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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

08 統一党暗躍篇

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08-14 最後通牒

 今回ちょっと残酷……ではなく、尾籠な描写があります。
 怒り心頭に発した仁は、礼子を通じて忍者部隊に指示を出す。
「無力化した奴は外に放り出せ」
「人間がいなくなったら連絡しろ」
 と。

「行ってまいります」
 エルザを送ってきたエルムとアッシュも再度砦へ向かった。
 残ったのは仁、エルザ、そして礼子と、ダリア、カンナ。
「ジン君、あのゴーレム達は?」
 聞きたかった事をエルザは尋ねた。
隠密機動部隊(SP)、通称忍者部隊さ」
「ニンジャ部隊?」
 忍者というのがわからなかったらしい。
「ああ。要するに普段姿を見せずに俺を守ってくれているゴーレム達だ」
 とりあえずそう説明しておく。
「いつ作ったの?」
「え? うん、エゲレアの王城を出てから、かな」
「え? どこで? 作ってる所なんて見なかった」
 仁はどうしようか、と一瞬躊躇ったが、心を決めることにする。
「蓬莱島で、だよ」
「ホウライトー? コンロントーじゃなく?」
「ああ。これが片付いたらちゃんと説明するから、もう少し待ってくれ」
 と仁はエルザを宥める。
「お父さま、アッシュから報告。頭目を除き、全員無力化に成功。現在砦外へ搬出中」
「よし、いい感じだな」
 そして仁はエルザを見て、
「俺はこれからエルザを苦しめた奴に目に物見せてやりに行く。ここで待っていてくれ。ダリアとカンナはエルザを守っていろ」
 そう言って歩き出した、その服の裾をエルザは掴んだ。
「待って。一緒に連れてって」
「大丈夫か?」
 脱出してきたばかりの場所へ戻ることになる。仁は心配しているのだ。
「ジン君と一緒なら平気。……それより、1人にしないで」
 小さな子犬のように怯える目がそこにあった。エルザの不安を察した仁は肯く。
「よし、一緒に行こう」
 そう言って手を差し出すと、エルザはその手を取り、立ち上がった。
「礼子、ダリア、カンナ、行くぞ」
「はい」
 仁は3体を従えて歩き出した。
「『光の玉(ライトボール)』」
 光の玉を作り出し、宙に浮かべる。これは込めた魔力が尽きるまで灯っている光の玉だ。それを10、作り出して砦の周囲に浮かべる仁。昼間のように明るくなった。
「バリア」
 更にエルザと自分を包む魔法障壁(マジックバリア)を展開した。そのまま歩みを止めず、砦へと足を踏み入れる。
「心配するな。何があってもエルザは守ってやる」
「……うん」
 無人の砦内を歩き、2階奥へ。そこは第8支部長と名乗る、パーセルの居室兼執務室。
 仁は歩きながら、大体の経緯をエルザに聞いていた。
「扉を開けろ」
 仁がそう言うと、付き従っていたカンナが進み出て扉を蹴破った。装飾の施された重そうな扉であったが、木の葉のように吹き飛んでいく。
「な、何者です?」
 慌てた様子の声がした。見れば部屋の片隅に、白いローブを羽織った痩身の男がいる。両脇を真っ黒なゴーレムに守られており、本人は装飾過多に見える長い杖を持っていた。
「……パーセル」
 その男を見たエルザの目に怯えが走ったのを仁は見逃さなかった。
「あんたが支部長か」
「そ、そうです。統一党(ユニファイラー)第8支部支部長のパーセル・マルセス・ド・カナゲリオンです! あ、あなたは?」
 仁はにやりと笑うと、
「俺はお前が気にしていた二堂仁だ」
 それを聞いたパーセルの顔が複雑に歪んだ。
「な、なるほど! ミス・ランドルを人質に取った甲斐があったわけですね。さ、さあ我等統一党(ユニファイラー)に忠誠を誓いなさい」
 と尊大な態度で言うパーセル。
「ふざけるなよ」
 だが、仁は隣にいたエルザが耳を疑うほど冷たい声でそう言った。
「別にお前等が何と名乗ろうが、何を企てようが、俺にとばっちりが来なければまあいいかと思っていた」
 その言葉にエルザは思わず仁の顔を見てしまう。
「ゴーレム騒ぎだって別に俺を狙ったわけじゃなかったからな。まああの時はむかついたし降りかかる火の粉は払わせて貰ったが」
 そこで仁は一息ついてから更に低い声で話し出す。
「だが、今回は駄目だ。お前等はエルザを攫った。エルザを泣かせた。エルザの乳母を傷付けた。お前等は……俺の敵だ」
 エルザは仁がこれほど険しい顔をしたのを見たことはなかった。だが、怖いとは微塵も思わない。むしろ、エルザを安心させてくれる。この人に守られていれば、何も怖くない。そう思えた。
「命だけは助けてやる。帰って仲間に伝えろ。これ以上俺の身内に手を出したら、その日が統一党(ユニファイラー)の滅びる日だってな」
「ふ、ふざけたことを言いますね。あなた1人で我等統一党(ユニファイラー)を相手に出来るとでも?」
 この期に及んでもパーセルは虚勢を張っている。
 そんなパーセルに対し、仁はエルザの肩を抱くと、
「俺1人? 1人じゃないぜ? 俺には信頼できる仲間と、守るべき身内と」
 そう言い、そして更に礼子やダリア、カンナを見つめて、
「頼りになる子供たちがいるからな」
 と言った。その言葉と共にダリアとカンナが一歩進み出る。エルザと同じくらいの体格である2体を見たパーセルは、
「あ、あなたは魔法工作士(マギクラフトマン)でしたね。そんな華奢なゴーレムで私の近衛を倒せるとでも?」
 そう言って左右に控える真っ黒いゴーレムに、
「奴らを撃退しなさい!」
 と命ずるパーセル。仁は短く、
「全力出していいぞ」
 とだけ。それだけで2体は悟り、一瞬で真っ黒いゴーレムの背後を取ると、1000万ボルトの電撃を浴びせたのである。
 人体に永続的なダメージを与えない麻痺モードではなく、雷系魔法の威力をもって。その威力にゴーレムの外殻は部分的に融け、出来た穴から飛び込んだ電流は内部のゴーレムの制御核(コントロールコア)を容易く貫き、破壊した。
 オゾン特有の臭気が漂い、2体の真っ黒いゴーレムはほぼ同時に倒れ、金属の身体が石の床にぶつかって甲高い音を立てた。
「ひ、ひいい!」
 それを見たパーセルは腰を抜かしてしまった。だが仁は更に追い打ちを掛ける。
「ゴーレムはああなったが、人間はどうかな? ダリア」
「はい、試してみましょう」
「ひい! ひゃああああ!」
 ダリアが近づいただけでパーセルは気絶してしまった。泡を吹き、穿いているズボンが濡れてきた。失禁したようだ。
 それを見た仁はふう、と溜め息を吐いて隣のエルザを見、
「どうだ? 少しは気が晴れたか?」
 と言った。エルザは少しだけ笑って肯き、
「うん。ありがと」
 と答えた。
 仁は失禁したパーセルを見やると、仕方なさそうに指示を出す。
「あー、きったねえなあ。ダリア、漏らした服に触らないように引きずって外へ連れ出しておけ」
「はい、チーフ」
 それでダリアはパーセルの襟首を掴んで砦の外へと引きずり出した。仁とエルザは先に出ている。尿の滴る廊下を歩きたくなかったからだ。

