挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

09 統一党決着篇

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

241/1739

09-26 冷蔵庫?

 仁はマーサ宅の台所に置いたシトランを見て、去年のことを思い出した。
 初夏、暑くなる頃のこと。仁は食料保存のために冷蔵庫を作ろうとしていたが、まだ蓬莱島に帰るすべもなく、材料不足で断念したのである。
 しかし今は。
「うーん、何でもかんでも便利にすればいい、ってもんじゃないよな」
 もうお尋ね者ではなくなったとはいえ、カイナ村が目立ちすぎるのもどうかと思う。
「どうするか……」
 仁は外へ出て、春色の山々を眺めた。
 低い山はもう雪も消えているが、遠くに見える高い山は万年雪を被っていた。
「雪、か……そうだ!」
 仁は食堂にとって返しシトランをぱくついているハンナに尋ねた。
「ハンナ、この村って雪は降るのかい?」
「え?」
 シトランを口に入れたハンナは、仁の質問の意味を測りかねてきょとんとした顔をした。
「ジン兄、もう少しちゃんと聞かないと」
 何とエルザに窘められてしまった。
「ああ、悪い悪い。ハンナ、俺は真冬の間はここにいなかったんで知らないんだ、この村って、冬にはどのくらい雪が降るんだろう?」
 今度はちゃんとハンナにもわかったようだ。
「うーんとね、年があけるまではふらないよ。でもね、2月と3月はふるの。3月のゆきはすぐとけるんだけど、2月のゆきはとけないからたいへんなの」
 と教えてくれたのである。
 仁がいたのは年末まで。仁は積もった雪を見なかったが、年が明けるとそれなりに降るようである。
「でもね、ことしはおにーちゃんが作ってくれたおうまさんがいたから、ゆきかきらくだった、ってみんな言ってたよ」
 雪かきが必要なほどには降るらしいと聞いて、仁のアイデアは固まった。
「よし。『雪室(ゆきむろ)』を作ろう」
「ゆきむろ?」
 横にいたエルザが聞き返した。
「ああ、雪室(ゆきむろ)っていうのは、地面に掘った穴とかに雪を詰めておいて、そこに食料を保存するものなんだ。冬に雪を溜めておいて暑い夏に利用する。手間だけで元手いらずさ」
 それを聞いたエルザは感心した声をあげる。
「すごい発想。それもやっぱりジン兄の世界の?」
「そうさ。まず許可もらわないとな。ハンナ、ちょっと村長さんの所へ行ってくる」
 仁はハンナにそう声を掛けた。ハンナは肯く。エルザはその隣に座り直した。
「うん、行ってらっしゃい」
 エルザとハンナに見送られて、仁は村長宅へと向かう。礼子は無言で付いて行くが、楽しそうな仁を見て、その顔が綻んでいた。
 村長宅には村のおかみさん達が集まっていた。
「ジン! おみやげだって? ありがとうよ!」
「おいしそうだね! さっそく帰って子供たちと食べてみるよ!」
「あんた、亭主にも残しといてやんなよ?」
「わかってるよ!」
 などと賑やかである。そんな中、村長のギーベックは、
「ジン、何か用事かね?」
 と尋ねてきた。それで仁は雪室(ゆきむろ)を作りたいと話をする。
「ふむ、雪室(ゆきむろ)か。雪がある間は雪に野菜とかを埋めて保存することはあるが、積極的に利用しようと言うんだな。確かに、暑い夏に保存がきくのは助かるな」
「ジン、ぜひ作っておくれよ! 夏は肉とか日持ちしないんで困るんだよ!」
「やっぱりジンだね! 頼りになるよ」
 村長だけでなく、そこにいたおかみさん達も賛成してくれたので、残るは場所選びである。
 少しずつとはいえ雪が溶けて水になるから、水はけのいい場所もしくは村の中で低い場所が望ましい。
 相談の結果、結局麦の貯蔵庫のある広場に作る事になった。食糧管理の点で便利だからだ。また、水はけも良さそうである。
「よし、ゴン、ゲン、礼子、手伝ってくれ」
「はい、お父さま」
 そこで仁は食料庫のある広場へと向かった。そこは村の東側になり、森に向かってごく緩い下り坂になっている。
 仁はその一番南側の空いた場所を雪室(ゆきむろ)にすることにした。
「ここにシェルターみたいな穴を掘れ」
 ゴンとゲンに指示を出す。2体は1度やっている作業なので、詳細を指示せずともかなりの作業をこなせる。
 しかもここは岩場ではないので、作業も早い。
 礼子には掘削(ディグ)の魔法を補助に使ってもらい、穴を広げていった。
 仁は硬化(ハードニング)で穴の壁を強化していく。
 これらの連携作業により、2時間足らずで雪室(ゆきむろ)は完成した。
 斜めに地下へ向かって通路が延び、雪室(ゆきむろ)そのものの広さは小学校の教室2つ分ほど。
 床は水はけを良くするため、石組みとした。石の隙間から水は地面に染み込んでいく。
 大体地下3メートルくらいになっており、断熱効果も高い。加えて掘り出した土を更に上に盛り上げたので、その分も断熱効果を高めるだろう。この先草が生えれば、尚良し。
「これでいいな。後で魔導ランプを設置するとして、肝心なのは雪か」
 今年カイナ村に降った雪は既に溶けてしまっている。
「山から持ってくるしかないか……いや」
 魔法で雪を出せばいいではないか。
 折からそこにエルザとハンナが連れ立ってやって来た。
「おにーちゃん、おひるごはん……って、なにつくったの?」
「やあハンナ。もうそんな時間か。一旦帰ろうか。道々説明するよ」
 それで仁は雪室(ゆきむろ)を後にし、マーサの家へと向かった。途中、ハンナにもわかりやすく説明した。
「ふうん、ゆきをためておくんだ。きっとすずしいよね! そこにたべものをほぞんするんだね!」
「ああ、そうさ。来年からは村に降った雪を詰め込むんだ。でも今年はもう遅いから……」
 仁はちらりとエルザを見た。
「?」
 エルザはその意味が初めわからなかったが、仁が自分に考えさせようとしているのだと気づき、首を捻って考え込む。
 そしてマーサの家が見えた頃。
「わかった。魔法で雪を出せばいい」
 と正解を口にした。

