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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

40 空間振動篇

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40-06 初顔合わせ

 ちょうど午後1時に会談は開始された。場所は王城の中会議室。
「我がクライン王国国王、アロイス・ルクス・クラインである」
「『ノルド連邦』大使、『森羅』のラデオゥスと申します。控えておりますのは妻ロロナと次女シオンでございます」
「『崑崙君』には大使殿一行に同伴してもらえたこと、感謝する」
「恐縮です」
 ……と、型通りの挨拶を終えれば、
「宰相を務めておりますパウエル・ダーナー・ハドソンと申します」
「産業相のジャクソン・レッド・バドスです」
「魔法相、クラロト・バドス・ケーリスでございます」
 等、重鎮たちの名乗りが行われた。

 そしてまずは『北の地』について、まずは仁が説明を行っていく。
「カイナ村の北の山を越えますと、なだらかな平原が海まで広がっており、海の向こうには大陸がありました」
 地理的な説明はやはり仁が行うのが適役だ。どうやってそこへ行ったのか、説明せずとも察してもらえるからだ。
「その大陸は後に聞いたところ『ゴンドア大陸』と呼ぶそうで、細い地峡で我々の『ローレン大陸』と繋がっておりました。その地峡を『パズデクスト大地峡』と呼びます」
「ふむ」
 仁は『木紙』に描いた地図をテーブルに広げ、指で指し示しながら説明していった。
「地峡を越えたあと、海沿いに進んでいき、出会ったのが『森羅』の氏族でした」
 ここで仁は一旦説明をやめ、ラデオゥスにバトンタッチする。

「私ども『ノルド連邦』は、国ではなく『氏族』という単位でまとまっております。私どもが『森羅』。他にも『諧謔』『福音』『孤高』などがおります」
 ここでは、敢えて『傀儡くぐつ』や『侵食』などというやや過激な氏族名は省略していた。
「なるほど」
 宰相は頷き、書記は議事録を記録していく。
 ひとしきり『ノルド連邦』の説明をすれば、いよいよ本題だ。

「一息入れましょう」
 その前に、仁が持ち込んだ炭酸飲料で喉を潤してもらうことにした。
 炭酸は、二酸化炭素を水に溶かし込むことで作れる。
 魔法工学的には、特定範囲の空気中に含まれる二酸化炭素を『不均質化(ノンホモゲナイズ)』させて水に溶かし込むだけだ。
 ラモン(レモン)の絞り汁を炭酸水で割ればラモンスカッシュの出来上がり。
 砂糖を少し添加して飲みやすくしたものを仁は持って来ていた。

「おお、これは美味い!」
「ラモンの爽やかな香りと、このシュワッとした口当たりが何とも言えませんな」
「ジン、これは美味しいのう」
「さすが『崑崙君』!」
「……美味しい」
 概ね好評であった。

 一息入れれば、いよいよ本題である。
「ジン様から伺いましたが、舗装方法を模索していらっしゃるとか」
「うむ、そうなのだ。国家事業の一環として街道整備を始めるのだが、予算上の制限もあり、なかなか難しい」
「なるほど、ジン様も同じことを仰いました。これにつきましては妻ロロナが詳しいので説明させましょう」
 ここでロロナの出番である。
「では、ご説明致します」
 予め用意した、絵を描いた紙をテーブルに広げるロロナ。
「私どもでは『砕石舗装』と呼んでおります。つまり、砕いた石を突き固めるのです」
「それだけで?」
 余りに簡単な内容に拍子抜けしたのか、宰相が驚いた声を出した。
「ええ。これは必ず砕いた石を使わなくてはいけません。川原の石のように丸い石では駄目なのです」
「ふうむ……」
 ここで仁が補足説明を入れる。
「ええと、砕いた石には角、りょうがありますね。その稜が噛み合うような形で固定されるようなのですよ」
「ほう」
 皆、まずまず納得したような顔になった。そこに、ロロナが詳しい説明を始める。
「もちろんやり方があります。断面を知っていただくのがわかりやすいでしょう」
 ロロナは先程の紙の一部を指差した。
「ここに断面が描かれております。私どもでは、表面には細かい砕石を5センチほど、その下に荒い砕石を20センチほど敷き詰めて押し固めています」
「崑崙島でちょっとだけ試して見ましたが、馬車の通行なら問題なかったですね。押し固めるのも、ゴーレムに足踏みさせれば十分です」
「おお、さすが『崑崙君』」
 魔法相ケーリスが感心したように声を上げた。
 ロロナたちは『重力魔法』を使って固めているのだが、それはまだこの段階では秘匿しておくということになっている。
「他にも固める道具についての腹案を持っています」
「おお、さすがジンじゃ!」
 リースヒェン王女も喜びの声を上げた。

「そうなると、こちらでもさっそく試して見たいものじゃな」
 気が抜けたのか、リースヒェン王女はいつもの口調に戻っていた。
「それでしたら、砕石の元となる岩が豊富な場所がよろしいかと存じます」
 ロロナがそう助言を行うと、リースヒェン王女は納得したように頷いた。
「うむ、それなら街道の終点、トカ村から逆に辿るようにするというのはどうじゃろうか?」
 トカ村周辺には岩場もあり、材料にはこと欠かない。
 人手さえあれば即取り掛かることもできる。
「おお、いいですな」
 宰相も賛成した。
「トカ村とシャルル町の間を一部、試しに舗装してみましょう」 
「ええと、それでいいんですか?」
 少し心配になる仁。
 そんな利用者の少なそうな区間でいいのかと思ったのだ。
「ジン殿の懸念はわかる。が、我が国ではまったく未知の工法、利用者の多い区間で行って万が一失敗したら、その影響は大きいですからな」
 産業相のジャクソン・レッド・バドスが説明してくれた。
「ああ、そういうことでしたか」
 失敗して通行できなくなっても、被害を被る人数が少ない場所でまず試してみたいということであった。それはそれで仁としても理解できる。
「これで工事の要領をつかんだなら、今度は少し交通量の多い区間で行い、耐久性を確認することになりますな」
「なるほど、いいと思います」
 産業相のやり方は至極もっともである。仁は賛成した。
 クライン王国は今、ゆっくりと進んでいこうとしている。そしてクライン王国は仁と違い、一歩一歩進んでいくしかないのだから。
 仁にできることは、ほんの少し陰で支えることくらいである。

「以前お作りしたゴーレムがありますね」
「あ、うむ。汎用ゴーレム……ですな」
 唐突に尋ねた仁の真意が分からず、宰相は言い淀んでしまう。
 以前仁に作ってもらった高性能な汎用型ゴーレム20体のうち、10体は破壊されてしまっていたのだ。
 それも、仁に譲渡する予定の鉱山から期日前にできる限りの鉱石を採掘するために使用し、その時坑道から現れた巨大百足(ギガントピーダー)によって。
 言わば自業自得。
 それについて、当時仁は何も言わなかったが、かなり腹を立てたのではないかと推測している。
 その仁が今、汎用ゴーレムに言及したのである。宰相が緊張するのも無理はなかった。
「あれをもう少し強化しましょう」
「は?」
 それゆえ、仁の言葉をすぐには理解出来なかった宰相なのである。
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