挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

08 統一党暗躍篇

202/1478

08-23 ドラッグベース

 第5列(クインタ)のデネブ1にエルザとミーネに買ってきてもらった服を着せ、他の者達の服を買いに行かせた。
 アンの助言により新品では目立ちすぎるというので、古着を買うことにした。
 ブルーランドにも買いに行ったりさせ、これを繰り返してその日のうちに全員が服を手に入れたことで人間の町で暮らしてもわからないようになったので送り出す。
「それじゃあ頼むぞ」
「了解しました、チーフ」
 ポトロック、ブルーランド、砦跡のように転移門(ワープゲート)のある場所を起点に、各地へ散らばらせる。
 全員、朝と夜に老子へ定時連絡を入れることになっている。
 適当な地点には小型の転移門(ワープゲート)も設置したりする計画だ。
「これでひとまずはよし、と」
 全員転移していったのを見届け、仁は深呼吸する。
「さあ、次は何をするかな?」
 それに答えたのはもちろんアン。
「ごしゅじんさま、先日薬を研究されたようですが、使った血液はどうやって保存していますか?」
「ん? 冷凍だけど」
「それって、元の血のままですか?」
「ああ、そうだが」
 するとアンは慌てた様子で、
「いけません! 血液というものは保存が難しいのです!」
 と言ったので仁も、
「老子、アンがこう言ってるが?」
 と言うと、老子が答えた。
「はい、その通りです。アンからコピーした情報の整理がついたのが昨夜でして、すぐに対応しました。御主人様(マイロード)への連絡が遅れて申し訳ございません」
 仁はほっとした。
「そうか、それならいいんだ。あれだけのレア素材、駄目にしたらもったいないからな。……で、冷凍が駄目だとするとどういう保存をするんだ?」
 これに答えたのはアン。
「必要なのは赤いところではなく、液体成分です。分離してしまえば、魔力庫(エーテルストッカー)でほぼ劣化無しに保存できます」
魔力庫(エーテルストッカー)?」
 仁も知らない単語であった。
魔力庫(エーテルストッカー)とは、空気中の自由魔力素(エーテル)を20パーセント以上に上げた貯蔵庫です。魔力を持つ素材を半永久的に劣化させずに保存できます」
 アンが説明する。これは朗報だ。
「昨夜のうちに貯蔵庫を作り、血液を移し替えておきました」
 老子も報告する。事後になったが、こういう事であれば仁も咎めるつもりはない。むしろよくやった、と賞賛する。
「そうか、それなら安心だ。そうしたら老子、正式な回復薬の作り方は解析済みか?」
「はい。曖昧だった部分も補完が終わり、手順はわかっております」
 ということなので、さっそく回復薬の生産に入る。回復薬の有効性はミーネで実証済、これから需要が増えるだろう、との判断からだ。
 遠心分離はその通りだった。但し亜音速でやる必要は無いが、結果としてその次の濾過工程が短縮されることになった。
「普通なら分離した血清を濾過するのか」
「はい。3度に分けて濾過します。けれど礼子さんのおかげで最後の濾過だけで済みますね」
 礼子による亜音速遠心分離は濾過の手間も2段階省いてしまっていた。

 今回は10リットルほどを処理していく。
 真血清は3リットルほどになった。残りは残りで、いろいろな薬品や、毒薬にまで使えるというので魔力庫(エーテルストッカー)に保存しておく。
「これってほぼ液体状の自由魔力素(エーテル)といっていいよな」
 仁の問いかけにアンも肯く。
「はい。魔結晶(マギクリスタル)が結晶した自由魔力素(エーテル)なら、これは液体状の自由魔力素(エーテル)と言えるでしょう」
 純度は70パーセント以上。アンのいうところでは30パーセントを超えれば十分実用的と言うことなので、期待できる。
「一度自由魔力素(エーテル)を浴びせると、不純物が沈殿して更に純度が上がります。それを薬剤基(ドラッグベース)と言います」
 自由魔力素(エーテル)を取り込むもしくは結びつくような成分が真血清の中に存在するようだ。これは魔力の高い魔物ほどその成分が多いらしい。
「それでしたらお父さまの血液はどうなるのでしょう?」
 今まで黙っていた礼子が口を出した。
「お父さまはおそらく海竜(シードラゴン)よりも魔力が高い筈です」
「なんだって……うーむ」
 考え込む仁。確かに仁の仮説では、自由魔力素(エーテル)は肺から取り込まれ、血液に溶けるという見解だ。ならば血液中の自由魔力素(エーテル)を取り込む能力が高いほど魔力が多いということになる。
 酸素と赤血球の関係に似ている。赤血球が多いと酸素摂取能力が高いということになるのだ。
「よし、そのうちに俺の血でも試してみるか」
 とは言ったものの、あまり気乗りはしない仁であった。