 砦の外にはまだ仁が灯した光の玉(ライトボール)が浮かんでいた。
 一まとめにした黒覆面の男達の幾人かが呻いている。そろそろ目を覚ましそうだ。
 仁はポケットから魔結晶(マギクリスタル)を取り出し、意識を失ったパーセルに近づいた。そして、
「『知識転写(トランスインフォ)レベル6』」
 と、統一党(ユニファイラー)に関する情報をコピーした。これを解析すれば統一党(ユニファイラー)についていろいろわかる事だろう。
「おい、起きろ。起きろったら」
「う……ううう」
 足元に転がされたパーセルに仁が声を掛けること数度、ようやく気が付いたようだ。
 引きずられた時にあちこちぶつけたためローブは擦り切れ、マントもところどころ破けている。
「やっと気が付いたか」
「ひっ!」
 見下ろす仁に気が付いたパーセルは、身をすくめる。
「まったく、虎の威を借る狐ってのはお前のような奴を言うんだな」
 そう言いながら仁は、そばに控える礼子の顔を見る。それだけで礼子は察したようで、
「お父さま、上空のスカイ71から75、いつでもいいそうです」
 とだけ答えた。
 仁は、パーセルと目を覚ました黒覆面の男達に向かって、
「いいか、大陸の統一なんて言う馬鹿げた野望から手を引け。これは警告だ。2度はないぞ」
 そう告げた。男達は黙ってそれを聞いていた。
 次いで仁は、
「礼子」
 と短く指示を出した。それを受けた礼子は魔素通信機(マナカム)で上空の空軍(エアフォース)に指示を出す。
 直後、光の柱が降り注いだ。その数は10本。言わずとしれた、『光束(レーザー)』の光だ。
 搭載された2門を各機最大出力で照射。そのエネルギーは大気中の自由魔力素(エーテル)を活性化させ、本来なら見えない光跡を可視化していた。
 10本のレーザーに曝され、砦を構成する花崗岩は瞬時に蒸発。飛行体からの照射のため、1秒ほどの時間でも照射点は移動する。
 結果、砦の7割強が瞬時に蒸発して無くなった。
「な、なな、な……」
 パーセルはじめ、目を覚ました黒覆面の男達が揃って腰を抜かす。
「いいか、これが最後だ。『 俺 た ち に 関 わ る な 』」
「は、はひいい!」
 今度は全員揃って返事をする。
 その情けない姿を一瞥した仁は、
「エルザ、これでいいか? 皆殺しにすることも出来たが……あんまり、な」
 と、隣で見つめるエルザに声を掛けた。
 エルザはこくりと肯いた。
「ん。これで、いい」
 それを見た仁は、
「よし、さあ、行こう」
 とエルザの肩を叩いてゆっくりと歩き出したのである。中天には月が輝いていた。
 たまには礼子以外の活躍も、です。
 本格的にキレた仁でした。知識転写(トランスインフォ)使いました。

