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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

08 統一党暗躍篇

182/1508

08-03 縁談

 暑いですね。体温を超す気温に曝されております。

 ビキニエルザの残暑お見舞いです。20131021、URLだけにしました。
 http://8492.mitemin.net/i82114/


 パワードスーツを再現、ということで仁はものすごく熱心にその仕様を検討し始めた。
 騎士の鎧のような形で2重構造にし、間に魔法繊維(マジカルファイバー)の筋肉を……とか、鎧その物を変形(フォーミング)の魔法で変形させればいいか、とか。
 いずれにせよ、基本形は鎧である。防御力も不可欠だからだ。
「とにかく、試作してみるか」
 まずは自分に合う鎧を作り、その外側に筋肉を配置、そしてその外側に装甲を、と言う流れを考えた仁。
 鎧など作ったことがないからなかなか大変である。材料はいつもの軽銀。軽くないと困るためだ。
 久しぶりにペルシカ、シトラン、アプルルでお昼を済ませた仁は夕方近くまで鎧作りをああでもないこうでもないとやっていた。
「お父さま、そろそろお戻りにならないと」
 礼子が注意しなかったら夜中までやっていそうな熱中ぶりであった。

*   *   *

「よかった、間に合った」
 ホテルに戻ると、食堂の準備が整った所のようだ。
「あ、ジン様」
 そこに声が掛けられた。振り返るとラインハルトの執事、クロードである。
「あ、クロードさん」
「遅いお帰りでしたね。今夜は外で食事に致しますので、御仕度をお願いします」
「外で?」
「はい。エルザ様の兄君、フリッツ様のご招待で」
 なるほど、と仁は納得した。2年ぶりとか言っていたので、兄としてはゆっくり語り合いたいだろう。
「わかりました」
「それでは、30分後にロビーでお待ちしております」
 ということで仁は自室に戻り、大急ぎで仕度することとなった。
 エルザの兄が一緒と言うことで、服は名誉魔法工作士オノラリ・マギクラフトマンのハーフコートを羽織ることにする。
 その前に風呂に入りたかったが、時間もないのでお湯で身体を拭いて済ませる。アンと礼子が手伝ってくれた。
 20分で仕度を終え、ロビーへ行くと、ラインハルトとクロードが待っていた。
「やあ、ジン。エルザは先に行ってる。少し早いが僕らも行こうか」
 顔を見るなりラインハルトはそう言った。そしてクロードに案内させ、ホテルの外へ出る。
「すぐ近くでございます」
 その言葉通り、5分ほどでそのレストランであった。
 大理石の様な石で作られた3階建ての建物。余計な装飾がないのを無骨と見るか、機能美と見るか。
 ラインハルトを見つけたか、マントを着けた下士官らしき男がやって来て、
「ラインハルト殿ですね? 少佐がお待ちです。どうぞこちらへ」
 と言って案内してくれる。きびきびとした動作は軍人のもの、あまり軍人にいい印象を持っていなかった仁は密かに感心していた。
 その下士官はレストランの2階、重厚そうなドアをノックし、
「少佐、お客様をご案内してまいりました」
 と言った。すぐさまドアが開かれ、仁達は中へと招き入れられた。
「ようこそ、ラインハルト」
 奥にいたフリッツがそう言った。お気に入りである若草色のドレスを着てエルザはその隣に座っている。
「さあ、座りたまえ」
 ラインハルトと仁は給仕に導かれ席に着く。仁は一番下座であった。クロードは壁際に立つ。そこにはエルザの乳母、ミーネもいた。
「さて、今夜は俺のおごりだ、存分にやってくれ」
 フリッツはそう言ってワインの入ったグラスを掲げる。
「我が妹、エルザの健康を祝して。そして、婚約を祝って乾杯」
 と音頭を取ったのだが、誰も唱和せず、驚きに顔を引き攣らせていた。
「!?」
「に、兄さま、何、それ。私、初めて聞いた」
 一番驚いたのは当のエルザであろう。急き込んでフリッツに詰め寄る。だがフリッツは平然としている。
「何だ、お前知らなかったのか? 父上からの手紙では承知しているようなことが書いてあったが」
 エルザはふるふると頭を振って、
「知らない。だいたい私はそんな気はない」
 だがフリッツは真面目な顔でエルザを見つめ、諭すように言う。
「エルザ、お前もこの前17になったんだろう? 17と言えば立派な大人だ。この旅行が済んだら嫁に行くと約束していたんじゃないのか?」
「してない」
 そんな兄妹のやり取りをミーネはものすごい形相で見つめていたが、それに気付いたのは仁だけであった。なにせしょっちゅうミーネに目の仇にされていたのだから、こういう時はきっと、と思ってミーネの顔を伺ったら案の定であったというわけだ。
 だがさすがにミーネもフリッツには何も言わなかった。
「父上からの手紙には、エルザがこの旅行から帰ったら嫁に行くと言う約束したとか書いてあったんだがなあ」
 そう言ったフリッツにラインハルトは、
「嫁入り前に広い世の中を見て回りたいと言ったのを拡大解釈したんじゃないかな?」
 と言ったのだが、フリッツはまるで聞いていない。
「まあ、お前も適齢期だし、相手もなんと侯爵家だぞ!」
 と押し切る。
「領地が隣だから知っているだろう? ゲーレン・テオデリック・フォン・アイゼン侯爵を。先年奥方が亡くなったので後添いを探しておられてな、父上が是非お前をと申し入れたのだ」
 それを聞いてエルザの顔が青くなる。だがフリッツはそんなことには気付かない様子で話を続けている。
「後添いとは言え正妻としての輿入れだ、これは凄いことだぞ。玉の輿と言っていい。どうだ、嬉しいだろう?」
「……」
 最早言葉も出ないエルザ。その様子を見て、さすがに仁も黙っていられなくなった。
「あの、フリッツ様。エルザの意志はどうなるんですか?」
 だが、フリッツは仁をちらりと見た後、ふんと鼻先で笑い、
「意志? 後継ぎでもない貴族の娘に意志なんかあるものか。家のためになる相手に嫁ぐことこそ女の役目というものだ」
 その言葉を聞いたエルザの顔色は紙のように白くなった。さすがに見かねたラインハルトが宥めるように言う。
「フリッツ、それはちょっと言い過ぎだろう? エルザだっていきなり婚約なんて聞かされれば驚くに決まっているよ」
「ふん、ラインハルト、まさかとは思うが、エルザを妾にしようとか思ってるんじゃないだろうな? お前は国に婚約者がいるんだからな」
 心なしかフリッツの顔が赤い。見かけによらず酒には弱いのかも知れない。
「ああ、決まってるじゃないか。エルザは僕にとってもかわいい年下の従妹だよ。それ以上でもそれ以下でもないさ。だが、だからこそ幸せになって欲しいと思ってるよ」
 しかしヒートアップしたフリッツは最早聞く耳を持たない。
「だから、侯爵家に嫁ぐ以上の幸せなんてそうそう無いと言っているんだ」
 エルザはうなだれ、目にいっぱい涙を溜めている。だがフリッツはそれを恥ずかしがっているだけだとでも解釈したのか、
「さあ、みんな、我が妹エルザの幸せのため、もう一度乾杯だ!」
 そう言って一人気を吐いているが、当のエルザ、ラインハルト、仁たちは沈み込み、お通夜のようである。
 当然食が進むわけもなく、出された料理の大半がそのまま下げられる事になったのだった。
 だがその原因を作った当人にフリッツは、旅の疲れが出て食欲がないのかくらいにしか思っていないようだった。

