンは勢いよく穴を掘っていく。
「おお、すげえな、こりゃ」
 みるみるうちに穴が深くなっていく。3メートルくらいで一旦ゲンは停止した。そして大きな黒い岩を運び出す。
「何だ? 見栄えのよくねえ石だな?」
「鉄鉱石ですよ」
 村で使う鉄や銅も足りなくなってきたので、これは必要なのだ。
「どんどん採掘しろ、ゲン」
「ハイ」
 前回、ゴンと来た時は、まだ改良される前だったので、ゴーレム自身が岩を判別する事は出来なかったが、今は違う、仁が限定的に知識を与えたので、仁が必要とする材料を、特殊な物を除き、ある程度は自立的に探す事が可能になっているのだ。
 山と積まれる磁鉄鉱。時々、黄銅鉱が混じって出てくる。ロックが、
「金か!?」
 と興奮していたが、仁が説明するとがっかりしていた。
 夕方までやって、かなりの量の鉱石を採掘できた。分別して積み重ねておく。後々、ゴンとゲンに取りに来てもらう予定だ。
「で、一番のお目当ては見つかん無かったのか」
 夕食を食べながらロックが尋ねる。
「ええ、それはまた明日ですね」
 谷間の夜は早い。夕食を食べた後は何するでもなく、ゲンに見張りを任せ、休むことにする。歩いて来て疲れているのですぐに2人とも寝てしまった。

 翌朝、朝食を済ませた後、仁は再び地下探索(グランドサーチ)を使って魔結晶(マギクリスタル)の鉱脈を探していく。
 幕営地から更に下ったあたりで、ようやく反応が返ってきた。
「よし、じゃあゲン、頼んだ」
「リョウカイシマシタ」
 昨日と同じく、ゲンが地面を掘っていった。まず出てきたのは土属性の黄色い魔結晶(マギクリスタル)。仁が欲しかったものだ。
「よし、その調子だ。どんどん掘ってくれ」
「ハイ」
 更に黄色い魔結晶(マギクリスタル)を2個掘り出した後、しばらくは何も出て来なかった(普通の岩以外は)が、急にゲンの体がぶれると、その動きが止まり、
「マスター、テガコワレマシタ」
 ゲンが壊れた手を見せながら穴から上がってきた。
「何!? 硬化(ハードニング)したお前の手が壊れるって……もしかしてアダマンタイトか!?」
 アダマンタイトはこの世界でもっとも硬い鉱物である。自ら穴に入ってその岩盤を調べた仁は、
「間違いなくアダマンタイトだ。こんな浅いところにあるなんてな」
 そう呟くと、腰の水筒を取り出し、
水流の刃(ウォータージェット)
 アダマンタイト鉱脈を切り裂いた。
 そうして切り出した鉱石はそれほど多くはない。
「まあ、こんな浅いところで見つかっただけ幸運か。おまけもあったし」
 おまけというのはミスリル銀が少量だが見つかったことだ。ミスリル銀もしくは単にミスリルと呼ばれるこの金属は魔力伝導に最も優れた物質である。その正体は銀の同位体。陽子47、中性子60もしくは62、というのが普通の銀だが、ミスリルでは中性子がほとんど魔力子に置き換わっているのである。
 それはさておき、欲しかった材料もあらかた見つけたので帰り仕度をすることに。ゲンの手は早々に工学魔法で直したのは言うまでもない。
「もういいのか?」
「はい、おかげでいいものが見つかりました」
「よし、日も短いし、帰るとするか」
 その時、ロックの目が光る。
「ロックさん?」
「しっ、静かにしろ」
 仁を押し止め、ロックは弓に矢をつがえる。そして谷へ向けて放った。ぴい、というような声が聞こえ、
「やったぜ! 山鹿だ!」
 谷へ向かって駆けていったロックは、しばらくして大きな鹿を引き摺ってきた。
「見ろ、すげえ獲物だ。持って帰って干し肉にしようぜ」
 山鹿は貴重な蛋白源である。荷物の大半は後で取りに来ることにし、傷みやすい山鹿と幕営道具、それに若干の鉱石だけを持って帰ることにした。
「しかし、よくこの季節にこんな所にいやがったよなあ」
 ゲンが担いだ山鹿を眺めながらロックが言う。
「え、そうなんですか?」
「ああ。普通ならもっと北の山へ行かないと獲れないんだがな、運がよかったぜ」
 普通は、数日山に入る覚悟でないと獲れないらしい。仁はなんとなく気になったが、それよりも見つけた鉱石をどう使うかを考え始めると、その心配はどこかへ消えてしまったのである。
「01-07 コンロ」でマリオが泳ぎが上手いと言ってますね。
 さて、なんだか気になる事も出てきました……

 20130723 20時39分  表記の統一
 ゲンが仁を呼ぶ時は「マスター」なので修正しました。
(この先、改良されて話し方が流暢になると御主人様(マスター)と呼びます。

 20131020 10時31分  誤字修正
(誤)その心配はどこかへ消えて決まったのである。
(正)その心配はどこかへ消えてしまったのである。
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