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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

09 統一党決着篇

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09-46 罠

「うう……ここは?」
 目を覚ました老人は、辺りを見回した後、マキナにそう尋ねた。
『ここは統一党(ユニファイラー)の本部……らしい』
 マキナがそう答えると、老人はゆっくりと頭を振る。
統一党(ユニファイラー)……そうか、思い出した。私は統一党(ユニファイラー)主席、ジュール・ロランという。なんだか長い夢を見ていたような気がする」
 殴られ、生死の境をさまよったショックで、洗脳が解けたようだ、とマキナを介して仁は思った。
「本来、統一党(ユニファイラー)はディナール王国を理想とし、その理念を追い、国同士が対抗しあっている現状を憂い、思想的に統一しようという集団だった筈だ」
 自分に言い聞かせるように、ジュール・ロランは呟きを漏らす。
「それが何故こんなことに……」
 頭を抱えるジュール。そんな様子を見たマキナが質問を投げかけた。
『あなたは自分が何をやっていたか、憶えているのか?』
 その質問にジュールは肯く。
「ああ。だが、なんというか、まるで別人がやっていたかのようだ。何故、あんな事を私は命じてしまったのか……」
 そう答えてまたジュールは頭を抱える。
 ペガサス1内でその様子を魔導投影窓(マジックスクリーン)越しに見ていた仁は、とりあえず先へ進もうと、マキナの口から指示を出すことにした。
『ランド71、しばらくジュールに付いていてやれ。気絶したドナルドからも目を離すなよ。……他の者達は周囲を警戒しろ。アンが言っていた『黄金の破壊姫』がまだ潜んでいるはずだ』
『黄金の破壊姫』。その単語を聞いたジュールが反応した。
「ああ、それはエレナのことかな? ああ、ああ、エレナ。そう、彼女の指示だった。そうだ、思い出した。彼女の命令は絶対だった。彼女は我々の女王だった……」
「やはり、黄金の破壊姫……エレナが真の黒幕だったのですね」
 そう言ったアンを見たジュールは驚く。
「君は自動人形(オートマタ)か? 青い髪の自動人形(オートマタ)……遺跡から見つかった青い髪の自動人形(オートマタ)は全てエレナの命令で破壊、廃棄したはずだが……まだ残っていたのだな」
「そのエレナがどこへ行ったかわかりませんか?」
 とのアンの問いかけに、ジュールは主席の座、その後ろを指差し、
「ここにいないのなら、あの後ろに抜け穴がある。多分そこから抜け出したんだろう」
 と教えた。完全に洗脳からは解放されたようだ。
『よし、礼子、アン、ランド70、行くぞ』
 ランド71をジュールの元に残し、一行は抜け穴を探した。
 それはすぐ見つかった。床を叩くと、空洞がある部分があったのだ。そしてランド70が窪みを見つけ、そこに指を掛けて持ち上げると簡単に開いたのである。
 そこは急な下り階段であった。ほとんど真っ暗である。
『下への階段、か。ランド70が先頭、礼子、アン、マキナの順で行く』
 仁はそう指示を出し、一行は階段を下っていった。どこまでも真っ直ぐ下っている。
 明るい場所ではほとんど真っ暗に見えた階段には、実際にはわずかな明かりが灯されており、一行は問題無く先を見通すことが出来る。
「こんな隠し通路は知りません。きっと後から作ったものです。ですからこの先、何があるかわかりません。十分注意して下さい」
 階段を下りながらアンがそう注意した、その時。突然階段が消えた。
 いや、正確にはステップが傾き、滑り台状になったのである。当然、一行は滑り落ちることになる。
 だが、人間ならいざ知らず、慌てるものはいない。先頭のランド70は壁に両手を突っ張り、停止したのである。
 当然、後続の3体はランド70にぶつかって止まる。
「罠、ですね。人間なら有効だったでしょうが」
『うん。ランド、その調子で上手く速度を殺しながら下れるか?』
 マキナがそう尋ねると、ランド70は肯く。
「はい、マキナ様。容易いことです」
 そして一行はブレーキ役をランドに任せて、再び下り始めたのである。ランドは両手の力を加減し、速度を減じながら滑り降りていく。
「長い下りですね。もう登った分を過ぎ、地下へ入ったのではないでしょうか」
 しかも真っ直ぐである。45度ほどの角度で地下へ向かう階段、いや斜面。
 かなり地下に潜ったと思える頃、ようやく終わりが見えた。
『ランド、一旦止まれ』
 階段の終点まであと10メートル程となった時、マキナ=仁はランド70に命じ、一旦停止させた。
『また罠がある可能性が高い。慎重にいけ』
「はい、マキナ様」
 そこでランド70は今までの3分の1くらいの速度で再度下ることにした。礼子もアンも、マキナも、周囲に気を配りながら続く。
 そしてついに終点に着いた。そこには1枚の扉がある。
 一番聴覚が優れた礼子が耳を澄ましてみるが、何も聞こえない。礼子は視覚を赤外線に切り替えてみるが、扉の近くに熱源は無かった。
「うーん、俺だったらどんな罠を仕掛けるだろうか」
 ペガサス1の中で仁は考え込む。
 その間にランド70は扉に手を掛けた。
 同時に仁は1つの可能性に思い当たった。
『いかん! みんな、上に注意しろ!』
 仁がマキナの口からそう言い終わらないうちに、階段、いや斜面の上から音が聞こえてきた。
「岩です!」
 真っ先に音に気が付いた礼子が上を見上げて叫んだ。そう、岩雪崩が斜面を滑り落ちてくるのだ。扉はダミーであった。扉に触れた途端、岩雪崩が発生する罠であったのだ。
「生き埋めにするつもりか!」
 降りてきた斜面の長さは50メートル以上。それを埋め尽くすほどの岩がなだれ落ちてきていた。
「バリア」
「バリア」
 礼子はペンダント、アンは指輪。
 そこに秘められた魔法障壁は岩雪崩を完全に防いだ。
 だが、このままでは身動きも取れない。人間と違って窒息の心配は無いが、いつまでもこうしているわけにはいかないのである。
『うーん、この岩を手っ取り早くどかすには……それしかないか』
 マキナ=仁は結論を出した。
『礼子、今から手順を説明するから良く聞け。まず、マキナの体内にある非常用の魔力貯蔵庫(マナタンク)を取り外せ』
「はい」
 魔力貯蔵庫(マナタンク)は、自由魔力素(エーテル)濃度が薄い場所でも問題無く動けるようにとの魔導装置(マギデバイス)である。これを持っているのは他に礼子くらいのものだ。
 礼子はマキナの体内から魔力貯蔵庫(マナタンク)を取り外した。それは全属性の魔結晶(マギクリスタル)。闇の中でも虹色に輝いている。
 今いる場所は自由魔力素(エーテル)濃度が十分なので魔素変換器(エーテルコンバーター)を持つマキナが停止することはない。
『よし、それを雪崩れてきた岩に埋め込め。難しいぞ』
「はい」
 バリアが張られているので、岩に潰される事はないが、中の者も直接岩に触れる事は出来ない。
 ここで一旦バリアを切り、手早く魔結晶(マギクリスタル)を岩にセットする必要がある。
 その際、崩れ落ちようとする岩を支えながらの作業になるが、礼子とランド70は十分にその膂力で岩雪崩を押さえ込むことが出来た。
 これはもちろん2体の力に負うところが大きいが、狭い通路に押し込められた岩が詰まって摩擦力が働いたこともある。
 アンは万が一に備えてバリアを張る準備を整えながら礼子とランド70を見守った。
 左手で岩を支えながら、右手に持った魔結晶(マギクリスタル)を岩の隙間にねじ込む礼子。そして再び2体はバリアを張る。これで全て問題無く終了。
『よし、上手くいったな。最後の仕上げだ。礼子、俺が合図したら埋め込んだ魔結晶(マギクリスタル)に『魔力爆発マナ・エクスプロージョン』を使え』
「はい」
 そして仁は、念のため、砦内にいる味方勢を退避させる。抵抗が潰えているので、外に出るのも分単位で可能だった。もちろんランド71とジュール、それに気絶したままのドナルドもだ。
 他の場所で気絶させた捕虜も全員連れ出すように命じる。
『いいか、もう少し待て……よし、今だ!』
「『魔力爆発マナ・エクスプロージョン』」
 礼子最強の攻撃魔法が炸裂した。
 魔力貯蔵庫(マナタンク)として使われていた魔結晶(マギクリスタル)は、いわば魔力素(マナ)の塊である。
 それを爆発させればどうなるか。礼子がいる側は不壊のバリアで封じられている。通路は直線。
 答えはすぐに出た。
 かつてカイナ村北方の山で倒した百手巨人(ヘカトンケイル)、その魔力核(コア)の10倍以上のポテンシャルを持つ魔結晶(マギクリスタル)が爆発したのである。
 長い斜路に詰まった大量の岩は、全て上へ吹き上げられ、出口を目指す。
 それは岩の砲弾と化し、一気に噴き出した。
 その勢いは最上階であった司令室の天井をぶち破り、外へと飛び出した。
「おおっ、思った以上の勢いだなあ」
 ペガサス1からそれを見ていた仁は、岩の台地の一部が割れ、そこから岩屑が50メートル以上も飛び上がったのに感心した。