*   *   *

 その夜、仁はホテルに戻った後、ラインハルトの部屋を訪れた。
「ジン、か。ちょうど僕もそっちへ行こうかと思っていたんだ」
 そう言ってラインハルトは椅子を勧めた。仁が座るとラインハルトは頭を下げる。
「ジン、済まない。フリッツも昔はあんなじゃなかったんだが」
 だが仁はそんなラインハルトを押し止め、
「ラインハルトが謝るような事じゃない。それよりエルザが心配なんだが」
「ああ、それは同感だ。まさかいきなり婚約の話をされるとは」
「エルザのためと本気で思っているようなのがたちが悪いな」
 仁が本音を言うとラインハルトも苦笑する。
「確かに、侯爵夫人となれば大したものさ。そうなればエルザの実家にも箔が付く。だが、相手が相手だからな……」
「ひどいのか?」
 仁の質問はストレートだ。
「うーん、侯爵は確か今年53歳。かなり太ってるな。まあガラナ伯爵よりはましな容姿だが」
 そう聞いても少しもいい相手と思えない仁であった。
「貴族同士の結婚ってそういうものなのか?」
「ああ。だが、旧態依然とした貴族はそんなものだ。特に軍人の家系は、な。うちの父はそんな事は言わないが、叔父は、なんというか、出世欲に取り憑かれたと言うか……」
 言いにくそうなラインハルトに仁は、
「ラインハルト、身内の悪口めいた事は言わなくていい。それよりエルザの様子を見に行こう」
「ああ、そうだな」
 そして2人は連れ立ってエルザの部屋へ。
 応対したのは執事のアドバーグだった。
「お嬢様はもうお休みになられました」
「そうか、それならいい」
 寝てしまったというなら、また明日にしよう、仁とラインハルトはそう言い合ってそれぞれの部屋に引き取ったのだった。
 急転直下の展開でした。侯爵は53歳。エルザは17歳。下手すると孫くらいの歳です。

 お読みいただきありがとうございます。


 20130812 13時30分  誤字修正
(誤)そんなことに派気付かない様子で
(正)そんなことには気付かない様子で

 20130819 15時22分 誤記修正
(旧)ああ。だが、旧態然とした貴族はそんなものだ
(新)ああ。だが、旧態依然とした貴族はそんなものだ
「旧態然」は「旧態依然」の誤用です。

「だが」について、おかしいという御指摘がありました。流れ的に見るとその通りなのです。「ああ」が肯定ですから、反語としての接続詞「だが」はおかしいのです。けれど、ここは会話文で、「ああ」と「だが」の間に、「(ああ。)ジンは納得いかないようだな。(だが)」のように、2人の間に無言の会話が挟まっていたのです。少なくとも台詞考えていた作者の頭の中では。
 ということで「だが」はそのままとさせていただきます。

 20131205 12時17分 誤字修正
(誤)自分に会う鎧
(正)自分に合う鎧

 20151012 修正
(誤)服は名誉魔法工作士オーナリー・マギクラフトマンのハーフコートを
(正)服は名誉魔法工作士オノラリ・マギクラフトマンのハーフコートを
+注意+
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