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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

40 空間振動篇

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40-08 まじかるめろん

 仁の規格外さに驚いた後は会談の再開である。
「トカ村での工事には、ロロナ殿も立ち会っていただけますかな?」
「ええ、それはもちろんですわ」
 宰相からの質問に、ロロナは笑顔で答えた。
「ジン様の所にお世話になる予定です」
「ああ、カイナ村ですな。隣ですから確かに便利ですな」
 仁も頷く。
「ええ、のんびりして貰おうと思います」

 実は『北方民族』が小群国に滞在するにはもう一つ問題がある。自由魔力素(エーテル)濃度だ。
 かつてワルター伯爵の元で諧謔のラルドゥスが暗躍していたことからもわかるが、だいたい、クライン王国くらいの自由魔力素(エーテル)濃度までが彼等の活動限界である。
 それは高い山など気圧の低い場所で暮らすのに似ている。
 ある程度までは慣れるが、極端に濃度が低い場所、人間と酸素で言うなら、酸素濃度が地上の3分の1になるヒマラヤの8000メートル以上の場所、通称『デスゾーン』にいるようなものとなる。
 そこに滞在するだけで体力は削られ、消耗していってしまい、回復することはないのだ。
 体内での役割が酸素とは異なるので即危険とはならないが、魔法などを使うとすぐに体内魔力素(マナ)が枯渇して体調不良を起こすことになる。

 カイナ村はローレン大陸で『北方民族』が暮らすには割合環境の良い土地なのである。
(長期間こっちにいたり、『世界会議』に出て貰うなら『自由魔力素凝縮器(エーテルコンデンサ)』が必要になるな……)
 人一人に効果を及ぼす程度の物なら、魔結晶(マギクリスタル)で十分過ぎてお釣りが来る。
(ペンダントとブローチみたいにして身に着けてもらえばいいな)
 1個だと紛失したり盗難にあったりしたら大変なので、バックアップも兼ねて2個以上用意した方がいいだろう、と仁はすでに頭の中で準備を始めていた。

 会談の後半は『ノルド連邦』の話や、クライン王国の状況説明など、お互いの生活環境を開陳し合う流れとなった。
 仁はところどころでフォローを入れる役だ。
 技術的な点から離れた後半の会談は終始和やかに行われた。

*   *   *

 定刻通り午後5時半に会談は終わり、その後一同ゆっくりと入浴という流れ。
 仁はラデオゥスと、ロロナはシオンと。
 のんびりお湯に浸かり、さっぱりしたところで午後7時、夕食会である。
 王城の大食堂に場所は移された。

「それでは、ノルド連邦とクライン王国の友好を祝して。乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!!」
 国王アロイス3世の音頭で乾杯が行われた。
 グラスの中身は低アルコールの白ワインである。やや甘口で冷やしてあったので口当たりがいい。

 まず出てきたのは天ぷらであった。
 ところでクライン王国の水は硬水が多く、重曹を含んだ水も多く見られる。
 重曹は加熱されると二酸化炭素を発生するので衣が膨らむのである。(ただし入れすぎると同時に発生する炭酸塩(炭酸ナトリウム)のせいで苦みが出る)
 そのためかどうかはわからないが、衣はそこそこさっくりとできあがっていた。

「美味しいですね」
 塩だけで十分に美味しかった。
 野菜のかき揚げ、淡水海老のかき揚げ。
 他には、野菜類としてナツーリ(カボチャ)をスライスしたもの、ビスナ(ナス)、それにマルネギ(タマネギ)が。
 川魚の天ぷらもあった。
 こうしてみるとどこの国も、以前仁が『世界会議』で出した天ぷらを気に入り、作り始めていることがわかる。

 天ぷら以外にはお米のお粥、大麦のお粥がチョイスできるようになっている。
 カウブル(牛)肉のステーキも出てきた。赤ワインをベースにしたらしい特製のソースが掛かっており、なかなか美味しい。
 クライン王国でも食事に力を入れていることがわかるひとときであった。
 特にラデオゥスたち『北方民族』では食材が限られているため、この夕食会は有意義だったようだ。

*   *   *

 その夜は当然王城に泊まる。
 ラデオゥス、ロロナ、シオンら親子は同じ客室に、仁は別室に、となる。

「今日はうまくいったかな」
 仁は礼子と2人きりになると、部屋のソファに身体を投げ出した。
「少し疲れたよ」
「お疲れ様でした、お父さま」
 礼子も仁を労った。
「明日はトカ村へ行って、その後カイナ村かな」
「そうなるでしょうね」
 その時、ドアがノックされた。
「はい」
 礼子が応対する。
「ジン、ちょっといいかのう?」
 リースヒェン王女の声がした。
「どうぞ」
「うむ、失礼する」
「おじゃましまーす」
 王女だけかと思ったらシオンも一緒であった。
「やあ。どうしたんだ?」
「あの……じゃな。まだ寝るには少し早いから、シオンを誘って遊びに来たのじゃ」
「そ、そうなのよ」
「なるほど、わかったよ」
 リースヒェン王女は、せっかく同い年(?)の友人ができたので、もっと親睦を深めたい……有り体にいえば遊びたいのだろう、と仁は察した。
「うーん、どうするかなあ」
 ここには遊び道具がない。作るにしても時間も素材もないのだ。
「と、なるとしりとり……いや、そうだ、あれがあった」
 仁はその昔はやったTV番組を思い出した。
「マジカルメロンをやってみよう」
「まじかるめろん? 何それ?」
「連想ゲームの一種だな。例えば、『メロンといったら“甘い”』と俺が言うだろう?」
「ふんふん」
「次の人は例えば『甘いと言ったら“砂糖”』と言う」
「うんうん」
「また次の人は『砂糖と言ったら“白い”』と言う」
「だんだんわかってきたわ」
「で、俺が『白いと言ったら“雪”』と言う」
「そうやって次々に繋げていくのね?」
「そういうことさ。で、連想からかけ離れたことを言ったら負け。前に出た言葉を言ってしまっても負け。これを手拍子しながら続けていくんだ。で、すぐに出てこなくても負け」
「おもしろそうね」
「でもなぜ『まじかるめろん』と言うのじゃ?」
「知らん」
「……」
 あっさりと答えた仁に、リースヒェン王女とシオンががくっとするが、それも些細なこと。
「じゃあ、俺、リース、シオン、また俺……とやってみよう」
「いいわよ」
「了解じゃ」
「よし。……メロンと言ったら丸い」
「丸いと言ったらボール」
「え? え? ぼーる……って何?」
 どうやらシオンはボールを知らなかったようで、不本意ながら1敗となったのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170326 修正
(誤)特にラルドゥスたち『北方民族』では食材が限られているため、この夕食会は有意義だったようだ。
(正)特にラデオゥスたち『北方民族』では食材が限られているため、この夕食会は有意義だったようだ。

(誤)ラルドゥス、ロロナ、シオンら親子は同じ客室に、仁は別室に、となる。
(正)ラデオゥス、ロロナ、シオンら親子は同じ客室に、仁は別室に、となる。
   orz
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