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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

08 統一党暗躍篇

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08-32 戦闘開始

「な、何事だ!!」
 第6支部は今や上を下への大騒ぎであった。
 時刻は夜9時過ぎ。ある意味、一番気が緩む時刻である。夜勤の者が動き出し、通常勤務の者は休息に入る頃。
 混乱が夜の砦内を駆け巡る。
「通用門の警備員が気を失っているのを発見しました」
「外回り要員、帰りません」
「地下の警備2名、失神を確認」
 報告は次々に入ってくるが、わけがわからない。
「ええい、いったい何が起こっているというのだ! わかるように報告しろ!」
 第6支部長、インタクト・マーゼシリア・ド・ガルバーニは大声で怒鳴るが、それで事態が好転するわけでもない。
「た、大変です!」
「今度は何だ」
「ほ、捕虜がいません!」
「何? どういう事だ?」
 本当にわけがわからず、インタクトは混乱しかけていた。
「支部長、落ちついて下さい。どう考えても外部から何者かが侵入したとしか考えられません」
 そう声を掛けたのは副支部長であるマルチェロ。魔法工作士(マギクラフトマン)でもある。
「何者かだと? 何者とは誰なんだ!」
 そう聞かれてもマルチェロに答えられるわけもなく。
「昨日、本部から鳩が来ていましたよね? あれを思い出して下さい」
「何だ? あの成り上がりのパーセルの話を真に受けるのか?」
「可能性の1つとして考えましょうと言っているのです」
 それが最も真実に近いのであるがインタクトは聞く耳を持たない。仕方なくマルチェロは自ら指示を出そうとした、その時。
 顔を何かに殴られたような衝撃があり、目の前を何かが通り過ぎた、と思ったのと同時に鈍い音がして壁に穴が開いていた。
「な、何だ? 今のは?」
 触ると顔から血が垂れている。
 そしてまた次の瞬間、鈍い音と共に今度は背後の壁に穴が開いた。
 何が起きたのかさっぱりわからない。それなりに優秀な魔法工作士(マギクラフトマン)であるマルチェロであるが、この現象に心当たりはないし、推測すら出来なかった。
 隣の部屋では、警備の兵士が、いきなり壁に穴が開き、何かが自分の腕を掠め、肉をごっそりもぎ取ってしまったことでパニックを起こしていた。
 しかしマルチェロは冷静に考えることが出来ていた。
「何と書かれていたか……そうだ、『「俺たちに関わるな」と言ってきた魔法工作士(マギクラフトマン)がいる』、だった。まさか……」
「支部長! 壁にいきなり穴が開き、待機中のゴーレム2体が粉砕されました!」
「川に面した壁になにやらめり込んでいます!」
 報告が入ってくる。
「そのめり込んでいるものを取り出し、持ってこい」
 そう命令しておき、自分は砦正面に回り、観察用の小さな穴から外を見る。
「うん? あれは?」
 100メートルほど離れた場所に数名の人影があった。暗いし、遠いので顔すら判別できない。
「穴の向きからしてやったのはあいつらか?」
 少し考えた末、戦闘ゴーレムを2体出す事に決める。もちろん様子見のため最下級のゴーレムだ。
「行け。そして敵なら捕らえて連れてこい」