*   *   *

「な、な、なに!? 今度は何なの?」
『黄金の破壊姫』ことエレナは、元階段であった斜面のちょうど中間点に設けられた隠し扉の奥にある秘密の部屋に逃れ、追ってくる者達を首尾良く罠に掛けて一安心していた。
 その時、砦全体を揺るがすような地響きが響いたのである。
 まだ無事な魔導投影窓(マジックスクリーン)で見ると、砦の屋根に当たる台地の一部から、岩が砲弾のように撃ち出されているのが見えた。
「何よ、何よ、これ! まさかこれもあの化け物の仕業だというの!?」
 エレナの絶叫が響き渡った。

*   *   *

「マキナさま、上手くいきましたね」
 アンも感心していた。礼子はと言えば、バリアを解除後、耳を澄ましている。
「斜面の途中から声が聞こえました」
『なるほど、途中に隠し部屋か隠し通路があったんだ。よし、登り直すぞ』
 斜路は今の衝撃でかなり損傷し、凸凹になっていたので登るのに不都合は無かった。
 それで一行は易々斜面を登り、隠された扉をついに見つけたのである。
 次回、ついに対決!

 お読みいただきありがとうございます。

 20131029 15時07分  誤記修正
(誤)いつもでも
(正)いつまでも

 また、マキナ=仁のセリフが「」になっていたので『』に直しました。
+注意+
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