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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

08 統一党暗躍篇

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08-11 追跡

 改訂後/改訂前並記してきましたが2013/09/29、改訂後のみにしました。
 ミーネの容態が安定したため、残った回復薬をもう一口飲ませるサリィ。
 今度はこぼすこともなく全部飲ませることが出来た。
「ふう、これでもう大丈夫だろう。後は様子見だな」
 今、ミーネは穏やかな呼吸をしている。
「かなり精神的にもやられているようだから目覚めるにはまだかかりそうだな」
 そうサリィが言ったので、
「先生、しばらくミーネを入院させて貰えますか?」
 と仁は尋ねてみた。
 するとサリィは、
「うむ、ここは治癒院だからそれはかまわない。だが、私も治癒師だ、さっきの薬について聞かせて貰いたい」
 と交換条件を出してきた。内容はまあ当然と言えば当然なので、
「ええ、わかりました。あの回復薬は俺が作ったんですよ」
 と、仁は正直に答える。なんとなくこのサリィという治癒師は信用出来ると思ったのである。女性だが、自分やラインハルトに似た空気を纏っている。
「作っただと!? 君は錬金術師なのか?」
 驚いた顔のサリィ。
「いえ、俺は魔法工作士(マギクラフトマン)です。とある筋から回復薬の作り方を聞いたもので、試しに」
「ななな、何だって? 作り方を聞いたあ? 錬金術師たちにとって命より大事な製法を聞いただと?」
 更に驚くサリィであった。仁はまずい、と思って修正することにした。
「いえ、その聞いた相手というのが自動人形(オートマタ)でしてね。それも魔導大戦の頃の奴で」
「なんだってえ?」
 よく驚くサリィである。冷静沈着かと思ったが、意外と興奮するたちなのかもしれない。
「古い自動人形(オートマタ)で、それを聞いたあと動かなくなっちゃいまして、聞けたのはそれだけ。しかも不完全な情報でした」
 そして仁は、魔力を持つ魔物の血を沈殿させて得た血清に治癒魔法を込めて作った、とだけ話した。遠心分離云々は面倒なことになりそうなので省略した。
「ふうむ、そんな方法で作れるのか」
 だがサリィは何か感じる所があったらしく、ぶつぶつ言いながら、その製法を反芻している。
「魔物の血が手に入らない……だが魔物に限ったことではないのかも……必要なのは含まれている魔力……それならば……」
「あの、先生」
 自分の世界に没頭して帰って来ないサリィに業を煮やし、仁はやや大きな声でサリィに声を掛けた。ミーネもさることながらエルザも心配なのだ。
「ん! な、なんだね」
「もうミーネは大丈夫なんですね?」
「うむ。このまま養生すれば大丈夫だろう」
 それを聞いて仁は心を決める。
「済みませんが、良くなるまでここで面倒見て貰えますか?」
「ん? それはかまわないが、何か事情がありそうだな」
 そう言われた仁は、かいつまんでエルザとミーネの話をした。
「ふうむ、お嬢様を連れ出して逃避行。その途中で襲われた、か」
「ええ。そうとしか思えませんよね」
「となると主家に戻ることも出来ない、か」
「処罰されるでしょうからね」
 サリィはしばらく考えていたが、
「わかった。私も一旦預かったからには、良くなるまで面倒見ようじゃないか。回復薬の情報ももらった事だしな」
 と引き受けてくれたのである。
 仁は頭を下げ、
「ありがとう、先生。それで、これは当座の費用です」
 と言って、金貨を3枚、つまり30000トールを差し出した。
「これは多すぎるが……」
 そう言いかけたサリィであるが、口止め料も入っている事を察すると、それ以上は言わずに受け取ったのである。

*   *   *

 当面、ミーネについての心配が無くなった仁は、急いで宿へ戻る。もう夕方であったが、まだラインハルトは戻ってきていないようだ。それで伝言を頼むことにする。
「『ちょっと気になることがあったから確かめてくる。心配しないでくれ』そうお伝えすればいいのですね?」
 執事のクロードにそう伝言を頼み、部屋にはアンを残し、仁は暮れなずむ空の下、エルザを捜しに出発した。
 時間が惜しい。ゴーレム馬コマがあれば良かったが、馬車の転移門(ワープゲート)を通らない。そこで仕方なく馬車からゴーレム馬を外し、それに跨る。鞍が無くて安定しないが、ここは時間を優先すると言うことで我慢。
 目指すはトーレス川の川上である。
 仁はいざという時の援護として、空軍(エアフォース)を呼んでおくことにした。
 スカイ71から75までが仁の命を受け、ラプター1から5を用いて上空で待機する運びとなる。20キロ先まで仁が行く間に到着するだろう。
「あー、しかし着陸が難しいのがネックだな」
 今更ながら、欠点に気が付いた仁。
「確か、垂直離着陸機(VTOL)というのがあったよな。帰ったらあれを作ってみるか……」
 そんなことを考えながら、夜の闇を行く仁。ゴーレム馬の背に揺られるだけなのでエルザの事が心配な反面、頭の中は雑念だらけである。
「礼子は強化したけど、俺自身はからっきしなんだよな。早く個人装備も充実させないといけないか」
 暗闇でも見えるような暗視ゴーグルとか、途中で止まっているパワードスーツとか。などと仁の構想は止まらない。
「あー、礼子も空飛べるといいなあ」
 などと考え出すに至ってはもう誰も止めようがない。
 これはある意味自重していた(つもりの)反動である。
 仁は別に平和主義者ではない。かといって喧嘩っ早いわけでもない。基本身内には甘く、敵には容赦ない。まあ、大抵の人間はそうだと思うが。

