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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

40 空間振動篇

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40-04 ノルド連邦

「『コンロン3』でクライン王国へ行けばいい」
 仁は礼子を伴い、『北方民族』領に来ていた。
 『世界会議』で『北方民族』を紹介するのはいいとして、いきなり紹介するより、まず最も近い国であるクライン王国に紹介し、その後……とするのがいいだろうと判断したからだ。
 もっとも、一番近いのは仁の領地、カイナ村であるが。
 だが、これは逆に好都合とも言えた。カイナ村から北上していったところ、『北方民族』と出会ったということにできるからである。
 また、代表であるシオンたちがカイナ村に馴染んでいる説明にもなる。
「と、といっても、何をすればいいのか……」
 などと言っているのは『森羅』のラデオゥス。次期族長ということで、『北方民族の代表』として、今回妻のロロナ、娘のシオンと共にクライン王国を訪問するのだ。
「まあまああなた、少し落ち着いて下さいな。ジン様がご一緒下さるんですから、何も心配はいりませんよ。……ね?」
 ラデオゥスよりロロナの方が落ちついている。今回の主役はロロナだというのに。
 そう、今回の訪問は『マカダム舗装』=『砕石舗装』、の講師という側面もあるのだ。
 まず、クライン王国での実績を作った後に『世界会議』で正式に紹介されることになる。
 西の国、ショウロ皇国が異民族……ミツホを紹介するのと対になるともいえる。

「そういえば、国名は決まりましたか?」
 『北方民族』というのは小群国から見た呼び方であり、正式名称ではない。
「ええ。報告が遅れて申し訳ありません。私どもは『ノルド連邦』となりました」
「ノルド連邦、ですね。わかりました」
 これからは国の代表として付き合う以上、それなりの敬語で話そうと決めた仁である。
「では、ノルド連邦の『森羅』氏族のラデオゥス殿、ということになりますね」
「……慣れないといけませんね」
 ラデオゥスはうんざりしたような顔をした。

「ジン様、『福音』の氏族が何かお伝えしたいことがあるとのことです」
 そんな仁のところに報告が入った。
「わかった。行ってみよう」
「それでは、私が」
 仕度やら言葉づかいの練習やら礼儀作法の訓練やらでげっそりしていたラデオゥスがこの時とばかりに手を挙げた。
 そして反論が出る前に彼は、仁と礼子を伴って転移したのであった。

*   *   *

「ジン様、お呼びだてして申し訳もございませぬ」
 『福音』の氏族長、ファビウスが仁を出迎えた。
「何かあったのですか?」
 少し心配そうな仁の表情を見て、ファビウスは明るい声で告げる。
「いえ、我々にとっていい話です。実はアレクタスとミロニアに子供が生まれました」
 この知らせは、伝言や通話などでなしに、仁に直接報告したかったのだそうだ。
 ミロニアは今年で181歳。魔族の寿命は人間の5倍なので36歳くらいだ。
 元々北方民族は長寿で、老化が遅いため、200歳くらいまでは子供ができる可能性はあるのだという。
 それでも氏族員が増えるというのは嬉しいことのようで、ファビウスは終始にこにこしていた。
「生活環境や食糧事情が劇的に改善されましたからな。これからはもっと生まれてくると思います」
「それはよかった」
 仁としても嬉しい話であった。
 同時に、自分にも……との想いが、ちょっとだけ頭を掠めた仁であった。

「あ、ここまで来たら700672号のところにも顔を出しておくか」
 不意に思いついた仁は、思い立ったが吉日と、『コンロン3』の転移門(ワープゲート)を使って『しんかい』経由で『白い部屋』を訪れた。

*   *   *

「おお、ジン殿、久しいな。そして、丁度よいところに来られた」
 700672号は笑みを浮かべつつも、真剣な表情で仁を迎えた。
「ご無沙汰してます。何かあったんでしょうか?」
「うむ、いやな、宇宙空間でひずみが観測されたようなのだ。僅か1万分の1秒ほどだったが」
 700672号が住む『白い部屋』は元々は宇宙船『天翔る船』。そうした計測機器が備え付けられているそうだ。
「これが何を意味するのか、まだ判断はできないが、伝えるだけは伝えておこうと思ってな」
「そうでしたか」

 現代日本でいろいろな本や漫画を読みアニメを見てきた仁としては、
「空間が不安定になっているということでしょうか」
 という結論になる。
「うむ。さすがだな。確かにそうなのだが、原因が分からないので、それ以上の推測ができないのだ」
「……調査艇を出した方がいいでしょうか?」
「それは有効だが、発生場所が特定できなかったのだ。方向は黄道面にほぼ平行で太陽セランを0度とすると30度ほどという程度しか、な」
「そうですか……あ、もしかしたらユニーでも測定しているかもしれません。そちらでも方向がわかれば……」
「うむ、およそのポイントは特定できるな」
 そこで仁は老君に連絡を取り、ユニーのジャックと協力して発生場所を特定するよう指示を出した。

「これでまずはいいかと思います」
「うむ、素早い対応、お見事」
 700672号は仁を褒めた。
「何かわかったら、是非教えてくれたまえ」
「はい、それはもちろん」

 とりあえず、『ノルド連邦』とのやり取りがまだ途中なので仁は短い滞在ではあったが、700672号の下をあとにした。

*   *   *

『……とのことです。何か情報はありますか?』
 一方、指示を受けた老君はユニーの管理頭脳『ジャック』と情報交換を行っていた。
《その現象は確かに昨日観測しました。再現性がないので確実とわかるまで報告を控えておりました》
『なるほど。では、情報をいただきましょうか』
《了解》
『……ふむ、時刻は一致しますね。間違いなく同じ現象を感知したわけですか。方向は……』
 老君は『ジャック』と共に情報を消化し、また推論を交えて組み上げていく。

『アルスとヘールの公転軌道上にほど近いポイント、ですか』
《計算上はそうなりますね》
『ここには、『エーテルの雲』と第2中継基地があるはずですね』
《確かに》
『第2中継基地に何かが起きたという可能性は?』
 宇宙や施設については、老君よりも『ジャック』の方が詳しい。
《それはないと思います。たとえ基地が爆発したとしても、空間が揺らぐことはないでしょうから》
『なるほど』
 これ以上議論を重ね、推論を連ねても時間の無駄と、老君は判断した。
『あとは確認、ですね』
 こんな時こそ『覗き見望遠鏡(ピーパー)』の出番である。
 老君は『覗き見望遠鏡(ピーパー)』を起動した。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170315 修正
(誤)まず、クライン王国での実績を作った後に『世界会議』で正式に紹介されるこちになる。
(正)まず、クライン王国での実績を作った後に『世界会議』で正式に紹介されることになる。
 ぉぅふ orz
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