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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

40 空間振動篇

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40-03 一方、その頃

「我々に何ができるかな」
 『懐古党(ノスタルギア)』の本拠地では、トップの2人が話し合いをしていた。
「これまで積み重ねてきた知識と技術を全て生かせるといいですな」
「そうね。そういう意味で、私たちも参加メンバーを選出しましょう」
 いや、2人ではなく、3人目は金髪の美少女自動人形(オートマタ)、『エレナ』である。
「あと10年若ければ立候補したかったのだが」
 と言ったのはトップのジュール・ロラン。
「……ごめんなさいね」
 項垂れるエレナ。
「い、いやいやいや、エレナは悪くないぞ! あ、あれは、不幸な事故、そう! 事故だったのだ!!」
 『統一党(ユニファイラー)』であった頃の諸々は、全て情報として覚えており、それ故に時折罪の意識に苛まれるエレナなのである。
「そう、そうとも! 私も、それを補って余りあるほど、今が楽しいからな!」
 第2位のドナルド・カローも大慌てでフォローした。
「そう言ってもらえると少しほっとするわ」
「そ、そうだ! そんな後ろ向きな話はどこかへうっちゃっておいて、前向きな話をしようではないか!」
「さ、賛成だ!!」
(……ふふ、ありがとうございます)
 エレナは小さな声で2人に礼を言うと、議論を再開した。
「先日行われた、エゲレア王国とクライン王国の遺跡調査行ですが、あまりにも稚拙なものでした。この面でも、私たちは指導できると思います」
「うむ、そうだな」
「あれは、少し情けないな」
 2人とも、老君を通じて議事録には目を通しており、その内容の薄さに肩を落としていた。
「こうした調査行の経験もほとんどないのでしょうから致し方ないですわね」
 エレナが取り纏める。
「それから、教育の問題だな。『世界警備隊』も、当初は教育に時間を割かねばならないだろうからな」
「それは言えてるわね」
 ドナルドの言葉にエレナも同意する。
「わが『懐古党(ノスタルギア)』は人材面での援助ならできそうだ」
「そうね、その線でいきましょう」

*   *   *

「ショウロ皇国との正式な国交が結ばれたんやねえ」
「この日が待ち遠しかったよ」
 異民族と呼ばれているミツホ国、その東の玄関口とも言えるカリ集落で、ショウロ皇国人のオリヴァーとミツホ人のマヤは肩を寄せ合い、言葉を交わしていた。
「鰹節に木紙、順調に売れているからね」
「この前なんか、地底蜘蛛絹(GSS)が大量に売れた言うてたで」
「そうみたいだね。うちにも引き合いが来たよ。扱っていないのが残念だった」
「ほな、扱ってみる? うち、伝手ならあるで」
「ほんとかい? 是非頼むよ」
「まかしとき」

 あまり色気のある会話ではなかったようだが。

*   *   *

「いい勉強になったようだな、アーネスト」
「はい、父上」
 エゲレア王国では帰国したアーネスト王子が父王に報告を行っていた。
「特に船について、いろいろと学んできました。……それでですね父上、我が国の船がエリアス王国のゴーレム艇競技に出場しておりましたが、ご存知でしたか?」
「いや、知らんな」
「父上もですか。では、誰なら知っているでしょうか?」
「魔法相のケリヒドーレなら知っているかもしれん」

 そこでエゲレア王国国王、ハロルド・ルアン・オートクレースはケリヒドーレを呼び出し、質問した。
「は、その件でしたら確かに耳にしております。ですが、公式なものではなく、あくまでも個人の資格で参加したということですので陛下のお耳を煩わせなかったわけでして」
「そうか。報告しなかったことはまあよい。だが、アーネストの話によると、その船はなかなかの出来だったそうだ。製作者について調べて報告するようにせよ」
「は、承りました」

*   *   *

「姫さま、今回の旅行は楽しかったですか?」
 クライン王国では、自室で寛ぐリースヒェン王女にティアがお茶とお茶菓子を出しながら尋ねていた。
「うむ、すごく楽しかった! ジンと一緒にいると飽きないのう。ハンナも可愛い。それに……」
「アーネスト様が凛々しくなっておられた、ですか?」
「ぐむ……そ、そうじゃ」
 顔を赤くしながら頷く王女。
「でも言葉を交わしてみれば、やっぱりネスト様はネスト様じゃ」
 時折見せる仕草は昔のままじゃ、と言う。
 そんなリースヒェン王女にティアは丸めた皮紙を差し出した。
「それから、ジン様から書簡が届いていますよ」 
「おお、そうか。何じゃろう」
 リースヒェン王女はそれを受け取り、封を破って広げ、目を通す。
 すると、その顔に笑みが広がった。
「おおお……!」
「どうなさったのですか? 何かいいことが書かれていたのでしょうか?」
「うむ、そうなのじゃ。ジンが言うには、『北方民族』のところに、比較的簡単にできる舗装があるらしい。詳しく調べてくれるそうじゃ」
 仁が言うことなら間違いなさそうだ、とリースヒェン王女は街道整備という事業の見通しがさらに明るくなったことを感じた。
「よかったですね」
「うむ。持つべきものは友じゃな」

*   *   *

「何か……あったの?」
 ユニーの居住区では、ミロウィーナが管理頭脳『ジャック』に呼び出されていた。
《はい。遙か彼方で、空間が振動したようです》
「振動?」
《はい。重力場の変動から、そう判断しました》
「間違いないの?」
《僅か1万分の1秒ほどでしたので、100パーセント確実とは言い切れません》
「それで私はどうすればいいのかしら?」
《この現象をどう判断すべきか、助言をいただきたく》
「珍しいわね。あなたに判断が付かないというの?」
《はい。なにぶん、このような事態はこれまでになく、どうすればよいかという判断材料がありませんので》
「なるほどねえ……」
 この種の人工知能の限界であったのかもしれない。
「ジン君もいろいろ忙しいようですしね。……そうね、もう一度、同じような現象が起きたら、蓬莱島へ知らせなさい」
《わかりました》
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170314 修正
(誤)エレナは小さな声で2人に礼を言うと、議論を再会した。
(正)エレナは小さな声で2人に礼を言うと、議論を再開した。
+注意+
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