 別に仁はミーネが好きだったわけではない。何かというと文句を言ってくるし、どちらかと言えば苦手な部類だ。
 だが、だからといってあのような仕打ちを黙って見過ごすほど薄情でもない。エルザの実の母親らしいとわかった今は尚更である。
 エルザを捜し出し、ミーネをあんな目に遭わせた奴にはきっちりと落とし前を付けさせてやる。仁はそう思っていた。
『ミーネをあんな目に遭わせた奴』がもうこの世にいないことには気が付いていないが。

「……疲れた」
 鞍もないゴーレム馬の背に揺られ続けていた仁はへばっていた。
「あー、バイクでもあったら楽だったなあ。自転車でもいいや。後で作ろう」
 仁の自重という名の箍は異次元へ飛んでいったようである。
「お父さま、大丈夫ですか? お運びしましょうか?」
 礼子が心配してそう言ってくれるが、身長130センチの女の子に抱きかかえられたり背負われたりして移動するというのは情けなさ過ぎると仁は礼子の申し出を断った。
「そうですか? お疲れでしたらいつでもそう言って下さいね?」
「ああ」
 そうは答えているが、仁が礼子に泣き言をいう可能性は限りなく低いだろう。父親の威厳的に。
 だいたい、疲れて歩けないのではなく、鞍のない馬に揺られて疲れただけなので歩くには何ら問題は無い。
 それに特に早いわけでもない。今のところ、隠密機動部隊(SP)が進行方向の警戒をしながら進んでいるので速度を上げられないのだ。
 敵拠点が近づけば近づくほど警戒のため速度は遅くなってしまう。
 エルザの安否も気になるが、仁がもし見つかった場合、更にエルザの危険が増す可能性が高いと判断し、逸る気持ちを抑える仁。
 そろそろ目的地は近いはずだ。相手に気取られないようにしないといけない。
 今までは脇街道を歩けたが、いよいよ道無き道を行くことになりそうである。
「お父さま、無駄を省くため、隠密機動部隊(SP)に露払いさせてはどうでしょう?」
 藪をかき分けて進むのは相当体力を使う。だから隠密機動部隊(SP)に露払いつまり刈り払いなどの整備をさせようというのだ。もちろん静粛性・隠密性第一で。
「そうだな、そうしよう」
 ということで、隠密機動部隊(SP)の『ダリア』と『カンナ』が姿を見せ、先導することとなったのである。他のメンバーは周囲警戒だ。そして礼子は一番近くで仁を守りながら進む。
 15分ほど進むと、前を進んでいたダリアが動きを止めた。
「チーフ、建物があります」
 ダリアの報告に、闇の中目を凝らしてみると、確かに砦のようなものがあった。
「お父さまがお作りになったブローチの魔力を確かに感じます」
 礼子がそう言った。エルザにプレゼントしたブローチには細かい魔結晶(マギクリスタル)が散りばめられ、それには仁の魔力も込められている。
 だから礼子にはこの距離くらいならその存在を感知することが出来るのである。
「さて、それじゃあいよいよ潜入だな」
 そう仁が言うが、
「お父さまがご自身でなさる必要はありません。こういう時のために隠密機動部隊(SP)がおります。命じて下さるだけでいいのです」
 と礼子に窘められてしまった。
 それもなんとなく情けない気がするが、確かに仁の肉体的能力は低い。
「よし、それでは命ずる。まずはエルザを捜し出せ。見つかるなよ」
「はい、チーフ」
 音も立てずに砦へと消えていく隠密機動部隊(SP)たち。それを見つめながら仁は考える。
(俺の意志で動く魔導人形を作るというのも面白いな)
 と。我ながら不謹慎だと思いつつこんな時でもモノ作りに繋げてしまう仁であった。
 いよいよエルザ救出なるか?

 お読みいただきありがとうございます。

 20130929 20時16分、作者の未熟故に、仁の行動に矛盾をはらんだ箇所が多く見られたので大幅に加筆修正した、その元々の旧文章分を削除しました。

 20140508 表記修正
(旧)割愛
(新)省略
+注意+
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