 仕切り直して、仁は急いで自由魔力素(エーテル)ボックスを作る。魔力庫(エーテルストッカー)の能力を4倍にしたものである。
「ここに入れておけばいいんだな」
 大型冷蔵庫ほどの大きさにした自由魔力素(エーテル)ボックスに薬剤基(ドラッグベース)を入れながら仁が言った。
「はい、1日で十分です。残った不純物も沈殿しますので、一石二鳥です」
 この日はあと20リットル分の処理をし、計約10リットル分の薬剤基(ドラッグベース)を作ったのである。

*   *   *

 この日の昼食はミーネ謹製焼きたてのパン、同じくシトランのマーマレード、ペルシカのジュース、野菜炒めであった。
 仁は食事の後、ラインハルトの消息をエルザに話す。
「今度はアスール川だってさ。また待たなけりゃいけないとぼやいていたよ」
「ん。行きにもその2つの川を渡るのに1週間掛かった」
「ホントに、あの国は何考えているんですかね。ラインハルト様もよくよくお気を付けなさらないと危険ですよ」
 仁も少し気になったが、一国の外交官を白昼堂々と襲うことはないだろうと思い、その日はそれで蓬莱島へ戻ったのである。

*   *   *

「さて、ゴーレムスーツ研究用の鎧は第5列(クインタ)に探させるとして、午後は何を作るかな」
 仁は早速やることを考える。
「陸上の移動手段があまりありませんね。先日拝見しましたが、自動車、ですか? ああいった移動手段を陸軍用に開発すべきかと」
 アンの助言に仁は肯く。戦車、装甲車、軍用トラックなどが頭に浮かぶ。
「そうだな、懸架装置は馬車を作ったからな。あのゴーレムアームを使えばいいだろう」
 早速構想を練り始める。
 キャタピラは面倒なのでその分車輪を増やして8輪。ゴムは保たないだろうと、海竜(シードラゴン)の革を代わりに張る。
 8輪独立懸架、エンジンは8気筒、いや8連ゴーレムエンジン。各車輪に一基ずつ。フレームと装甲板はアダマンタイト。
 外を見るのには非常時に開閉式の窓を使うが、普段は魔導投影窓(マジックスクリーン)を展開、まるで壁がないかのように外が360度見える。望遠にもなる優れ物である。もちろん暗視も可能。
 武装はレーザー砲1門、レールガン(砲)1門、ウォータージェット1門。
 定員4名。魔素通信機(マナカム)搭載、バリア展開可能。
 泥地に嵌り込んだ時のためにワイヤーロープとウインチ装備。
 更に補助の魔法型噴流推進機関(マギジェットエンジン)を4基備え、車重を5分の1程度まで軽くする事が出来る。
 室内は空調完備、狭いながらも交代で仮眠が取れるよう折り畳み寝台2台。
 仁は思いつくまま装備を付け足していく。とんでもない仕様である。
「よし、こんなものかな」
「ごしゅじんさま、飲料水と食料庫、薬品も必要です。それに投光器」
 アンが足りない分を指摘してくれた。投光器は可視光以外にも赤外線、紫外線を出せるようにすることにした。
 基本設計を老子に伝えれば、仁にしか作れない重要部品以外は用意してくれるので仁の負担は軽い。

 このようにして3日目は暮れていった。

*   *   *

 夜、ラインハルトとの会話。
「ダリにいる。テルルスと同じように賑わっている。胡散臭い奴らがうろついているようだ」
「大丈夫なのか?」
「ああ、この街にもショウロ皇国からの派遣兵がいるので護衛を頼んであるから心配するな」
「それならいいが」
「あ、そうそう、意外な人に会ったよ」
「誰だい?」
「ジンも知ってる人さ」
「俺が知ってるセルロア王国の人っていうと……ステアリーナさんかい?」
「あたり。彼女は王宮への報告をした帰りだってさ」
 お読みいただきありがとうございます。

 20130903 08時03分  修正
(旧)赤血球が多い、または赤血球が大きいと
(新)赤血球が多いと
 赤血球が大きい、という表現だと血球異常症(巨赤芽球性貧血)を連想してしまうのでそっちは取りました。

(旧)真血清の中に、自由魔力素(エーテル)を取り込むもしくは結びつくような成分があるようだ。
(新)自由魔力素(エーテル)を取り込むもしくは結びつくような成分が真血清の中に存在するようだ。
 「真血清の中に」「(成分が)ある」と書いたつもりが、「真血清の中に」「取り込むもしくは結びつく」に捉えられやすいので語順を入れ替えました。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