*   *   *

 昼食後、仁はマーサやハンナに頼んで村人を貯蔵庫広場に集めてもらった。
 先ほど仁の話を聞いていなかった村人が首をかしげている。
「おいおいジン、なんだいこりゃ?」
 昼時なので、家に戻ってきた村人達が、仁がまた早速何かをやらかしているということで集まってきた。ほとんどの村人が集まったのを確認した仁は説明を始めた。
「これは雪室(ゆきむろ)って言いまして、中に雪を詰め込むんです。そうすると、夏になっても雪が残っているんですよ。そこに傷みやすい食料を保存しておくんです」
 そんな簡単な説明でも、その有用性は伝わったらしい。
「ほう! そりゃあいいぜ! 夏は肉がすぐに腐るから困るんだよ、だから干し肉か塩漬けにするんだよなあ」
「でもよ、もう今年は雪なんて無いぜ。まさか山から持ってくるなんて言わないよな?」
 仁は笑って答える。
「言いませんよ。来年からは村に降った雪をかき集めて詰めてもらうとして、今年は……」
 そこで仁はエルザを見る。
「エルザ」
「はい」
 エルザは右手を雪室(ゆきむろ)に向けて伸ばし、
「『雪弾(スノーバレット)』」
 魔法を放った。それは水属性中級魔法。また、氷属性(水属性派生)初級でもある。
 詠唱と共に、雪つぶてが雪室目掛けて飛んでいく。
「おおー!」
「すげー!」
「初めて見たぜ!」
「さすがジンの妹だぜ! 美人だしな!」
「あんた、美人は関係ないだろう?」
 それを見た村人達、口々に感心する声を上げる。忌避したり畏怖するような者は一人もいない。皆、仁の規格外さに慣れているからでもある。
 因みに仁はこういう攻撃系魔法は使えない(腕輪を使えば別)。過熱したものを冷やす『冷却(クーリング)』か、氷を出す『(アイス)』くらいである。
 (アイス)では出来るのが氷ということで、穴を掘って中に食べ物を押し込むような使い方には向かないため、またエルザを村人に印象づけるためエルザにやらせたのである。
 腕輪に貯まっていた余剰魔力のおかげもあって、5分ほどで雪室(ゆきむろ)はいっぱいになった。
「よし、それでいいよ。エルザ、ご苦労様」
 ゴンとゲンに雪を突き固めさせながら仁はエルザを労った。
 そして村人達に、
「これで雪室(ゆきむろ)はいつでも使えます。冷やしたいものを入れてもいいですよ。ただし、扉は必ず閉めてくださいね」
「おう、わかったぜ! あとは何か気を付ける事はないのか?」
「そうですね。穴の中なので、空気が悪くなっていることがありますから気をつけて下さい。息苦しかったりしたらすぐに外へ出ることです」
 そう言いながら仁は、酸欠対策にとりあえず補助ゴーレムを置こうと考えていた。入った人の健康状態に気をつけさせ、また食料の出し入れを手伝うこともさせられる。
「わかった。もう使えるんだな?」
「はい」
「よーし! 暇な奴ら集めて山鹿狩りに行くとすっか!」
 そう言ったのは男衆の兄貴分、ロックであった。
「帰ったら一杯やれるように酒冷やしておこうぜ!」
「あんた! 飲み過ぎは駄目だからね!」
 今日もカイナ村は平常運転である。
 雪室(ゆきむろ)は9月25日に Luxion 様よりいただいたアイデアです。ありがとうございました。

 お読みいただきありがとうございます。

 20131010 08時37分 誤記修正
(誤)先ほど仁お話を聞いていなかった
(正)先ほど仁の話を聞いていなかった
 右手人差し指がnを叩き損ねたんですね。済みません。

 20131012 10時52分 脱字修正
(誤)低い山はもう雪も消えてが
(正)低い山はもう雪も消えているが
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