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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

40 空間振動篇

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40-07 再整備

「ええと、ジン殿、今、何と?」
 宰相、パウエル・ダーナー・ハドソンは、仁の言葉の真意を計りかねていた。
「いえ、ですから、『残っている』汎用ゴーレムを少し強化しよう、と」
「そ、それは何故に?」
 宰相は、暑くもないのに額に汗をかいている。
「ええとですね、舗装に使う砕石を用意するためですよ。岩を運んだり砕いたり突き固めたりするわけですからね」
「な、なるほど」
「20体揃っていれば(・・・・・・)なおよかったんですが」
 皮肉とも取れる仁の言葉を聞いて、さらに冷や汗が止まらなくなる宰相。
 意地汚い真似をした当時の閣僚はみな更迭されていたが、承認をしたという点において、宰相や国王も責任なしとはならないのである。
 仁の実力を知ってしまった今、その不興を買うことがどれほどのリスクであるかも理解でき、冷や汗をかいているというわけである。

 一方の仁としては、2年近くも前の話であり、首謀者である腐敗した貴族たちはすでに更迭されていることを老君から聞いており、最早気にしてはいなかったりする。
 なので純粋に好意から来る提案であった。
 とはいえ、『仁ファミリー』であるリシアが領主を務めるトカ村の発展、また、引いてはカイナ村の村人も利用できるだろうという打算があることも否定はしないが。

「本当に少し、ですよ。まあ、再整備、と思ってもらえれば」
「う、うむ……では、いずれお願いするとしよう」

*   *   *

「さて、少し休憩いたしませんか?」
 リースヒェン王女が提案した。
 2時間ほどもぶっ続けで話をしていたので、皆少し疲れてきている。
 この提案は好都合であった。

 座りっぱなしであったので、一同王城の奥庭へと案内された。
 アロイス3世だけはその場に残る。王ともなると余り気軽に出歩けないのだ。

 奥庭は、王族や重要な来客のみ通される場所で、今は早春の花が真っ盛りだ。
 侍女が用意したお茶を飲みながら花を愛でる。
 スイセンに似た花、クロッカスに似た花、スノードロップに似た花。
「ナルサス、クローカス、スノードロップですね」
 今まで借りてきた猫のように大人しかったシオンが口を開いた。
「よくご存知ですね」
 リースヒェン王女はにこりと笑った。
「花は好きですから」
「それは嬉しいですね。あと一月もすれば、さらに花で彩られます」
「機会があったら見てみたいです」
「ぜひいらしてください」
 まだ他人行儀だが、年齢が近いせいか、互いに意識し合い、仲よくなってきているようだ、と仁は感じた。

「ジン殿も最近は忙しいようですな」
「ええ、まあ」
「『世界会議』と『世界警備隊』の件でしょう。お察しいたしますぞ」
 宰相も仁に話し掛けてきた。
「世界が穏やかでいてくれれば。それが自分の望みですよ」
「以前もそう言っておられましたな」

 日が傾き、風が冷たくなってきたので一同は奥庭をあとにした。
 会議室へ戻る前に見学を兼ねて、仁たちは王城の工房へと案内された。
 以前仁がゴーレムを作ったのとは違う工房である。
「ほほう、これが貴国の工房ですか」
 ラデオゥスが興味深そうに眺める。
「なかなか充実していますね」
 仁も工房を一通り見学してからそう評した。
「『崑崙君』のところと比べるとお恥ずかしい限りでしょうが」
「そんなことはありませんよ」
 今の仁は、自分の環境がいかに特殊であるかを知っている。
 クライン王国の工房は、特に金属素材関連が充実していた。
「ボールトンさんがいるからでしょうか?」
 ふと思いついた理由を確認してみると、
「それもありますな。ボールトン男爵は素材の良し悪しを見分けられる『目』を持っておりますのでな」
 とはいえ、それを生かせるかどうかは魔法工作士(マギクラフトマン)の腕前に負うところも大きいのである。そういった面では、クライン王国の冶金学は遅れていた。

「そうだ、ここへ例のゴーレム10体を呼ぶことはできますか? できれば全員」
「できます。今は休止させておりますので」
「そうですか。それでしたら呼んで下さい。先程言った『再整備』をしてしまいましょう」
「お、おお、そ、そうですか」
 宰相は少し狼狽えながら魔法相に指示を出した。
 魔法相、クラロト・バドス・ケーリスは起動させるべく、部屋を小走りに出ていく。
 シオンたちは工房内をもの珍しそうに見て回っていた。

 そして5分後、魔法相は10体のゴーレムを率いて戻って来た。
「おお」
「強そうですわね」
「すごいわ」
 その威容を見たラデオゥス、ロロナ、シオンは驚嘆する。
「ニック1から10だな。調子はどうだ?」
「はい、製作主(クリエイター)様。どこといった不具合はございません」
「そうか、それならよし」
 要所要所にアダマンタイトコーティングを施してあるため、通常の使用ではメンテナンスフリーなのである。
「よし、それでは強化を行おう」
「ジ、ジン殿、今から始めるのかね? 会談をそろそろ再開したいのだが……」
 慌てて宰相が言った。
 時刻は午後4時。予定では5時半まで会談をし、その後夕食会となっている。
「大丈夫です。1分で済ませますから」
「はあ?」
 1分で10体のゴーレムに強化を施すと言った仁の言葉が信じられず、宰相の口からやや間抜けな言葉が漏れた。
「『補強(ストレングスン)』」
 仁は1度に10体のゴーレムに対し、工学魔法『補強(ストレングスン)』を施した。

 これは仁オリジナルの工学魔法で、物質に含まれる自由魔力素(エーテル)の結合力を強化して物質を強靱化する。強靱化(タフン)の上位互換ともいえる。魔導系素材に特に有効だ。
 最大の特徴は、魔法外皮(マジカルスキン)魔法筋肉(マジカルマッスル)等に使われている生物系素材にも有効であるという点である。
 結合力が上がるということは、単に丈夫になるだけではない。
 融点や沸点も上昇するし、魔法筋肉(マジカルマッスル)であれば出せる力の上限も上がることになるのだ。
 これが、仁の言う『少し強化する』であった。
 蓬莱島で使っている素材なら、1.5倍から10倍くらいの範囲……含有する自由魔力素(エーテル)の割合に左右される……で強化される。
 もう少し具体的な数値を挙げるなら、古代(エンシェント)(ドラゴン)の皮革なら10倍以上、マギ系金属素材で4〜5倍といったところだ。

 クライン王国の汎用ゴーレムに使われている五半ニッケル鋼なら1.5倍、筋肉に使われている竜頭ウナギ(ドラゴニックイール)の革は2倍と言った上昇値であった。
「さあ、会談に戻りましょう」
「う、うむ」
「……」
 改めて仁が規格外なことを認識したクライン王国重鎮たちであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170318 修正
(誤)予定では5時半まで会談をし、その後夕食回となっている。
(正)予定では5時半まで会談をし、その後夕食会となっている。
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