*   *   *

「さて、そろそろ何か反応があってもいい筈なんだが」
 レールガンを3発打ち込んで10分。仁は闇の中、ヘルメットを暗視モードにして砦を見つめていた。
「あ、お父さま、何か出てきました」
 暗視モードの仁よりも更に目のいい礼子が、砦から出て来たゴーレム2体を見つけた。
「歩いて来ます。ゴーレムですね。あまり出来は良くなさそうです」
 動き方でゴーレムの出来はわかる。ぎこちない動きをしていればそれは低級なゴーレムだ。但し単純な力などはそういう物差しでは測れないが。
 20メートルほどまで近づくと仁にもそれがゴーレムだとわかる。そしてその出来具合も。
「友好的なわけないよなあ」
 2体のゴーレムは発声機能はないらしく、無言のまま歩みを止めず近づいて来て、仁に掴み掛かろうとした。
「何をするのです」
 礼子が手にしたレールガンを一振りした。
 アダマンタイト製で約50キロという、礼子よりも重いレールガンで殴られたゴーレムは2体ともひしゃげて動かなくなった。
「何と脆い……」
 外装が青銅である。仁は何のためにこのゴーレムが送り出されたのかさっぱり理解できない。
「もう少し近づいてみるか。そうだ、アッシュ、エルム、そのゴーレムを担いでいけ」
「はい、チーフ」
 隠密機動部隊(SP)、アッシュとエルムはそれぞれ1体ずつ、動かなくなったゴーレムを担いでいく。ランド50、51も一緒だ。
 夜の闇の中、およそ40メートル程度まで近づいた仁達。
「よし、あの砦の壁目掛けてそのゴーレムを叩き付けてやれ。……これはそうだな、今度はランドに頼むか。ランド50、ランド51、頼む」
「はい、御主人様」
 ランド50と51は同時にゴーレムを担ぎ上げると、砦上方の壁目掛け、全力で投擲した。
 因みに陸軍(アーミー)ゴーレムの最大出力は現在の礼子を基準にすると20パーセントくらいである。それなりにとんでもない。
 その力で投げ付けられたゴーレムは砦の壁にぶつかってひしゃげた状態で半ばめり込んだのである。

*   *   *

「な、な、何だ、あいつらは?」
 外を観察していたら、いきなりゴーレムが飛んできて壁にめり込んだ。
 それを見て流石のマルチェロも肝を潰す。だがすぐに冷静になると、考えを巡らせた。
「うむう、あの力、あいつが連れているゴーレムが、かのゴーレム園遊会(パーティー)で活躍した最強ゴーレムだな? とするとあいつはジン・ニドーか?」
 ゴーレム園遊会(パーティー)の情報と、昨日の連絡内容が一致する。
「もはや出し惜しみする時ではないか。……『光の玉(ライトボール)』」
 マルチェロは光の玉(ライトボール)を3つ作り出し、砦前に浮かべた。暗闇が消え、明るくなる。
 そこにいたのは戦闘用と思われるゴーレムが4体、そしてそれに命令しているらしい奇妙な兜を被った者が1名。
 そして理解に苦しむのは、どう見ても少女にしか見えないような者が、自分の身長よりも大きい得体の知れない武器を抱えて立っていたことである。
「ん、襲ってきたのはあいつらか?」
 マルチェロが声のした方を向くと、立ち直ったインタクトがもう一つの観察窓から外を見ていた。
「そのようです。下級ゴーレムでは相手になりませんでした」
「ふん、上級戦闘用ゴーレムは儂にしか起動できんからな。かまわぬ、何者か知らぬが、目にもの見せてくれる」
 そう言ってインタクトは一旦引っ込むと、戦闘用ゴーレムを全部起動し、出撃させたのである。但し切り札として、最強の戦闘用ゴーレムと万能ゴーレムは温存しておく。
 マルチェロが見ていると、すぐに砦正面から15体の戦闘用ゴーレムが飛び出していくのが見えた。
「倍以上の戦力差か。まあこれで決まるだろう」

*   *   *

「砦に開いている監視窓の向こうに誰かいますね。こっちを観察しているようです」
 礼子がそう言っていると、光の玉(ライトボール)が上がり、あたりを照らし出した。
「やっと気が付いたか。そうなると次は全力で攻撃してくるかな? バリア」
 強化服の防御力は高いが、念のためバリアを張っておく仁。
 それから間もなく、15体のゴーレムが砦正面に開いた扉から飛び出してきたのである。
 顔から血が出るくらいで済んだと言うことは壁を幾つもぶち抜いた後でかなり速度落ちていたんですね……運のいい奴。

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