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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

40 空間振動篇

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40-05 歓迎と接待

 『覗き見望遠鏡(ピーパー)』を使い、宇宙規模の距離を観察するという行為は、老君でなければ不可能である。
 それは、大距離ゆえに目標ターゲットに視点を固定することが非常に困難ということである。
 超望遠レンズを付けたカメラは手持ちでの撮影は無理。三脚、それも頑丈な物に固定しなければぶれてしまうのと同じ。
 蓬莱島の地下に、可能な限り強固に設置された『覗き見望遠鏡(ピーパー)』でさえ、わずかな歪み・たわみが数千万キロメートル、数億キロメートル先では膨大な誤差となるのだ。
 つまり、1点に固定できずに視点が揺れ、目的の物を見ることが困難な上、人間であったらまず間違いなく『酔う』。
 そこへいくと老君の反応速度は人間の数百倍、一瞬の視覚情報で十分である。

 だが仁は老君の能力任せにすることはせず、これを防ぐため、惑星ヘール方面を観察するために中継基地を置いてもある。
 この中継基地を経由することで距離は縮まり、ぶれも小さくなるというわけだ。

 それはさておき、まずは、仁が見るわけではないので老君は中継基地を経由させずに『覗き見望遠鏡(ピーパー)』を使用した。
 その方が僅かながらにせよタイムラグが少なく『速い』からだ。

『……何も変化はないようですね』
 調べるべき宙域は膨大な広さがある。それを老君は飽くことなく丹念に調べていった。

*   *   *

『特に異常は見られませんでした』
 それが老君の報告であった。
「そうか、ご苦労だった。引き続き、注意だけはしておいてくれ」
『はい、御主人様(マイロード)

*   *   *

 特に差し迫った問題ではなさそうなので、仁は老君に注意しておくよう指示を出し、『ノルド連邦』の問題に戻った。

「クライン王国には連絡してあるので、明日『コンロン3』で首都アルバンまで飛びます」
 仁もその日は『森羅』のところに泊まることになる。
「わかりました。準備はもう大体できていますわ」
 ロロナが頷く。
「ええと、あ、あたしも行っていいの?」
 シオンが若干緊張気味に言った。
「ああ。向こうの窓口……というか接待役は第3王女のリースヒェンだ。シオンと歳も近いから、いい機会だと思うよ」
 もっともシオンの実年齢は72歳であるのだが、北方民族の場合、成長と寿命は人類の約5倍なので、人間換算で14歳、ちょうどリースヒェン王女も今年14歳なので同い歳となる。
 つまり今回クライン王国に行くのはラデオゥス、ロロナ、シオンという親子3人である。
 シオンは仁と共に人類圏を訪れたこともあるので、割合余裕であるが、意外にもラデオゥスの落ち着きがない。
「あなた、次期族長としてもう少し威厳を出して下さいな」
 などとロロナに言われている始末である。
「交渉は俺がサポートしますし、舗装の説明はロロナさんだから大丈夫ですよ」
「そうよ、あなた。挨拶だけしっかりして下されば」
「う、うむ」
 その晩は遅くまで挨拶を考えていたらしいラデオゥスであった。

 明けて3月17日朝、仁たちを乗せた『コンロン3』は『ノルド連邦』の空へ舞い上がった。
「うわあ、すごいですね!」
 ロロナは興奮気味。
「う、うむ、やはりいいものだな、空を飛ぶというのは」
 ラデオゥスは少し緊張気味に窓から外を見ている。
「わ、速いわね。もう大地峡を過ぎちゃった。あ、カイナ村が見えた」
 そしてシオンは何度か乗って慣れたもの、床窓から地上の風景を楽しんでいた。
「あー、カイナ村通り過ぎちゃった……」

 そんなこんなで所用時間約2時間で『コンロン3』はクライン王国首都アルバンに到着した。
 一同、正装に着替える。
 仁は魔法工学師マギクラフト・マイスターのローブ、礼子は従騎士のマント。
 ラデオゥス、ロロナ、シオンは『森羅』氏族の伝統衣装だ。
 エドガーには悪いが、今回は操縦士なので『コンロン3』から降りることはない。

「あ、熱気球がたくさん!」
 身仕度を終わり、窓から外を見たシオンが叫んだ。
 『北方民族』の代表を歓迎するため、5機の熱気球が『コンロン3』を出迎えていた。
 彼等にエスコートされ、『コンロン3』は王城の前庭へゆっくりと着陸した。

「ようこそ、『崑崙君』。そして『北の方々』。私はクライン王国第3王女リースヒェンと申す」
 一行を出迎えたのはリースヒェン王女であった。今日はドレス姿で、頭には銀のティアラも着けている。
「王女殿下、本日は『北方民族』の方々をお連れいたしました」
 仁がそう言うと、『森羅』の3人は軽く頭を下げた。
「お初にお目に掛かる。私は『ノルド連邦』の代表、『森羅』のラデオゥスと申します」
「その妻、『森羅』のロロナと申します」
「娘、『森羅』のシオンと申します」
 本番に強いようで、ラデオゥスは堂々と名乗りを上げた。

「『ノルド連邦』と言われるか。遠路はるばるようこそ。まずはこちらへ」
 リースヒェン王女が先に立って歩き出す、仁と礼子がそれに続き、『森羅』の3人が最後尾である。
 近衛騎士たちが栄誉礼を取る中、一行は王城へと向かった。

 通されたのは貴賓室。
「まずはごゆるりとお寛ぎください」
 饗応役ホステスとしてのリースヒェン王女はいつもの『のじゃ』口調はなりをひそめていた。
 時刻は午前11時半。
 昼食を兼ねた軽食が出された。サンドイッチである。
 挟んである具は様々。ベーコンのような燻製肉、野菜サラダ、卵サラダ、それにブルール(ブルーベリー)ジャムにランベル(クランベリー)ジャム。
 飲み物はアプルルジュース。

「おお、これは美味しいですね」
「それはようございました」
「パンも焼きたてなのでしょうね、軟らかくてふかふかですね」
「このジュースも絞りたてのようで、美味しいです」
 半ば社交辞令的なやり取りを経て昼食は終了。実際、クライン王国としては手間を惜しまずにもてなしているようだ、と仁は見て取った。

「午後1時より、父王アロイス・ルクス・クラインがお相手致します。時刻までお待ち下さい」
 リースヒェン王女は予定を告げた。
「それまでは、不束ながら私がお相手させていただきます」
「いえ、才色兼備と誉れの高いリースヒェン王女殿下にお相手いただけるなんて光栄の至り」
 言われたリースは少し顔を赤らめ、ちらと仁を睨んだ。どう考えても仁の入れ知恵に違いなかったからだ。そして一瞬でそれを判断できるということは、やはりリースヒェン王女は並々ならぬ才覚を有しているのである。
 シオンは、(ほぼ)同年代である彼女を見て、何か思うところがあったのか、歓談の間、ほとんど口を利かず、話を振られた時にのみ短い受け答えをするだけだった。

 そして午後1時となる。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170316 修正
(誤)はやりリースヒェン王女は並々ならぬ才覚を有しているのである。
(正)やはりリースヒェン王女は並々ならぬ才覚を有しているのである。
 orz
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