 お読みいただきありがとうございます。

 20130823 13時46分  誤字修正
(誤)虎の意を借る狐
(正)虎の威を借る狐

 20130823 15時00分  表記修正
(旧)パーセル初め
(新)パーセルはじめ
 この場合、辞書類では「初め」「始め」両方アリなのですが、こういう時の活字媒体での慣用手段として「はじめ」とします。

 20130823 19時37分  誤記その他修正
(旧)「え? うん、エゲレア王国を出てから、かな」
   「え? それこそいつ? 作ってる所なんて見なかった」
(新)「え? うん、エゲレアの王城を出てから、かな」
   「え? どこで? 作ってる所なんて見なかった」

 作ったのはまだエゲレア王国にいるときでした。
 そして「いつ」の答えを一応聞いたのですから、次に聞くのは「どこで」ですね。


(旧)とエルザの肩を叩いて、明け始めた空の下、ゆっくりと歩き出したのである。
(新)とエルザの肩を叩いてゆっくりと歩き出したのである。中天には月が輝いていた。
 逆算するとまだ真夜中でした。

 20130823 21時11分  誤字修正
(誤)搭載された2門を各機最大出力で投射
(正)搭載された2門を各機最大出力で照射
 レーザーですので照射ですね。
 20130824 13時05分  誤字修正
(誤)飛行体からの投射のため
(正)飛行体からの照射のため
 まだもう一箇所直ってませんでした。

 20140530 08時15分
 ライト(レーザー)光束(レーザー)に変更。

 20151015 修正
(誤)第8支部支部長のパーセル・マルカス・ド・カナゲリオンです!
(正)第8支部支部長のパーセル・マルセス・ド・カナゲリオンです!
+注意+
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